1758太洋基礎工業株式会社||

太洋基礎工業(1758) 理論株価分析:PBR0.39倍からの脱却と受注残高最高更新 カチノメ

決算発表日: 2026-04-222026年1月期 通期決算
総合業績スコア
72/100
好決算

セクション別スコア

業績成長性75収益性55財務健全性85株主還元70成長戦略65理論株価評価80
業績成長性75
収益性55
財務健全性85
株主還元70
成長戦略65
理論株価評価80

※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。

決算履歴(業績推移)

売上高推移(百万円)90億100億110億120億130億140億150億2017年 2018年 2020年 2022年 2024年 2025年 '27/1売上高利益推移(営業利益・経常利益・当期純利益)0百万2億4億6億8億10億2017年 2018年 2020年 2022年 2024年 2025年 '27/1営業利益経常利益純利益利益率推移(%)1.0%2.0%3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%2017年 2018年 2020年 2022年 2024年 2025年 '27/1営業利益率経常利益率純利益率
年度 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 包括利益
2017年 1月期 個別 9,600 503 600 377
2017年 1月期 個別 9,522 506 600 401
2018年 1月期 個別 12,182 434 520 324
2018年 1月期 個別 12,182 434 520 324
2019年 1月期 個別 10,600 364 418 299
2019年 1月期 個別 10,750 434 491 352
2020年 1月期 個別 11,853 591 634 480
2021年 1月期 個別 13,270 470 540 336
2021年 1月期 個別 13,308 593 660 436
2022年 1月期 個別 13,130 675 750 525
2022年 1月期 個別 12,934 576 655 474
2023年 1月期 個別 14,710 797 941 614
2024年 1月期 個別 14,572 225 314 212
2025年 1月期 個別 14,500 450 522 350
2025年 1月期 個別 13,200 160 240 220
2025年 1月期 個別 13,482 170 245 230
2026年 1月期 個別 14,511 551 616 463
★2027年1月期(予想) 14,700 588 664 475

※単位: 百万円

利益率推移

営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

年度 売上高 (百万円) 営業利益率 (%) 経常利益率 (%) 純利益率 (%)
2017年 1月期 個別 9,600 5.24% 6.25% 3.93%
2017年 1月期 個別 9,522 5.31% 6.30% 4.21%
2018年 1月期 個別 12,182 3.56% 4.27% 2.66%
2018年 1月期 個別 12,182 3.56% 4.27% 2.66%
2019年 1月期 個別 10,600 3.43% 3.94% 2.82%
2019年 1月期 個別 10,750 4.04% 4.57% 3.27%
2020年 1月期 個別 11,853 4.99% 5.35% 4.05%
2021年 1月期 個別 13,270 3.54% 4.07% 2.53%
2021年 1月期 個別 13,308 4.46% 4.96% 3.28%
2022年 1月期 個別 13,130 5.14% 5.71% 4.00%
2022年 1月期 個別 12,934 4.45% 5.06% 3.66%
2023年 1月期 個別 14,710 5.42% 6.40% 4.17%
2024年 1月期 個別 14,572 1.54% 2.15% 1.45%
2025年 1月期 個別 14,500 3.10% 3.60% 2.41%
2025年 1月期 個別 13,200 1.21% 1.82% 1.67%
2025年 1月期 個別 13,482 1.26% 1.82% 1.71%
2026年 1月期 個別 14,511 3.80% 4.25% 3.19%
★2027年1月期(予想) 14,700 4.00% 4.52% 3.23%

※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

決算サマリー

太洋基礎工業の2026年1月期(第59期)決算は、売上高145億1,148万円(前期比7.6%増)、営業利益5億5,129万円(同224.0%増)、経常利益6億1,613万円(同151.8%増)、純利益4億6,297万円(同101.5%増)と、大幅な増益を達成しました。前期の低調からV字回復を果たし、受注残高も約70億円と過去最高水準を記録しています。

注目ポイント

  • PBR1倍割れ改善への強いコミットメント:2025年1月時点のPBR0.39倍という現状を重視し、資本コストを意識した経営への変革を明言。配当方針の引き上げや自己資本効率の向上を策定しています。
  • 過去最高の受注残高:前期末の受注残高が約70億円に達しており、次期の業績を下支えする強固な営業財産を確保しています。
  • 株主還元の強化:DOE(株主資本配当率)1.5%目標を掲げ、2026年1月期は60円(前期比10円増配)を予定。次期も65円への増配を予想しています。

業界動向

建設業界全体では国土強靭化対策などの公共投資が底堅い一方、資材価格の高騰や深刻な人手不足、2024年問題(時間外労働上限規制)による労務コストの上昇が収益の圧迫要因となっています。同社は特殊土木や住宅地盤改良といったニッチな強みを持つため、価格転嫁や施工効率化の成否が競合他社との差別化要因となります。

投資判断材料

長期投資家にとって、自己資本比率76.3%という極めて高い財務健全性は大きな安心材料です。一方で、ROE 5.0%と収益性は依然として改善の余地があります。PBR1倍超えに向けた具体的な施策(政策保有株の縮減や成長投資)がどれほど実効性を持って進むかが、今後の株価再評価の鍵となります。

セグメント別業績

  • 特殊土木工事等事業:売上高69.6億円(前期比32.2%増)、営業利益3.3億円(同82.3%増)。地盤改良や推進工事が好調で、同社の利益柱として大きく貢献。
  • 住宅関連工事事業:売上高42.6億円(同6.7%減)、営業利益1.5億円(同28.4%増)。減収ながらも採算性重視の案件管理により増益を確保。
  • 建築事業:売上高22.9億円(同3.0%増)、営業損失0.3億円(前期は3.1億円の損失)。赤字幅が大幅に縮小し、収益化に近づいています。

財務健全性

自己資本比率は76.3%と極めて高く、無借金に近い健全な財務体質を維持しています。現金及び預金も39.5億円保有しており、機動的な設備投資や株主還元が可能な余力を十分に有しています。

配当・株主還元

配当性向は25.9%ですが、新たにDOE(株主資本配当率)1.5%という指標を導入しました。これにより業績の変動に左右されにくい安定的な配当が期待できます。2027年1月期も5円増配の65円を予想しており、累進的な配当姿勢を示しています。

通期業績予想

次期(2027年1月期)の中期経営計画目標として売上高150億円、営業利益7.5億円を掲げています。足元の豊富な受注残高を考慮すると、達成の蓋然性は高いと考えられますが、人件費上昇の吸収が課題となります。

中長期成長戦略

「効率・成長」型の財務経営への変革を掲げ、人的資本への投資やDX推進による生産性向上を図ります。また、不動産開発市場への投資やM&Aの検討、再生可能エネルギー分野への新機械導入など、多角化による収益源の拡大を目指しています。

リスク要因

最大の懸念は建設技能労働者の不足と高齢化です。また、民間設備投資が資材価格高騰の影響で慎重化するリスクや、大規模な自然災害による工事の中断・遅延の可能性を注視する必要があります。

ESG・サステナビリティ

「自然資本」と「人的資本」を重視。女性採用率30%の達成や男性の育休取得率向上など、ダイバーシティ推進に注力しています。また、環境負荷の少ない新工法の研究開発を通じ、環境配慮型建設への移行を加速させています。

経営陣コメント

「利益については2期連続の低調からの回復を喫緊の課題と捉え、一定の成果を得た。受注残高は約70億と過去最高額となっており、中期経営計画のさらなる加速を図る。PBR1倍超を目指し、効率的な財務経営へ変革する」旨の姿勢を示しています。

バリュエーション

実績PERは11.0倍、PBRは0.39倍(前期末ベース)です。東証スタンダード市場の平均と比較しても、極めて低いPBR水準に放置されており、経営側が自ら「1倍以上を目指す」と宣言したことは、バリュエーションの修正を促す強力なカタリストとなる可能性があります。

過去決算との比較

直近5年間の推移を見ると、第57期、58期と利益が沈み込みましたが、第59期で急回復を見せました。受注高が前期の138億円から163億円へと大きく伸びており、成長トレンドへの回帰が明確になっています。

市場の評判

Taiyo Kizyo Kogyo Co., Ltd. (1758) is a construction company specializing in power plant and substation foundations. It has a stable business model with consistent revenue growth. Investor sentiment is generally positive due to its diversified projects and strong market position.

詳細リサーチレポート

最新の業績動向と今後の見通し

  • 2026年1月期の決算は、特殊土木工事等の事業が好調で増収増益となり、売上高は145億5,100万円(前年同期比7.6%増)、営業利益は5億5,100万円(同224.0%増)と大幅に改善した.
  • 自己資本比率は76.3%と財務基盤も強固である.
  • 2027年1月期も増収増益を見込んでおり、1株当たり配当金は65円と増配が予想されている.
  • IFIS株予報によると、2026年1月期の経常損益は6億1600万円で、事前の予想を下回る水準だった.
  • 会社は中期経営計画で、2028年1月期に売上高150億円、営業利益7.5億円を目標としている.

業界内での競合ポジションと市場シェア

  • 太洋基礎工業は、地下特殊土木工事を得意とする建設会社であり、特殊土木工事、住宅関連工事、環境関連工事、建築事業などを手掛けている.
  • 主要な取引先は大手ゼネコンと積水ハウスである.
  • 会社四季報オンラインによると、太洋基礎工業は地中連続壁などの特殊土木工事(官公需)と積水ハウスの住宅地盤改良工事が2本柱であり、建築事業も行っている.
  • 競合他社としては、三東工業社、テノックス、日特建設などが挙げられる.
  • 市場シェアに関する具体的なデータは見つからなかった。

成長戦略と重点投資分野

  • 中期経営計画(2025年2月~2028年1月)では、「安定成長・100年企業」を目指し、「たゆまない付加価値の提案・提供」を基本方針としている.
  • 重点戦略として、(1)事業(中核事業(特殊土木・環境開発)、建築事業と不動産開発、海外展開)、(2)経営基盤の強靭化、(3)ガバナンスの充実を挙げている.
  • 長期的には「維持・継続」から「効率・成長」型の財務経営への変革を推進する.
  • 具体的な施策として、役員株式報酬制度RSの導入によるインセンティブ付与、株主への配当方針(長期安定配当目標DOE 1.5%)を検討・実施していく.
  • 2021年に瀧上工業、2022年に徳倉建設、2023年にナガワと資本提携している.

リスク要因と課題

  • 事業上のリスクとして、安全、品質、コスト、納期、環境(Safety, Quality, Cost, Delivery, Environment)に関するリスクがある.
  • 具体的には、労働災害、竣工物件の瑕疵、損益管理、納期遅延、土壌汚染などが挙げられる.
  • その他、得意先や取引先の資金繰り悪化、社員の長時間労働、情報セキュリティ、サプライチェーン、自然災害、パンデミックなどもリスク要因となる.
  • PBR(株価純資産倍率)が0.4倍にとどまっているため、長期目標1倍以上を目指している.

アナリストの評価と目標株価

  • IFIS株予報によると、2026年4月20日時点で、アナリストによるレーティング、目標株価は共に「--」となっている.
  • みんかぶの予想株価は「1891円で【売り】」と評価されている (2026/04/06).
  • 理論株価(PBR基準)はやや割安と評価されている.

最近の重要ニュースやイベント

  • 2026年3月13日、2026年1月期の決算短信が発表された.
  • 2026年3月13日、取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度の改定に関するお知らせ.
  • 2025年12月12日、会長、社長および代表取締役の異動に関するお知らせ.
  • 2025年2月15日、中期経営計画(第59期~第61期)が策定された.

ESG・サステナビリティへの取り組み

  • 環境への取り組みとして、土壌汚染対策や地中熱利用、太陽光発電工事などを行っている.
  • 気泡掘削液を用いた産業廃棄物を削減する工法の研究開発も行っている.
  • 全社BCP(事業継続計画)訓練を定期的に実施し、自然災害やパンデミックリスクに備えている.
  • 健康診断を100%実施し、産業医を活用するなど、社員の健康管理にも配慮している.

配当政策と株主還元

  • 株主に対する利益還元を経営の重要事項と位置づけており、業績に対応した安定的な配当を行うことを基本方針としている.
  • 長期安定配当目標としてDOE(株主資本配当率)1.5%の達成を目指している.
  • 2026年1月期の1株当たり配当金は60円、2027年1月期は65円と増配が予想されている.
  • 過去には自社株買いも実施している.
  • 2023年8月1日に1株につき3株の株式分割を行っている.

