※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。
決算履歴(業績推移)
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | 包括利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2017年 3月期 連結 | 291,000 | 33,000 | 27,000 | 21,000 | - |
| 2017年 3月期 連結 | 299,106 | 39,720 | 33,998 | 52,165 | 54,562 |
| 2018年 3月期 連結 | 308,000 | 39,000 | 34,000 | 15,000 | - |
| 2018年 3月期 連結 | 308,061 | 41,268 | 36,196 | 19,698 | 27,436 |
| 2019年 3月期 連結 | 324,661 | 35,262 | 33,400 | 34,279 | 31,321 |
| 2020年 3月期 連結 | 322,000 | 35,000 | 34,000 | 26,000 | - |
| 2020年 3月期 連結 | 316,096 | 34,281 | 32,837 | 19,937 | 21,293 |
| 2021年 3月期 連結 | 300,000 | 28,000 | 28,000 | 22,000 | - |
| 2021年 3月期 連結 | 300,000 | 30,000 | 30,000 | 26,000 | - |
| 2021年 3月期 連結 | 302,407 | 30,921 | 30,796 | 24,534 | 30,524 |
| 2022年 3月期 連結 | 293,000 | 22,000 | 22,000 | 22,000 | - |
| 2022年 3月期 連結 | 293,830 | 24,539 | 25,855 | 28,000 | 31,160 |
| 2023年 3月期 連結 | 370,000 | 21,000 | 24,000 | 15,000 | - |
| 2023年 3月期 連結 | 356,000 | 18,000 | 18,000 | 12,000 | - |
| 2023年 3月期 連結 | 351,790 | 14,336 | 14,783 | 9,364 | 10,021 |
| 2024年 3月期 連結 | 355,000 | 30,000 | 30,000 | 22,000 | - |
| 2024年 3月期 連結 | 345,000 | 26,000 | 26,000 | 18,000 | - |
| 2024年 3月期 連結 | 341,990 | 25,637 | 26,292 | 17,751 | 25,753 |
| 2025年 3月期 連結 | 348,000 | 31,000 | 31,000 | 25,000 | - |
| 2025年 3月期 連結 | 343,073 | 29,968 | 29,588 | 23,388 | 19,261 |
| 2026年 3月期 連結 | 351,500 | 39,000 | 39,000 | 27,500 | - |
| ★2027年3月期(予想) | - | - | - | - |
※単位: 百万円
利益率推移
営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100
| 年度 | 売上高 (百万円) | 営業利益率 (%) | 経常利益率 (%) | 純利益率 (%) |
|---|---|---|---|---|
| 2017年 3月期 連結 | 291,000 | 11.34% | 9.28% | 7.22% |
| 2017年 3月期 連結 | 299,106 | 13.28% | 11.37% | 17.44% |
| 2018年 3月期 連結 | 308,000 | 12.66% | 11.04% | 4.87% |
| 2018年 3月期 連結 | 308,061 | 13.40% | 11.75% | 6.39% |
| 2019年 3月期 連結 | 324,661 | 10.86% | 10.29% | 10.56% |
| 2020年 3月期 連結 | 322,000 | 10.87% | 10.56% | 8.07% |
| 2020年 3月期 連結 | 316,096 | 10.85% | 10.39% | 6.31% |
| 2021年 3月期 連結 | 300,000 | 9.33% | 9.33% | 7.33% |
| 2021年 3月期 連結 | 300,000 | 10.00% | 10.00% | 8.67% |
| 2021年 3月期 連結 | 302,407 | 10.22% | 10.18% | 8.11% |
| 2022年 3月期 連結 | 293,000 | 7.51% | 7.51% | 7.51% |
| 2022年 3月期 連結 | 293,830 | 8.35% | 8.80% | 9.53% |
| 2023年 3月期 連結 | 370,000 | 5.68% | 6.49% | 4.05% |
