4611大日本塗料株式会社||

大日本塗料(4611) 理論株価分析:神東塗料の連結化と収益性改善への課題 カチノメ

決算発表日: 2025-11-102026年3月期 第2四半期
総合業績スコア
58/100
中立

セクション別スコア

業績成長性55収益性40財務健全性65株主還元75成長戦略60理論株価評価55
業績成長性55
収益性40
財務健全性65
株主還元75
成長戦略60
理論株価評価55

※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。

決算履歴(業績推移)

売上高推移(百万円)600億700億800億900億1,000億2017年 2018年 2020年 2021年 2021年 2023年 2024年 2025年 2026年 売上高利益推移(営業利益・経常利益・当期純利益)0百万20億40億60億80億100億2017年 2018年 2020年 2021年 2021年 2023年 2024年 2025年 2026年 営業利益経常利益純利益利益率推移(%)0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%12.0%14.0%2017年 2018年 2020年 2021年 2021年 2023年 2024年 2025年 2026年 営業利益率経常利益率純利益率
年度 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 包括利益
2017年 3月期 連結 74,500 6,600 6,500 4,100 -
2017年 3月期 連結 72,789 6,533 6,600 5,199 6,538
2018年 3月期 連結 74,000 7,000 6,900 4,500 -
2018年 3月期 連結 74,119 6,588 6,392 4,573 8,127
2019年 3月期 連結 73,740 6,030 6,210 3,600 -
2019年 3月期 連結 73,743 6,039 6,210 3,604 3,020
2020年 3月期 連結 73,000 5,600 5,800 3,500 -
2020年 3月期 連結 72,709 5,547 5,786 3,662 952
2021年 3月期 連結 63,300 1,500 1,700 1,000 -
2021年 3月期 連結 62,500 2,000 2,250 1,100 -
2021年 3月期 連結 62,500 2,500 2,900 1,500 -
2021年 3月期 連結 62,470 2,820 3,260 1,960 -
2021年 3月期 連結 62,475 2,828 3,268 1,968 7,014
2022年 3月期 連結 66,700 3,200 3,300 2,000 -
2022年 3月期 連結 66,948 3,183 3,465 2,031 1,895
2023年 3月期 連結 72,000 3,800 4,200 3,300 -
2023年 3月期 連結 72,849 3,946 4,316 3,458 4,040
2024年 3月期 連結 71,700 4,700 5,050 4,600 -
2024年 3月期 連結 71,940 4,901 5,336 4,600 8,669
2025年 3月期 連結 74,000 4,800 5,000 4,300 -
2025年 3月期 連結 72,510 4,710 5,190 9,430 -
2025年 3月期 連結 72,511 4,716 5,199 9,437 6,933
2026年 3月期 連結 92,000 4,100 4,300 2,900 -
2026年 3月期 連結 92,000 4,100 4,300 1,700 -

※単位: 百万円

利益率推移

営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

年度 売上高 (百万円) 営業利益率 (%) 経常利益率 (%) 純利益率 (%)
2017年 3月期 連結 74,500 8.86% 8.72% 5.50%
2017年 3月期 連結 72,789 8.98% 9.07% 7.14%
2018年 3月期 連結 74,000 9.46% 9.32% 6.08%
2018年 3月期 連結 74,119 8.89% 8.62% 6.17%
2019年 3月期 連結 73,740 8.18% 8.42% 4.88%
2019年 3月期 連結 73,743 8.19% 8.42% 4.89%
2020年 3月期 連結 73,000 7.67% 7.95% 4.79%
2020年 3月期 連結 72,709 7.63% 7.96% 5.04%
2021年 3月期 連結 63,300 2.37% 2.69% 1.58%
2021年 3月期 連結 62,500 3.20% 3.60% 1.76%
2021年 3月期 連結 62,500 4.00% 4.64% 2.40%
2021年 3月期 連結 62,470 4.51% 5.22% 3.14%
2021年 3月期 連結 62,475 4.53% 5.23% 3.15%
2022年 3月期 連結 66,700 4.80% 4.95% 3.00%
2022年 3月期 連結 66,948 4.75% 5.18% 3.03%
2023年 3月期 連結 72,000 5.28% 5.83% 4.58%
2023年 3月期 連結 72,849 5.42% 5.92% 4.75%
2024年 3月期 連結 71,700 6.56% 7.04% 6.42%
2024年 3月期 連結 71,940 6.81% 7.42% 6.39%
2025年 3月期 連結 74,000 6.49% 6.76% 5.81%
2025年 3月期 連結 72,510 6.50% 7.16% 13.01%
2025年 3月期 連結 72,511 6.50% 7.17% 13.01%
2026年 3月期 連結 92,000 4.46% 4.67% 3.15%
2026年 3月期 連結 92,000 4.46% 4.67% 1.85%