情報源

年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)

株価推移(高値・安値)01,0002,0003,0004,000'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)高値安値PBR推移(高値・安値・期末PBR)0.2倍0.4倍0.6倍0.8倍1.0倍'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)PBR高値PBR安値期末PBRPER推移(高値・安値)0倍5倍10倍15倍20倍25倍30倍'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)PER高値PER安値時価総額推移(高値・安値)0億20億40億60億80億100億'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)高値安値ROE推移(PBR÷PERで算出・高値同士/安値同士)2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%12.0%'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)ROE高値ROE安値
年度 株価高値 株価安値 PER高値 PER安値 PBR高値 PBR安値 時価総額高値 時価総額安値 期末PBR
2011年1月期 683 507 6.89 5.11 0.37 0.27 16億8018万 12億4579万 0.35倍
2012年1月期 1,085 638 17.42 10.25 0.57 0.34 26億6779万 15億6953万 0.39倍
2013年1月期 807 670 6.25 5.19 0.41 0.34 19億8343万 16億4739万 0.39倍
2014年1月期 1,598 733 6.11 2.8 0.65 0.3 39億2998万 18億312万 0.62倍
2015年1月期 2,175 1,167 15.7 8.42 0.82 0.44 53億4789万 28億6860万 0.44倍
2016年1月期 1,458 1,158 8.84 7.02 0.52 0.41 35億8575万 28億4811万 0.42倍
2017年1月期 1,315 1,017 6.9 5.33 0.44 0.34 32億3332万 24億9978万 0.41倍
2018年1月期 2,415 1,217 15.66 7.89 0.76 0.38 59億3800万 29億9154万 0.72倍
2019年1月期 2,500 1,833 14.95 10.96 0.77 0.56 61億4700万 45億780万 0.63倍
2020年1月期 3,330 1,620 14.1 6.86 0.95 0.46 81億8780万 39億8325万 0.78倍
2021年1月期 2,813 1,370 12.89 6.28 0.77 0.37 69億1742万 33億6855万 0.44倍
2022年1月期 1,790 1,552 7.74 6.71 0.47 0.41 44億125万 38億1523万 0.42倍
2023年1月期 2,367 1,493 7.98 5.04 0.58 0.37 58億1916万 36億7180万 0.43倍
2024年1月期 3,110 1,720 28.81 15.93 0.71 0.39 76億4686万 42億2913万 0.46倍
2025年1月期 2,300 1,500 19.91 12.99 0.52 0.34 56億5524万 36億8820万 0.39倍
2026年1月期 2,805 1,503 12.11 6.49 0.59 0.32 68億9693万 36億9557万 0.54倍
最新(株探) 2528 - 10.6倍 - 0.53倍 - - - 0.53倍

ROE算出表(PBR÷PER×100)

PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。

年度 PBR高値 PER高値 ROE高値(%) PBR安値 PER安値 ROE安値(%)
2011年1月期 0.37 6.89 5.4% 0.27 5.11 5.3%
2012年1月期 0.57 17.42 3.3% 0.34 10.25 3.3%
2013年1月期 0.41 6.25 6.6% 0.34 5.19 6.6%
2014年1月期 0.65 6.11 10.6% 0.3 2.8 10.7%
2015年1月期 0.82 15.7 5.2% 0.44 8.42 5.2%
2016年1月期 0.52 8.84 5.9% 0.41 7.02 5.8%
2017年1月期 0.44 6.9 6.4% 0.34 5.33 6.4%
2018年1月期 0.76 15.66 4.9% 0.38 7.89 4.8%
2019年1月期 0.77 14.95 5.2% 0.56 10.96 5.1%
2020年1月期 0.95 14.1 6.7% 0.46 6.86 6.7%
2021年1月期 0.77 12.89 6.0% 0.37 6.28 5.9%
2022年1月期 0.47 7.74 6.1% 0.41 6.71 6.1%
2023年1月期 0.58 7.98 7.3% 0.37 5.04 7.3%
2024年1月期 0.71 28.81 2.5% 0.39 15.93 2.4%
2025年1月期 0.52 19.91 2.6% 0.34 12.99 2.6%
2026年1月期 0.59 12.11 4.9% 0.32 6.49 4.9%
最新(株探) 0.53倍 10.6倍 5.0% - - -

バリュエーション推移の概要

太洋基礎工業(1758)の過去約15年間のデータを確認すると、バリュエーションは建設・土木セクター特有の低PBR(株価純資産倍率)の状態が長期化していることが分かります。PBRは一貫して1.0倍を割り込んで推移しており、PER(株価収益率)は2.8倍から28.81倍までと、年度ごとの利益水準の変動に伴い大きく振れる傾向にあります。しかし、長期的な視点では時価総額の底値圏が切り上がっており、企業価値は緩やかな拡大基調にあると分析されます。

PBR分析

PBRの推移を辿ると、歴史的な最安値は2011年1月期の0.27倍、最高値は2020年1月期の0.95倍となっています。特筆すべきは、2011年から2013年頃までは0.3倍台を中心とした極めて低い評価に甘んじていた点です。その後、2014年以降は0.4倍から0.8倍程度のレンジへと水準を切り上げましたが、依然として解散価値である1.0倍を大きく下回る「バリュー株」の特性を維持しています。期末PBRが0.4倍台で推移する期間が長く、資本効率に対する市場の評価が一定の範囲に定着している様子が伺えます。

PER分析

PERは、収益性の変動を反映して激しく上下しています。2014年1月期には安値2.8倍という極めて割安な水準を記録する一方で、2024年1月期には高値28.81倍に達しており、利益のボラティリティが高いことが推察されます。2010年代半ばまではPER5倍〜10倍程度で推移するケースが多く見られましたが、近年の2024年1月期や2025年1月期(予想含む)ではPERのレンジが10倍〜20倍超へとシフトしており、市場が将来の成長性や収益の質に対して以前よりも高いマルチプルを許容し始めている可能性が示唆されます。

時価総額の推移

時価総額は、2011年1月期の安値12億4579万円を大底として、長期的な成長トレンドを描いています。2020年1月期には一時81億8780万円に達し、約9年間で最大約6.5倍の規模まで拡大しました。その後は40億円〜70億円前後のレンジで推移していますが、2011年〜2013年当時の10億円〜20億円台と比較すると、企業規模のステージは一段階引き上がっています。公共投資や特殊土木需要などの外部環境の変化が、時価総額の変動要因として強く影響していると考えられます。

現在のバリュエーション評価

最新データ(株探参照)では、PER 10.6倍、PBR 0.53倍となっています。 PBR 0.53倍という水準は、過去15年間のレンジ(0.27倍〜0.95倍)の中央値付近に位置しており、歴史的な超割安圏からは脱しているものの、依然として資産価値に対しては保守的な評価を受けていると言えます。 また、PER 10.6倍についても、近年の高値(28.81倍)と比較すれば落ち着いた水準ですが、2010年代前半の低PER水準と比較すると、一定の期待値が株価に織り込まれている状態です。現在のバリュエーションは、過去の極端な割安状態と近年の期待先行状態の中間に位置する「標準的な水準」にあると解釈でき、今後の業績進捗や配当政策、資本効率の改善策が、この水準からの上放れを左右する焦点となるでしょう。

キャッシュフロー推移

キャッシュフロー推移(営業CF・投資CF・フリーCF)-15億-10億-5億0百万5億10億15億'17/1'19/1'21/1'23/1'25/1'26/10営業CF投資CFフリーCF設備投資 vs フリーCF(百万円)-15億-10億-5億0百万5億10億15億'17/1'19/1'21/1'23/1'25/1'26/10設備投資#1フリーCF現金等残高推移20億25億30億35億40億'17/1'19/1'21/1'23/1'25/1'26/1現金等
年度 四半期 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF 設備投資#1 現金等
2017年1月期 通期 288 -180 83 108 -193 3423
2018年1月期 通期 -589 -643 -145 -1232 -324 2046
2019年1月期 通期 1261 -258 -158 1003 -175 2891
2020年1月期 通期 1066 -495 -96 572 -498 3366
2021年1月期 通期 -419 -706 -170 -1125 -820 2071
2022年1月期 通期 1148 -129 -109 1019 -73 2982
2023年1月期 通期 191 -275 339 -84 -440 3237
2024年1月期 通期 859 -343 -497 515 -199 3255
2025年1月期 通期 371 -438 -218 -66 -461 2971
2026年1月期 通期 898 -159 -90 739 -372 3620

※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)

キャッシュフロー推移の概要

太洋基礎工業(1758)の過去10年間(予測含む)のキャッシュフロー(CF)推移を俯瞰すると、建設業界特有のプロジェクトサイクルに伴う変動が見られるものの、全体として本業で稼いだキャッシュを投資と財務の返済に充てる構造が定着しています。2021年1月期や2023年1月期など、一時的なキャッシュ流出局面はあるものの、直近の2024年1月期から2026年1月期(予測)にかけては、営業CFのプラス、投資CFのマイナス、財務CFのマイナスという構成に落ち着く見通しです。CF分析フレームワークに基づくと、足元の状態は本業のキャッシュで将来への布石と債務・還元を賄う「優良安定型」と判定されます。

営業キャッシュフロー分析

営業CFは、2018年1月期(-5.89億円)や2021年1月期(-4.19億円)にマイナスを記録するなど、年度によって振れ幅が大きいのが特徴です。これは大規模工事の着工・完工時期や運転資本の増減が影響しやすい地盤改良・基礎工事事業の特性を反映していると考えられます。しかし、2022年1月期以降は、11.48億円、1.91億円、8.59億円とプラス圏を維持しており、2026年1月期には8.98億円まで回復する予測となっています。長期的には着実に本業でのキャッシュ創出力を保持しており、事業基盤の堅実さが伺えます。

投資キャッシュフロー・設備投資分析

投資CFは一貫してマイナスで推移しており、継続的な設備投資姿勢が鮮明です。特に2021年1月期には8.2億円の設備投資を実施しており、機械設備の更新や技術力強化に資金を投じています。その後、投資額は3億〜4億円規模で安定しており、2025年1月期(4.61億円)、2026年1月期(3.72億円)も一定水準の投資が継続される見通しです。営業CFの範囲内で設備投資を賄えている年が多く、無理のない範囲で競争力維持のための再投資が行われているといえます。

フリーキャッシュフロー分析

フリーCF(FCF)は、2019年1月期に10.03億円、2022年1月期に10.19億円と大きなプラスを記録する一方で、大型投資や営業CFの落ち込み時にはマイナスに転じる場面もあります。直近2024年1月期は5.15億円のプラスを確保し、2026年1月期には7.39億円まで拡大する予測です。FCFが定期的に大きくプラス化していることは、株主還元(配当等)や借入金の返済に向けた「自由なキャッシュ」を生み出す能力が備わっていることを示唆しています。

財務戦略・現金残高の評価

財務CFは、多くの年度でマイナス(返済や配当等による流出)となっており、自己資金による経営が基本路線です。特筆すべきは現金等残高の厚みです。2018年1月期の20.46億円を底として、その後は概ね30億円前後で推移しており、2026年1月期には36.2億円まで積み上がる見通しです。これは年間売上規模や設備投資額と比較しても潤沢な水準であり、不況期や急な資金需要に対する耐性(手元流動性)は非常に高いと評価できます。借入に頼りすぎない保守的かつ健全な財務運営が継続されています。

キャッシュフロー総合評価

太洋基礎工業のキャッシュフロー構造は、建設・土木セクター特有の流動性はありつつも、極めて健全な財務体質を維持しています。評価のポイントは以下の3点です。第一に、変動はあるものの累計では十分な営業CFを創出できていること。第二に、身の丈に合った設備投資を継続し、事業継続性を確保していること。第三に、30億円規模の豊富な現預金を保持しており、財務的な安全性と将来の機動的な投資余力を両立していることです。今後は、この潤沢なキャッシュをどのように成長戦略や株主還元へ配分していくかが、投資家にとっての注目点となるでしょう。

DCF法による理論株価分析

DCF分析の前提条件

パラメータ 説明
WACC(割引率) 7.0% 加重平均資本コスト
FCF成長率 3.0% 予測期間中の年平均成長率
EV/FCF倍率 2.62倍 ターミナルバリュー算出用(現在の市場評価)
予測年数 5年 将来FCFの予測期間
発行済株式数 2,000,000株 理論株価算出の分母
現金及び現金同等物 36億 非事業資産として加算
有利子負債 5億 企業価値から控除

将来フリーキャッシュフロー予測

予測年 予測FCF 現在価値(PV)
1年目 8億 7億
2年目 8億 7億
3年目 8億 7億
4年目 8億 6億
5年目 9億 6億
ターミナルバリュー 22億 16億
フリーキャッシュフロー推移(実績 + DCF予測)-2億0百万2億4億6億8億10億12億2224262028予2030予2031予0FCF実績FCF予測

理論株価の算出プロセス

① 予測FCF現在価値の合計 33億
② ターミナルバリューの現在価値 16億
③ 事業価値(① + ②) 49億
④ 加算: 現金及び現金同等物 +36億
⑤ 控除: 有利子負債 -5億
⑥ 株主価値(③ + ④ − ⑤) 80億
DCF理論株価
4,010円
現在の株価
2,528円
乖離率(割安)
+58.6%

感度分析(理論株価: 円)