| 2023年 3月期 連結 | 356,000 | 5.06% | 5.06% | 3.37% |
| 2023年 3月期 連結 | 351,790 | 4.08% | 4.20% | 2.66% |
| 2024年 3月期 連結 | 355,000 | 8.45% | 8.45% | 6.20% |
| 2024年 3月期 連結 | 345,000 | 7.54% | 7.54% | 5.22% |
| 2024年 3月期 連結 | 341,990 | 7.50% | 7.69% | 5.19% |
| 2025年 3月期 連結 | 348,000 | 8.91% | 8.91% | 7.18% |
| 2025年 3月期 連結 | 343,073 | 8.74% | 8.62% | 6.82% |
| 2026年 3月期 連結 | 351,500 | 11.10% | 11.10% | 7.82% |
| ★2027年3月期(予想) | 0 | - | - | - |
※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100
決算サマリー
2026年3月期 第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高1,637億5,600万円(前年同期比1.1%減)、営業利益191億5,200万円(同37.2%増)、経常利益189億4,400万円(同39.2%増)、親会社株主に帰属する中間純利益121億4,500万円(同4.3%増)となりました。売上高は苛性ソーダの輸出減や塩化ビニル製品の市況下落により微減となったものの、半導体関連製品の堅調な推移と製造コストの改善が寄与し、大幅な営業増益を達成しました。
注目ポイント
最大の注目点は、後発事象として発表されたJSR株式会社の体外診断用医薬品事業(JSR-01株式会社、現・株式会社トクヤマライフサイエンス)の買収です。買収価額は約820億円にのぼり、伝統的な素材メーカーから、高付加価値なヘルスケア・先端材料分野へのポートフォリオ転換を加速させる強力な意志が示されました。この買収により、2030年度に成長事業(電子・健康・環境)の売上高比率を60%以上にする目標に向けた大きな布石を打ったと言えます。
業界動向
化学業界全体としては、中国経済の停滞に伴う汎用樹脂(塩ビなど)の市況低迷という逆風が続いています。一方で、AI需要の拡大を背景とした半導体市場の回復が鮮明になっており、トクヤマが強みを持つ高純度多結晶シリコンやICケミカルへの引き合いは強まっています。競合他社が汎用品の採算悪化に苦しむ中、トクヤマは電力コストの自己資本化や製品の高度化により、相対的に高い利益成長を実現しています。
投資判断材料
長期投資家にとっての判断材料は、構造改革の「進捗」と「財務のレバレッジ」の両立です。今回の大型買収に伴い有利子負債が増加し、自己資本比率は50.6%と前期末(54.9%)から低下しました。しかし、利益率の高い診断薬事業の取り込みはROEの向上に直結します。伝統的な「石炭火力・自家発電・汎用化学」というビジネスモデルから、研究開発主導の「スペシャリティ化学」への脱皮が成功するかどうかが、中長期的なマルチプル(PER等)の評価向上に繋がります。
セグメント別業績
- 化成品:売上高523億円(8.6%減)、営業利益56億円(6.8%増)。市況下落をコスト削減でカバー。
- セメント:売上高324億円(0.5%増)、営業利益48億円(31.2%増)。価格改定の効果が顕著。
- 電子先端材料:売上高425億円(7.1%増)、営業利益69億円(140.5%増)。多結晶シリコンの操業度改善が大幅増益を牽引。
- ライフサイエンス:売上高192億円(3.6%減)、営業利益40億円(3.7%増)。歯科器材が堅調。
- 環境事業:売上高26億円(37.8%増)、営業利益2.5億円(前年同期は赤字)。イオン交換膜の出荷増により黒字化。
財務健全性
総資産は買収資金の確保等により5,366億円(前期末比604億円増)に拡大しました。現金及び預金は1,273億円と厚く確保されています。一方で、コマーシャル・ペーパーの新規発行や長期借入金の増加により、有利子負債は1,625億円(前期末比519億円増)となっています。自己資本比率は50.6%と依然として健全な水準を維持していますが、今後のキャッシュフロー創出力による負債圧縮のスピードが注目されます。
配当・株主還元
株主還元には積極的な姿勢が見られます。当中間期の配当は1株当たり60円(前年同期は45円、前期末は50円)となり、実質的な増配を継続しています。利益成長を適切に株主に還元する方針が明確であり、配当利回り面での下値支持も期待できる水準です。
通期業績予想
中間期時点での営業利益(191億円)は、中期経営計画で掲げる2025年度目標(450億円)に対して着実な進捗を見せています。半導体市場の回復持続に加え、下期からの診断薬事業の連結貢献(予定)を含めると、利益水準のさらなる底上げが期待されます。
中長期成長戦略