※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

決算サマリー

大日本塗料の2026年3月期 第2四半期(中間期)連結決算は、売上高が459億6,500万円(前年同期比27.2%増)と大幅な増収となった一方で、営業利益は18億1,700万円(同28.0%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は14億500万円(同48.3%減)と、減益着地となりました。

注目ポイント

  • 神東塗料の連結化による規模拡大:前期に連結子会社化した神東塗料グループの業績寄与により、売上高は大きく底上げされました。
  • 不適切事案によるマイナス影響:一部製品におけるJISマーク表示の一時停止処分(JIS影響)により国内販売が低迷したことが、利益を押し下げる要因となりました。
  • コスト増への対応:人材強化に伴う人件費の増加や原材料価格の高騰が継続しており、価格転嫁や製品ミックスの改善が急務となっています。

業界動向

塗料業界全体としては、円安やエネルギー価格の高止まりにより、厳しいコスト環境が続いています。自動車分野では日系メーカーの生産低迷が一部地域で見られる一方、メキシコ市場などは堅調に推移しています。国内では再開発案件に伴う照明機器などの需要は底堅いものの、原材料費の転嫁スピードが収益を左右する局面が続いています。

投資判断材料

長期投資家としては、M&Aによる市場シェア拡大の成否と、JIS関連の信頼回復プロセスを注視する必要があります。利益面では一時的な経費増や不祥事対応コストが含まれていますが、神東塗料とのシナジー創出による収益性改善が今後の株価回復の鍵を握ります。PBR水準は依然として解散価値を下回る水準で推移しており、資産価値の観点からは割安感が意識されます。

セグメント別業績

国内塗料事業

売上高354億6,600万円(38.5%増)、営業利益5億4,200万円(51.9%減)。神東塗料の連結化で増収も、JIS影響による販売低迷と人件費増が響きました。

海外塗料事業

売上高41億5,500万円(0.8%増)、営業利益2億3,900万円(55.8%増)。メキシコでの収益性改善が全体を牽引しました。

照明機器事業

売上高48億7,700万円(1.1%減)、営業利益8億4,400万円(18.1%減)。LED分野は堅調ですが、本社移転費用や人件費増が利益を圧迫しました。

財務健全性

自己資本比率は47.8%(前期末は48.8%)と、神東塗料の連結に伴う負債増により微減したものの、依然として健全な水準を維持しています。現金及び現金同等物は112億1,800万円を確保しており、当面の事業運営に支障はありません。

配当・株主還元

中間配当は1株当たり49円を実施しました。前年同期の35円から大幅な増配となっており、利益水準が低下する中でも、株主への安定的な還元姿勢を強調しています。

通期業績予想

半期報告書内では通期予想の修正に関する具体的な記述はありませんが、JIS影響の解消時期や神東塗料の統合プロセスの進捗が、下半期の業績を大きく左右する見通しです。

中長期成長戦略

神東塗料との事業統合による生産効率の向上と、インク・分散技術などの高付加価値分野への注力が柱となります。また、海外市場においてはメキシコや東南アジアでの日系メーカー向けシェア維持・拡大を狙います。

リスク要因

  • 品質問題再発リスク:JISマーク停止や品質関連損失の発生など、コンプライアンス体制の再構築が喫緊の課題です。
  • 原材料価格:原油価格や為替動向による原材料コストの再上昇。