WACC(横軸)とFCF成長率(縦軸)を変化させた場合の理論株価の変動を示します。

WACC →
FCF成長率 ↓
5.0%6.0%7.0%8.0%9.0%
-2.0%3,7553,6833,6143,5493,487
0.5%3,9613,8813,8043,7323,663
3.0%4,1844,0954,0103,9303,853
5.5%4,4254,3274,2334,1444,059
8.0%4,6864,5784,4744,3764,282

※ 緑色: 現在株価(2,528円)より高い(割安方向) / 赤色: 低い(割高方向) / 青背景: 現在の前提条件

DCF分析の総合評価

太洋基礎工業(1758)のDCF分析の結果、理論株価は4,010円と算出されました。現在の市場価格2,528円と比較して+58.6%の乖離があり、バリュエーション面では「著しく割安」な水準にあると評価できます。この大幅な乖離の主因は、事業価値(49億円)に対して、同社が保有する現預金等の流動性資産(36億円)が非常に厚く、ネットキャッシュ(現金等36億円-有利子負債5億円=31億円)が株主価値の約4割を占めている点にあります。市場は同社の保有資産や将来のキャッシュフロー創出能力を保守的に見積もっている、あるいは流動性の低さを割り引いている可能性が示唆されます。

フリーキャッシュフローの質

過去10年間のフリーキャッシュフロー(FCF)を振り返ると、2018年1月期の-1,232百万円から2019年1月期の1,003百万円へと極めて激しい変動が見られます。これは、土木・基礎工事という業態特有の、大型案件の受注タイミングや運転資本(売掛金・棚卸資産)の増減、設備投資の周期が大きく影響しているためと推察されます。予測期間においては年平均3%の成長を前提に761百万円〜857百万円と安定的な推移を仮定していますが、過去の実績値の標準偏差が大きいことから、予測の確実性には一定の注意が必要です。FCFの「質」としては、安定的というよりは「ボラティリティを伴う循環型」であると評価するのが妥当です。

前提条件の妥当性

本分析ではWACC(加重平均資本コスト)を7.0%に設定しています。地方中小型株のリスクプレミアムを考慮すると妥当な水準ですが、同社の自己資本比率の高さや有利子負債の少なさを鑑みれば、資本コストをより低く見積もる余地もあります。一方で、出口マルチプル(EV/FCF倍率)を2.62倍という極めて保守的な水準に設定している点は注目に値します。一般的に成長企業では10倍を超えることも珍しくありませんが、成熟産業であることや過去のFCFの不安定さを考慮し、あえて「解散価値に近い」低い倍率を適用したことで、算出された理論株価の信頼性(保守的な下値目処としての意味合い)を高めています。

ターミナルバリューの影響

今回の分析において、ターミナルバリュー(TV)の現在価値は16億円であり、事業価値(49億円)に占める割合は約32.6%にとどまっています。通常のDCF分析ではTVが事業価値の60〜80%を占めることが多い中、本件は予測期間(5年分)のFCFの現在価値(33億円)の寄与度が相対的に高くなっています。これは出口マルチプルを2.62倍と低く抑えたことによる結果です。TVへの依存度が低いことは、遠い将来の不確実な仮定に依存せずに価値が構成されていることを意味し、構造的には堅実な評価モデルであると言えます。

感度分析から読み取れること

本モデルにおいて理論株価に最も大きな影響を与える変数は、WACCと出口マルチプル(または永久成長率)です。仮にWACCが1%上昇して8.0%になった場合、事業価値は減少しますが、同社は膨大なネットキャッシュを保有しているため、株主価値全体への下押し圧力は他の高レバレッジ企業と比較して限定的です。一方で、将来のFCFが予測を10%下回った場合、事業価値は4.9億円(理論株価で約245円相当)減少します。現在の株価水準が理論株価より1,400円以上低いことを考えると、多少の業績下振れシナリオを織り込んでも、なお割安圏に留まる計算となります。

投資判断への示唆

DCF分析の観点からは、現在の株価2,528円は理論的価値に対して大幅にディスカウントされており、安全域(Margin of Safety)が十分に確保された状態と言えます。特にネットキャッシュの豊富さが下支えとなり、ダウンサイドリスクは限定的であると考えられます。ただし、DCF法には「市場がいつその価値を正当に評価するか(カタリストの有無)」という時間軸の概念が含まれていません。中小型株特有の流動性リスクや、資本効率(ROE)の改善に向けた施策の有無が、この割安状態を解消するための鍵となります。本分析結果はあくまで一定の前提に基づいた試算であり、実際の投資に際しては、今後の受注動向や配当政策の変化などを多角的に検討することが重要です。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のフリーキャッシュフローは年度ごとの変動が激しいものの、2027年1月期の利益回復予想を背景に、今後5年間は年率3%の安定成長を維持すると推定しました。WACCは建設業の低ベータ特性と小規模企業のリスクプレミアムを考慮して7%とし、永久成長率は国内建設市場の成熟度を鑑み1%に設定しています。発行済株式数は予想純利益とPERから算出される時価総額(約50億円)を現在の株価で除して推計しました。有利子負債は、現預金が時価総額の約7割を占めるキャッシュリッチな財務体質から、極めて限定的であると判断し500百万円と見積もっています。

⚠️ 免責事項: 本DCF分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 DCF法は前提条件(WACC、成長率等)に大きく依存するため、感度分析を参考に幅を持って評価してください。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

リバースDCF分析(市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(2,528円)を正当化するために必要なインプライドFCF成長率を逆算しました。

インプライドFCF成長率
-22.6%
市場が織り込む成長率
AI推定FCF成長率
3.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-25.6%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価2,528円
インプライドFCF成長率-22.55%
AI推定FCF成長率3.00%
成長率ギャップ-25.55%(悲観的)
インプライドWACC1.00%
AI推定WACC7.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

リバースDCF分析の結果、太洋基礎工業(1758)の現在の株価2,528円に含まれる「インプライドFCF成長率」は -22.55% と算出されました。これは、株式市場が同社の将来のフリーキャッシュフロー(FCF)が毎年約4分の1ずつ減少していくという、極めて「悲観的」なシナリオを織り込んでいることを意味します。一般的に、安定した事業基盤を持つ建設業において、持続的にマイナス20%を超える成長率が織り込まれるケースは稀であり、現在の市場価格は将来の業績後退を過度に警戒している、あるいは同社の収益構造を極めて厳しく評価している状況と言えます。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込んでいる -22.55% という成長率は、事業環境の観点から検証が必要です。太洋基礎工業は、障害物撤去工法や大口径ボーリングなど、特殊土木分野において独自の技術力を持つ企業です。インフラの老朽化対策や都市再開発需要が堅調な国内建設市場において、同社の事業が毎年2割以上のペースで縮小し続ける可能性は、客観的に見て低いと考えられます。一方で、AIが推定する成長率 3.00% は、日本の経済成長率や建設業界のトレンドに則した標準的な予測です。インプライド成長率(-22.55%)とAI推定成長率(3.00%)との間に存在する -25.55% という大きな乖離(ギャップ)は、市場の期待値と企業の潜在的な実力との間に、大きな認識のズレが生じている可能性を示唆しています。

投資判断への示唆

リバースDCF分析から得られる示唆として、現在の株価2,528円は、同社が将来的に大幅な減益に陥るという前提で形成されています。もし同社が将来的に現在のキャッシュフローを維持、あるいはAI推定の 3.00% 程度の微増を実現できるのであれば、現在の市場評価は理論的に「過小評価」の状態にあると解釈できます。また、インプライドWACCが 1.00% という極めて低い水準であることも、市場の特殊な評価を反映している可能性があります。投資家の皆様においては、この「市場の悲観」が一時的なものか、あるいは特殊土木業界特有の構造的リスクを反映したものかを精査することが重要です。現在の乖離を投資機会と捉えるか、あるいは市場が予見する負の要因を重視するかは、今後の受注動向や利益率の推移に基づき、慎重にご判断ください。

拡張感応度分析・シナリオ分析

感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

金利上昇はWACCの増加、景気後退はFCF成長率の低下として理論株価に影響します。

WACC →
FCF成長率 ↓
5.0%6.0%7.0%8.0%9.0%
-2.0%3,7553,6833,6143,5493,487
0.5%3,9613,8813,8043,7323,663
3.0%4,1844,0954,0103,9303,853
5.5%4,4254,3274,2334,1444,059
8.0%4,6864,5784,4744,3764,282

※ 緑色: 現在株価(2,528円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
WACC: 5.5% / FCF成長率: 8.0%
永久成長率: 1.5%
4,631円
+83.2%
基本シナリオ
WACC: 7.0% / FCF成長率: 3.0%
永久成長率: 1.0%
4,010円
+58.6%
悲観シナリオ
WACC: 8.5% / FCF成長率: -4.0%
永久成長率: 0.5%
3,384円
+33.9%

シナリオ分析の総合評価

太洋基礎工業株式会社(1758)のシナリオ分析の結果、理論株価の範囲は悲観シナリオの3,384円から楽観シナリオの4,631円となりました。特筆すべきは、現在株価(2,528円)が最も保守的な前提を置いた悲観シナリオの理論株価すら下回っている点です。基本シナリオにおける理論株価4,010円と比較すると、現在株価は約37%の乖離があり、市場価格がファンダメンタルズに基づく評価に対して著しく割安な水準に放置されている可能性を示唆しています。

金利変動の影響

WACC(加重平均資本コスト)を5.5%から8.5%の間で変動させた結果、理論株価への影響は極めて大きいものの、耐性は高いと評価できます。金利上昇や株主資本コストの増大を想定した悲観シナリオ(WACC 8.5%)においても、理論株価は3,384円と算出されており、現在の株価水準(2,528円)を33.9%上回っています。これは、多少の資本コスト上昇が生じても、現在の時価総額が資産価値やキャッシュフロー創出力に対して十分に低い位置にあることを裏付けています。

景気変動の影響

FCF(フリーキャッシュフロー)成長率を+8.0%(楽観)から-4.0%(悲観)まで変化させた分析では、同社の事業継続性と収益の下限が見て取れます。景気後退や受注環境の悪化によりFCF成長率がマイナス4.0%に陥る厳しい局面を想定しても、理論株価は3,000円台を維持しています。永久成長率を0.5%まで引き下げた評価でも現在価格を上回る結果となっており、景気後退時の下値リスクに対しては、現時点の株価が既にかなりのリスクを織り込み済みである、あるいは過度に低評価であると考えられます。

投資判断への示唆

本分析における最大の示唆は、厚い「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」の存在です。基本シナリオにおける理論株価(4,010円)と現在株価の差額は約1,482円に達しており、投資におけるダウンサイドリスクが限定的である一方で、アップサイドの潜在性は+58.6%と高い数値を示しています。ただし、これほどの乖離が継続している背景には、市場の流動性や資本効率、あるいは特定の業界リスクが影響している可能性もあります。投資家は、この理論的な割安性が解消されるトリガー(資本政策の変更や業績の可視性向上など)を慎重に見極める必要があります。

モンテカルロシミュレーション

シミュレーション結果サマリー

WACC・FCF成長率・永久成長率をそれぞれ正規分布でランダムに変動させ、100,000回のDCF計算を実行した結果です。DCF計算の非線形性(特にゴードン成長モデルの割引構造)により、理論株価の分布は対数正規分布に近い形状となるため、ヒストグラムは対数スケールで表示しています。

平均理論株価
8,476円
中央値
8,348円
90%レンジ(5-95%点)
6,623 〜 10,793円
割安確率
100.0%
理論株価 > 現在株価
モンテカルロシミュレーション:理論株価の確率分布(100,000回・対数スケール)0.0%1.1%2.2%3.3%4.5%5.6%6,283円6,807円7,376円7,991円8,658円9,381円10,164円11,013円シミュレーション分布現在株価

※ ヒストグラムは対数スケールで表示し、外れ値の影響を抑えるため分布の中央96%(2〜98パーセンタイル)を表示しています。対数スケールにより、DCF計算の非線形性に起因する右裾の歪みが補正され、分布の形状をより正確に把握できます。平均・中央値・パーセンタイルなどの統計値は元のスケールで有効サンプル全体から計算しています。

理論株価のパーセンタイル分布

シミュレーション結果を小さい順に並べたとき、各パーセンタイルにおける理論株価を示します。

パーセンタイル 5% 10% 25% 50% 75% 90% 95%
理論株価6,623円6,954円7,564円8,348円9,254円10,191円10,793円

※ 緑色: 現在株価(2,528円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 中央値(50%タイル)

リスク指標

理論株価の標準偏差 1,261円
5% VaR(下位5%タイル) 6,623円
変動係数(CV = σ / 平均) 14.9%
有効シミュレーション数 100,000 / 100,000

確率分布の解釈

今回のモンテカルロシミュレーション結果によれば、太洋基礎工業(1758)の理論株価の平均値は8,476円、中央値は8,348円となりました。平均値が中央値を上回っている点は、DCF法の特性である非線形性(特に分母となるWACCの低下や成長率の上昇が理論株価を急激に押し上げる性質)により、分布が右側に裾を引く対数正規分布に近い形状であることを示唆しています。理論株価の90%信頼区間(5パーセンタイルから95パーセンタイル)は6,623円から10,793円という広い範囲に分布しており、将来のキャッシュフロー成長率や資本コストの微細な変動が、理論価値の見積もりに大きな幅をもたらすことを表しています。