「中期経営計画2025」において、ROE 11%以上を目標に掲げています。具体的には、マレーシアでの多結晶シリコン生産体制の強化や、今回のようなM&Aによるヘルスケア分野の拡大を推進しています。化石燃料への依存度を下げ、地球温暖化対策(GHG削減)と高収益化を同時に達成する「ビジネスモデルの転換」が戦略の中核です。
リスク要因
主要なリスクとしては、自家発電用の石炭価格の変動、円高進行による輸出採算の悪化、および中国メーカーの増産による塩ビ等の市況再低迷が挙げられます。また、大型買収に伴うのれんの減損リスクについても、今後の事業統合(PMI)の成否に注視が必要です。
ESG・サステナビリティ
環境事業セグメントにおいてイオン交換膜や廃石膏ボードリサイクルを強化しており、本業を通じた環境貢献を推進しています。また、2030年度に向けたGHG排出量削減目標を掲げ、石炭火力発電の低炭素化やプロセス革新に取り組んでいます。
経営陣コメント
代表取締役社長の横田氏は、中期経営計画の進捗に手応えを示すとともに、診断薬事業の取得について「健康分野を成長事業の中核に据えるための歴史的な一歩」と位置付けています。伝統事業で稼いだキャッシュを成長分野へ再投資する循環を強調しています。
バリュエーション
1株当たり中間純利益は168.81円(前年同期161.81円)と着実に増加しています。PBR(株価純資産倍率)は1倍を大きく下回る水準で推移しており、成長事業への転換が市場に正当に評価されれば、バリュエーションの修正(リレーティング)が期待される局面です。
過去決算との比較
直近4四半期を振り返ると、セメントの価格改定が浸透した2024年度下期から利益率が改善傾向にあります。季節性としては、例年下期に需要が集中する傾向がありますが、今期は電子先端材料の回復が通期で寄与する構造となっており、四半期ごとの利益のボラティリティが抑制されつつあります。
年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)
| 年度 | 株価高値 | 株価安値 | PER高値 | PER安値 | PBR高値 | PBR安値 | 時価総額高値 | 時価総額安値 | 期末PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 2,750 | 1,470 | 19.69 | 10.53 | 0.8 | 0.43 | 1923億1905万 | 1028億327万 | 0.64倍 |
| 2012年3月期 | 2,250 | 1,145 | 16.83 | 8.56 | 0.63 | 0.32 | 1573億5195万 | 800億7485万 | 0.36倍 |
| 2013年3月期 | 1,345 | 650 | 赤字 | 赤字 | 0.43 | 0.21 | 940億6173万 | 454億5734万 | 0.42倍 |
| 2014年3月期 | 2,345 | 1,125 | 15.97 | 7.66 | 0.71 | 0.34 | 1639億9610万 | 786億7617万 | 0.51倍 |
| 2015年3月期 | 1,855 | 1,165 | 赤字 | 赤字 | 0.79 | 0.5 | 1297億2826万 | 814億7354万 | 0.54倍 |
| 2016年3月期 | 1,515 | 650 | 赤字 | 赤字 | 2.05 | 0.88 | 1059億5057万 | 454億5734万 | 1.18倍 |
| 2017年3月期 | 2,955 | 755 | 3.94 | 1.01 | 1.62 | 0.41 | 2066億5607万 | 528億45万 | 1.47倍 |
| 2018年3月期 | 3,930 | 2,245 | 13.88 | 7.93 | 2.18 | 1.24 | 2748億4209万 | 1570億267万 | 1.87倍 |
| 2019年3月期 | 4,165 | 2,279 | 8.44 | 4.62 | 1.89 | 1.04 | 2912億7667万 | 1593億8044万 | 1.19倍 |
| 2020年3月期 | 3,150 | 1,617 | 10.97 | 5.63 | 1.3 | 0.67 | 2202億9328万 | 1130億8388万 | 0.86倍 |
| 2021年3月期 | 2,933 | 1,860 | 8.35 | 5.3 | 1.06 | 0.67 | 2114億3506万 | 1300億7793万 | 1.01倍 |
| 2022年3月期 | 2,910 | 1,551 | 7.48 | 3.99 | 0.93 | 0.5 | 2097億7703万 | 1118億899万 | 0.55倍 |
| 2023年3月期 | 2,229 | 1,606 | 17.13 | 12.34 | 0.7 | 0.5 | 1606億8488万 | 1157億7385万 | 0.66倍 |
| 2024年3月期 | 2,741 | 1,976 | 11.11 | 8.01 | 0.79 | 0.57 | 1975億9410万 | 1424億4653万 | 0.78倍 |
| 2025年3月期 | 3,260 | 2,433 | 10.03 | 7.48 | 0.9 | 0.67 | 2350億794万 | 1753億9089万 | 0.77倍 |
