3436株式会社SUMCO||

SUMCO(3436) 理論株価分析:AI需要の光と在庫調整の影 カチノメ

決算発表日: 2026-03-262025年12月期 通期
総合業績スコア
52/100
中立

セクション別スコア

業績成長性20収益性25財務健全性75株主還元50成長戦略80理論株価評価60
業績成長性20
収益性25
財務健全性75
株主還元50
成長戦略80
理論株価評価60

※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。

決算履歴(業績推移)

売上高推移(百万円)2,000億2,500億3,000億3,500億4,000億4,500億2016年 2017年 2018年 2020年 2021年 2023年 2024年 '26/12売上高利益推移(営業利益・経常利益・当期純利益)-500億0百万500億1,000億1,500億2016年 2017年 2018年 2020年 2021年 2023年 2024年 '26/120営業利益経常利益純利益利益率推移(%)-10.0%0.0%10.0%20.0%30.0%2016年 2017年 2018年 2020年 2021年 2023年 2024年 '26/120営業利益率経常利益率純利益率
年度 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 包括利益
2016年 12月期 連結 208,500 12,500 9,000 6,000 -
2016年 12月期 連結 211,361 14,046 9,919 6,588 4,122
2017年 12月期 連結 258,400 40,700 35,200 24,600 -
2017年 12月期 連結 260,627 42,085 36,709 27,016 39,255
2018年 12月期 連結 326,400 85,200 82,700 57,100 -
2018年 12月期 連結 326,400 85,200 82,700 57,600 -
2018年 12月期 連結 325,059 85,165 83,068 58,580 63,976
2019年 12月期 連結 297,500 49,400 47,700 32,100 -
2019年 12月期 連結 299,460 50,636 48,310 33,112 38,701
2020年 12月期 連結 291,200 37,200 35,500 25,200 -
2020年 12月期 連結 291,333 37,897 35,650 25,505 27,965
2021年 12月期 連結 332,900 50,500 47,600 35,900 -
2021年 12月期 連結 335,674 51,543 51,107 41,120 59,105
2022年 12月期 連結 439,100 108,400 110,400 67,700 -
2022年 12月期 連結 441,083 109,683 111,339 70,205 91,680
2023年 12月期 連結 421,800 68,300 68,900 61,400 -
2023年 12月期 連結 425,941 73,080 72,627 63,884 82,387
2024年 12月期 連結 393,600 34,900 33,000 20,200 -
2024年 12月期 連結 396,619 36,924 37,457 19,877 35,540
2025年 12月期 連結 404,400 -4,200 -10,900 -16,900 -
2025年 12月期 連結 409,670 1,342 -3,886 -11,751 -4,237
★2026年12月期(予想)

※単位: 百万円

利益率推移

営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

年度 売上高 (百万円) 営業利益率 (%) 経常利益率 (%) 純利益率 (%)
2016年 12月期 連結 208,500 6.00% 4.32% 2.88%
2016年 12月期 連結 211,361 6.65% 4.69% 3.12%
2017年 12月期 連結 258,400 15.75% 13.62% 9.52%
2017年 12月期 連結 260,627 16.15% 14.08% 10.37%
2018年 12月期 連結 326,400 26.10% 25.34% 17.49%
2018年 12月期 連結 326,400 26.10% 25.34% 17.65%
2018年 12月期 連結 325,059 26.20% 25.55% 18.02%
2019年 12月期 連結 297,500 16.61% 16.03% 10.79%
2019年 12月期 連結 299,460 16.91% 16.13% 11.06%
2020年 12月期 連結 291,200 12.77% 12.19% 8.65%
2020年 12月期 連結 291,333 13.01% 12.24% 8.75%
2021年 12月期 連結 332,900 15.17% 14.30% 10.78%
2021年 12月期 連結 335,674 15.36% 15.23% 12.25%
2022年 12月期 連結 439,100 24.69% 25.14% 15.42%
2022年 12月期 連結 441,083 24.87% 25.24% 15.92%
2023年 12月期 連結 421,800 16.19% 16.33% 14.56%
2023年 12月期 連結 425,941 17.16% 17.05% 15.00%
2024年 12月期 連結 393,600 8.87% 8.38% 5.13%
2024年 12月期 連結 396,619 9.31% 9.44% 5.01%
2025年 12月期 連結 404,400 -1.04% -2.70% -4.18%
2025年 12月期 連結 409,670 0.33% -0.95% -2.87%
★2026年12月期(予想) 0 - - -

※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

決算サマリー

2025年12月期の連結業績は、売上高409,670百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益1,342百万円(同96.4%減)、経常損失3,886百万円(前年は37,457百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失11,751百万円(前年は19,877百万円の利益)となりました。増収ながらも、減価償却費の増加や製品構成の変化により大幅な減益・赤字転落となっています。

注目ポイント

市場の二極化:先端品 vs 普及品

AI用データセンター向けの先端300mmシリコンウェーハは強い需要が持続していますが、民生・産業・自動車向けの非先端ロジック分野では顧客の在庫調整が長引いています。この「二極化」が業績の重石となっています。

巨額の設備投資と将来への布石

当連結会計年度において約800億円の設備投資を実施しました。主に300mm最先端ウェーハの増強を目的としており、足元の利益を圧迫する一方で、次世代の半導体需要を取り込むための戦略的投資を継続しています。

業界動向

半導体シリコンウェーハ業界は、世界的な在庫調整の出口を模索する局面です。競合他社も同様の環境下にありますが、SUMCOは特に最先端品(300mm)に強みを持ち、生成AI市場の拡大が直接的な追い風となるポジションにあります。一方で、150mm以下の小口径市場は縮小傾向にあり、業界全体で生産体制の再編が進んでいます。

投資判断材料

長期投資家にとっての最大の焦点は「サイクルボトムからの回復時期」です。巨額の減価償却費が先行して計上されているため、売上高が回復した際の営業レバレッジ(売上増による利益の急拡大)は非常に大きいと予想されます。自己資本比率51.3%を維持しており、一時的な赤字を耐えうる財務基盤は確保されています。

セグメント別業績

当社は「高純度シリコン事業」の単一セグメントです。300mmウェーハの生産実績は金額ベースで前年同期比109.7%と伸長していますが、200mm以下を含む全体の販売価格やコスト構造の影響で利益面では厳しい状況となりました。

財務健全性

  • 自己資本比率:51.3%(前年同期は50.5%)
  • 営業キャッシュ・フロー:100,040百万円の収入
  • 投資キャッシュ・フロー:111,447百万円の支出

巨額投資を継続しつつも、営業活動によるキャッシュ創出力は維持されており、ネットでの現金残高は75,296百万円を確保しています。

配当・株主還元

当期の年間配当金は20円(中間10円、期末10円)となりました。前年の21円からは減配となったものの、最終赤字の中でも株主への安定還元を優先する姿勢を示しています。配当性向については、純損失計上のため算出不可となっています。

通期業績予想

次期については、AI向け先端品の需要拡大が続く一方で、普及品の在庫調整解消にはまだ時間を要すると見ています。設備投資による減価償却費の負担が継続するため、利益の本格回復は在庫調整の完了時期に依存する状況です。

中長期成長戦略

「技術で世界一の会社」を目指し、300mmの最先端工場(伊万里等)の戦力化に注力しています。また、AIを駆使した生産性向上(歩留まり改善)や、需要が低迷する200mm以下の生産体制再編成(宮崎工場のウェーハ生産終了など)による構造改革を推進しています。

リスク要因

  • 地政学リスク:米中摩擦等の影響によるサプライチェーンの分断
  • 原材料価格:多結晶シリコン等の調達コスト変動
  • 為替変動:輸出比率が高いため、円高による収益悪化リスク

ESG・サステナビリティ

温室効果ガス削減(Scope1+2)において2030年までに2023年比42%減を目標に掲げ、SBT認定を取得しています。また、女性管理職比率の向上や健康経営など、人的資本への投資も具体的に進めています。

経営陣コメント

橋本会長兼CEOは、足元の厳しい環境を認めつつも、300mm先端品需要の取り込みに自信を見せています。「事業構造改革を完遂し、需要環境の変化に応じて迅速かつ的確に経営資源を最適化できる体質を構築する」としています。

バリュエーション

実績ベースのPERは赤字のため算出不可。PBR(株価純資産倍率)はBPS(1株当たり純資産)1,653.87円に対し、株価がそれを下回る水準で推移しており、資産価値の面からは割安感が出ています。利益回復後の収益力を考慮した理論株価の評価が重要となります。

過去決算との比較

直近4四半期では、売上高は下げ止まりの兆しが見えるものの、利益面では四半期ごとの減価償却費負担が重くのしかかっています。過去25期、26期と比較すると、現在は設備投資の「産みの苦しみ」の時期にあると言えます。

市場の評判

SUMCO's stock has mixed investor opinions; some see potential, others are cautious. Analysts favor a long-term buy with high target price. Institutional short selling has pressured the stock price.

詳細リサーチレポート

株式会社SUMCO (3436) リサーチレポート

最新の業績動向と今後の見通し

  • 2025年12月期連結業績: 売上高は4,096.7億円(前年比3.3%増)と増収。しかし、営業利益は13.42億円(前年比96.4%減)と大幅減益、経常損失38.86億円、当期純損失117.51億円と最終赤字に転落。
  • 業績悪化の要因: AI向けデータセンター向け需要は伸びたものの、民生・産業・自動車向け需要が低迷し、市場の二極化が継続。先端300mm生産能力増強のための設備投資に伴う減価償却費負担が増加したことも影響。
  • 2026年第1四半期の見通し: 売上高1,000億円、営業損失60億円と予想。
  • 今後の見通し: 2026年末までに在庫の正常化を見込み、先端ウェーハ需要の緩やかな回復を予測。300mmウェーハの出荷量は横ばいから若干の成長を示唆。事業構造改革を進め、先端品需要の取り込みと200mm以下の効率化に注力する方針。
  • アナリストの見解:
- アナリスト判断のコンセンサスは「買い」。 - 平均目標株価は1,743円。 - ただし、マクロ経済の不透明感から、強気派と弱気派で価格帯に開きがある点には注意が必要。

業界内での競合ポジションと市場シェア

  • 主要な競合他社: 信越化学工業、Siltronic AG(ドイツ)、GlobalWafers Co., Ltd.(台湾)。
  • 市場シェア: SUMCOは約30%の世界シェアを持つ。シリコンウェハー市場は寡占市場であり、数社の大企業がシェアの大部分を握っている。
  • 競合との比較:
- 信越化学工業は業界1位で、製造歩留まりが高く、営業利益率も高い。 - SUMCOは信越化学工業に次ぐ2位だが、製造歩留まりで劣り、利益率がやや低い。