リスク評価

リスク指標としての5% VaR(バリュー・アット・リスク)は6,623円です。これは、WACCの上昇や成長率の鈍化といった悲観的なシナリオが重なる極端な状況下でも、95%の確率でこの価格を上回る理論価値が算出されることを意味します。変動係数(CV)は約14.87%(1,261円 / 8,476円)であり、建設業という事業特性を反映した一定のパラメータ不確実性は存在するものの、分散の幅は統計的に見て制御可能な範囲に収まっています。最も保守的な見積もりである5パーセンタイル値(6,623円)においても、事業の継続性を前提とする限り、底堅い資産価値と収益力を有していると評価されます。

現在株価の統計的位置づけ

現在株価2,528円を統計的分布に照らし合わせると、極めて特異な位置にあります。今回の10万回の試行において、理論株価が現在株価を下回るケースは一度も確認されず、「割安確率100.0%」という極端な結果が得られました。現在株価は、シミュレーション上の最下位(5パーセンタイル:6,623円)すら大幅に下回っており、統計学的な観点からは、現在の市場価格はファンダメンタルズに基づく理論的下限値からも大きく乖離した「異常値」の領域にあると分析できます。

投資判断への示唆

本シミュレーションは、現在の株価が「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」を非常に潤沢に含んでいることを示しています。5% VaR(6,623円)と現在株価(2,528円)の差額は4,000円を超えており、理論上の最悪のシナリオを想定してもなお、価格が価値を大きく下回る状態にあります。ただし、このような大幅な乖離は、市場の流動性不足や、DCF法では捉えきれない固有のガバナンスリスク、あるいは市場全体の需給要因が反映されている可能性に留意が必要です。投資家としては、この高い統計的割安性を評価しつつも、株価が理論価値に収斂するためのトリガー(株主還元策の拡充やIR活動の強化など)の有無を慎重に検討することが重要です。

📖 モンテカルロシミュレーションの読み方:
  • 割安確率: シミュレーション結果のうち、理論株価が現在株価を上回った割合。50%超なら統計的に割安寄り
  • 90%レンジ(5-95%点): 全シミュレーション結果を並べたときの下位5%点から上位95%点までの範囲。幅が広いほど不確実性が高い
  • 5% VaR: 悲観的な条件下でも95%の確率でこの値以上になると期待される最低ライン
  • 変動係数: 平均に対する標準偏差の比率。30%超だとパラメータ感度が高い(結果の信頼性に注意)
⚠️ 免責事項: 本モンテカルロシミュレーションはAIが推定したパラメータの分布に基づく統計的な参考値であり、投資助言ではありません。 入力パラメータに正規分布を仮定し、DCF計算の非線形性により出力は対数正規分布に近い形状となります。パラメータ間の独立性の仮定など、実際の市場とは異なる前提を含んでいます。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS/BPSベース理論株価分析

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 238.00円 1株あたり利益
直近BPS 4769.81円 1株あたり純資産
1株配当 65.00円 年間配当金
EPS成長率 4.0% 予測期間中の年平均
割引率 9.0% 将来EPSの割引率
想定PER 10.60倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2027年1月 4769.81 238.00 65.00 173.00 4942.81 4.99 0.00 10.60 0.51 238.00 2,523
2028年1月 4942.81 247.52 65.00 182.52 5125.33 5.01 4.00 10.60 0.51 227.08 2,624
2029年1月 5125.33 257.42 65.00 192.42 5317.75 5.02 4.00 10.60 0.51 216.67 2,729
2030年1月 5317.75 267.72 65.00 202.72 5520.47 5.03 4.00 10.60 0.51 206.73 2,838
2031年1月 5520.47 278.43 65.00 213.43 5733.89 5.04 4.00 10.60 0.51 197.24 2,951
ターミナル 1918.15
PER×EPS 理論株価
2,523円
-0.2%
DCF合計値
3,003.87円
+18.8%
現在の株価
2,528円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 1085.72円
ターミナルバリュー現在価値 1918.15円(全体の63.9%)
DCF合計理論株価 3,003.87円

EPS/BPSモデルの総合評価

太洋基礎工業(1758)の理論株価モデルによる分析の結果、現在の株価2,528円は、短期的な利益水準に基づく評価と概ね一致している一方、将来のキャッシュフローを割り引いた中長期的な視点では割安な水準にあることが示唆されました。 具体的には、「PER×EPS理論株価」は2,523円と算出され、現在株価との乖離はほぼありません。これは、市場が現状の利益水準を適正に織り込んでいることを示しています。一方で、将来の成長とターミナルバリューを考慮した「DCF合計理論株価」は3,003.87円となり、現在株価に対して+18.8%のプラス乖離が生じています。このことは、時間軸を長く取った場合、現在の株価には依然として上昇の余地が残されている可能性を示しています。

ROE推移の見通し

本モデルにおけるROEの推移を分析すると、2027年1月期の4.99%から2031年1月期の5.04%へと、緩やかな上昇が予測されています。一般に、配当性向を一定に保ちながら利益を内部留保(BPSの蓄積)に回すと、自己資本が拡大するためROEは低下しやすくなります。 しかし、本モデルでは年率4.0%のEPS成長を前提としており、この成長率がBPSの増加スピードをわずかに上回ることで、ROEが維持・改善されるシナリオとなっています。ただし、水準としては5%台と低位に留まっており、これがPBR0.51倍という、解散価値(PBR1倍)を大きく下回るバリュエーションの要因となっています。将来的な株価評価の向上には、この低ROE構造の改善、または株主還元策の強化による資本効率の向上が鍵となります。

前提条件の妥当性

本モデルで設定された前提条件の妥当性については、以下の通り評価されます。 まず、EPS成長率4.0%は、特殊土木や地盤改良といった同社の事業特性を鑑みると、堅実かつ現実的な設定と言えます。割引率9.0%については、スタンダード市場上場銘柄としての流動性リスクや資本コストを考慮した標準的な水準です。 想定PER10.60倍は、建設セクターの平均的な水準に準じていますが、同社の直近実績BPSが4769.81円と極めて高いこと(資産背景が厚いこと)を考慮すれば、下値支持線として機能しやすい設定です。一方で、配当を65.00円の据え置きと仮定している点は、将来的な増配の可能性を考慮していない保守的な見積もりと言えます。

投資判断への示唆

以上の分析から、太洋基礎工業の株価は、短期的な利益面では妥当な水準にありながら、中長期的な収益力と資産蓄積の観点からは評価不足の状態にあると考察されます。 DCF法による乖離率+18.8%という数値は、現在の株価が将来の利益成長を十分に織り込んでいない可能性を示唆しています。投資家としては、同社が今後、蓄積された自己資本(BPS)をいかに活用してEPS成長を継続させるか、あるいは増配や自社株買い等を通じて資本効率(ROE)を改善させるかという点に注目すべきでしょう。現在のPBR0.5倍台という水準は、資産面での安全域(マージン・オブ・セーフティ)を提供している一方、市場からの期待値が依然として低いことを反映しています。最終的な投資判断にあたっては、地盤改良需要の推移や公共投資の動向など、外部環境の変化も併せて検討することが推奨されます。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のEPSは2024年に大幅な落ち込みを見せたものの、2026年にかけて急回復する計画であり、回復後の巡航速度を考慮して年平均4%と推定しました。割引率は、同社がスタンダード市場上場の小規模キャップであることを踏まえ、業種リスクと規模のプレミアムを反映して9%に設定しています。PBR0.53倍という現状の低評価は資本効率への市場の懸念を示唆していますが、強固な自己資本(BPS)が下値を支える構造を考慮したパラメータ構成としています。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS成長率0%が続く場合の理論株価

将来のEPS成長率を0%(横ばい)と仮定した場合の試算です。本編のベースシナリオとは前提が異なります。

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 238.00円 1株あたり利益
直近BPS 4769.81円 1株あたり純資産
1株配当 65.00円 年間配当金
EPS成長率 0.0% 予測期間中の年平均
割引率 9.0% 将来EPSの割引率
想定PER 10.60倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2027年1月 4769.81 238.00 65.00 173.00 4942.81 4.99 0.00 10.60 0.51 238.00 2,523
2028年1月 4942.81 238.00 65.00 173.00 5115.81 4.82 0.00 10.60 0.49 218.35 2,523
2029年1月 5115.81 238.00 65.00 173.00 5288.81 4.65 0.00 10.60 0.48 200.32 2,523
2030年1月 5288.81 238.00 65.00 173.00 5461.81 4.50 0.00 10.60 0.46 183.78 2,523
2031年1月 5461.81 238.00 65.00 173.00 5634.81 4.36 0.00 10.60 0.45 168.61 2,523
ターミナル 1639.65
PER×EPS 理論株価
2,523円
-0.2%
DCF合計値
2,648.71円
+4.8%
現在の株価
2,528円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 1009.06円
ターミナルバリュー現在価値 1639.65円(全体の61.9%)
DCF合計理論株価 2,648.71円

0%成長シナリオの意味

本シナリオは、太洋基礎工業が将来にわたって利益成長を実現できず、現状の利益水準(EPS 238円)を維持し続けるという「保守的な最悪ケース」に近い想定に基づいています。 計算結果によると、PERベースの理論株価は2,523円となり、現在の市場価格(2,528円)とほぼ一致しています。これは、現在の株価が「将来の成長をほとんど織り込んでいない」状態にあることを示唆しています。 ROE(自己資本利益率)は、利益が横ばいの中で内部留保が積み上がりBPSが増加するため、2027年1月期の4.99%から2031年1月期には4.36%へと漸減する見通しとなります。これは、成長投資が行われない場合に資本効率が低下するという成熟企業の典型的な動態を表しています。

ベースシナリオとの対比

本編のベースシナリオ(成長率約4.0%)と比較すると、現在の株価水準が非常に慎重に見積もられていることが浮き彫りになります。 ベースシナリオにおいて成長が織り込まれた場合の理論株価は本価格を上回ることになりますが、この0%成長モデルが現在の実勢株価と合致している事実は、投資家にとって「現在の価格で購入すれば、仮に成長が止まっても理論上の価値は維持されやすい」という、一種の「下値目処(セーフティ・ネット)」を確認する材料となります。 DCF法による理論株価(2,648.71円)が現在株価を4.8%上回っている点も、ゼロ成長を前提としてもなお、将来のキャッシュフローの現在価値が現在の株価をわずかに上回るという、バリュエーション面の割安感を示しています。

留意点

本モデルは一定の前提条件に基づく試算であり、将来の株価推移を保証するものではありません。 特に、割引率(9.0%)や想定PER(10.60倍)の設定によって結果は大きく変動します。また、建設業界特有の受注動向や原材料費の変動、あるいは公共投資の削減といった外部要因により、EPSが「横ばい」を維持できずマイナス成長となるリスクも排除できません。 本シミュレーションは、あくまで「成長率がゼロであった場合の理論的基準値」を把握するための分析ツールとして活用し、実際の投資判断に際しては、同社の事業環境や資本政策の変化を総合的に考慮する必要があります。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のEPSは2024年に大幅な落ち込みを見せたものの、2026年にかけて急回復する計画であり、回復後の巡航速度を考慮して年平均4%と推定しました。割引率は、同社がスタンダード市場上場の小規模キャップであることを踏まえ、業種リスクと規模のプレミアムを反映して9%に設定しています。PBR0.53倍という現状の低評価は資本効率への市場の懸念を示唆していますが、強固な自己資本(BPS)が下値を支える構造を考慮したパラメータ構成としています。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

拡張感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

WACC(加重平均資本コスト)は、株主資本コストと負債コストを資本構成比率で加重平均した「企業の資金調達コスト」です。WACCが高いほど将来キャッシュフローの現在価値は低くなり、理論株価は下がります。FCF成長率は、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた「企業が自由に使えるキャッシュ(フリーキャッシュフロー)」が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準のWACC(7.0%)とFCF成長率(3.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

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拡張感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

割引率は、将来の利益やキャッシュフローを現在価値に換算するための率で、投資家が求めるリターン(期待収益率)に相当します。割引率が高いほど将来利益の現在価値は低くなり、理論株価は下がります。EPS成長率は、1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準の割引率(9.0%)とEPS成長率(4.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

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拡張感度分析: PER × EPS(理論株価: 円)

PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PERが高いほど市場がその企業の将来成長に高い期待を持っていることを意味します。EPS(1株あたり利益)は、企業の純利益を発行済株式数で割った値で、1株あたりの収益力を表します。

基準のPER(10.6倍)とEPS(238円)から、PERは1倍刻み(±100倍)・EPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

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拡張感度分析: PBR × BPS(理論株価: 円)

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回ると、株価が解散価値を下回っていることを意味し、割安と判断される場合があります。BPS(1株あたり純資産)は、企業の純資産を発行済株式数で割った値で、1株あたりの解散価値を表します。