| 2026年3月期 | 4,550 | 2,232 | 14.74 | 7.23 | 1.16 | 0.57 | 3280億188万 | 1609億114万 | 0.95倍 |
| 最新(株探) | 3731 | - | -倍 | - | 0.95倍 | - | 2,690億円 | - | 0.95倍 |
ROE算出表(PBR÷PER×100)
PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。
| 年度 | PBR高値 | PER高値 | ROE高値(%) | PBR安値 | PER安値 | ROE安値(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2011年3月期 | 0.8 | 19.69 | 4.1% | 0.43 | 10.53 | 4.1% |
| 2012年3月期 | 0.63 | 16.83 | 3.7% | 0.32 | 8.56 | 3.7% |
| 2013年3月期 | 0.43 | 赤字 | - | 0.21 | 赤字 | - |
| 2014年3月期 | 0.71 | 15.97 | 4.4% | 0.34 | 7.66 | 4.4% |
| 2015年3月期 | 0.79 | 赤字 | - | 0.5 | 赤字 | - |
| 2016年3月期 | 2.05 | 赤字 | - | 0.88 | 赤字 | - |
| 2017年3月期 | 1.62 | 3.94 | 41.1% | 0.41 | 1.01 | 40.6% |
| 2018年3月期 | 2.18 | 13.88 | 15.7% | 1.24 | 7.93 | 15.6% |
| 2019年3月期 | 1.89 | 8.44 | 22.4% | 1.04 | 4.62 | 22.5% |
| 2020年3月期 | 1.3 | 10.97 | 11.9% | 0.67 | 5.63 | 11.9% |
| 2021年3月期 | 1.06 | 8.35 | 12.7% | 0.67 | 5.3 | 12.6% |
| 2022年3月期 | 0.93 | 7.48 | 12.4% | 0.5 | 3.99 | 12.5% |
| 2023年3月期 | 0.7 | 17.13 | 4.1% | 0.5 | 12.34 | 4.1% |
| 2024年3月期 | 0.79 | 11.11 | 7.1% | 0.57 | 8.01 | 7.1% |
| 2025年3月期 | 0.9 | 10.03 | 9.0% | 0.67 | 7.48 | 9.0% |
| 2026年3月期 | 1.16 | 14.74 | 7.9% | 0.57 | 7.23 | 7.9% |
| 最新(株探) | 0.95倍 | -倍 | - | - | - | - |
バリュエーション推移の概要
株式会社トクヤマの過去15年間のバリュエーション推移を俯瞰すると、2010年代半ばの経営再建期を経て、現在は収益基盤の安定化に伴う評価の修正局面にあります。PBRは最低0.21倍(2013年3月期)から最高2.18倍(2018年3月期)まで大きく振れており、PERも赤字決算による算出不能時期から、回復期の極端な低倍率を経て、現在は7倍〜15倍程度のレンジで推移しています。これは、同社がマテリアル産業特有の景気循環性と、固有の事業構造改革の両面から影響を受けてきたことを示唆しています。
PBR分析
PBR(株価純資産倍率)は、同社の財務健全性と市場評価の変遷を最も顕著に表しています。2013年3月期には解散価値を大幅に下回る0.21倍まで売り込まれましたが、その後、2016年から2018年にかけて自己資本の毀損と業績回復期待が重なり、PBRは一時2.18倍まで急上昇しました。直近の2024年3月期から2026年3月期(予想)にかけては、0.57倍から1.16倍の間で推移しており、最新の0.95倍という数値は、歴史的な低位水準からは脱却したものの、依然としてPBR1倍割れ解消に向けた過渡期にあると分析されます。
PER分析
PER(株価収益率)の推移は、同社の利益水準の不安定さとその後の正常化を物語っています。2013年、2015年、2016年3月期は赤字により算出不能となっており、特に多結晶シリコン事業等の減損損失が利益を圧迫した時期と重なります。業績回復が鮮明となった2017年3月期には一時PER 1.01倍という極端な低水準を記録しましたが、これは一時的な利益急増に対する市場の慎重姿勢の現れでした。近年のPERレンジは、安値圏で7倍前後、高値圏で11倍〜17倍程度となっており、現在は成長期待を一定程度織り込んだ14.74倍(2026年3月期予測高値ベース)を上端とする評価レンジを形成しています。
時価総額の推移
時価総額は、2013年3月期および2016年3月期の約454億円を底として、長期的な拡大傾向にあります。2018年から2019年にかけて2,900億円規模まで回復した後、一時は1,100億円台まで調整しましたが、最新データでは2,690億円、2026年3月期の高値予測では3,280億円と、過去15年間での最大規模を見込む水準まで回復しています。この推移は、同社が単なる再建フェーズを終え、企業価値の新たな拡大フェーズに移行しようとしているプロセスを反映していると考えられます。