成長戦略と重点投資分野

  • 中期経営計画: 情報が見つかりませんでした。
  • 重点投資分野:
- 次世代300mmウェーハへの集中投資。 - AI向け先端品への供給体制強化。 - サプライチェーンの安定化のための設備投資。
  • M&Aの動向: 内部成長を重視しており、M&Aの件数は多くない。過去には、経営資源の集約や組織運営の効率化を目的として、連結子会社を吸収合併した事例がある。

リスク要因と課題

  • 事業上のリスク:
- 民生・産業・自動車向け需要の低迷。 - 設備投資に伴う減価償却費の増加。 - 在庫調整の長期化。 - 中国メーカーの台頭による競争激化。 - 地政学リスク。
  • 外部環境の変化:
- 為替変動(円安は業績にプラス、円高はマイナス)。 - 物価変動。 - 気候変動。 - 国際情勢。

アナリストの評価と目標株価

  • アナリスト判断: アナリストのコンセンサス評価は「買い」。
  • 証券会社のレーティング:
- 強気:米系大手証券がレーティングを「強気」に据え置き、目標株価を1,900円に引き上げ。日系大手証券もレーティングを「強気」に据え置き、目標株価を2,100円に引き上げ。 - 弱気:欧州系大手証券がレーティングを「弱気」に据え置き、目標株価を1,050円に引き上げ。
  • 目標株価のコンセンサス:
- 1年後の平均ターゲット価格は、1,743円。 - ただし、証券会社によって評価が分かれており、目標株価のレンジは1,050円~2,100円と幅がある。

最近の重要ニュースやイベント

  • 直近3ヶ月の主要ニュース:
- 2026年2月:2025年12月期決算を発表。最終赤字に転落。 - 2026年2月:台湾子会社FORMOSA SUMCO TECHNOLOGYの株式を一部売却。
  • 株価に影響を与えたイベント:
- 2025年12月期決算発表: 業績悪化により株価が下落。 - 台湾子会社株式の一部売却: 上場子会社問題の解消を期待する見方から、株価が上昇。

ESG・サステナビリティへの取り組み

  • 環境への取り組み:
- 地球温暖化防止、水資源の有効活用、廃棄物のリサイクル化推進など、環境に配慮した生産活動。 - 環境マネジメントシステムを構築し、全ての工場でISO14001の認証を取得。 - サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減。 - 廃棄物発生量の削減とリサイクルの推進。 - 生物多様性に配慮した活動。
  • ガバナンス体制:
- サステナビリティ推進役員を選任し、経営直轄の専任組織としてサステナビリティ推進部を設置。 - 会長兼CEOを議長とするサステナビリティ推進会議を設置。 - 社外取締役を交えた活発な議論。
  • ESGスコア: S&P GlobalによるESGスコアは、CSAアンケートへの回答、公開情報、モデリングアプローチに基づいている。

配当政策と株主還元

  • 配当方針:
- 株主に対する適正な利益還元を経営の重要課題として認識。 - 各事業年度における利益水準、次期以降の見通し、設備投資に係る資金需要及び内部留保の状況等を総合的に勘案して、株主への利益配当を実施していく方針。 - 利益水準、設備投資に係る資金需要、フリー・キャッシュ・フロー、EBITDA、配当原資の状況等を総合的に勘案して、柔軟かつ積極的な株主還元を実施する方針。
  • 配当金:
- 2025年12月期の期末配当は1株当たり10円。 - 年間配当は1株当たり20円。
  • 株主優待: 現在、株主優待は実施していない。過去には株主優待を実施していたが、2021年1月末の株主への実施分を最後に廃止。
本レポートは、信頼できる情報源に基づいて作成されていますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

情報源

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年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)

株価推移(高値・安値)01,0002,0003,0004,000'11/1'14/12'17/12'20/12'23/12最新(株探)高値安値PBR推移(高値・安値・期末PBR)0.0倍1.0倍2.0倍3.0倍4.0倍'11/1'14/12'17/12'20/12'23/12最新(株探)PBR高値PBR安値期末PBRPER推移(高値・安値)0倍100倍200倍300倍400倍500倍600倍'11/1'14/12'17/12'20/12'23/12最新(株探)PER高値PER安値時価総額推移(高値・安値)0億2,000億4,000億6,000億8,000億1.0兆'11/1'14/12'17/12'20/12'23/12最新(株探)高値安値ROE推移(PBR÷PERで算出・高値同士/安値同士)0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%25.0%'11/1'14/12'17/12'20/12'23/12最新(株探)ROE高値ROE安値
年度 株価高値 株価安値 PER高値 PER安値 PBR高値 PBR安値 時価総額高値 時価総額安値 期末PBR
2011年1月期 2,105 1,098 赤字 赤字 2.76 1.44 5425億6741万 2830億1140万 1.64倍
2012年1月期 1,685 520 赤字 赤字 3.97 1.23 4343億1168万 1340億3090万 1.54倍
2013年1月期 1,422 480 513.36 173.29 2.18 0.74 3665億2297万 1237億2083万 1.42倍
2014年12月期 1,883 675 29.79 10.68 2.62 0.94 4853億4652万 1739億8242万 2.44倍
2015年12月期 2,458 894 35.08 12.76 3.41 1.24 6335億5377万 2621億9727万 1.28倍
2016年12月期 1,618 590 72.04 26.27 2.26 0.82 4745億3600万 1730億3846万 2.11倍
2017年12月期 3,160 1,436 34.3 15.59 3.84 1.75 9267億8230万 4211億5803万 3.51倍
2018年12月期 3,345 1,128 16.75 5.65 3.44 1.16 9810億4012万 3308億2608万 1.26倍
2019年12月期 1,950 1,116 17.27 9.88 1.89 1.08 5719億680万 3273億666万 1.77倍
2020年12月期 2,484 1,041 28.4 11.9 2.3 0.96 7232億9419万 3053億1024万 2.09倍
2021年12月期 2,954 2,031 21.74 14.95 2.17 1.49 8571億7736万 5893億4570万 1.73倍
2022年12月期 2,468 1,638 12.31 8.17 1.62 1.08 8642億3224万 5735億8687万 1.15倍
2023年12月期 2,270 1,727 12.43 9.46 1.39 1.06 7948億9756万 6047億5246万 1.29倍
2024年12月期 2,684 1,113 47.22 19.58 1.59 0.66 9398億7007万 3897億4492万 0.7倍
2025年12月期 1,790 746 赤字 赤字 1.08 0.45 6268億1349万 2612億3065万 0.87倍
最新(株探) 2113.0 - -倍 - 1.28倍 - 7,399億円 - 1.28倍

ROE算出表(PBR÷PER×100)

PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。

年度 PBR高値 PER高値 ROE高値(%) PBR安値 PER安値 ROE安値(%)
2011年1月期 2.76 赤字 - 1.44 赤字 -
2012年1月期 3.97 赤字 - 1.23 赤字 -
2013年1月期 2.18 513.36 0.4% 0.74 173.29 0.4%
2014年12月期 2.62 29.79 8.8% 0.94 10.68 8.8%
2015年12月期 3.41 35.08 9.7% 1.24 12.76 9.7%
2016年12月期 2.26 72.04 3.1% 0.82 26.27 3.1%
2017年12月期 3.84 34.3 11.2% 1.75 15.59 11.2%
2018年12月期 3.44 16.75 20.5% 1.16 5.65 20.5%
2019年12月期 1.89 17.27 10.9% 1.08 9.88 10.9%
2020年12月期 2.3 28.4 8.1% 0.96 11.9 8.1%
2021年12月期 2.17 21.74 10.0% 1.49 14.95 10.0%
2022年12月期 1.62 12.31 13.2% 1.08 8.17 13.2%
2023年12月期 1.39 12.43 11.2% 1.06 9.46 11.2%
2024年12月期 1.59 47.22 3.4% 0.66 19.58 3.4%
2025年12月期 1.08 赤字 - 0.45 赤字 -
最新(株探) 1.28倍 -倍 - - - -

バリュエーション推移の概要

株式会社SUMCO(3436)の過去15年間にわたるバリュエーションデータを確認すると、半導体シリコンウェーハ市場の需給サイクルを色濃く反映した激しい変動が特徴的です。PER(株価収益率)は利益の急減期や赤字転落期に大きく跳ね上がる一方、業績拡大期には10倍前後まで低下する傾向があります。また、PBR(株価純資産倍率)についても、2012年の3.97倍から2025年予測の0.45倍まで広範なレンジで推移しており、資本効率と市場の成長期待が時期によって大きく乖離してきたことを示しています。

PBR分析

PBRは、同社の資産価値に対する市場評価の変遷を如実に物語っています。2011年から2018年にかけては、多くの期間で1.0倍を大きく上回り、特に2012年(高値3.97倍)や2017年(高値3.84倍)には、将来の成長期待が先行する形で高い評価を得ていました。しかし、近年はそのレンジが低下傾向にあり、2022年以降の期末PBRは1.15倍から1.29倍程度で推移しています。特筆すべきは2024年から2025年にかけての動きで、PBRの下限が0.66倍から0.45倍と、解散価値である1.0倍を大幅に下回る水準が観測されており、市場がシリコンサイクルの調整局面を強く警戒していることが示唆されます。最新のPBR 1.28倍は、歴史的な低点圏からは脱しているものの、過去のピーク時と比較すれば依然として抑制された水準にあります。

PER分析

PERの推移は、同社の純利益のボラティリティの高さを示しています。2011年、2012年、そして直近の2025年12月期予測のように、赤字(または赤字転落懸念)によりPERが算出不能となる時期が定期的に訪れます。黒字化直後の2013年には、利益水準が低いためにPERが一時513.36倍という極端な数値を示しました。一方で、業績が安定していた2021年から2023年にかけては、PER高値が12倍から21倍、安値が8倍から14倍の範囲に収まっており、この水準が同社の巡航速度における評価目安と考えられます。2024年のPER高値47.22倍への上昇は、利益の減少に対して株価が下げ渋った結果であり、先行きの回復を織り込もうとする市場の姿勢が反映されています。

時価総額の推移

時価総額は、2013年1月期の安値1,237億円を大底として、長期的な拡大トレンドを描いてきました。2017年、2018年、2021年、2024年には、それぞれ時価総額が8,000億円から9,000億円台後半に達しており、1兆円の大台が強力なレジスタンスラインとして機能している様子が見て取れます。特に2018年には過去最高の9,810億円を記録しました。一方で、足元の2025年予測値における時価総額安値は2,612億円まで売り込まれる局面が想定されており、半導体関連銘柄特有の急激なダウンサイドリスクを内包しながら、企業規模を拡大させてきた歴史が確認できます。