基準のPBR(0.5倍)とBPS(4770円)から、PBRは0.1倍刻み(±10.0倍)・BPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

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残留利益モデル分析(Residual Income Model)

残留利益モデル(Residual Income Model)

残留利益モデルは、現在のBPS(1株純資産)に将来の「超過利益」の現在価値を加算して理論株価を算出します。 株主資本コストを上回るROEを持続できる企業ほど、BPSに大きなプレミアムが付きます。

理論株価 = BPS₀ + Σ[(ROEₜ − r) × BPSₜ₋₁ / (1+r)ᵗ] + TV/(1+r)ⁿ

前提条件

パラメータ 説明
直近BPS 4769.81円 1株あたり純資産(出発点)
直近EPS 238.00円 1株あたり利益
株主資本コスト (r) 9.0% 株主の要求収益率(エクイティチャージの基準)
EPS成長率 4.0% 予測期間中の年平均
1株配当 65.00円 年間配当金(BPS蓄積に影響)
予測年数 5年 個別予測期間

残留利益の年次予測

年度 期首BPS EPS ROE(%) エクイティチャージ 残留利益 PV(残留利益) 期末BPS
2027年1月 4769.81 238.00 4.99 429.28 -191.28 -175.49 4942.81
2028年1月 4942.81 247.52 5.01 444.85 -197.33 -166.09 5125.33
2029年1月 5125.33 257.42 5.02 461.28 -203.86 -157.42 5317.75
2030年1月 5317.75 267.72 5.03 478.60 -210.88 -149.39 5520.47
2031年1月 5520.47 278.43 5.04 496.84 -218.42 -141.96 5733.89
ターミナル 残留利益の永続価値: -2,426.89円 → PV: -1,577.31円 -1577.31
理論株価の構成
現在BPS
4,769.81円
簿価部分
+
残留利益PV合計
-790.34円
超過利益の現在価値
+
ターミナルPV
-1,577.31円
永続価値の現在価値
=
RIM理論株価
2,402円
-5.0%
現在の株価: 2,528円
残留利益モデル:ROEとエクイティチャージの推移4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%9.0%2728293031ROE(%)株主資本コスト(9.0%)
残留利益と現在価値の推移-220円-200円-180円-160円-140円2728293031残留利益(円)PV(残留利益)(円)
📖 残留利益モデルの読み方:
  • 残留利益 > 0(ROE > 株主資本コスト)→ 企業はBPS以上の価値を創出。理論株価 > BPS となりプレミアム付与
  • 残留利益 < 0(ROE < 株主資本コスト)→ 資本効率が不十分。理論株価 < BPS となりディスカウント
  • DCF法との違い: RIMはBPS(純資産)を出発点とするため、資産ベースの評価に強く、安定企業・金融機関の評価に適しています

残留利益の評価

太洋基礎工業(1758)の残留利益モデル(RIM)分析において、最も注目すべき点は「ROEと株主資本コストの逆転現象」です。本モデルでは株主資本コストを9.0%と設定していますが、予測期間(2027年1月期〜2031年1月期)のROEは4.99%〜5.04%に留まっており、資本コストを約4ポイント下回る推移となっています。

この結果、各期の残留利益(EPSからエクイティチャージを差し引いた額)は-191.28円から-218.42円と一貫してマイナスを記録しています。これは、会計上の利益は計上されているものの、投資家が期待する最低限の収益(資本コスト)を充足できていないことを意味し、経済的な観点からは「価値創造」ではなく「価値毀損」の状態にあると評価されます。

BPSプレミアム/ディスカウントの解釈

理論株価の算出プロセスにおいて、現在のBPS(1株当たり純資産)は4,769.81円と高い水準にありますが、算出されたRIM理論株価は2,402円となりました。これは、BPSに対して約50%もの大幅なディスカウントが適用された形です。

通常、ROEが資本コストを上回る企業ではBPSにプレミアム(プラスの残留利益)が加算されますが、同社の場合は低ROEが継続する前提であるため、将来の負の残留利益の現在価値合計(-790.34円)およびターミナルバリューの現在価値(-1,577.31円)がBPSを大きく押し下げています。市場から見た「資産の有効活用度」が低いと判断される場合、純資産価値がそのまま株価に反映されにくいというRIMの特性が顕著に表れています。

他の評価手法との比較

本モデルの結果を他の手法と比較すると、評価の視点が明確になります。

  • DCF法との比較:DCF法が将来のフリーキャッシュフロー(FCF)に焦点を当てるのに対し、RIMは会計上の純資産と利益の関係を重視します。同社のように多額の資産を保有しながら収益性が低い企業の場合、DCF法では設備投資や運転資本の変動に左右されますが、RIMでは「資本効率の低さ」がダイレクトに理論株価の押し下げ要因となります。
  • PER/PBR法との比較:現在株価2,528円に対する実績PBRは約0.53倍であり、解散価値と言われる1倍を大きく割り込んでいます。RIMによる理論株価(2,402円)もまた、この「PBR 1倍割れ」の状態が論理的に妥当であることを、低ROEの観点から裏付けています。

投資判断への示唆

現在の市場株価2,528円に対し、RIM理論株価は2,402円となり、乖離率は-5.0%です。この数値は、現在の市場価格が「将来もROEが資本コストを下回り続ける」という悲観的なシナリオを概ね織り込んでいることを示唆しています。

投資家にとっての検討ポイントは、以下の2点に集約されます。第一に、今後、公共投資の拡大や施工効率の向上、あるいは資本構成の見直し(自社株買いや増配)によってROEが資本コスト(9.0%)に近づく、あるいは上回るシナリオを描けるかどうかです。第二に、現在の株価が理論株価に近い水準にあることから、下方硬直性が期待できる反面、収益性の劇的な改善がない限り、BPS水準(4,769円)までの株価回復には時間を要する可能性がある点です。

以上の通り、RIMは同社の「資産効率」という課題を浮き彫りにしています。最終的な投資判断においては、これらの数値に加え、同社の地盤改良等の技術的優位性や受注環境の変化を総合的に考慮することが推奨されます。

⚠️ 注意: 残留利益モデルの結果は、EPS成長率・株主資本コスト・BPSの前提条件に大きく依存します。 また、会計基準の違い(日本基準/IFRS)によりBPSの定義が異なる場合があります。投資判断の際は他の手法と合わせてご検討ください。

リバースDCF分析(EPSベース・市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(2,528円)を正当化するために必要なインプライドEPS成長率を逆算しました。

インプライドEPS成長率
-1.5%
市場が織り込む成長率
AI推定EPS成長率
4.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-5.5%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価2,528円
インプライドEPS成長率-1.46%
AI推定EPS成長率4.00%
成長率ギャップ-5.46%(悲観的)
インプライド割引率50.00%
AI推定割引率9.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

太洋基礎工業株式会社(1758)の現在株価2,528円に基づき算出されたインプライドEPS成長率は-1.46%です。この数値は、市場が同社の将来の収益力に対して非常に「悲観的」な見方をしていることを示唆しています。通常、継続企業として運営される企業の成長率はプラス圏を想定することが一般的ですが、市場は今後、年率で約1.5%ずつ利益が減少していくというシナリオを現在の株価に織り込んでいることになります。また、インプライド割引率が50.00%という極めて高い水準にあることは、将来のキャッシュフローに対する不確実性や、流動性リスク、あるいは市場での注目度の低さが価格に強く反映されている可能性を物語っています。

インプライド成長率の実現可能性

AIによる推定EPS成長率が4.00%であるのに対し、市場が織り込んでいる成長率は-1.46%であり、そこには-5.46%という大きな成長率ギャップが存在します。太洋基礎工業が営む特殊土木事業(基礎工事や地盤改良等)は、インフラの老朽化対策や防災・減災需要といった底堅い市場環境に支えられています。同社が安定した受注を維持し、過去の業績推移に準じた収益性を確保できると仮定すれば、市場が想定する「マイナス成長」というシナリオは、保守的すぎる評価である可能性が高いと考えられます。AI推定の割引率9.00%と比較しても、市場の評価は過度にリスクを警戒している、あるいは本質的な価値が正当に反映されていない状況にあると分析されます。

投資判断への示唆

本リバースDCF分析の結果は、現在の株価が理論上の期待値よりも著しく低い位置に留まっていることを示しています。市場の期待値(-1.46%)とAIの推定(4.00%)の乖離は、投資家にとって「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」として機能する可能性があります。もし同社が市場の悲観的な予想を裏切り、現状維持、あるいは微増益を継続することができれば、株価の再評価(リレーティング)が起こる余地があるでしょう。一方で、50.00%という高いインプライド割引率は、小型株特有の流動性リスクや、特定の事業環境の変化に対する市場の強い警戒感の表れでもあります。投資検討にあたっては、この期待値の低さを割安と捉えるか、あるいは妥当なリスク評価と捉えるか、同社の受注動向や財務健全性を精査した上での判断が求められます。

感応度分析・シナリオ分析

感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

金利上昇は割引率の増加、景気後退はEPS成長率の低下として理論株価に影響します。

割引率 →
EPS成長率 ↓
7.0%8.0%9.0%10.0%11.0%
-1.0%2,7532,6572,5662,4792,397
1.5%2,9832,8772,7772,6822,592
4.0%3,2293,1143,0042,9002,801
6.5%3,4933,3663,2463,1323,023
9.0%3,7743,6363,5053,3803,261

※ 緑色: 現在株価(2,528円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
割引率: 7.5% / EPS成長率: 10.0%
3,819円
+51.1%
基本シナリオ
割引率: 9.0% / EPS成長率: 4.0%
3,004円
+18.8%
悲観シナリオ
割引率: 10.5% / EPS成長率: -2.0%
2,362円
-6.6%

シナリオ分析の総合評価

太洋基礎工業株式会社(1758)の理論株価は、基本シナリオにおいて3,004円と算出され、現在の市場価格(2,528円)を18.8%上回る結果となりました。シナリオ全体の範囲は2,362円(悲観)から3,819円(楽観)に広がっており、現在の株価は悲観シナリオに近い水準に位置しています。これは、現在の市場価格が「将来のEPS成長の停滞」または「資本コストの上昇」を一定程度織り込んでいる可能性を示唆しています。基本シナリオ以上の成長が実現した場合、株価には50%を超える上昇余地(楽観シナリオ:+51.1%)が存在する一方、ダウンサイドリスクは現時点の株価から-6.6%程度に留まっており、統計的には上方への非対称な期待値を持つ構成となっています。

金利変動の影響

本分析における割引率(資本コスト)の変化は、理論株価に対して顕著な影響を与えています。割引率を基本の9.0%から7.5%へ引き下げた楽観シナリオでは、EPS成長率の向上と相まって理論株価が大幅に上昇しています。逆に、割引率を10.5%へと引き上げた悲観シナリオでは、将来キャッシュフローの現在価値が割り引かれ、理論株価を2,362円まで押し下げる要因となります。同社のような建設・土木セクターは、マクロ経済の金利動向や市場全体の期待収益率の変化(ベータ値の変動等)によって割引率が変動しやすく、金利上昇局面においてはバリュエーションの低下圧力を受けやすい特性に注意が必要です。

景気変動の影響

EPS成長率の設定が理論株価のボラティリティを決定付ける最大の要因となっています。基本シナリオ(成長率4.0%)と楽観シナリオ(成長率10.0%)の間には、約800円の理論株価の乖離が生じています。同社の事業領域である特殊土木や基礎工事は、公共投資や民間設備投資の影響を強く受けるため、景気変動に伴う受注動向がEPS成長率に直結します。成長率が-2.0%まで落ち込むと想定した悲観シナリオにおいても、理論株価は現在株価をわずかに下回る水準(-6.6%)に留まっており、現在の株価水準がいかに保守的な成長期待に基づいているかが浮き彫りとなっています。

投資判断への示唆

以上のシナリオ分析を踏まえると、現在の株価2,528円は、基本シナリオ(3,004円)に対してディスカウントされた状態で取引されていると評価できます。投資家にとっての注目点は、同社が基本シナリオで想定した「4.0%の継続的なEPS成長」を達成できる蓋然性がどの程度あるか、という点に集約されます。現在の市場価格が悲観シナリオ(成長率-2.0%)に近い水準であることは、さらなる悪材料の織り込みが進んでいるとも解釈でき、安全域(Margin of Safety)を重視する投資家にとっては検討に値する局面と言えるかもしれません。一方で、成長率の鈍化や資本効率の悪化が継続するリスクも排除できず、最終的な投資判断は同社の受注残高の推移や利益率の動向を慎重に見極めた上で、投資家ご自身の判断で行っていただく必要があります。

限界利益分析(CVP分析)

高低点法による費用構造の推定

売上高が最大の年度と最小の年度を比較し、総費用(売上高−営業利益)の変化から変動費率と固定費を推定します。

推定変動費率
94.4%
売上高に対する変動費の割合
推定限界利益率
5.6%
1 − 変動費率
推定固定費
28
百万円
基準: 2023年 1月期 個別(売上高 14,710 百万円)と 2017年 1月期 個別(売上高 9,522 百万円)の比較