現在のバリュエーション評価
現在の最新株価に基づくバリュエーションは、PBR 0.95倍、時価総額2,690億円となっています。これは歴史的な安値圏(PBR 0.2〜0.4倍台)と比較すれば十分に評価が進んだ状態と言えますが、2018年3月期の高値(PBR 2.18倍)や、近年の利益成長を背景とした期待値と比較すると、過熱感があるとは言い切れない水準です。特にPBR 1.0倍近傍での推移は、解散価値と同等の評価を得るに至ったことを示す一方、今後のさらなる上値追いは、2026年3月期予想PER 14.74倍という過去のレンジ上限を突破できるだけの持続的な利益成長サイクルを市場に提示できるかどうかにかかっていると考えられます。
キャッシュフロー推移
| 年度 | 四半期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | フリーCF | 設備投資#1 | 現金等 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 通期 | 20012 | -10089 | -11911 | 9923 | -16693 | 118819 |
| 2018年3月期 | 通期 | 61885 | -12665 | -101209 | 49220 | -15526 | 66807 |
| 2019年3月期 | 通期 | 38531 | -16174 | -21104 | 22357 | -18581 | 67991 |
| 2020年3月期 | 通期 | 52364 | -20548 | -18348 | 31816 | -23768 | 80918 |
| 2021年3月期 | 通期 | 43314 | -19276 | -22530 | 24038 | -26450 | 83050 |
| 2022年3月期 | 通期 | 25986 | -33797 | 5118 | -7811 | -33361 | 82496 |
| 2023年3月期 | 通期 | -11800 | -33757 | 30151 | -45557 | -35677 | 67556 |
| 2024年3月期 | 通期 | 55828 | -30405 | -46508 | 25423 | -29773 | 47905 |
| 2025年3月期 | 通期 | 52368 | -23478 | -1106 | 28890 | -24676 | 74926 |
※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)
デュポン分析(ROE分解)
ROEの3要素分解(デュポン分析)
ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。
| 年度 | 純利益率(%) | × | 総資産回転率(回) | × | 財務レバレッジ(倍) | = | ROE(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 17年 3月期 | 7.22 | × | 0.686 | × | 3.46 | = | 0.17 |
| 18年 3月期 | 4.87 | × | 0.851 | × | 3.03 | = | 0.13 |
| 19年 3月期 | 10.56 | × | 0.855 | × | 2.53 | = | 0.23 |
| 20年 3月期 | 8.07 | × | 0.840 | × | 2.31 | = | 0.16 |
| 21年 3月期 | 7.33 | × | 0.776 | × | 2.03 | = | 0.12 |
| 22年 3月期 | 7.51 | × | 0.676 | × | 2.03 | = | 0.10 |
| 23年 3月期 | 4.05 | × | 0.774 | × | 2.20 | = | 0.07 |
| 24年 3月期 | 6.20 | × | 0.776 | × | 1.99 | = | 0.10 |
| 25年 3月期 | 7.18 | × | 0.731 | × | 1.93 | = | 0.10 |
| 26年 3月期 | 7.82 | × | 0.631 | × | 2.14 | = | 0.11 |
借金が利益に与える影響分析
有利子負債の概要
| 項目 | 値 | 説明 |
|---|---|---|
| 有利子負債 | 1,549億 | 銀行借入・社債等の利息付き負債 |
| 推定金利 | 1.50% | 営業利益と経常利益の差から推定 |
| 推定支払利息 | 23億 | 有利子負債 × 推定金利 |
| 利息 / 純利益 比率 | 8.5% | 純利益に対する利息負担の大きさ |
| 推定実効税率 | 29.5% | 1 − (純利益 / 経常利益) から推定 |
「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション
有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。
| 年度 | 有利子負債 | 推定利息 | 経常利益 実績 |
経常利益 借金なし |