現在のバリュエーション評価

最新のデータ(株探参照)に基づくPBR 1.28倍、時価総額約7,399億円という水準を歴史的推移と照らし合わせると、現在の評価は「中期的な中央値近辺」に位置していると分析されます。PBR 0.45倍〜0.7倍といった2024-2025年の歴史的安値水準からは大きくリバウンドしているものの、過去の業績拡大期に見られたPBR 2.0倍超の水準には届いていません。2025年12月期が赤字予測となっていることから、現在の株価は「当面の収益悪化」を既に織り込みつつ、その先のサイクル回復を待機するフェーズにあると考えられます。投資家の皆様におかれましては、今後のPERの再算出に向けた利益回復の確度と、PBR 1.0倍ラインを支持線とした資産価値の維持能力を注視することが、重要な判断材料となるでしょう。

キャッシュフロー推移

キャッシュフロー推移(営業CF・投資CF・フリーCF)-3,000億-2,000億-1,000億0百万1,000億2,000億'16/12'18/12'20/12'22/12'24/12'25/120営業CF投資CFフリーCF設備投資 vs フリーCF(百万円)-4,000億-3,000億-2,000億-1,000億0百万1,000億'16/12'18/12'20/12'22/12'24/12'25/120設備投資#1フリーCF現金等残高推移0百万500億1,000億1,500億2,000億2,500億3,000億'16/12'18/12'20/12'22/12'24/12'25/12現金等
年度 四半期 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF 設備投資#1 現金等
2016年12月期 通期 27322 -18003 -9120 9319 - 45565
2017年12月期 通期 51808 -15750 -7615 36058 - 74640
2018年12月期 通期 93602 -52244 -35424 41358 - 78900
2019年12月期 通期 77664 -61184 -24825 16480 - 70020
2020年12月期 通期 84188 -55193 -16236 28995 -53333 81864
2021年12月期 通期 104708 -67337 99099 37371 -69536 224673
2022年12月期 通期 179462 -126351 -23153 53111 -130851 259305
2023年12月期 通期 96342 -247677 43456 -151335 -315415 156353
2024年12月期 通期 69627 -247876 112294 -178249 -214927 95671
2025年12月期 通期 100040 -111447 -8729 -11407 -79957 75296

※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)

キャッシュフロー推移の概要

株式会社SUMCOの過去10年間のキャッシュフロー(CF)推移を概観すると、半導体シリコンウェーハ市場の需要拡大に合わせた大規模な設備投資サイクルの中にいることが鮮明に見て取れます。2016年から2020年にかけては、本業で稼いだ資金の範囲内で投資と返済を行う「優良安定型」の傾向が強かったものの、2021年以降は成長投資を加速させています。直近の2023年12月期および2024年12月期(見込含む)のCFパターンは、営業CFがプラス、投資CFが大幅なマイナス、財務CFがプラスとなっており、借入や増資等の外部調達を行いながら将来の成長に向けた巨額投資を継続する「積極投資型」と判定されます。

営業キャッシュフロー分析

営業CFは、2016年12月期の約273億円から2022年12月期には約1,794億円まで急拡大しており、本業における強力なキャッシュ創出力が証明されています。しかし、半導体市況の調整局面に入った2023年12月期は約963億円、2024年12月期は約696億円と減少傾向にあります。これはシリコンウェーハの顧客在庫調整や価格動向の影響を強く受けているためと推察されます。一方、2025年12月期には約1,000億円の大台回復が見込まれており、底堅い需要回復を背景にしたキャッシュ創出力の再加速が期待される局面です。

投資キャッシュフロー・設備投資分析

投資CFおよび設備投資額の推移は、同社の攻めの姿勢を最も象徴しています。2021年12月期以前は1,000億円未満に抑えられていた投資活動が、2022年12月期の約1,263億円、2023年12月期の約2,476億円、そして2024年12月期の約2,478億円と、異次元の規模に拡大しています。特に最先端の300mmウェーハの増産を目的としたグリーンフィールド投資(新工場建設)がこの巨額投資の主因です。投資額が営業CFを大きく上回る水準が続いており、将来のシェア維持・拡大に向けた極めて積極的な経営判断が行われていることが分かります。

フリーキャッシュフロー分析

フリーCF(FCF)は、大規模投資の影響で大きく変動しています。2016年から2022年までは一貫してプラスを維持し、最大で2022年の約531億円を記録するなど、自律的な資金循環が可能でした。しかし、巨額の設備投資が集中した2023年12月期は約1,513億円のマイナス、2024年12月期は約1,782億円のマイナスと、大幅な赤字となっています。これは株主還元や債務返済に回すための「余剰資金」を削ってでも、将来の収益基盤構築にリソースを集中させている状態と言えます。2025年12月期には約114億円のマイナスまで縮小する見通しであり、投資のピークアウトとともにFCFが正常化に向かうかが今後の注目点です。

財務戦略・現金残高の評価

財務CFの動きからは、積極的な資金調達戦略が読み取れます。2021年12月期に約990億円、2024年12月期に約1,122億円のプラスとなっており、大規模投資に必要な資金を外部から確保しています。特に2021年の公募増資等による手元流動性の確保(現金等残高は約2,246億円へ急増)が、その後の巨額投資を支えるバッファーとなりました。現金残高は2022年12月期の約2,593億円をピークに、2025年12月期には約752億円まで減少する見込みです。手元流動性は厚めに確保されてきたものの、投資継続に伴いキャッシュ残高が減少傾向にあるため、今後の資金繰りとレバレッジ管理のバランスが重要となります。

キャッシュフロー総合評価

SUMCOのキャッシュフローデータは、典型的な「大規模装置産業の成長サイクル」を示しています。本業の稼ぎ(営業CF)は市況変動の影響を受けつつも高水準を維持していますが、それ以上に将来の市場支配力を維持するための先行投資(設備投資)が突出しているのが現状です。財務健全性は、過去の蓄積と外部調達によって維持されていますが、FCFの大幅なマイナスが続いている点は注視すべき事項です。今後の投資家視点での焦点は、現在進めている巨額投資が、2025年以降にどれだけ効率的に営業CFへと変換され、FCFを再びプラスに転換させられるかという「投資回収のフェーズ」への移行時期にあると言えるでしょう。

DCF法による理論株価分析

DCF分析の前提条件

パラメータ 説明
WACC(割引率) 7.5% 加重平均資本コスト
FCF成長率 8.0% 予測期間中の年平均成長率
EV/FCF倍率 31.89倍 ターミナルバリュー算出用(現在の市場評価)
予測年数 5年 将来FCFの予測期間
発行済株式数 350,165,641株 理論株価算出の分母
現金及び現金同等物 753億 非事業資産として加算
有利子負債 3,500億 企業価値から控除

将来フリーキャッシュフロー予測

予測年 予測FCF 現在価値(PV)
1年目 344億 320億
2年目 371億 321億
3年目 401億 323億
4年目 433億 324億
5年目 467億 326億
ターミナルバリュー 1.5兆 1.0兆
フリーキャッシュフロー推移(実績 + DCF予測)-2,000億-1,500億-1,000億-500億0百万500億1,000億2123252028予2030予2031予0FCF実績FCF予測

理論株価の算出プロセス

① 予測FCF現在価値の合計 1,613億
② ターミナルバリューの現在価値 1.0兆
③ 事業価値(① + ②) 1.2兆
④ 加算: 現金及び現金同等物 +753億
⑤ 控除: 有利子負債 -3,500億
⑥ 株主価値(③ + ④ − ⑤) 9,250億
DCF理論株価
2,642円
現在の株価
2,113円
乖離率(割安)
+25.0%

感度分析(理論株価: 円)

WACC(横軸)とFCF成長率(縦軸)を変化させた場合の理論株価の変動を示します。

WACC →
FCF成長率 ↓
5.5%6.5%7.5%8.5%9.5%
3.0%2,2092,0791,9561,8391,729
5.5%2,5672,4212,2832,1522,028
8.0%2,9612,7972,6422,4952,356
10.5%3,3913,2083,0342,8702,715
13.0%3,8613,6563,4633,2803,106

※ 緑色: 現在株価(2,113円)より高い(割安方向) / 赤色: 低い(割高方向) / 青背景: 現在の前提条件

DCF分析の総合評価

今回のDCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)分析の結果、株式会社SUMCO(3436)の理論株価は2,642円と算出されました。現在の市場価格2,113円と比較すると、理論株価は現在株価を約25.0%上回っており、バリュエーションの観点からは「割安」な水準にあると評価できます。この乖離は、市場が半導体市況の回復遅延や大規模な設備投資に伴うキャッシュアウトを警戒している一方で、中長期的なシリコンウェーハ需要の拡大と、投資フェーズ終了後のキャッシュ創出能力をDCFモデルが肯定的に捉えていることを示唆しています。

フリーキャッシュフローの質

過去のフリーキャッシュフロー(FCF)を振り返ると、2016年から2022年までは概ねプラスで推移していましたが、2023年(-1,513億円)、2024年(-1,782億円)、2025年(-114億円)と大幅なマイナスが続く見通しです。これは半導体需要の高度化に対応した最先端300mmウェーハ等の増産投資が重なっているためであり、キャッシュフローの質としては「先行投資型」といえます。予測1年目以降に343億円から467億円へとV字回復する前提となっており、この回復シナリオの実現性が理論株価の妥当性を左右する最大のポイントとなります。

前提条件の妥当性

本分析ではWACC(加重平均資本コスト)を7.5%に設定しています。これは日本の製造業の平均的な水準に比して、半導体関連特有の業績ボラティリティ(ベータ値)を考慮した妥当な設定と考えられます。一方で、予測期間5年間のFCF成長率8.0%および出口マルチプル(EV/FCF倍率)31.89倍という設定は、シリコンウェーハ市場における同社の高いシェアと技術的優位性を反映した、やや強気(楽観的)なシナリオに基づいています。市況のサイクルが想定以上に長期化した場合、これらの成長率は下振れするリスクを孕んでいます。

ターミナルバリューの影響

本分析における事業価値1.2兆円のうち、ターミナルバリュー(TV)の現在価値が1.0兆円を占めており、全体の約83%が予測期間以降の価値に依存しています。これは、直近の数年間が投資先行による低FCF期間であるため、DCF法の構造上、遠い将来のキャッシュフローへの感応度が極めて高くなっていることを意味します。理論株価2,642円の根拠の大部分は「5年後以降も安定的に成長を続ける」という仮定に立脚している点に注意が必要です。

感度分析から読み取れること

本モデルは、WACCと成長率の変化に対して非常に敏感な構造を持っています。例えば、TV依存度が高いため、WACCが1%上昇(7.5%→8.5%)するか、あるいは成長率や出口マルチプルが想定を下回った場合、理論株価は現在の株価水準である2,100円付近まで容易に収束する可能性があります。投資家は、単一の理論株価だけでなく、半導体市況の波や金利動向がWACC等のパラメータに与える影響を注視し、価格変動の許容範囲を見極める必要があります。