年度別 限界利益指標

年度 売上高 限界利益 限界利益率 損益分岐点 安全余裕率 経営レバレッジ
17年 1月期 個別 9,600 538 5.6% 501 94.8% 1.07倍
17年 1月期 個別 9,522 534 5.6% 501 94.7% 1.06倍
18年 1月期 個別 12,182 683 5.6% 501 95.9% 1.57倍
18年 1月期 個別 12,182 683 5.6% 501 95.9% 1.57倍
19年 1月期 個別 10,600 595 5.6% 501 95.3% 1.63倍
19年 1月期 個別 10,750 603 5.6% 501 95.3% 1.39倍
20年 1月期 個別 11,853 665 5.6% 501 95.8% 1.12倍
21年 1月期 個別 13,270 744 5.6% 501 96.2% 1.58倍
21年 1月期 個別 13,308 746 5.6% 501 96.2% 1.26倍
22年 1月期 個別 13,130 736 5.6% 501 96.2% 1.09倍
22年 1月期 個別 12,934 725 5.6% 501 96.1% 1.26倍
23年 1月期 個別 14,710 825 5.6% 501 96.6% 1.04倍
24年 1月期 個別 14,572 817 5.6% 501 96.6% 3.63倍
25年 1月期 個別 14,500 813 5.6% 501 96.5% 1.81倍
25年 1月期 個別 13,200 740 5.6% 501 96.2% 4.63倍
25年 1月期 個別 13,482 756 5.6% 501 96.3% 4.45倍
26年 1月期 個別 14,511 814 5.6% 501 96.5% 1.48倍
売上高と損益分岐点売上高の推移05十億1億2億17182022242526売上高(百万円)損益分岐点(百万円)
安全余裕率と経営レバレッジの推移0.020.040.060.080.0100.017182022242526安全余裕率(%)経営レバレッジ(倍)
直近年度の損益分岐点分析(2026年 1月期 個別)
売上高
14,511
百万円
損益分岐点
501
百万円
安全余裕率
96.5%
十分な安全余裕
経営レバレッジ
1.48倍
低い経営リスク

費用構造の評価

太洋基礎工業株式会社の費用構造は、推定変動費率が94.4%と極めて高く、一方で推定固定費は28百万円という非常に低い水準にあります。この数値から、同社は典型的な「変動費型ビジネスモデル」であると分析されます。建設基礎工事という事業特性上、材料費や外注費、直接労務費といった売上高に連動して発生するコストが大半を占めており、設備投資や固定的な管理部門への負担が相対的に軽いことが推測されます。限界利益率は5.6%と低位に留まっているため、売上の増加がそのまま大幅な利益率向上に直結しにくい構造ですが、売上が減少した際にもコストを削減しやすく、赤字転落のリスクを最小限に抑えられる柔軟な構造を持っています。

損益分岐点と安全余裕率

損益分岐点売上高は501百万円と推定され、近年の売上規模(13,000百万円〜14,000百万円台)と比較して極めて低い水準にあります。これに伴い、安全余裕率は概ね96%前後で推移しており、一般的な優良企業の目安とされる30%を大幅に上回っています。これは、理論上、売上高が90%以上減少したとしても損益分岐点を割り込まないことを示唆しており、収益の安定性は極めて高いと言えます。景気変動や公共投資の増減による売上の振れに対し、経営の継続性を揺るがすようなリスクは現在の財務構造上、非常に低いと評価できます。

経営レバレッジとリスク

経営レバレッジは、2023年1月期の1.04倍から、2025年1月期の推計値では最高4.63倍まで変動しています。固定費が極めて小さいため、本来レバレッジは効きにくい構造ですが、直近の予測値においてレバレッジが上昇している点は注目に値します。これは営業利益の水準が限界利益に対して小さくなっている(利益率が低下している)局面で、売上のわずかな変動が利益に与えるインパクトが大きくなっていることを示しています。低マージン構造ゆえに、資材価格の高騰や人件費の上昇といった「変動費率の悪化」が生じた場合、利益が大きく圧迫される感受性の高さが、同社における主要なリスク要因であると考えられます。

投資判断への示唆

限界利益分析の結果から導き出される同社の特徴は、「極めて高い事業継続の安全性」と「薄利多売型の収益構造」の両立です。損益分岐点が低いため、不況下でも赤字を出しにくいディフェンシブな特性を持つ一方、限界利益率が5.6%と低いため、利益の飛躍的な成長には売上高の圧倒的な積み上げか、施工効率化による変動費率の改善が不可欠です。投資家としては、同社が安定的な配当維持やキャッシュフローの創出を重視する安定株としての価値を見出すか、あるいは低固定費を活かした規模拡大による利益成長を期待するか、それぞれの投資スタンスに照らして判断することが肝要です。

⚠️ 注意: 本分析は高低点法による推定値です。実際の変動費・固定費は有価証券報告書の費用明細と異なる場合があります。 費用構造が大きく変化した期間を含む場合、推定精度が低下する可能性があります。投資判断の際は他の指標と合わせてご確認ください。

デュポン分析(ROE分解)

ROEの3要素分解(デュポン分析)

ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。

年度 純利益率(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍) = ROE(%)
17年 1月期 個別 3.93 × 1.071 × 1.48 = 0.06
18年 1月期 個別 2.66 × 1.272 × 1.52 = 0.05
19年 1月期 個別 2.82 × 1.167 × 1.38 = 0.05
20年 1月期 個別 4.05 × 1.156 × 1.51 = 0.07
21年 1月期 個別 2.53 × 1.317 × 1.41 = 0.05
22年 1月期 個別 4.00 × 1.244 × 1.38 = 0.07
23年 1月期 個別 4.17 × 1.209 × 1.46 = 0.07
24年 1月期 個別 1.45 × 1.252 × 1.42 = 0.03
25年 1月期 個別 2.41 × 1.257 × 1.38 = 0.04
26年 1月期 個別 3.19 × 1.166 × 1.43 = 0.05
デュポン分析:ROEの3要素推移0.0%1.0%2.0%3.0%4.0%5.0%171921232526純利益率(%)ROE(%)
総資産回転率と財務レバレッジの推移1.001.101.201.301.401.501.60171921232526総資産回転率(回)財務レバレッジ(倍)
直近年度のROE構成(2026年 1月期 個別)
純利益率
3.19%
収益性
×
総資産回転率
1.166回
効率性
×
財務レバレッジ
1.43倍
借入で資本効率を43%ブースト
=
ROE
0.05%
株主資本利益率
📊 ROE変動の主因: 直近の変動は主に「純利益率」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROEに直結しています。

ROEの質の評価

太洋基礎工業(1758)のROE(自己資本利益率)は、過去10年間(予測含む)において3%から7%の範囲で推移しています。デュポン分析の結果、ROE変動の主因は「純利益率」にあることが明確です。2023年1月期には4.17%の純利益率を背景にROE 7%(0.07)を記録しましたが、翌2024年1月期には純利益率が1.45%まで低下したことでROEも3%(0.03)まで落ち込んでいます。資産効率(総資産回転率)と財務レバレッジは比較的安定しているため、当社のROEの質は「本業の収益性(マージン)に強く依存する構造」であると評価できます。投資家にとっては、売上高の多謝よりも、利益率の改善がダイレクトに株主価値の向上につながる構造といえます。

財務レバレッジの影響

当社の財務レバレッジは1.38倍から1.52倍の間で推移しており、建設業界の中では非常に保守的かつ安定した財務構成を維持しています。一般的にレバレッジを上げることでROEを底上げすることが可能ですが、同社は過度な借入に頼らず、自己資本をベースとした経営を行っています。この低水準のレバレッジは、景気後退局面や金利上昇局面における財務的な耐性が高いことを示唆していますが、一方で資本効率の観点からは、ROEを押し上げるための積極的な財務戦略(自社株買いや適度なレバレッジ活用)の余地が残されているとも読み取れます。

トレンド分析

長期的視点で見ると、総資産回転率は1.1回〜1.3回程度で安定しており、保有資産を売上に変える効率性には大きな変化は見られません。注目すべきは、2024年1月期を底とした収益性の回復トレンドです。2024年1月期に1.45%まで低下した純利益率は、2025年1月期予測で2.41%、2026年1月期予測で3.19%と改善傾向にあります。これに伴いROEも3%から5%へと復調の兆しを見せています。過去には4%台の純利益率を記録していた時期(2020年、2022年、2023年)があることから、現在の回復基調がかつての高収益水準まで戻るかどうかが、今後の成長性の焦点となります。

投資判断への示唆

デュポン分析から導き出される同社の収益構造は、「低レバレッジ・安定効率・変動する収益性」という特徴を持っています。財務基盤が強固であるため倒産リスクなどは低いと考えられますが、ROEの水準自体は日本株全体の目標とされる8%には届いておらず、資本効率の向上が課題です。今後の投資判断においては、現在進んでいる純利益率の回復トレンドが継続し、かつての4%台を回復できるか、あるいは安定したキャッシュフローを背景に配当拡充や自己資本の適正化(レバレッジの活用)が進むかどうかが重要な視点となります。同社の事業環境における原価管理能力と受注採算性の推移を注視する必要があります。

⚠️ 注意: デュポン分析の数値はIRBankから取得した財務データに基づいています。 会計基準(日本基準/IFRS)の違いにより、株主資本の定義が異なる場合があります。

借金が利益に与える影響分析

有利子負債の概要

項目 説明
有利子負債 1億 銀行借入・社債等の利息付き負債
推定金利 1.50% 営業利益と経常利益の差から推定
推定支払利息 2百万 有利子負債 × 推定金利
利息 / 純利益 比率 0.4% 純利益に対する利息負担の大きさ
推定実効税率 24.8% 1 − (純利益 / 経常利益) から推定

「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション

有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。

年度 有利子負債 推定利息 経常利益
実績
経常利益
借金なし
純利益
実績
純利益
借金なし
ROE
実績
ROE
借金なし
レバレッジ
効果
2017/01 2億 3百万 6億 6億 4億 4億 6.25% 6.07% +0.17%pt
2018/01 1億 2百万 5億 5億 3億 3億 5.14% 5.06% +0.08%pt
2019/01 46百万 1百万 4億 4億 3億 3億 4.54% 4.52% +0.02%pt
2020/01 2億 4百万 6億 6億 5億 5億 7.07% 6.87% +0.20%pt
2021/01 1億 2百万 5億 5億 3億 3億 4.69% 4.62% +0.08%pt
2022/01 56百万 1百万 8億 8億 5億 5億 6.85% 6.81% +0.04%pt
2023/01 4億 6百万 9億 9億 6億 6億 7.38% 7.10% +0.28%pt
2024/01 2億 4百万 3億 3億 2億 2億 2.59% 2.54% +0.05%pt
2025/01 1億 2百万 5億 5億 4億 4億 4.19% 4.15% +0.04%pt
2026/01 1億 2百万 6億 6億 5億 5億 5.31% 5.24% +0.06%pt
純利益推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション2億3億4億5億6億7億2017/012019/012021/012023/012025/012026/01実績純利益借金なし純利益ROE推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション2.0%3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%2017/012019/012021/012023/012025/012026/01実績ROE借金なしROE
レバレッジ効果の評価(直近年度)
借金の影響は限定的
実績ROE
5.31%
借金なしROE
5.24%
レバレッジ効果
+0.06%pt

有利子負債の水準が小さい、または事業利益率と借入金利がほぼ均衡しています。

借金の利益インパクト

太洋基礎工業(1758)の直近(2026年1月期想定)における有利子負債は1億円であり、これに対する推定支払利息は年間2百万円にとどまります。経常利益実績(6億円)および純利益(5億円)に対して、利息費用が純利益に与える比率はわずか0.4%です。過去10年間の推移を見ても、有利子負債が最大となった2023年1月期(4億円)ですら、利息/純利益比率は1%未満と極めて低い水準で推移しています。このことから、同社の損益構造において借入金利息が利益を圧迫するリスクは、現時点では無視できるほど小さいと言えます。

レバレッジ効果の評価

財務レバレッジによるROE(自己資本利益率)の押し上げ効果は、直近で+0.06%ptと限定的です。シミュレーション上の「借金なしROE」5.24%に対し、実績ROEは5.31%となっており、借入によってわずかに資本効率が向上している状態です。過去10年間、一貫してレバレッジ効果はプラス(+0.02%pt〜+0.28%pt)で推移しており、事業利益率が借入コストを上回る効率的な運用は維持されています。しかし、有利子負債の絶対額が自己資本に対して非常に小さいため、借入をテコにした大幅な利益率向上を狙う財務戦略ではなく、自己資本を中心とした堅実な経営スタイルが鮮明に表れています。