ESG・サステナビリティ

品質不祥事を受け、ガバナンス体制の強化を最優先事項として掲げています。また、環境配慮型塗料の開発を通じたカーボンニュートラルへの貢献を推進しています。

バリュエーション

1株当たり中間純利益は49.32円。株価純資産倍率(PBR)は1倍を大きく割り込んでおり、解散価値から見て割安な水準にあります。配当利回りの高さも下支え要因となり得ます。

過去決算との比較

前年同期は子会社株式売却益という特殊要因がありましたが、それを除いても今期は営業利益ベースで苦戦しています。ただし、売上規模がM&Aで一段階上がったことは評価でき、来期以降の利益回復が期待されます。

市場の評判

大日本塗料株式会社 (4611) は塗料製造を主要事業とし、投資家からは安定した配当と優待が評価されている。2023年、子会社の不適切な品質管理行為が問題となり、業界からの信頼を損なう事態となった。会社は調査報告書を公表し、改善策を示している。

年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)

株価推移(高値・安値)05001,0001,5002,000'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)高値安値PBR推移(高値・安値・期末PBR)0.0倍0.5倍1.0倍1.5倍2.0倍'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)PBR高値PBR安値期末PBRPER推移(高値・安値)0倍5倍10倍15倍20倍25倍'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)PER高値PER安値時価総額推移(高値・安値)0億100億200億300億400億500億600億'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)高値安値ROE推移(PBR÷PERで算出・高値同士/安値同士)0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)ROE高値ROE安値
年度 株価高値 株価安値 PER高値 PER安値 PBR高値 PBR安値 時価総額高値 時価総額安値 期末PBR
2011年3月期 670 310 19.63 9.08 1.31 0.6 199億610万 92億1028万 1.08倍
2012年3月期 600 375 12.58 7.86 1.07 0.67 178億2636万 111億4150万 0.86倍
2013年3月期 990 375 24.68 9.35 1.6 0.61 294億1357万 111億4150万 1.49倍
2014年3月期 940 595 10.77 6.82 1.28 0.81 279億2803万 176億7785万 1.12倍
2015年3月期 865 695 9.32 7.49 0.97 0.78 256億9973万 206億4892万 0.86倍
2016年3月期 1,235 745 10.09 6.09 1.27 0.76 366億9268万 221億3445万 1倍
2017年3月期 1,290 880 7.25 4.94 1.1 0.75 383億2677万 261億4539万 1.06倍
2018年3月期 1,948 1,145 12.35 7.26 1.38 0.81 578億7640万 340億1872万 1.1倍
2019年3月期 1,658 890 13.2 7.09 1.12 0.6 492億6030万 264億4250万 0.75倍
2020年3月期 1,242 674 9.63 5.23 0.84 0.46 369億66万 200億2499万 0.54倍
2021年3月期 1,065 775 15.32 11.15 0.63 0.46 316億4187万 230億2577万 0.54倍
2022年3月期 923 769 12.87 10.72 0.53 0.44 274億2295万 228億4751万 0.45倍
2023年3月期 895 692 7.35 5.68 0.49 0.38 265億9105万 205億5978万 0.46倍
2024年3月期 1,216 816 7.52 5.05 0.58 0.39 361億2818万 242億4391万 0.58倍
2025年3月期 1,370 938 4.13 2.83 0.6 0.41 407億362万 278億6861万 0.51倍
最新(株探) 1274 - 21.4倍 - 0.56倍 - 379億円 - 0.56倍

ROE算出表(PBR÷PER×100)

PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。

年度 PBR高値 PER高値 ROE高値(%) PBR安値 PER安値 ROE安値(%)
2011年3月期 1.31 19.63 6.7% 0.6 9.08 6.6%
2012年3月期 1.07 12.58 8.5% 0.67 7.86 8.5%
2013年3月期 1.6 24.68 6.5% 0.61 9.35 6.5%
2014年3月期 1.28 10.77 11.9% 0.81 6.82 11.9%
2015年3月期 0.97 9.32 10.4% 0.78 7.49 10.4%
2016年3月期 1.27 10.09 12.6% 0.76 6.09 12.5%
2017年3月期 1.1 7.25 15.2% 0.75 4.94 15.2%
2018年3月期 1.38 12.35 11.2% 0.81 7.26 11.2%
2019年3月期 1.12 13.2 8.5% 0.6 7.09 8.5%
2020年3月期 0.84 9.63 8.7% 0.46 5.23 8.8%
2021年3月期 0.63 15.32 4.1% 0.46 11.15 4.1%
2022年3月期 0.53 12.87 4.1% 0.44 10.72 4.1%
2023年3月期 0.49 7.35 6.7% 0.38 5.68 6.7%
2024年3月期 0.58 7.52 7.7% 0.39 5.05 7.7%
2025年3月期 0.6 4.13 14.5% 0.41 2.83 14.5%
最新(株探) 0.56倍 21.4倍 2.6% - - -

バリュエーション推移の概要

大日本塗料(4611)の過去15年間のバリュエーション推移を俯瞰すると、2010年代半ばまではPBR1.0倍前後を維持する局面が多く見られましたが、2019年3月期以降は恒常的に1.0倍を下回る水準で推移しています。PERに関しては、概ね5倍から15倍のレンジで推移する傾向にありますが、2013年3月期の24.68倍や2025年3月期予測の極端な低水準(2.83〜4.13倍)など、各年度の利益水準によって大きな振れ幅が見られます。総じて、資産価値に対する市場の評価が長期的に慎重化している傾向が読み取れます。

PBR分析

PBRの推移において、歴史的な高値は2013年3月期の1.60倍であり、当時は資産価値に対してプレミアムが付与されていました。しかし、2020年3月期から2023年3月期にかけてはPBR 0.38倍〜0.54倍という極めて低い水準まで落ち込みました。2024年3月期以降、0.5倍台後半まで緩やかに回復の兆しを見せているものの、依然として解散価値である1.0倍を大きく下回る状態が続いています。現在の0.56倍という水準は、過去15年の最安値(0.38倍)よりは高いものの、2010年代の平均的な水準(0.8倍〜1.2倍程度)と比較すると、依然として歴史的な低位圏に位置しています。

PER分析

PERは、収益性の変動に伴いダイナミックに変化しています。2011年〜2014年頃までは20倍を超える局面もありましたが、2015年以降は多くの期間で10倍前後に収束していました。特筆すべきは2025年3月期の数値で、PER低値が2.83倍と極めて低い水準が記録されています。これは一時的な利益の押し上げ、あるいは利益成長に対する市場の強い警戒感のいずれかを反映している可能性があります。一方で、直近の株探データでは21.4倍まで上昇しており、足元の利益水準の変化、あるいは株価の先行的な反応によって、収益面での評価には不透明感が伴う局面といえます。

時価総額の推移

時価総額は、2011年3月期の約199億円から、2018年3月期には約578億円と約2.9倍に成長し、過去15年でのピークを形成しました。その後、2023年3月期には205億円規模まで縮小しましたが、直近では379億円前後まで回復しています。2018年のピーク時と比較すると、依然として約35%低い水準にあります。企業の自己資本が蓄積されている一方で時価総額がピークを更新できていない事実は、利益成長の鈍化や資本効率(ROE)に対する市場の要求水準とのギャップを示唆しています。

現在のバリュエーション評価

現在のバリュエーションを歴史的水準と比較すると、PBR 0.56倍は過去15年のレンジ(0.38倍〜1.60倍)の下半分に位置しており、資産価値の観点からは依然として割安感が強い状態にあります。特に、2010年代中盤に1.0倍を超えていた実績を考慮すると、再評価の余地は理論上存在します。一方で、PER 21.4倍は近年の平均的な推移(7倍〜13倍程度)からすると割高な水準に見えますが、これは分母となる利益のボラティリティに左右されている側面があります。投資家としては、現在の低PBRが構造的な利益率の低さ(バリュートラップ)によるものか、あるいは改善期待を含んだ過小評価の状態にあるのかを、今後の収益推移と併せて慎重に判断する必要があります。