純利益 実績 |
純利益 借金なし |
ROE 実績 |
ROE 借金なし |
レバレッジ 効果 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2017/03 | 4,247億 | 60億 | 270億 | 330億 | 210億 | 257億 | 17.13% | 4.69% | +12.44%pt |
| 2018/03 | 1,378億 | 50億 | 340億 | 390億 | 150億 | 172億 | 12.57% | 6.69% | +5.88%pt |
| 2019/03 | 1,264億 | 19億 | 334億 | 353億 | 343億 | 356億 | 22.84% | 12.87% | +9.97%pt |
| 2020/03 | 1,134億 | 10億 | 340億 | 350億 | 260億 | 268億 | 15.67% | 9.58% | +6.09%pt |
| 2021/03 | 936億 | 14億 | 280億 | 294億 | 220億 | 231億 | 11.55% | 8.13% | +3.42%pt |
| 2022/03 | 1,042億 | 16億 | 220億 | 236億 | 220億 | 231億 | 10.30% | 7.27% | +3.03%pt |
| 2023/03 | 1,372億 | 21億 | 240億 | 261億 | 150億 | 163億 | 6.88% | 4.59% | +2.30%pt |
| 2024/03 | 997億 | 15億 | 300億 | 315億 | 220億 | 231億 | 9.57% | 7.01% | +2.56%pt |
| 2025/03 | 1,041億 | 16億 | 310億 | 326億 | 250億 | 263億 | 10.15% | 7.49% | +2.66%pt |
| 2026/03 | 1,549億 | 23億 | 390億 | 413億 | 275億 | 291億 | 10.55% | 7.01% | +3.54%pt |
事業利益率が借入金利を上回っており、借金によるレバレッジが株主リターン(ROE)を押し上げています。
ROIC分析(投下資本利益率)
ROIC(投下資本利益率)推移
ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。
| 年度 | NOPAT(百万円) | 投下資本(百万円) | ROIC(%) | WACC(%) | スプレッド(%pt) |
|---|---|---|---|---|---|
| 17年 3月期 | 25,667 | 547,265 | 4.69 | 2.42 | +2.27 |
| 18年 3月期 | 19,500 | 257,042 | 7.59 | 4.22 | +3.37 |
| 19年 3月期 | 24,683 | 276,534 | 8.93 | 4.27 | +4.66 |
| 20年 3月期 | 26,765 | 279,317 | 9.58 | 4.43 | +5.15 |
| 21年 3月期 | 22,000 | 283,999 | 7.75 | 4.95 | +2.79 |
| 22年 3月期 | 15,400 | 317,810 | 4.85 | 4.93 | -0.09 |
| 23年 3月期 | 13,125 | 355,111 | 3.70 | 4.54 | -0.84 |
| 24年 3月期 | 22,000 | 329,665 | 6.67 | 5.10 | +1.57 |
| 25年 3月期 | 25,000 | 350,420 | 7.13 | 5.16 | +1.97 |
| 26年 3月期 | 27,500 | 415,509 | 6.62 | 4.65 | +1.97 |
ROIC逆ツリー分析
ROIC逆ツリー分解
ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。
| 年度 | 売上高(百万円) | NOPATマージン(%) | × | 投下資本回転率(回) | = | ROIC(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 17年 3月期 | 291,000 | 8.82 | × | 0.532 | = | 4.69 |
| 18年 3月期 | 308,000 | 6.33 | × | 1.198 | = | 7.59 |
| 19年 3月期 | 324,661 | 7.60 | × | 1.174 | = | 8.93 |
| 20年 3月期 | 322,000 | 8.31 | × | 1.153 | = | 9.58 |
| 21年 3月期 | 300,000 | 7.33 | × | 1.056 | = | 7.75 |
| 22年 3月期 | 293,000 | 5.26 | × | 0.922 | = | 4.85 |
| 23年 3月期 | 370,000 | 3.55 | × | 1.042 | = | 3.70 |
| 24年 3月期 | 355,000 | 6.20 | × | 1.077 | = | 6.67 |