投資判断への示唆

DCF分析の結果は+25.0%の割安感を示しており、長期的な視点では投資魅力がある水準といえます。しかし、DCF法はあくまで一定の仮定(前提条件)に基づく計算結果であり、将来の株価上昇を保証するものではありません。特に半導体業界はシリコンサイクルや地政学リスクの影響を受けやすく、予測FCFが計画通りに推移しないリスクが常に存在します。本分析の結果を一つの指標としつつも、最新の決算データや市況ニュース、技術動向などを複合的に考慮した上で、最終的な投資判断を下されることを推奨いたします。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

直近は最先端300mmウエハーへの巨額投資によりFCFが大幅なマイナスですが、AI向け需要の回復と投資一巡後のキャッシュフロー改善を見込み、成長率を8%と推定しました。WACCは半導体関連セクターの高ベータ値と、近年の金利上昇傾向および負債コストを勘案して7.5%に設定しています。有利子負債は、近年のフリーキャッシュフローの赤字を補填するための資金調達状況から約3,500億円と推計し、永久成長率は国内の長期的な経済成長予測に基づき1%としています。

⚠️ 免責事項: 本DCF分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 DCF法は前提条件(WACC、成長率等)に大きく依存するため、感度分析を参考に幅を持って評価してください。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

リバースDCF分析(市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(2,113円)を正当化するために必要なインプライドFCF成長率を逆算しました。

インプライドFCF成長率
4.2%
市場が織り込む成長率
AI推定FCF成長率
8.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-3.8%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価2,113円
インプライドFCF成長率4.23%
AI推定FCF成長率8.00%
成長率ギャップ-3.77%(悲観的)
インプライドWACC30.00%
AI推定WACC7.50%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

現在の株価2,113円に基づき算出されたインプライドFCF(フリーキャッシュフロー)成長率は4.23%となりました。これに対し、AIが推定する成長率は8.00%であり、市場は将来のキャッシュフロー創出力に対して、AIの予測よりも約3.77%低い評価を下していることになります。市場のセンチメントは「悲観的」であると言えます。 特に注目すべきは、インプライドWACCが30.00%という極めて高い水準にある点です。AIが想定する適正な資本コスト(7.50%)と比較して、市場はシリコンウェーハ市場のボラティリティや、在庫調整局面の長期化といったリスクを過大に織り込んでいる可能性が示唆されています。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込む4.23%という成長率は、半導体業界の長期的な成長トレンドと比較すると、保守的な水準と考えられます。株式会社SUMCOは、300mmシリコンウェーハの製造において世界トップクラスのシェアを誇り、特に先端ロジックやメモリ向けの需要は生成AIの普及により中長期的な拡大が見込まれています。 足元では半導体メーカーの在庫調整の影響を受けていますが、次世代製品(Epitaxial Wafer等)へのシフトや、長期的契約(LTA)による価格の安定化が、4.23%というハードルを越えるための下支えとなるでしょう。ただし、電力コストの上昇や地政学的リスクによるサプライチェーンの不確実性が、この「低めの期待値」を正当化する要因となっていないか、慎重な見極めが必要です。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果は、現在の株価が「AIが推定する将来価値に対して、市場の過度な警戒感によって割安な水準に置かれている」可能性を示しています。インプライド成長率(4.23%)とAI推定成長率(8.00%)のギャップが埋まる、あるいはインプライドWACCが正常化に向かう局面では、株価の修正が期待されるシナリオが描けます。 一方で、市場が30.00%という高いWACCを要求している背景には、サイクル特有の業績悪化リスクや、巨額の設備投資に伴うキャッシュフローの圧迫に対する懸念があることも否定できません。本分析結果を基に、市場の悲観を「過剰」と捉えて好機と見るか、あるいは「妥当なリスク評価」と見るか、投資家の皆様の個別のリスク許容度に基づいた判断が求められます。

拡張感応度分析・シナリオ分析

感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

金利上昇はWACCの増加、景気後退はFCF成長率の低下として理論株価に影響します。

WACC →
FCF成長率 ↓
5.5%6.5%7.5%8.5%9.5%
3.0%2,2092,0791,9561,8391,729
5.5%2,5672,4212,2832,1522,028
8.0%2,9612,7972,6422,4952,356
10.5%3,3913,2083,0342,8702,715
13.0%3,8613,6563,4633,2803,106

※ 緑色: 現在株価(2,113円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
WACC: 6.0% / FCF成長率: 14.0%
永久成長率: 1.5%
3,952円
+87.0%
基本シナリオ
WACC: 7.5% / FCF成長率: 8.0%
永久成長率: 1.0%
2,642円
+25.0%
悲観シナリオ
WACC: 9.0% / FCF成長率: 0.0%
永久成長率: 0.5%
1,452円
-31.3%

シナリオ分析の総合評価

株式会社SUMCO(3436)の現在株価2,113円は、算出された基本シナリオの理論株価2,642円を下回っており、現時点では市場がファンダメンタルズに対してやや過小評価、あるいは将来のリスクを慎重に織り込んでいる状況を示唆しています。理論株価の範囲は1,452円(悲観)から3,952円(楽観)と非常に幅広く、シリコンウェーハ市場のボラティリティの高さと、資本コストおよび成長率の変化に対する感応度の高さが浮き彫りとなっています。現在株価は悲観シナリオの下値よりも高く、基本シナリオへ向けた約25.0%の上値余地を残した位置にあります。

金利変動の影響

WACC(加重平均資本コスト)の変化は、理論株価に極めて大きな影響を与えます。基本シナリオのWACC 7.5%に対し、金利上昇やリスクプレミアムの拡大を想定した悲観シナリオ(WACC 9.0%)では、理論株価は1,452円まで急落します。これは、同社のような設備投資負担の大きい製造業にとって、資本コストの上昇が将来のフリーキャッシュフロー(FCF)の現在価値を著しく毀損させることを示しています。金利上昇局面においては、他業種と比較しても株価の下押し圧力を受けやすい構造にあるため、マクロ経済的な金利動向には十分な注視が必要です。

景気変動の影響

FCF成長率の想定(0.0%〜14.0%)は、半導体サイクルの波を反映しています。基本シナリオ(8.0%成長)から悲観シナリオ(0.0%成長)への転落は、理論株価を約45%押し下げる要因となります。世界的な半導体需要の停滞や、最先端プロセス向けウェーハの供給過剰が発生した場合、FCF成長率の鈍化を通じて株価の下値リスクが顕在化します。一方で、AI向け需要の急拡大などによる楽観シナリオ(14.0%成長)が実現した場合には、+87.0%という極めて高いリターンが期待できる設計となっており、景気敏感株特有のハイリスク・ハイリターンな側面が確認できます。

投資判断への示唆

本分析結果によれば、現在株価2,113円は基本シナリオの2,642円に対して約20%のディスカウント状態で取引されており、一定の「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」が確保されていると解釈することも可能です。しかし、悲観シナリオの理論株価1,452円までは約31%の下落余地があるため、ダウンサイドリスクが完全に払拭されているわけではありません。投資家としては、半導体市況の回復タイミングと、金利環境の安定性を天秤にかける必要があります。基本シナリオの前提となる成長率8.0%が妥当であると判断する場合、現在の株価水準は長期的なエントリーポイントとして検討に値する可能性がありますが、最終的な判断は自身の目標リターンとリスク許容度に基づいて行うべきです。

モンテカルロシミュレーション

シミュレーション結果サマリー

WACC・FCF成長率・永久成長率をそれぞれ正規分布でランダムに変動させ、100,000回のDCF計算を実行した結果です。DCF計算の非線形性(特にゴードン成長モデルの割引構造)により、理論株価の分布は対数正規分布に近い形状となるため、ヒストグラムは対数スケールで表示しています。

平均理論株価
1,168円
中央値
1,125円
90%レンジ(5-95%点)
619 〜 1,864円
割安確率
1.9%
理論株価 > 現在株価
モンテカルロシミュレーション:理論株価の確率分布(100,000回・対数スケール)0.0%1.2%2.4%3.6%4.8%6.0%519円625円753円908円1,094円1,318円1,588円1,913円シミュレーション分布現在株価

※ ヒストグラムは対数スケールで表示し、外れ値の影響を抑えるため分布の中央96%(2〜98パーセンタイル)を表示しています。対数スケールにより、DCF計算の非線形性に起因する右裾の歪みが補正され、分布の形状をより正確に把握できます。平均・中央値・パーセンタイルなどの統計値は元のスケールで有効サンプル全体から計算しています。

理論株価のパーセンタイル分布

シミュレーション結果を小さい順に並べたとき、各パーセンタイルにおける理論株価を示します。

パーセンタイル 5% 10% 25% 50% 75% 90% 95%
理論株価619円715円896円1,125円1,392円1,670円1,864円

※ 緑色: 現在株価(2,113円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 中央値(50%タイル)

リスク指標

理論株価の標準偏差 385円
5% VaR(下位5%タイル) 619円
変動係数(CV = σ / 平均) 33.0%
有効シミュレーション数 100,000 / 100,000

確率分布の解釈

今回のモンテカルロシミュレーションの結果、株式会社SUMCOの理論株価は平均値1,168円、中央値1,125円となりました。平均値が中央値を上回るこの分布形状は、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)計算の特性である非線形性を反映した対数正規分布に近い形を示しています。これは、成長率などのパラメータが上振れした際に理論株価が指数関数的に上昇する可能性を含んでいることを意味します。理論株価の90%信頼区間(5パーセンタイルから95パーセンタイル)は619円から1,864円という広いレンジに分布しており、前提条件のわずかな変動が評価額に大きな影響を与える構造であることが分かります。

リスク評価

リスク指標としての5% VaR(バリュー・アット・リスク)は619円と算出されました。これは、事業環境が悪化する悲観的なシナリオにおいても、95%の確率で理論上の企業価値はこの水準を維持し得ることを示唆しています。一方で、変動係数(CV)は約32.9%(385円 ÷ 1,168円)に達しており、パラメータの不確実性が理論株価に与える影響は比較的高い水準にあります。特に半導体材料という市況変動の激しい業態ゆえ、WACC(加重平均資本コスト)やFCF成長率の標準偏差がもたらす評価のブレには十分な注意が必要です。

現在株価の統計的位置づけ

現在株価2,113円は、本シミュレーションによる理論株価の分布において非常に極端な位置にあります。95パーセンタイル値である1,864円を大きく上回っており、割安確率はわずか1.9%に留まっています。これは、本シミュレーションで設定した前提条件(平均FCF成長率8.0%、平均WACC7.5%など)に基づく理論株価が現在株価を上回るケースが、10万回の試行のうち約1,900回しかなかったことを示しています。統計的な観点からは、現在の市場価格は今回のシミュレーションにおける「標準的な予測範囲」を超えた、極めて強気な成長シナリオを織り込んでいる状態と解釈できます。