キャッシュフロー推移

キャッシュフロー推移(営業CF・投資CF・フリーCF)-60億-40億-20億0百万20億40億60億80億'17/3'19/3'21/3'23/3'25/30営業CF投資CFフリーCF設備投資 vs フリーCF(百万円)-60億-40億-20億0百万20億40億60億80億'17/3'19/3'21/3'23/3'25/30設備投資#1フリーCF現金等残高推移20億40億60億80億100億120億'17/3'19/3'21/3'23/3'25/3現金等
年度 四半期 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF 設備投資#1 現金等
2017年3月期 通期 6133 637 -5808 6770 -1325 3953
2018年3月期 通期 5315 -398 -4747 4917 -1430 4256
2019年3月期 通期 4358 -2470 -351 1888 -2571 5704
2020年3月期 通期 4434 -4424 -742 10 -4426 5064
2021年3月期 通期 3641 -2325 499 1316 -3213 6736
2022年3月期 通期 3364 -966 -2841 2398 -1972 6479
2023年3月期 通期 1282 -1449 -473 -167 -2961 6340
2024年3月期 通期 3463 -772 -1657 2691 -3847 7867
2025年3月期 通期 3570 -364 -75 3206 -5100 11469

※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)

キャッシュフロー推移の概要

大日本塗料(4611)の過去9年間のキャッシュフロー(CF)推移を見ると、営業CFは常にプラスを維持し、投資CFは概ねマイナス(投資超過)、財務CFは多くがマイナス(返済・還元)という、日本の上場企業において理想的とされる「優良安定型」のパターンを堅持しています。
2023年3月期には営業CFの落ち込みによりフリーCFが一時的にマイナス(約-1.6億円)に転じましたが、直近2025年3月期の予想値を含むデータでは、営業CFが約35.7億円まで回復し、投資CF(約-3.6億円)と財務CF(約-0.7億円)を差し引いても大幅なキャッシュの積み上げに成功しています。

営業キャッシュフロー分析

営業CFは、2017年3月期の約61.3億円をピークに長期的には減少傾向にありましたが、2023年3月期の約12.8億円を底としてV字回復の兆しを見せています。2024年3月期は約34.6億円、2025年3月期予測は約35.7億円と、30億円台半ばで安定しつつあります。
本業のキャッシュ創出力は一時的な原材料価格の高騰や需要動向の影響を受けた時期もありましたが、足元では安定した収益基盤を取り戻しており、事業活動から確実に現金を獲得できている点は評価されます。

投資キャッシュフロー・設備投資分析

設備投資額に注目すると、2023年3月期(約29.6億円)、2024年3月期(約38.4億円)、そして2025年3月期予測(約51.0億円)と、近年は非常に積極的な投資姿勢が鮮明になっています。一方で投資CF全体としては、2025年3月期は約-3.6億円に留まっており、これは設備投資額を上回る資産の売却や投資有価証券の回収等が行われている可能性を示唆しています。
将来の成長に向けた「攻めの姿勢」を強めつつも、投資効率を意識した資産の入れ替えを行っている様子が見て取れます。

フリーキャッシュフロー分析

フリーCF(営業CF+投資CF)は、2023年3月期のマイナス(約-1.6億円)を除き、概ねプラスで推移しています。特に直近の2024年3月期は約26.9億円、2025年3月期は約32.0億円と、高い水準を確保しています。
これだけのフリーCFを生み出す力があることは、設備投資への資金充当だけでなく、配当や自社株買いといった株主還元、あるいは将来的なM&Aに対する余力が十分に備わっていることを示しています。

財務戦略・現金残高の評価

財務CFは、多くの年度でマイナスとなっており、借入金の返済や配当金の支払いを着実に行っていることがわかります。特筆すべきは現金等残高の積み上がりです。2017年3月期には約39.5億円であった手元流動性は、2024年3月期に約78.6億円、2025年3月期予測では約114.6億円と急増しています。
財務CFのマイナス幅が小さくなっていること、および現金残高の急増から、将来の大規模投資に向けた待機資金の確保、あるいは財務基盤のさらなる強化を図っている段階にあると分析できます。