| 25年 3月期 | 348,000 | 7.18 | × | 0.993 | = | 7.13 |
| 26年 3月期 | 351,500 | 7.82 | × | 0.846 | = | 6.62 |
EVA(経済的付加価値)分析
EVA(経済的付加価値)推移
EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。
| 年度 | NOPAT(百万円) | 資本コスト(百万円) | EVA(百万円) | ROIC(%) | WACC(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 17年 3月期 | 25,667 | 13,244 | 12,417 | 4.69 | 2.42 |
| 18年 3月期 | 19,500 | 10,847 | 8,650 | 7.59 | 4.22 |
| 19年 3月期 | 24,683 | 11,808 | 12,873 | 8.93 | 4.27 |
| 20年 3月期 | 26,765 | 12,374 | 14,389 | 9.58 | 4.43 |
| 21年 3月期 | 22,000 | 14,058 | 7,934 | 7.75 | 4.95 |
| 22年 3月期 | 15,400 | 15,668 | -280 | 4.85 | 4.93 |
| 23年 3月期 | 13,125 | 16,122 | -2,984 | 3.70 | 4.54 |
| 24年 3月期 | 22,000 | 16,813 | 5,173 | 6.67 | 5.10 |
| 25年 3月期 | 25,000 | 18,082 | 6,919 | 7.13 | 5.16 |
| 26年 3月期 | 27,500 | 19,321 | 8,168 | 6.62 | 4.65 |
営業レバレッジ分析
持続的成長率分析(SGR)
持続的成長率(SGR)推移
SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。
| 年度 | ROE(%) | 配当性向(%) | 内部留保率(%) | SGR(%) | 実際成長率(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 17年 3月期 | 17.13 | 推定30% | 70.0 | 11.99 | - |
| 18年 3月期 | 12.57 | 推定30% | 70.0 | 8.80 | 5.84 |
| 19年 3月期 | 22.84 | 推定30% | 70.0 | 15.99 | 5.41 |
| 20年 3月期 | 15.67 | 推定30% | 70.0 | 10.97 | -0.82 |
| 21年 3月期 | 11.55 | 推定30% | 70.0 | 8.09 | -6.83 |
| 22年 3月期 | 10.30 | 推定30% | 70.0 | 7.21 | -2.33 |
| 23年 3月期 | 6.88 | 53.8 | 46.2 | 3.18 | 26.28 |
| 24年 3月期 | 9.57 | 32.4 | 67.6 | 6.46 | -4.05 |
| 25年 3月期 | 10.15 | 30.8 | 69.2 | 7.03 | -1.97 |
| 26年 3月期 | 10.55 | 38.9 | 61.1 | 6.45 | 1.01 |
インタレストカバレッジレシオ推移
インタレストカバレッジレシオ推移
ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。
| 年度 | 営業利益(百万円) | 推定支払利息(百万円) | ICR(倍) | 有利子負債(百万円) | 有利子負債比率(%) | 推定借入金利(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 17年 3月期 | 33,000 | 6,000 | 5.5 | 424,656 | 100.0 | 1.41 |
| 18年 3月期 | 39,000 | 5,000 | 7.8 | 137,754 | 38.1 | 3.63 |
| 19年 3月期 | 35,262 | 1,862 | 18.9 | 126,439 | 33.3 | 1.47 |
| 20年 3月期 | 35,000 | 1,000 | 35.0 | 113,443 | 29.6 | 0.88 |
| 21年 3月期 | 28,000 | - | ∞ | 93,561 | 24.2 | - |
| 22年 3月期 | 22,000 | - | ∞ | 104,237 | 24.1 | - |
| 23年 3月期 | 21,000 | - | ∞ | 137,231 | 28.7 | - |
| 24年 3月期 | 30,000 | - | ∞ | 99,721 | 21.8 | - |
| 25年 3月期 | 31,000 | - | ∞ | 104,118 | 21.9 | - |
| 26年 3月期 | 39,000 | - | ∞ | 154,945 | 27.8 | - |