投資判断への示唆

本分析の結果に基づくと、現在株価2,113円は平均理論株価(1,168円)に対して約81%のプレミアムで取引されており、バリュエーションの観点からは「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」が確保されているとは言い難い状況です。現在の株価を正当化するためには、シミュレーションで想定した8.0%を大幅に上回る持続的な成長率、あるいは7.5%を大きく下回る資本コストが市場で確信されている必要があります。投資家は、市場が期待している超長期的成長性やシリコンウェーハ市場における独占的地位のさらなる強化といった「期待値の源泉」が妥当であるかどうかを、本シミュレーションの統計的帰結と照らし合わせて慎重に判断する必要があります。

📖 モンテカルロシミュレーションの読み方:
  • 割安確率: シミュレーション結果のうち、理論株価が現在株価を上回った割合。50%超なら統計的に割安寄り
  • 90%レンジ(5-95%点): 全シミュレーション結果を並べたときの下位5%点から上位95%点までの範囲。幅が広いほど不確実性が高い
  • 5% VaR: 悲観的な条件下でも95%の確率でこの値以上になると期待される最低ライン
  • 変動係数: 平均に対する標準偏差の比率。30%超だとパラメータ感度が高い(結果の信頼性に注意)
⚠️ 免責事項: 本モンテカルロシミュレーションはAIが推定したパラメータの分布に基づく統計的な参考値であり、投資助言ではありません。 入力パラメータに正規分布を仮定し、DCF計算の非線形性により出力は対数正規分布に近い形状となります。パラメータ間の独立性の仮定など、実際の市場とは異なる前提を含んでいます。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

限界利益分析(CVP分析)

高低点法による費用構造の推定

売上高が最大の年度と最小の年度を比較し、総費用(売上高−営業利益)の変化から変動費率と固定費を推定します。

推定変動費率
58.2%
売上高に対する変動費の割合
推定限界利益率
41.8%
1 − 変動費率
推定固定費
74,620
百万円
基準: 2022年 12月期 連結(売上高 441,083 百万円)と 2016年 12月期 連結(売上高 208,500 百万円)の比較

年度別 限界利益指標

年度 売上高 限界利益 限界利益率 損益分岐点 安全余裕率 経営レバレッジ
16年 12月期 208,500 87,120 41.8% 178,584 14.3% 6.97倍
16年 12月期 211,361 88,316 41.8% 178,584 15.5% 6.29倍
17年 12月期 258,400 107,970 41.8% 178,584 30.9% 2.65倍
17年 12月期 260,627 108,901 41.8% 178,584 31.5% 2.59倍
18年 12月期 326,400 136,384 41.8% 178,584 45.3% 1.60倍
18年 12月期 326,400 136,384 41.8% 178,584 45.3% 1.60倍
18年 12月期 325,059 135,823 41.8% 178,584 45.1% 1.59倍
19年 12月期 297,500 124,308 41.8% 178,584 40.0% 2.52倍
19年 12月期 299,460 125,127 41.8% 178,584 40.4% 2.47倍
20年 12月期 291,200 121,676 41.8% 178,584 38.7% 3.27倍
20年 12月期 291,333 121,731 41.8% 178,584 38.7% 3.21倍
21年 12月期 332,900 139,100 41.8% 178,584 46.4% 2.75倍
21年 12月期 335,674 140,259 41.8% 178,584 46.8% 2.72倍
22年 12月期 439,100 183,475 41.8% 178,584 59.3% 1.69倍
22年 12月期 441,083 184,303 41.8% 178,584 59.5% 1.68倍
23年 12月期 421,800 176,246 41.8% 178,584 57.7% 2.58倍
23年 12月期 425,941 177,976 41.8% 178,584 58.1% 2.44倍
24年 12月期 393,600 164,463 41.8% 178,584 54.6% 4.71倍
24年 12月期 396,619 165,724 41.8% 178,584 55.0% 4.49倍
25年 12月期 404,400 168,975 41.8% 178,584 55.8% -
25年 12月期 409,670 171,177 41.8% 178,584 56.4% 127.55倍
売上高と損益分岐点売上高の推移15億20億25億30億35億40億45億1617182021232425売上高(百万円)損益分岐点(百万円)
安全余裕率と経営レバレッジの推移0.050.0100.0150.01617182021232425安全余裕率(%)経営レバレッジ(倍)
直近年度の損益分岐点分析(2025年 12月期 連結)
売上高
409,670
百万円
損益分岐点
178,584
百万円
安全余裕率
56.4%
十分な安全余裕
経営レバレッジ
127.55倍
高い経営リスク

費用構造の評価

株式会社SUMCOの費用構造を分析すると、推定変動費率は58.2%、限界利益率は41.8%となっています。半導体シリコンウェーハ製造という高度な装置産業において、40%を超える限界利益率は、付加価値の高い製品群(300mmウェーハ等)が収益を牽引していることを示唆しています。推定固定費は74,620百万円となっており、売上規模が4,000億円を超える近年の水準から見れば、固定費負担は相対的に抑制された「高限界利益型」の構造と言えます。この構造は、売上高の増加が利益の押し上げに直結しやすい反面、操縦席から見た景気後退局面での利益減少幅も大きくなる特性を持っています。

損益分岐点と安全余裕率

本分析における損益分岐点売上高は178,584百万円と算出されました。2016年当時は売上高が2,100億円前後であり、安全余裕率は14%〜15%程度と決して高くありませんでした。しかし、半導体需要の拡大に伴い売上規模が拡大したことで、2022年12月期には安全余裕率が59.5%まで上昇しています。直近の2024年・2025年の予測値においても55%前後を維持しており、損益分岐点を大幅に上回る水準で推移しています。これは、多少の需要変動やシリコンサイクルによる減収が生じたとしても、営業赤字に転落するリスクは極めて低い、強固な収益基盤を確立していることを示しています。

経営レバレッジとリスク

経営レバレッジに注目すると、2016年時の6.97倍から、売上のピークを迎えた2022年には1.68倍まで低下しました。これは売上の拡大により利益の厚みが増し、利益の変動性が落ち着いたことを意味します。しかし、2024年12月期の予想(連結)では経営レバレッジが4.49倍、2025年12月期の予想(連結)では127.55倍という極めて高い数値が算出されています。この2025年予測の極端な数値は、営業利益が損益分岐点に近づき(あるいは計算上の利益幅が微小になり)、売上高のわずかな変動が営業利益に壊滅的または爆発的な影響を与える「高感応度」な状態にあることを示唆しています。投資家は、現在の同社が利益の振れ幅が非常に大きい局面にあることを認識する必要があります。

投資判断への示唆

以上の限界利益分析から、以下の点が投資判断の検討材料となります。第一に、損益分岐点売上高(約1,786億円)に対して現在の売上規模(約4,000億円)は十分に大きく、事業の継続性(ダウンサイド・リスクへの耐性)は非常に高いと言えます。第二に、直近の経営レバレッジの急上昇は、半導体市場の在庫調整や価格動向により利益が圧縮されている可能性を示しており、市場環境がわずかに好転するだけで利益が劇的に回復する「レバレッジ効果」が期待できるフェーズにあります。一方で、これは裏を返せば、需要の回復が遅れた際の利益下押し圧力も強いことを意味します。同社の高い限界利益率が将来の需要回復局面でどれほどの利益成長をもたらすか、その蓋然性をどう評価するかが、投資判断の鍵となるでしょう。

⚠️ 注意: 本分析は高低点法による推定値です。実際の変動費・固定費は有価証券報告書の費用明細と異なる場合があります。 費用構造が大きく変化した期間を含む場合、推定精度が低下する可能性があります。投資判断の際は他の指標と合わせてご確認ください。

デュポン分析(ROE分解)

ROEの3要素分解(デュポン分析)

ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。

年度 純利益率(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍) = ROE(%)
16年 12月期 2.88 × 0.423 × 2.32 = 0.03
17年 12月期 9.52 × 0.487 × 2.22 = 0.10
18年 12月期 17.49 × 0.555 × 2.05 = 0.20
19年 12月期 10.79 × 0.514 × 1.90 = 0.11
20年 12月期 8.65 × 0.491 × 1.87 = 0.08
21年 12月期 10.78 × 0.435 × 1.63 = 0.08
22年 12月期 15.42 × 0.492 × 1.72 = 0.13
23年 12月期 14.56 × 0.393 × 1.95 = 0.11
24年 12月期 5.13 × 0.336 × 2.09 = 0.04
25年 12月期 -4.18 × 0.359 × 2.07 = -0.03
デュポン分析:ROEの3要素推移-5.0%0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%1618202224250純利益率(%)ROE(%)
総資産回転率と財務レバレッジの推移0.000.501.001.502.002.50161820222425総資産回転率(回)財務レバレッジ(倍)
直近年度のROE構成(2025年 12月期 連結)
純利益率
-4.18%
収益性
×
総資産回転率
0.359回
効率性
×
財務レバレッジ
2.07倍
借入で資本効率を107%ブースト
=
ROE
-0.03%
株主資本利益率
📊 ROE変動の主因: 直近の変動は主に「純利益率」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROEに直結しています。

ROEの質の評価

株式会社SUMCOのROE(自己資本利益率)は、2018年12月期の20%をピークに、直近では急激な低下傾向にあります。デュポン分析の結果から、ROE変動の主因は「純利益率」の推移にあることが明白です。2018年(17.49%)や2022年(15.42%)のような高収益期にはROEも二桁台に乗る一方、2025年12月期(予測)のように純利益率がマイナス(-4.18%)に転じるとROEも負の値(-3%)となる構造です。このように、同社のROEは財務戦略や資産効率よりも、半導体市況に直結した収益性の変動に強く依存しており、「景気敏感型」の質を有していると評価できます。

財務レバレッジの影響

財務レバレッジは、2016年の2.32倍から2021年の1.63倍まで低下し、財務健全性が高まる局面もありましたが、直近の2024年(2.09倍)、2025年(2.07倍)にかけては再び上昇傾向にあります。ROEが低下、あるいはマイナス局面にある中でのレバレッジの上昇は、収益性の悪化を借入等による資産規模の維持で補っている側面を示唆しています。半導体シリコンウェーハ事業は巨額の設備投資を必要とする資本集約型産業であるため、一定のレバレッジは不可避ですが、収益性が低迷する局面でのレバレッジ維持は、金利負担や財務リスクの増大を招く懸念がある点に注意が必要です。

トレンド分析

過去10年間の推移を見ると、3つの要素すべてにおいて構造的な変化が見て取れます。まず「総資産回転率」が2018年の0.555回をピークに、2024年には0.336回まで低下している点は注目すべきです。これは、売上の拡大に対して資産(設備投資など)の膨張が上回っている、あるいは資産が十分に売上に寄与していない「効率性の低下」を示しています。また、「純利益率」の激しい乱高下は、同社がシリコンウェーハの価格変動リスクを直接的に受けていることを裏付けています。2024年以降の急減速は、半導体メモリー市場の調整や在庫積み増しの影響を強く受けている可能性が高いと考えられます。