財務戦略の考察

同社の推定金利は1.50%前後と、近年の低金利環境下では建設・土木セクターの中堅企業として標準的な水準です。特筆すべきは、有利子負債を1億〜4億円程度の極めて低いレンジでコントロールしている点です。土木工事(特に特殊土木)は重機投資などの設備資金や、大型案件の運転資金を必要としますが、同社はこれらを借入に頼らず内部留保で賄える高い自己資本比率を維持していると推察されます。同業他社と比較しても、金利上昇局面における耐性は極めて高く、財務健全性は非常に強固です。一方で、資本効率(ROE)は2%〜7%台で推移しており、潤沢な自己資本をいかに収益性の高い事業へ投下し、効率を高めていくかが中長期的な課題となります。

投資家へのポイント

投資判断においては、以下のポイントが重要となります。

  • 金利上昇への耐性: 借入金が1億円と僅少であるため、将来的な市場金利の上昇が利益を直撃する懸念はほとんどありません。
  • ダウンサイドリスクの低さ: 実績ROEが「借金なしROE」を常に上回っており、逆レバレッジ(借金がリターンを損なう状態)が発生しにくい安定した収益基盤を持っています。
  • 資本効率の伸びしろ: 財務の安全性は極めて高い一方、レバレッジ効果を限定的に抑えているため、ROEが劇的に向上するシナリオは描きにくい側面があります。

総じて、同社は「財務の安全性」を最優先する投資家にとって魅力的な財務体質を持っています。今後は、この強固な財務基盤を背景とした積極的な受注拡大や、株主還元への姿勢、あるいは資本効率改善に向けた新たな投資戦略が打ち出されるかどうかが、株価評価の鍵となるでしょう。

⚠️ 注意事項: 本分析は営業利益と経常利益の差額から支払利息を推定しており、実際の支払利息とは異なる場合があります。 営業外収支には受取利息・配当金・為替差損益等も含まれるため、あくまで参考値としてご活用ください。 また、借金を全額返済した場合の実際の影響は資金調達構造の変化を伴うため、単純なシミュレーションとは異なります。

ROIC分析(投下資本利益率)

ROIC(投下資本利益率)推移

ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。

年度 NOPAT(百万円) 投下資本(百万円) ROIC(%) WACC(%) スプレッド(%pt)
17年 1月期 個別 316 6,241 5.06 6.79 -1.73
18年 1月期 個別 270 6,429 4.21 6.88 -2.67
19年 1月期 個別 260 6,632 3.93 6.96 -3.03
20年 1月期 個別 447 7,026 6.37 6.79 -0.42
21年 1月期 個別 292 7,309 4.00 6.87 -2.87
22年 1月期 個別 472 7,722 6.12 6.95 -0.84
23年 1月期 個別 520 8,702 5.98 6.72 -0.75
24年 1月期 個別 152 8,431 1.80 6.82 -5.02
25年 1月期 個別 302 8,459 3.57 6.92 -3.35
26年 1月期 個別 414 8,858 4.68 6.90 -2.23
ROIC vs WACC推移1.0%2.0%3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%171921232526ROIC(%)WACC(%)
直近年度のROIC評価(2026年 1月期 個別)
ROIC
4.68%
投下資本利益率
WACC
6.90%
加重平均資本コスト
=
スプレッド
-2.23%pt
価値創造力が弱い

ROIC水準の評価

太洋基礎工業(1758)の過去10年間のROIC(投下資本利益率)を概観すると、1.80%から6.37%の範囲で推移しており、資本効率の面では課題が残る水準にあります。特に2024年1月期にはROICが1.80%まで急落しており、収益性の低下が鮮明となりました。日本企業の収益性目安とされる8%を一度も上回っておらず、建設業界の平均的な水準と比較しても、投下した資本に対して十分な利益を創出できているとは言い難い状況です。ただし、2025年1月期(3.57%予測)、2026年1月期(4.68%予測)と回復基調にある点は、反転の兆しとして注目されます。

ROIC-WACCスプレッド分析

企業の価値創造力を示す「ROIC-WACCスプレッド」に注目すると、分析期間を通じて一貫してマイナス圏で推移しています。WACC(加重平均資本コスト)が概ね6.7%〜6.9%台で安定しているのに対し、ROICがそれを下回り続けているため、数値上は「経済的価値を毀損している」状態が継続しています。

ポジティブな側面としては、2020年1月期(-0.42%pt)や2023年1月期(-0.75%pt)のように、スプレッドがゼロ近傍まで改善した時期があることです。これはNOPAT(税引後営業利益)が5億円台まで伸長したことによるものです。一方で、ネガティブな側面は、投下資本が2017年の6,241百万円から2026年予測の8,858百万円へと約42%増加しているにもかかわらず、利益成長がそれに伴っていない点です。2024年1月期のスプレッド大幅悪化(-5.02%pt)は、資本コストに見合う利益を確保できなかったことを示しており、効率的な資産運用の徹底が急務といえます。

投資家へのポイント

本分析を踏まえ、投資家が注目すべきポイントは以下の3点に集約されます。

  1. 収益性の回復スピード: 2024年1月期を底に利益の回復が予測されていますが、WACCを上回るROIC(約7%以上)を達成できる具体的な事業戦略があるか、四半期決算等でNOPATの進捗を確認する必要があります。
  2. 資本効率の最適化: 投下資本が年々増加傾向にあります。事業規模の拡大に見合った利益成長が伴うのか、あるいは自己資本の蓄積による資本コストの増大を抑制する株主還元策などが検討されるのかが焦点となります。
  3. 外部環境とコスト管理: 建設業界特有の資材価格高騰や人件費上昇を適切に価格転嫁し、いかにしてNOPATマージンを改善できるかが、今後のスプレッド解消の鍵を握ります。

以上の通り、現在は価値創造に向けた過渡期にあり、今後のROICが資本コスト(WACC)を上回る軌道に乗るかどうかが、中長期的な株主価値向上の判断材料となるでしょう。

⚠️ 注意: WACCは簡易推定値です(株主資本コスト7%想定、負債コストは推定支払利息から算出)。 実際のWACCはCAPMや市場データに基づくより精緻な計算が必要です。

ROIC逆ツリー分析

ROIC逆ツリー分解

ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。

年度 売上高(百万円) NOPATマージン(%) × 投下資本回転率(回) = ROIC(%)
17年 1月期 個別 9,600 3.29 × 1.538 = 5.06
18年 1月期 個別 12,182 2.22 × 1.895 = 4.21
19年 1月期 個別 10,600 2.46 × 1.598 = 3.93
20年 1月期 個別 11,853 3.77 × 1.687 = 6.37
21年 1月期 個別 13,270 2.20 × 1.816 = 4.00
22年 1月期 個別 13,130 3.60 × 1.700 = 6.12
23年 1月期 個別 14,710 3.54 × 1.690 = 5.98
24年 1月期 個別 14,572 1.04 × 1.728 = 1.80
25年 1月期 個別 14,500 2.08 × 1.714 = 3.57
26年 1月期 個別 14,511 2.85 × 1.638 = 4.68
ROIC逆ツリー: NOPATマージンと投下資本回転率1.001.502.002.503.003.504.00171921232526NOPATマージン(%)投下資本回転率(回)
ROIC逆ツリー分解(2026年 1月期 個別)
NOPATマージン
2.85%
NOPAT 414百万円 ÷ 売上 14,511百万円
×
投下資本回転率
1.638回
売上 14,511百万円 ÷ IC 8,858百万円
=
ROIC
4.68%
📊 ROIC変動の主因: 直近の変動は主に「NOPATマージン」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROICに直結しています。

ROIC変動要因の分解

太洋基礎工業(1758)の過去10年間のROIC(投下資本利益率)推移を分析すると、その変動は主にNOPATマージン(収益性)の動きに強く相関していることが分かります。

2017年1月期から2023年1月期にかけて、ROICは概ね4%〜6%台で推移してきましたが、2024年1月期には1.80%と急減しました。この要因を分解すると、投下資本回転率は1.728回と過去の平均水準を維持しているのに対し、NOPATマージンが前期の3.54%から1.04%へと大幅に低下したことが直接的な要因です。

投下資本回転率については、2018年1月期の1.895回をピークに、概ね1.6回〜1.8回のレンジで安定して推移しています。これは、同社が売上規模に応じた資産効率を一定に保つ経営基盤を有していることを示唆しており、ROICのボラティリティ(変動幅)は、ひとえに売上高に対する最終的な利益率の確保に依存する構造となっています。

改善ドライバーの特定

今後のROIC改善に向けた最大のドライバーは、「NOPATマージンの回復と安定化」に集約されます。

2025年1月期(予測)はROIC 3.57%、2026年1月期(予測)は4.68%と回復基調が予想されています。これを実現するためには、以下の2点が重要となります。

  • 原価管理の徹底: 2024年1月期のような利益率の低下を防ぐため、資材価格の高騰や外注費の変動を適切に価格転嫁し、売上高対比での利益を確保する管理体制。
  • 高付加価値案件の受注: 投下資本回転率は既に高水準(1.6〜1.7回)にあるため、資産を増やすことなく利益率を高められる特殊土木技術等の強みを活かした案件選別。

一方で、投下資本回転率は既に安定しているため、さらなる効率化によるROICの押し上げ余地は限定的と考えられます。収益性の改善がROICを再び5%以上の水準へ戻すための不可欠な要素です。

投資家へのポイント

太洋基礎工業の分析から、投資家が注目すべき点は以下の通りです。

  1. 利益率のV字回復の実現性: 2024年1月期の落ち込みを一時的な要因(特定の不採算案件やコスト増)と捉えるか、それとも構造的な利益率の低下と捉えるかが判断の分かれ目となります。会社側予想のNOPATマージン2.85%(2026年1月期)への到達精度が焦点です。
  2. 資本効率の安定性: 投下資本回転率が長期にわたり1.5回以上を維持している点は、事業モデルの効率性の高さを物語っています。資産を抱え込みすぎない経営スタイルは、収益性が改善した際のROICの跳ね上がり(レバレッジ効果)を期待させます。
  3. 外部環境への耐性: 同社のROICはNOPATマージンに依存するため、建設資材の価格動向や公共投資の増減がダイレクトに指標を左右します。これらの外部要因をいかに内部努力で吸収し、中長期的にROIC 5%前後の水準を安定維持できるかが、企業価値評価の鍵となるでしょう。

以上の分析結果をふまえ、同社が掲げる収益改善の道筋が着実に実行されているか、今後の四半期決算等でマージンの推移を注視することが重要です。

EVA(経済的付加価値)分析

EVA(経済的付加価値)推移

EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。

年度 NOPAT(百万円) 資本コスト(百万円) EVA(百万円) ROIC(%) WACC(%)
17年 1月期 個別 316 424 -108 5.06 6.79
18年 1月期 個別 270 442 -172 4.21 6.88
19年 1月期 個別 260 462 -201 3.93 6.96
20年 1月期 個別 447 477 -30 6.37 6.79
21年 1月期 個別 292 502 -210 4.00 6.87
22年 1月期 個別 472 537 -65 6.12 6.95
23年 1月期 個別 520 585 -65 5.98 6.72
24年 1月期 個別 152 575 -423 1.80 6.82
25年 1月期 個別 302 585 -283 3.57 6.92
26年 1月期 個別 414 611 -197 4.68 6.90
EVA(経済的付加価値)推移-600-400-20002004006001719212325260EVA(百万円)NOPAT(百万円)
EVA評価サマリー
直近EVA
-197
百万円(2026年 1月期 個別)
累積EVA
-1,754
百万円(10年間合計)
価値創造評価
価値創造力が弱い

EVAの推移と評価

太洋基礎工業(1758)の過去10期(2026年1月期の予想を含む)におけるEVA(経済的付加価値)は、一貫してマイナス圏で推移しています。累計EVAは-1,754百万円に達しており、会計上の利益(NOPAT)は毎期152百万円から520百万円の黒字を計上しているものの、資本コスト(株主や債権者が期待する収益)を補うまでには至っていない状況です。 特に、2024年1月期はROIC(投下資本利益率)が1.80%まで落ち込み、EVAは-423百万円と直近10年で最大の赤字幅を記録しました。WACC(加重平均資本コスト)が6.7%〜7.0%前後で安定しているのに対し、ROICがそれを一度も上回っていない点は、投下資本に対して期待されるリターンを提供できていないことを示唆しています。

価値創造力の持続性

分析期間全体を通じて、ROICがWACCを下回る「ネガティブ・スプレッド」の状態が継続しており、価値創造力は依然として課題を抱えています。2020年1月期(EVA -30百万円)や2023年1月期(EVA -65百万円)など、ROICが6%前後に達し、資本コストに肉薄した局面も見られますが、プラスに転換するまでの勢いは維持できませんでした。 2025年1月期以降はROICが3.57%から4.68%へと回復軌道を描く予想となっていますが、依然としてWACCとの乖離(2.22ポイントの差)が残る見込みです。現在のトレンドを見る限り、既存のビジネスモデルの延長線上では、持続的な経済的付加価値の創出には高いハードルがあると考えられます。