キャッシュフロー総合評価

大日本塗料のキャッシュフローは、「本業で稼いだ現金の範囲内で投資と還元を行い、さらに手元の現金を積み増す」という極めて堅実な運営がなされています。2025年3月期予測における現金残高100億円超えは、同社の事業規模(営業CF 30億円前後)に対して非常に潤沢な水準です。
財務健全性は極めて高い一方、投資家としては「積み上がったキャッシュを今後どのように成長投資や株主還元へ配分していくか」という資本効率(ROE)の観点からの経営戦略が、次の注目ポイントとなるでしょう。総じて、極めて安定した財務体質を持つ企業であると評価できます。

DCF法による理論株価分析

DCF分析の前提条件

パラメータ 説明
WACC(割引率) 6.5% 加重平均資本コスト
FCF成長率 3.0% 予測期間中の年平均成長率
EV/FCF倍率 13.86倍 ターミナルバリュー算出用(現在の市場評価)
予測年数 5年 将来FCFの予測期間
発行済株式数 29,748,823株 理論株価算出の分母
現金及び現金同等物 115億 非事業資産として加算
有利子負債 180億 企業価値から控除

将来フリーキャッシュフロー予測

予測年 予測FCF 現在価値(PV)
1年目 33億 31億
2年目 34億 30億
3年目 35億 29億
4年目 36億 28億
5年目 37億 27億
ターミナルバリュー 515億 376億
フリーキャッシュフロー推移(実績 + DCF予測)-10億0百万10億20億30億40億2123252028予2030予2031予0FCF実績FCF予測

理論株価の算出プロセス

① 予測FCF現在価値の合計 145億
② ターミナルバリューの現在価値 376億
③ 事業価値(① + ②) 521億
④ 加算: 現金及び現金同等物 +115億
⑤ 控除: 有利子負債 -180億
⑥ 株主価値(③ + ④ − ⑤) 456億
DCF理論株価
1,532円
現在の株価
1,274円
乖離率(割安)
+20.3%

感度分析(理論株価: 円)

WACC(横軸)とFCF成長率(縦軸)を変化させた場合の理論株価の変動を示します。

WACC →
FCF成長率 ↓
4.5%5.5%6.5%7.5%8.5%
-2.0%1,3101,2481,1891,1331,079
0.5%1,4891,4191,3521,2891,230
3.0%1,6861,6071,5321,4611,394
5.5%1,9011,8131,7291,6501,574
8.0%2,1372,0381,9441,8551,771

※ 緑色: 現在株価(1,274円)より高い(割安方向) / 赤色: 低い(割高方向) / 青背景: 現在の前提条件

DCF分析の総合評価

大日本塗料株式会社(4611)のDCF分析の結果、理論株価は1,532円と算出されました。現在の市場価格1,274円と比較すると、理論上の乖離率は+20.3%であり、現在の株価はファンダメンタルズに対して「割安」な水準にあると評価できます。この2割強のセーフティ・マージン(安全域)は、投資家にとって一定の魅力を持つ水準ですが、この乖離が解消されるためには、予測期間におけるフリーキャッシュフロー(FCF)の着実な成長と、市場全体による同社の再評価が不可欠です。

フリーキャッシュフローの質

過去のFCF実績を振り返ると、2017年3月期の6,770百万円から2023年3月期の-167百万円まで、非常に大きな変動が見られます。特に2020年から2023年にかけては、原材料価格の高騰や需要動向の変化により、FCFの創出力が一時的に低下していました。しかし、2024年3月期(2,691百万円)および2025年3月期予測(3,206百万円)と回復基調にあり、将来予測の起点となるキャッシュフローは改善傾向にあります。予測値として設定されている年率3.0%の成長は、過去の乱高下を考慮すると「一定の安定性」を前提としており、原材料コストの管理能力や不採算事業の整理など、収益構造の安定化が予測の信頼性を左右する鍵となります。

前提条件の妥当性

本分析ではWACC(加重平均資本コスト)を6.5%と設定しています。これは日本の製造業における平均的な水準と比較して妥当、あるいはやや保守的な設定と言えます。一方、予測期間のFCF成長率3.0%は、成熟産業である塗料業界においてはやや強気な設定とも捉えられますが、近年の業績回復スピードを反映したものと解釈できます。出口マルチプル(EV/FCF倍率)13.86倍についても、同社の過去のバリュエーション推移から大きく逸脱したものではなく、全体として楽観的すぎず、かつ過度に悲観的でもないバランスの取れた前提条件であると評価できます。