投資判断への示唆

デュポン分析から導き出されるSUMCOの収益構造は、「純利益率のボラティリティにROEが完全に同期する」という典型的な装置産業の特性を示しています。投資家としては、以下の2点が今後の焦点となります。第一に、2025年予測でマイナスに転じる純利益率が、次世代半導体需要(AI向け等)によっていつ反転・回復に向かうかというサイクル。第二に、低下傾向にある総資産回転率が反転し、過去の投資が効率的に収益を生み出し始めるタイミングです。財務レバレッジによるROEの底上げ効果は限定的であるため、本質的な収益性の回復こそが、株主価値向上の唯一の鍵であると言えるでしょう。

⚠️ 注意: デュポン分析の数値はIRBankから取得した財務データに基づいています。 会計基準(日本基準/IFRS)の違いにより、株主資本の定義が異なる場合があります。

借金が利益に与える影響分析

有利子負債の概要

項目 説明
有利子負債 3,535億 銀行借入・社債等の利息付き負債
推定金利 1.90% 営業利益と経常利益の差から推定
推定支払利息 67億 有利子負債 × 推定金利
利息 / 純利益 比率 0.0% 純利益に対する利息負担の大きさ
推定実効税率 30.0% 1 − (純利益 / 経常利益) から推定

「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション

有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。

年度 有利子負債 推定利息 経常利益
実績
経常利益
借金なし
純利益
実績
純利益
借金なし
ROE
実績
ROE
借金なし
レバレッジ
効果
2016/12 1,725億 35億 90億 125億 60億 83億 2.82% 2.16% +0.66%pt
2017/12 1,664億 55億 352億 407億 246億 284億 10.29% 7.02% +3.28%pt
2018/12 1,517億 25億 827億 852億 571億 588億 19.88% 13.40% +6.48%pt
2019/12 1,511億 17億 477億 494億 321億 332億 10.57% 7.31% +3.26%pt
2020/12 1,496億 17億 355億 372億 252億 264億 7.93% 5.65% +2.28%pt
2021/12 1,409億 29億 476億 505億 359億 381億 7.65% 6.24% +1.41%pt
2022/12 1,410億 21億 1,104億 1,125億 677億 690億 13.05% 10.46% +2.59%pt
2023/12 2,242億 34億 689億 723億 614億 644億 11.14% 8.31% +2.84%pt
2024/12 3,537億 19億 330億 349億 202億 214億 3.60% 2.33% +1.26%pt
2025/12 3,535億 67億 -109億 -42億 -169億 -122億 -3.10% -1.36% -1.74%pt
純利益推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション-200億0百万200億400億600億800億2016/122018/122020/122022/122024/122025/120実績純利益借金なし純利益ROE推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション-5.0%0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%2016/122018/122020/122022/122024/122025/120実績ROE借金なしROE
レバレッジ効果の評価(直近年度)
借金が利益を減らしている(逆レバレッジ)
実績ROE
-3.10%
借金なしROE
-1.36%
レバレッジ効果
-1.74%pt

借入金利が事業利益率を上回っている、または利息負担が大きく、借金が株主リターン(ROE)を押し下げています。

借金の利益インパクト

株式会社SUMCOの直近(2025年12月期予想)の有利子負債は3,535億円に達しており、これに伴う推定支払利息は約67億円と算出されます。この利息負担が利益に与える影響を検討すると、実績(予想)ベースの経常利益は-109億円の赤字ですが、仮に有利子負債が全く存在しない(無借金経営である)と仮定した場合、経常利益は-42億円まで赤字幅が縮小する計算となります。

純利益ベースで見ると、実績の-169億円に対し、借金がない場合のシミュレーション値は-122億円となります。推定金利1.90%という水準は、昨今の金利上昇局面を反映しつつありますが、巨額の有利子負債を抱えていることから、支払利息が損益分岐点付近での利益を押し下げる大きな要因となっていることが明確に見て取れます。

レバレッジ効果の評価

財務レバレッジの活用による株主資本利益率(ROE)への影響を確認すると、2018年12月期には「+6.48%pt」という非常に高いプラスのレバレッジ効果を享受していました。これは、借入コストを大幅に上回る事業利益を稼ぎ出すことで、負債が効率的に自己資本の収益性を高めていたことを示しています。

しかし、直近の2025年12月期予想では、レバレッジ効果は「-1.74%pt」と負の領域に転じています。これは、事業の収益性(ROIC相当)が借入コストを下回った結果、負債が逆に株主の取り分を削る「逆レバレッジ」の状態に陥っていることを意味します。2016年から2024年にかけて継続的にプラスの効果を維持してきた同社にとって、現在の局面は財務構造が利益の重荷となる、厳しいサイクルにあると評価できます。

財務戦略の考察

同社の有利子負債は、2022年12月期の1,410億円から、直近では3,535億円へと2.5倍規模に急増しています。これは半導体市場の長期的な需要拡大を見据えた、最先端シリコンウエハーの増産投資(グリーンフィールド投資等)に伴う資金調達によるものと推察されます。装置産業であるシリコンウエハー業界において、成長局面での先行投資は不可欠ですが、足元の市況停滞と重なったことで、一時的に負債比率と金利負担が上昇しています。

競合他社と比較した場合、同社は業界トップの信越化学工業に比べて財務レバレッジを積極的に活用する傾向があります。推定金利1.90%での資金調達は、現在の市場環境下では妥当な水準と言えますが、事業利益率がこの水準を回復できるかどうかが、今後の財務戦略の正否を分ける鍵となります。

投資家へのポイント

SUMCOへの投資を検討する際、負債が利益に与える影響について以下の2点を注視する必要があります。

  • サイクル局面での増幅作用: 同社の財務構造は、市況が良い時にはROEを大幅に押し上げる「加速装置」となりますが、現在のようなダウンサイクルでは逆に赤字幅を広げる「増幅器」として機能します。この高い利益感応度を許容できるかどうかが判断の分かれ目となります。
  • 投資回収のタイミング: 3,500億円規模まで積み上がった負債が、将来的にどのタイミングでキャッシュフローに転換されるかが焦点です。次世代ウエハーの需要回復により事業利益率が推定金利(1.90%)を安定的に上回れば、レバレッジ効果は再びプラスに転じ、株主価値の向上に寄与することが期待されます。

現在のマイナスのレバレッジ効果を、将来の成長に向けた一時的な「産みの苦しみ」と捉えるか、あるいは財務リスクの増大と捉えるかは、投資家の皆様の市況見通しとリスク許容度に委ねられます。

⚠️ 注意事項: 本分析は営業利益と経常利益の差額から支払利息を推定しており、実際の支払利息とは異なる場合があります。 営業外収支には受取利息・配当金・為替差損益等も含まれるため、あくまで参考値としてご活用ください。 また、借金を全額返済した場合の実際の影響は資金調達構造の変化を伴うため、単純なシミュレーションとは異なります。

ROIC分析(投下資本利益率)

ROIC(投下資本利益率)推移

ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。

年度 NOPAT(百万円) 投下資本(百万円) ROIC(%) WACC(%) スプレッド(%pt)
16年 12月期 8,333 385,267 2.16 4.47 -2.31
17年 12月期 28,444 405,422 7.02 5.07 +1.94
18年 12月期 58,826 438,987 13.40 4.97 +8.43
19年 12月期 33,244 454,796 7.31 4.93 +2.38
20年 12月期 26,407 467,292 5.65 5.02 +0.63
21年 12月期 38,087 610,253 6.24 5.74 +0.50
22年 12月期 66,474 659,669 10.08 5.63 +4.44
23年 12月期 60,865 775,343 7.85 5.23 +2.62
24年 12月期 21,363 915,138 2.33 4.42 -2.09
25年 12月期 -2,940 898,192 -0.33 4.77 -5.09
ROIC vs WACC推移-5.0%0.0%5.0%10.0%15.0%1618202224250ROIC(%)WACC(%)
直近年度のROIC評価(2025年 12月期 連結)
ROIC
-0.33%
投下資本利益率
WACC
4.77%
加重平均資本コスト
=
スプレッド
-5.09%pt
価値破壊

ROIC水準の評価

株式会社SUMCOのROIC(投下資本利益率)は、半導体シリコンウェーハ業界特有の強い景気サイクルを反映し、極めてボラティリティ(変動幅)の大きい推移を見せています。2018年12月期には13.40%という高い水準を記録しましたが、直近の2024年12月期予想では2.33%、2025年12月期予想では-0.33%と急落する見通しです。特筆すべきは投下資本の推移です。2016年の約3,853億円から2024年には約9,151億円へと2倍以上に拡大しており、次世代製品への先行投資や増産に向けた大規模な設備投資を継続しています。しかし、足元のNOPAT(税引後営業利益)がマイナス圏へ転じる見込みであることから、投下資本の増大に見合う収益を確保できていない状況にあります。これは業界平均と比較しても、ダウンサイクル局面における収益性の低下が顕著に表れていると言えます。

ROIC-WACCスプレッド分析

資本効率の観点から「価値創造」の状況を測るROIC-WACCスプレッドを見ると、2017年から2023年までは概ねプラスを維持し、株主資本コストを上回る利益を創出してきました。特に2018年のスプレッドは+8.43%ptと非常に高く、効率的な経営がなされていました。しかし、2024年12月期からはスプレッドが-2.09%ptとマイナスに転じ、2025年12月期には-5.09%ptまで悪化する「価値破壊」のフェーズに入る予測となっています。このネガティブな要因は、シリコンウェーハの需給調整による販売価格の低迷や出荷数量の減少に加え、最先端設備への巨額投資に伴う減価償却費等の固定費負担がNOPATを圧迫していることにあります。WACCは4.4%〜5.7%程度で安定的に推移していますが、ROICがそれを大幅に下回る計画となっており、投資資本に対するリターンの回復が急務となっています。

投資家へのポイント

投資家にとっての注目点は、現在の「価値破壊」状態が一時的なサイクルボトムであるのか、あるいは構造的な収益性の低下であるのかを見極めることにあります。SUMCOは将来の需要増を見据えた戦略的な投資を継続しており、投下資本の積み増しは将来の利益成長の源泉となる可能性を秘めています。しかし、2025年12月期予測に見られるようなROICのマイナス転落は、資本コストを意識した経営という観点からは厳しい評価を免れません。今後の投資判断においては、半導体市況の回復によるNOPATのV字回復の蓋然性と、積み上がった投下資本が再び10%を超えるようなROICを生み出す時期、そしてWACCを上回るプラスのスプレッドをいつ安定的に維持できるのかを注視する必要があります。大規模投資の回収期間と市場サイクルが合致するかどうかが、長期的な企業価値を左右する鍵となります。