投資家へのポイント

投資家が本分析を読み解く上での主な注目点は以下の通りです。

  • 「会計上の利益」と「経済的価値」の乖離: 同社は黒字経営を続けていますが、株主資本コストを含む資本コスト(年間約4.2億〜6.1億円)を考慮すると、経済的には価値を毀損している状態にあります。配当や内部留保の源泉となる利益が、資本コストを上回る効率性から生み出されているかを見極める必要があります。
  • 資本効率改善への期待: 2026年1月期に向けたROICの改善傾向(4.68%への上昇)が、一時的なものか、あるいは構造的な収益性向上によるものかを精査することが重要です。特に建設・基礎工事という業態特有の原価高騰リスクに対し、どのようにマージンを確保していくかが鍵となります。
  • WACC(約6.9%)のハードル: 同社の資本コストは概ね7%弱で推移しています。投資判断においては、今後の事業戦略において「ROIC > WACC」を達成する具体的な道筋(利益率の向上や資産回転率の改善)が示されるかどうかが、中長期的な株主価値向上の分岐点となります。
以上のEVA分析結果を、同社の成長戦略や市場環境の分析と照らし合わせ、総合的に判断材料としてご活用ください。

⚠️ 注意: EVAは簡易推定値です。WACCは株主資本コスト7%想定に基づく簡易計算であり、 正確なEVA算出にはβ値やリスクフリーレートの精緻な設定が必要です。

営業レバレッジ分析

営業レバレッジ度(DOL)推移

DOL = 営業利益変化率 ÷ 売上高変化率。売上が1%変化したとき営業利益が何%変化するかを示し、固定費比率の高さ(経営リスク)を表します。

平均DOL
8.81倍
有効年度の平均
リスク評価
高リスク
DOL≤2: 低 / 2-5: 中 / 5+: 高
年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 営業利益率(%) 売上変化率(%) 営業利益変化率(%) DOL(倍)
17年 1月期 個別 9,600 503 5.24 - - -
17年 1月期 個別 9,522 506 5.31 -0.81 0.60 -0.73
18年 1月期 個別 12,182 434 3.56 27.94 -14.23 -0.51
18年 1月期 個別 12,182 434 3.56 0.00 0.00 -
19年 1月期 個別 10,600 364 3.43 -12.99 -16.13 1.24
19年 1月期 個別 10,750 434 4.04 1.42 19.23 13.59
20年 1月期 個別 11,853 591 4.99 10.26 36.18 3.53
21年 1月期 個別 13,270 470 3.54 11.95 -20.47 -1.71
21年 1月期 個別 13,308 593 4.46 0.29 26.17 -
22年 1月期 個別 13,130 675 5.14 -1.34 13.83 -10.34
22年 1月期 個別 12,934 576 4.45 -1.49 -14.67 9.83
23年 1月期 個別 14,710 797 5.42 13.73 38.37 2.79
24年 1月期 個別 14,572 225 1.54 -0.94 -71.77 -
25年 1月期 個別 14,500 450 3.10 -0.49 100.00 -
25年 1月期 個別 13,200 160 1.21 -8.97 -64.44 7.19
25年 1月期 個別 13,482 170 1.26 2.14 6.25 2.93
26年 1月期 個別 14,511 551 3.80 7.63 224.12 29.36
営業レバレッジ度(DOL)と営業利益率の推移-20.0-10.00.010.020.030.0171820222425260DOL(倍)営業利益率(%)

費用構造の特徴

太洋基礎工業の過去数年間にわたる平均DOL(営業レバレッジ度)は8.81倍と極めて高く、同社が典型的な「固定費型ビジネス」の構造を持っていることを示しています。土木・地盤改良工事を主軸とする業種特性上、重機等の設備維持費、熟練工の労務費、そして施工管理に係る人件費といった、売上高の増減に関わらず発生する固定費の比率が高いと推察されます。特に、直近の2026年1月期予測におけるDOLが29.36倍に達している点は注目に値し、損益分岐点付近での操縦を余儀なくされている、あるいは利益の振れ幅が極大化しやすい収益構造にあることが読み取れます。

景気変動への感応度

DOLの推移を見ると、売上高の僅かな変動が営業利益に対して増幅された影響を与えています。例えば、2024年1月期には売上高が前年比0.94%の微減に留まった一方で、営業利益は71.77%の大幅減益となりました。逆に、2026年1月期の計画では7.63%の増収に対し、営業利益を224.12%増加させる見込みを立てており、増収時の利益爆発力が非常に大きい反面、減収時の下押し圧力も極めて強力です。このように、公共投資や民間設備投資の動向、受注環境といった外部要因による業績のボラティリティ(変動率)は、一般的な企業と比較して非常に高くなる傾向にあります。

投資家へのポイント

太洋基礎工業への投資を検討する際、この高い営業レバレッジは「諸刃の剣」であることを認識する必要があります。営業利益率が1.2%〜5.4%程度と低水準で推移している現状では、わずかな売上の未達が赤字転落のリスクを孕む一方で、受注が計画を上回れば利益が加速度的に積み上がるポテンシャルを秘めています。特に2026年1月期に向けたV字回復シナリオが、固定費の削減によるものか、あるいは高付加価値案件の受注によるものかを見極めることが重要です。同社の収益構造がもたらす高いリスクとリターンのバランスをどう評価するか、慎重な分析が求められます。

⚠️ 注意: 営業レバレッジ度は前年比の変化率から算出しており、売上や利益が急変する年度では極端な値になることがあります。 複数年の平均値での評価を推奨します。

持続的成長率分析(SGR)

持続的成長率(SGR)推移

SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。

年度 ROE(%) 配当性向(%) 内部留保率(%) SGR(%) 実際成長率(%)
17年 1月期 個別 6.25 推定30% 70.0 4.37 -
18年 1月期 個別 5.14 推定30% 70.0 3.60 26.90
19年 1月期 個別 4.54 推定30% 70.0 3.18 -12.99
20年 1月期 個別 7.07 推定30% 70.0 4.95 11.82
21年 1月期 個別 4.69 推定30% 70.0 3.28 11.95
22年 1月期 個別 6.85 推定30% 70.0 4.79 -1.06
23年 1月期 個別 7.38 11.2 88.8 6.55 12.03
24年 1月期 個別 2.59 32.4 67.6 1.75 -0.94
25年 1月期 個別 4.19 43.3 56.7 2.38 -0.49
26年 1月期 個別 5.31 25.8 74.2 3.94 0.08
持続的成長率(SGR)vs 実際の売上成長率-20.0%-10.0%0.0%10.0%20.0%30.0%1719212325260SGR(%)実際成長率(%)
ROEと配当性向の推移0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%50.0%171921232526ROE(%)配当性向(%)
持続的成長率の評価(2026年 1月期 個別)
ROE
5.31%
×
内部留保率
74.2%
=
SGR
3.94%
📊 成長持続性の評価: 実際の成長率がSGRを下回っており、資金余力がある(成長投資の余地)

SGR水準の評価

太洋基礎工業(1758)の持続的成長率(SGR)は、過去10年間において概ね1.75%から6.55%の範囲で推移しています。直近の2024年1月期にはROEの低下(2.59%)に伴いSGRは1.75%まで落ち込みましたが、2026年1月期の予測ではROEが5.31%まで回復し、SGRも3.94%へと改善する見通しです。

SGRの変動要因を分析すると、内部留保率は56.7%から88.8%と高水準を維持しているものの、ROE(自己資本利益率)の振れ幅がSGRに直接的な影響を与えていることが分かります。特に2024年1月期から2025年1月期にかけては、配当性向を32.4%〜43.3%へと引き上げたことで内部留保率が低下し、SGRを抑制する要因となりました。総じて、同社のSGRは「高い内部留保率に支えられているものの、資本効率(ROE)の動向に左右されやすい構造」にあると言えます。

成長の持続可能性

SGRと実際の売上成長率を比較すると、同社の成長持続可能性には余裕が見て取れます。2024年1月期以降、実際の成長率は-0.94%(2024年)、-0.49%(2025年予測)、0.08%(2026年予測)と低空飛行が続いており、これらはいずれも当該年度のSGRを下回っています。

理論上、実際の成長率がSGRを下回っている状態は、外部資金(増資や追加借入)に頼ることなく、内部資金のみで現在の事業規模を維持・拡大できることを示唆しています。過去には2018年や2020年のように、SGRを大幅に上回る急激な成長を遂げた時期もありましたが、足元では「資金余力がある状態」にあり、財務的な安全性は保たれていると評価できます。一方で、この余剰資金をいかに有効な投資へと振り向け、実際の成長率をSGRの水準まで引き上げられるかが今後の課題となります。

投資家へのポイント

SGR分析に基づき、以下の3点を投資判断の材料として提示します。

  • 資本効率の改善: 2026年1月期に向けてROEは5.31%まで回復する予想ですが、依然として一般的な目標とされる8%を下回る水準です。SGR(3.94%)をさらに高めるためには、内部留保の積み増し以上に、収益性の向上(ROEの改善)が求められます。
  • 資金の使途: 現在、実際の成長率がSGRを下回っており、社内には成長投資や株主還元に活用できる「資金の余力」が存在します。この余力を、競争力強化のための設備投資に向けるのか、あるいは配当性向のさらなる引き上げといった株主還元に充てるのか、経営陣の資本配分(キャピタル・アロケーション)に注目が必要です。
  • 安定性と成長性のバランス: 同社は無理な外部調達を行わずに持続可能な範囲内で経営を行っており、財務的な安定感は高いと言えます。投資家としては、現在の「安定した低成長」を許容するのか、あるいは成長投資による「SGRの上昇」を期待するのか、自身の投資スタンスに照らし合わせた判断が求められます。
⚠️ 注意: 配当データが取得できない年度は内部留保率70%(配当性向30%)を仮定しています。 実際の配当政策と異なる場合があります。

インタレストカバレッジレシオ推移

インタレストカバレッジレシオ推移

ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。

直近ICR
∞(利息負担なし)
>10: 極めて安全 / 3-10: 安全 / 1-3: 要注意 / <1: 危険
安全性評価
極めて安全
年度 営業利益(百万円) 推定支払利息(百万円) ICR(倍) 有利子負債(百万円) 有利子負債比率(%) 推定借入金利(%)
17年 1月期 個別 503 - 205 2.3 -
18年 1月期 個別 434 - 123 1.3 -
19年 1月期 個別 364 - 46 0.5 -
20年 1月期 個別 591 - 236 2.3 -
21年 1月期 個別 470 - 149 1.5 -
22年 1月期 個別 675 - 56 0.5 -
23年 1月期 個別 797 - 378 3.1 -
24年 1月期 個別 225 - 244 2.1 -
25年 1月期 個別 450 - 111 1.0 -
26年 1月期 個別 551 - 136 1.1 -

利払い安全性の評価

太洋基礎工業(1758)のインタレストカバレッジレシオ(ICR)は、2017年1月期から2026年1月期の予想値に至るまで、一貫して「∞(無限大)」を維持しています。これは、営業利益に対して推定支払利息が極めて僅少、あるいは実質的にゼロであることを示しており、財務上の安全性は「極めて安全」な水準にあります。具体的には、営業利益が225百万円(2024年1月期)から797百万円(2023年1月期)の間で推移する中、金利負担が営業利益を圧迫する懸念は全く見受けられません。2024年1月期には一時的に営業利益が225百万円まで減少しましたが、それでも利払い能力への影響は皆無であり、時系列で見ても鉄壁の安全性を維持しています。

有利子負債の状況

有利子負債比率は、過去10年間を通じて概ね0.5%から3.1%の極めて低いレンジで推移しています。2023年1月期には有利子負債が378百万円(比率3.1%)まで増加しましたが、翌2024年1月期には244百万円(比率2.1%)、2025年1月期の予測では111百万円(比率1.0%)へと減少する見込みです。このように、有利子負債を最小限に抑えた「実質無借金経営」に近い財務基盤を構築しており、市場の金利上昇局面においても、同社の収益性やキャッシュフローが金利負担によって損なわれるリスクは極めて低いと評価できます。

投資家へのポイント

投資家が注目すべきは、同社の「強固な財務体質」と「資本効率」のバランスです。ICRが無限大であることは、倒産リスクが極めて低いことを意味する一方で、レバレッジを効かせた積極的な投資を抑制している側面も示唆します。2025年1月期以降、営業利益はV字回復(450百万円、551百万円)が予想されていますが、この成長を支える自己資本の厚さと、余剰資金をどのように成長投資や株主還元へ配分していくかが、今後の投資判断の重要な鍵となります。極めて高い安全性を前提としつつ、景気変動の影響を受けやすい建設セクターにおいて、この財務の余力が不況時の耐性や新たな事業機会への布石としてどう機能するかを注視する必要があります。

⚠️ 注意: 支払利息は「営業利益−経常利益」から推定しています。 営業外収益が大きい企業では過小評価になる可能性があります。正確な支払利息は有価証券報告書の注記をご確認ください。

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データソース

この記事はEDINETから取得した決算報告書をAIが分析して生成しています。

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