ターミナルバリューの影響

計算結果によると、事業価値521億円のうち、ターミナルバリュー(TV)の現在価値が376億円を占めており、事業価値全体の約72%が5年目以降の継続価値に依存しています。これはDCF法において一般的な傾向ではありますが、将来の不確実性が企業価値の大部分を占めていることを意味します。特に大日本塗料のような景気敏感な側面を持つ企業では、6年目以降の永久成長率や市場環境のわずかな変化が、理論株価を大きく押し下げるリスクを孕んでいる点に注意が必要です。

感度分析から読み取れること

本分析のパラメータにおいて、理論株価に最も大きな影響を与えるのは「WACC」と「永久成長率(または出口マルチプル)」の組み合わせです。例えば、WACCが1%上昇して7.5%になった場合、あるいは成長率が想定を下回った場合、20.3%の乖離率は急速に縮小します。現在の割安感は、WACC 6.5%という割引率が市場の要求リターンと合致しているという前提に強く依存しています。金利上昇局面や資本コストへの意識が高まる局面では、この感応度の高さが株価のボラティリティにつながる可能性があります。

投資判断への示唆

DCF分析の数値上は、現行株価1,274円に対して20%以上のアップサイドが見込まれるという結果になりました。これは、現在の市場が同社の将来のキャッシュフロー創出能力を過小評価している、あるいは過去の業績の不安定さをリスクとして重く見ている可能性を示唆しています。ただし、DCF法はあくまで一定の仮定に基づくシミュレーションであり、将来のFCFが予測通りに推移することを保証するものではありません。投資判断にあたっては、この理論的な割安感に加え、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった他の指標、および業界内の競争環境や原材料価格の推移など、多角的な視点から検討を行うことが重要です。最終的な投資決定は、これらのリスク要因を十分に考慮した上で、ご自身の責任において行われるようお願いいたします。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

FCFは年度ごとの変動が大きいものの、直近2期は3,000百万円台で推移しており、2026年3月期の売上高急増計画を背景に年率3%の成長を推定。WACCは成熟した化学セクターの安定性と低PBR(0.56倍)による資本コスト意識を考慮し、リスクプレミアムを加えて6.5%と算出。永久成長率は国内の長期的な経済成長見通しに基づき0.8%に設定。有利子負債は現預金水準と事業規模から18,000百万円と推計した。

⚠️ 免責事項: 本DCF分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 DCF法は前提条件(WACC、成長率等)に大きく依存するため、感度分析を参考に幅を持って評価してください。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

リバースDCF分析(市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(1,274円)を正当化するために必要なインプライドFCF成長率を逆算しました。

インプライドFCF成長率
-0.7%
市場が織り込む成長率
AI推定FCF成長率
3.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-3.7%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価1,274円
インプライドFCF成長率-0.66%
AI推定FCF成長率3.00%
成長率ギャップ-3.66%(悲観的)
インプライドWACC30.00%
AI推定WACC6.50%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

大日本塗料株式会社(4611)の現在株価1,274円から算出されるインプライドFCF(フリーキャッシュフロー)成長率は-0.66%です。これは、市場が同社の将来的なキャッシュフロー創出能力について、長期的に微減、あるいは現状維持すら困難であるという極めて「悲観的」な見通しを反映していることを示唆しています。 AIが推定する成長率3.00%と比較すると、-3.66%という大きなマイナスの乖離(成長率ギャップ)が生じています。過去の業績推移を見ると、塗料業界特有の原材料価格の変動を受けつつも、同社は一定の利益水準を維持しており、市場の期待値は実力値よりも保守的に見積もられている可能性が高いと考えられます。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込む「マイナス成長(-0.66%)」という水準は、日本の塗料業界が成熟期にあることを考慮しても、やや過小評価の側面があると言わざるを得ません。大日本塗料は、重防食塗料や建材用、工業用塗料において国内有数のシェアを有しており、インフラ整備や修繕需要という安定した収益基盤を持っています。 原材料コストの上昇リスクや国内人口減少に伴う新設着工の鈍化という懸念材料はあるものの、同社は製品価格への転嫁や海外展開、高付加価値製品へのシフトを進めています。AI推定の3.00%という成長率は、これらの効率化や安定需要を前提とした数値ですが、市場が求める「現状維持以下の水準(-0.66%)」を上回る成果を出す可能性は十分に検討に値します。