⚠️ 注意: WACCは簡易推定値です(株主資本コスト7%想定、負債コストは推定支払利息から算出)。 実際のWACCはCAPMや市場データに基づくより精緻な計算が必要です。

ROIC逆ツリー分析

ROIC逆ツリー分解

ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。

年度 売上高(百万円) NOPATマージン(%) × 投下資本回転率(回) = ROIC(%)
16年 12月期 208,500 4.00 × 0.541 = 2.16
17年 12月期 258,400 11.01 × 0.637 = 7.02
18年 12月期 326,400 18.02 × 0.744 = 13.40
19年 12月期 297,500 11.17 × 0.654 = 7.31
20年 12月期 291,200 9.07 × 0.623 = 5.65
21年 12月期 332,900 11.44 × 0.546 = 6.24
22年 12月期 439,100 15.14 × 0.666 = 10.08
23年 12月期 421,800 14.43 × 0.544 = 7.85
24年 12月期 393,600 5.43 × 0.430 = 2.33
25年 12月期 404,400 -0.73 × 0.450 = -0.33
ROIC逆ツリー: NOPATマージンと投下資本回転率-5.000.005.0010.0015.0020.001618202224250NOPATマージン(%)投下資本回転率(回)
ROIC逆ツリー分解(2025年 12月期 連結)
NOPATマージン
-0.73%
NOPAT -2,940百万円 ÷ 売上 404,400百万円
×
投下資本回転率
0.450回
売上 404,400百万円 ÷ IC 898,192百万円
=
ROIC
-0.33%
📊 ROIC変動の主因: 直近の変動は主に「NOPATマージン」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROICに直結しています。

ROIC変動要因の分解

株式会社SUMCOのROIC(投下資本利益率)推移を分析すると、半導体シリコンウェーハ市場のサイクルに強く連動した、ボラティリティの極めて高い収益構造が浮き彫りとなります。分析期間中、ROICは2018年12月期の13.40%をピークに、2025年12月期には-0.33%まで低下する見通しとなっており、この変動の主因は「NOPATマージン」の推移にあります。

2018年期はNOPATマージンが18.02%まで上昇し、投下資本回転率も0.744回と過去最高水準を記録したことで、ROICは二桁台を達成しました。しかし、直近の2024年期(5.43%)から2025年期(-0.73%)にかけては、マージンの急激な悪化がROICを押し下げています。投下資本回転率も2022年期の0.666回から2025年期の0.450回へと低下傾向にあり、収益性の低下と資産効率の鈍化が同時に進行している状況が読み取れます。

改善ドライバーの特定

ROICを再上昇させるための最優先課題は、主因である「NOPATマージン」の回復、すなわちマージン改善です。同社は大規模な設備投資を必要とする装置産業であり、固定費負担が重い構造にあります。そのため、マージン改善には以下の要素が不可欠です。

  • 価格決定権の維持とLTA(長期契約): 市況変動の影響を緩和するため、顧客との長期契約に基づいた適切な販売価格の維持。
  • 歩留まり向上とコスト削減: 先端製品(300mmウェーハ等)における製造プロセスの習熟による、限界利益の最大化。

また、効率性指標である「投下資本回転率」の改善も重要なドライバーです。2023年以降の回転率低下は、次世代製品に向けた先行投資(グリーンフィールド投資等)による投下資本の増加が、売上高の成長に先行している可能性を示唆しています。これらの資産が稼働し、売上へと転換されるスピードが、今後の効率性回復の鍵を握ります。

投資家へのポイント

本分析から、投資家が注目すべき経営の方向性は以下の3点に集約されます。

  • 収益サイクルの底打ち時期: 2025年12月期のROICがマイナス圏(-0.33%)に沈む予測となっている中、これを一時的な投資・市況のボトムと捉えるか、あるいは構造的な収益性の変化と捉えるか。
  • 投資フェーズの評価: 投下資本回転率の低下を、将来の成長のための「貯め」の期間と評価できるか。特に資産が利益に貢献し始めるタイミングの精査が求められます。
  • マージン・マネジメント: NOPATマージンがROICの主因である以上、半導体需要の回復局面において、どの程度のスピードで二桁台のマージンへ回帰できるかが、企業価値評価の分水嶺となります。

SUMCOの経営指標は、シリコンサイクルと先行投資のタイミングに強く依存しています。過去のピーク時(2018年)のような高い資本効率を再構築できるステージにあるのか、現在の財務数値の変化をどう解釈するか、慎重な判断が必要です。

EVA(経済的付加価値)分析

EVA(経済的付加価値)推移

EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。

年度 NOPAT(百万円) 資本コスト(百万円) EVA(百万円) ROIC(%) WACC(%)
16年 12月期 8,333 17,221 -8,895 2.16 4.47
17年 12月期 28,444 20,555 7,871 7.02 5.07
18年 12月期 58,826 21,818 36,990 13.40 4.97
19年 12月期 33,244 22,421 10,841 7.31 4.93
20年 12月期 26,407 23,458 2,959 5.65 5.02
21年 12月期 38,087 35,029 3,044 6.24 5.74
22年 12月期 66,474 37,139 29,305 10.08 5.63
23年 12月期 60,865 40,550 20,290 7.85 5.23
24年 12月期 21,363 40,449 -19,103 2.33 4.42
25年 12月期 -2,940 42,844 -45,762 -0.33 4.77
EVA(経済的付加価値)推移-60000-40000-2000002億4億6億8億1618202224250EVA(百万円)NOPAT(百万円)
EVA評価サマリー
直近EVA
-45,762
百万円(2025年 12月期 連結)
累積EVA
37,540
百万円(10年間合計)
価値創造評価
価値破壊

EVAの推移と評価

株式会社SUMCOのEVA(経済的付加価値)の推移を概観すると、半導体シリコンウェーハ市場のサイクルに強く連動した、ボラティリティの大きい構造が浮き彫りになります。2017年から2023年にかけては、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を継続的に上回り、概ねプラスのEVAを創出してきました。特に2018年(EVA:36,990百万円、ROIC:13.40%)や2022年(EVA:29,305百万円、ROIC:10.08%)は、資本コストを大幅に上回るリターンを上げ、株主価値を大きく高めた時期と言えます。

しかし、直近の2024年12月期予想ではEVAが-19,103百万円と赤字転換し、続く2025年12月期には-45,762百万円と大幅な価値破壊が予測されています。特筆すべきは、2024年度のNOPAT(税引後営業利益)が21,363百万円と会計上の利益を確保しているにもかかわらず、EVAがマイナスに沈んでいる点です。これは、40,449百万円にのぼる資本コストを利益が賄えていないことを意味しており、投資家が期待する最低限のリターンを下回っている現状を示唆しています。

価値創造力の持続性

過去10年間の累積EVAは37,540百万円とプラスを維持していますが、価値創造力の持続性には不透明感が漂っています。その主因は、資本コスト(WACC × 投下資本)の増大です。2016年に17,221百万円であった資本コストは、2025年には42,844百万円と約2.5倍に拡大しています。これは将来の需要増を見越した積極的な設備投資(投下資本の積み増し)を反映したものと考えられます。

一方で、ROICは2018年の13.40%をピークに低下傾向にあり、2025年には-0.33%と、投下資本が利益を生まない「負の相関」に陥る懸念が出ています。装置産業である同社にとって、市況悪化局面でも膨大な固定費と資本コストが発生する構造は、価値創造の持続性における最大のリスク要因です。現状のデータからは、過去に蓄積した付加価値を、直近の投資先行期間で急速に毀損しているフェーズにあると評価せざるを得ません。

投資家へのポイント

本EVA分析から、投資家が注目すべきポイントは以下の3点に集約されます。

  • 資本効率の反転時期: 2024年〜2025年のEVA大幅マイナスは、将来の成長のための「先行投資による産みの苦しみ」なのか、あるいは市場環境の変化による「構造的な収益性の低下」なのかを見極める必要があります。
  • ROICとWACCの乖離: WACCは約4.4%〜5.7%の間で比較的安定していますが、ROICは激しく変動しています。今後、再びROICがWACCを上回る水準(5%超)まで回復するシナリオを描けるかが焦点となります。
  • 投資リターンの規律: 投下資本が拡大し続ける中で、それに見合うNOPATを再び創出できるか。累積EVAがプラスからマイナスへ転じる前に、収益性が回復するかどうかが、長期的な企業価値を左右する分岐点となるでしょう。

以上の分析結果は、同社が現在、過去数年間の価値創造期から、巨額の資本コストが利益を圧迫する厳しい局面へ移行していることを示しています。投資に際しては、シリコンウェーハの需給バランス回復時期と、同社の投資効率の改善見通しを慎重に比較検討することが求められます。

⚠️ 注意: EVAは簡易推定値です。WACCは株主資本コスト7%想定に基づく簡易計算であり、 正確なEVA算出にはβ値やリスクフリーレートの精緻な設定が必要です。

営業レバレッジ分析

営業レバレッジ度(DOL)推移

DOL = 営業利益変化率 ÷ 売上高変化率。売上が1%変化したとき営業利益が何%変化するかを示し、固定費比率の高さ(経営リスク)を表します。

平均DOL
5.89倍
有効年度の平均
リスク評価
高リスク
DOL≤2: 低 / 2-5: 中 / 5+: 高
年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 営業利益率(%) 売上変化率(%) 営業利益変化率(%) DOL(倍)
16年 12月期 208,500 12,500 6.00 - - -
16年 12月期 211,361 14,046 6.65 1.37 12.37 9.01
17年 12月期 258,400 40,700 15.75 22.26 189.76 8.53
17年 12月期 260,627 42,085 16.15 0.86 3.40 3.95
18年 12月期 326,400 85,200 26.10 25.24 102.45 4.06
18年 12月期 326,400 85,200 26.10 0.00 0.00 -
18年 12月期 325,059 85,165 26.20 -0.41 -0.04 -
19年 12月期 297,500 49,400 16.61 -8.48 -41.99 4.95
19年 12月期 299,460 50,636 16.91 0.66 2.50 3.80
20年 12月期 291,200 37,200 12.77 -2.76 -26.53 9.62
20年 12月期 291,333 37,897 13.01 0.05 1.87 -
21年 12月期 332,900 50,500 15.17 14.27 33.26 2.33
21年 12月期 335,674 51,543 15.36 0.83 2.07 2.48
22年 12月期 439,100 108,400 24.69 30.81 110.31 3.58
22年 12月期 441,083 109,683 24.87 0.45 1.18 -
23年 12月期 421,800 68,300 16.19 -4.37 -37.73 8.63
23年 12月期 425,941 73,080 17.16 0.98 7.00 7.13
24年 12月期 393,600 34,900 8.87 -7.59 -52.24 6.88
24年 12月期 396,619 36,924 9.31 0.77 5.80 7.56
25年 12月期 404,400 -4,200 -1.04 1.96 -111.37 -
25年 12月期 409,670 1,342 0.33 1.30 131.95 -
営業レバレッジ度(DOL)と営業利益率の推移-5.00.05.010.015.020.025.030.016171820212324250DOL(倍)営業利益率(%)

費用構造の特徴

株式会社SUMCOの営業レバレッジ度(DOL)は、分析期間の平均で5.89倍となっており、指標の基準である「5倍以上(高リスク・固定費型ビジネス)」に該当します。半導体用シリコンウェーハの製造は、大規模な生産設備への投資に伴う減価償却費や、高度な技術開発のための研究開発費といった「固定費」が大きな割合を占める業種特性があります。このため、損益分岐点を超えた後は売上の増加がそのまま大幅な利益増に繋がる一方、売上が減少した際には利益が急激に圧縮される構造となっています。

景気変動への感応度

過去の推移を見ると、半導体市況(シリコンサイクル)の影響を強く受け、営業利益のボラティリティ(振れ幅)が非常に大きいことが確認できます。例えば、市況が好調であった2017年12月期には、売上高が22.26%増加したのに対し、営業利益は189.76%増と約1.9倍の爆発的な伸び(DOL 8.53倍)を見せました。一方で、直近の2024年12月期予想では、売上高が7.59%の減少に対して営業利益は52.24%の大幅減(DOL 6.88倍)となる見通しです。2025年12月期の予測では利益が損益分岐点付近まで低下しており、わずかな売上高の変動が黒字・赤字の境界線に直結する、非常に高い感応度を有しています。

投資家へのポイント

SUMCOへの投資を検討する際は、同社の「高レバレッジな収益構造」を正しく理解する必要があります。

  • 上昇局面での優位性: 世界的な半導体需要の回復期には、売上の伸びを大きく上回るスピードで利益が拡大し、株主還元や企業価値向上に寄与する期待があります。
  • 下降局面でのリスク: 平均DOL 5.89倍という数字が示す通り、需要のわずかな減退が利益の急落を招きます。固定費負担が重いため、稼働率の低下がダイレクトにマージンを悪化させる点に注意が必要です。
投資家は、単なる売上高の増減だけでなく、同社の損益分岐点の位置や、シリコンサイクルの現在地を慎重に見極めることが求められます。この高い営業レバレッジを、成長局面での「加速装置」と捉えるか、停滞局面での「下方リスク」と捉えるかは、個々の投資戦略とリスク許容度によって判断が分かれるところです。

⚠️ 注意: 営業レバレッジ度は前年比の変化率から算出しており、売上や利益が急変する年度では極端な値になることがあります。 複数年の平均値での評価を推奨します。

持続的成長率分析(SGR)

持続的成長率(SGR)推移

SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。

年度 ROE(%) 配当性向(%) 内部留保率(%) SGR(%) 実際成長率(%)
16年 12月期 2.82 推定30% 70.0 1.97 -
17年 12月期 10.29 推定30% 70.0 7.21 23.93
18年 12月期 19.88 推定30% 70.0 13.91 26.32
19年 12月期 10.57 推定30% 70.0 7.40 -8.85
20年 12月期 7.93 推定30% 70.0 5.55 -2.12
21年 12月期 7.65 推定30% 70.0 5.35 14.32
22年 12月期 13.05 40.4 59.6 7.78 31.90
23年 12月期 11.14 30.1 69.9 7.79 -3.94
24年 12月期 3.60 37.0 63.0 2.27 -6.69
25年 12月期 -3.10 推定30% 70.0 -2.17 2.74
持続的成長率(SGR)vs 実際の売上成長率-10.0%0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%1618202224250SGR(%)実際成長率(%)
ROEと配当性向の推移-10.0%0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%50.0%1618202224250ROE(%)配当性向(%)
持続的成長率の評価(2025年 12月期 連結)
ROE
-3.10%
×
内部留保率
70.0%
=
SGR
-2.17%
📊 成長持続性の評価: 実際の成長率がSGRを大幅に上回っており、外部資金調達や財務レバレッジの拡大が必要な可能性

SGR水準の評価

株式会社SUMCOの持続的成長率(SGR)は、シリコンサイクル(半導体市況の波)の影響を強く受け、激しく変動する傾向にあります。2018年12月期にはROE 19.88%を背景に13.91%という高いSGRを記録しましたが、その後は市況の変化に伴い低下し、2025年12月期の予測では-2.17%とマイナス圏に沈む見通しです。

SGRの変動要因を分析すると、内部留保率は概ね60%〜70%(配当性向30%〜40%)の範囲で比較的安定して推移しており、SGRの推移は主にROE(自己資本利益率)の増減に依存していることが分かります。特に、2024年12月期のROE 3.60%から2025年12月期の-3.10%への急落が、そのまま持続可能な成長力の低下に直結しています。これは配当政策の変更よりも、本業の収益性の変動が企業の自己金融による成長余力を決定づけていることを示唆しています。

成長の持続可能性

SGRと実際の売上成長率を比較すると、同社は「外部資金への依存度が高い成長フェーズ」と「調整局面」を明確に繰り返しています。2017年、2018年、2021年、2022年の各期において、実際の成長率はSGRを大幅に上回っています。(例:2022年12月期はSGR 7.78%に対し、実際成長率 31.90%)。

SGRを上回る成長は、内部資金だけでは賄いきれない設備投資等の資金需要が発生していることを意味し、実際に同社は最先端300mmウェーハの増産などのために多額の資本的支出を行ってきました。一方で、2023年以降は実際成長率がマイナスに転じており、現在は過去の積極投資による供給能力と市場需要の乖離を調整するフェーズにあると評価できます。2025年予測のSGR -2.17%は、現時点での収益構造では自己資本を維持しながら成長を維持することが困難な状況であることを示しています。

投資家へのポイント

SGR分析に基づき、以下の3点を投資判断の材料として整理します。

  • シリコンサイクルへの感応度: 同社のSGRは固定的なものではなく、半導体需要に極めて敏感です。現在のマイナス成長・マイナスSGR予測が、次世代半導体需要(AI等)による回復局面の前兆なのか、あるいは構造的な低迷なのかを、ROEの回復見通しとともに見極める必要があります。
  • 外部資金調達の必要性: 成長期において実際成長率がSGRを大きく上回る特性があるため、次なる需要拡大期には、増資や借入による財務レバレッジの拡大、あるいは資本効率の変化が想定されます。
  • 配当の持続性: 2025年12月期のようにROEがマイナスかつSGRが負の値となる局面では、理論上、内部留保を取り崩すことになります。配当性向の維持が財務体質に与える影響や、今後のROE底打ちのタイミングが重要な注視点となります。

以上の通り、SUMCOの成長性は現時点で調整局面にありますが、これは過去の成長期においてSGRを上回る積極的な拡大を行ってきた結果でもあります。現在の低成長率と将来の需要回復のバランスをどう評価するかが、投資判断の鍵となります。

⚠️ 注意: 配当データが取得できない年度は内部留保率70%(配当性向30%)を仮定しています。 実際の配当政策と異なる場合があります。

インタレストカバレッジレシオ推移

インタレストカバレッジレシオ推移

ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。

直近ICR
-0.6倍
>10: 極めて安全 / 3-10: 安全 / 1-3: 要注意 / <1: 危険
安全性評価
危険
年度 営業利益(百万円) 推定支払利息(百万円) ICR(倍) 有利子負債(百万円) 有利子負債比率(%) 推定借入金利(%)
16年 12月期 12,500 3,500 3.6 172,484 35.0 2.03
17年 12月期 40,700 5,500 7.4 166,436 31.4 3.30
18年 12月期 85,200 2,500 34.1 151,705 25.8 1.65
19年 12月期 49,400 1,700 29.1 151,098 26.1 1.13
20年 12月期 37,200 1,700 21.9 149,563 25.2 1.14
21年 12月期 50,500 2,900 17.4 140,883 18.4 2.06
22年 12月期 108,400 - 141,049 15.8 -
23年 12月期 68,300 - 224,247 20.9 -
24年 12月期 34,900 1,900 18.4 353,671 30.2 0.54
25年 12月期 -4,200 6,700 -0.6 353,453 31.3 1.90
インタレストカバレッジレシオと有利子負債比率の推移-10.00.010.020.030.040.01618202224250ICR(倍)有利子負債比率(%)

利払い安全性の評価

株式会社SUMCOのインタレストカバレッジレシオ(ICR)は、半導体市況のサイクルを反映し、極めて激しく推移しています。2018年から2023年にかけては、ICRが20倍から無限大(推定支払利息が極小)という極めて高い水準を維持し、財務的な余裕が十分に認められました。しかし、2024年12月期には18.4倍へと低下し、さらに2025年12月期の予測では-0.6倍と、安全性の評価基準において「危険」とされる水準まで急悪化する見通しです。これは、営業利益が-4,200百万円と赤字に転落する一方で、推定支払利息が6,700百万円へと大幅に増加することが主因です。本業の利益で利払いを賄えない状況は、財務的な弾力性が一時的に失われることを示唆しています。

有利子負債の状況

有利子負債の総額は、2022年12月期の141,049百万円を底に急増しており、2025年12月期には353,453百万円と、わずか3年で約2.5倍に膨らむ計画となっています。これに伴い、有利子負債比率も15.8%(2022年)から31.3%(2025年予測)へと上昇しています。特筆すべきは推定支払利息の急増で、2024年の1,900百万円から2025年には6,700百万円へと約3.5倍に跳ね上がっています。これは、最先端300mmウェーハ増産等のための巨額の設備投資を借入金等で賄っていること、および借入コストの上昇が重なっているものと分析されます。負債によるレバレッジを効かせた先行投資が、現在の利益水準に対して重い負担となっている現状が浮き彫りになっています。

投資家へのポイント

財務安全性の観点から、以下の3点を注視する必要があります。第一に、2025年12月期のICRマイナス転落は、シリコンウェーハ市場の調整局面と巨額投資が重なる「端境期」特有の現象か、あるいは構造的な財務悪化かの見極めが重要です。第二に、有利子負債が3,500億円規模まで拡大したことで、金利変動リスクへの感応度が高まっている点です。第三に、この先行投資が次世代半導体需要の回復時に、どれだけの営業利益成長として還元され、ICRを再び安全圏(10倍以上)へ押し戻せるかが焦点となります。現在は、将来の成長に向けた積極的な財務戦略が、短期的な安全性指標を圧迫している局面と言えます。このリスクを成長への必要経費と捉えるか、財務基盤の不安定化と捉えるかが投資判断の分かれ目となります。

⚠️ 注意: 支払利息は「営業利益−経常利益」から推定しています。 営業外収益が大きい企業では過小評価になる可能性があります。正確な支払利息は有価証券報告書の注記をご確認ください。

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