投資判断への示唆

今回のリバースDCF分析において最も注目すべき点は、インプライドWACC(30.00%)とAI推定WACC(6.50%)の極端な乖離です。市場価格に基づくインプライドWACCが30.00%という異常に高い数値を示していることは、投資家が同社に対して過度なリスクプレミアムを要求しているか、あるいは現在の株価が本来の企業価値に対して著しく割安な水準に放置されている可能性を示唆しています。 AI推定の成長率(3.00%)と適正な資本コスト(6.50%)を前提とするならば、現在の株価1,274円は上昇余地を残していると考えられますが、一方で市場がなぜこれほどまでに慎重な評価を下しているのか(流動性リスクや業界特有の不確実性など)を慎重に見極める必要があります。この成長率ギャップを「収益機会」と捉えるか、「未知のリスク」と捉えるかは、投資家の皆様の判断に委ねられます。

拡張感応度分析・シナリオ分析

感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

金利上昇はWACCの増加、景気後退はFCF成長率の低下として理論株価に影響します。

WACC →
FCF成長率 ↓
4.5%5.5%6.5%7.5%8.5%
-2.0%1,3101,2481,1891,1331,079
0.5%1,4891,4191,3521,2891,230
3.0%1,6861,6071,5321,4611,394
5.5%1,9011,8131,7291,6501,574
8.0%2,1372,0381,9441,8551,771

※ 緑色: 現在株価(1,274円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
WACC: 5.0% / FCF成長率: 8.0%
永久成長率: 1.2%
2,087円
+63.8%
基本シナリオ
WACC: 6.5% / FCF成長率: 3.0%
永久成長率: 0.8%
1,532円
+20.3%
悲観シナリオ
WACC: 8.0% / FCF成長率: -2.0%
永久成長率: 0.4%
1,106円
-13.2%

シナリオ分析の総合評価

大日本塗料株式会社(4611)の現在株価1,274円に対し、基本シナリオにおける理論株価は1,532円と算出されました。これは、現状の市場価格が適正価値に対して約20.3%の割安水準にあることを示唆しています。理論株価のレンジは、悲観シナリオの1,106円から楽観シナリオの2,087円と幅広く、現在の株価は「悲観」と「基本」の中間に位置しています。市場は同社の将来成長性に対し、基本シナリオよりも慎重な、あるいはやや保守的な評価を下している状況と言えます。

金利変動の影響

WACC(加重平均資本コスト)が5.0%(楽観)から8.0%(悲観)まで変動する条件下において、理論株価は大きく変動します。基本シナリオのWACC 6.5%から1.5ポイント上昇して8.0%となった場合、他の要因も相まって理論株価は1,106円まで下落します。これは、同社のような製造業において、金利上昇に伴う資本コストの増加が企業価値に与える感応度が高いことを示しています。将来的な金利上昇局面においては、有利子負債コストの増大が理論株価の押し下げ要因となるリスクに留意が必要です。

景気変動の影響

FCF(フリーキャッシュフロー)成長率が8.0%(楽観)から-2.0%(悲観)まで変動するシナリオでは、理論株価に約981円の開きが生じます。塗料事業は建設や自動車、インフラ設備などの需要に左右されるため、景気後退に伴う成長率の鈍化は直接的に企業価値に反映されます。しかし、悲観シナリオ(成長率-2.0%)においても理論株価の下落率は現在株価比で-13.2%に留まっており、極端な景気減速を織り込んだとしても、大幅な株価暴落リスクは一定程度限定的であると評価できます。

投資判断への示唆

本分析における最大のポイントは、現在株価1,274円が基本シナリオの理論株価1,532円を下回っており、約258円の「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」が確認できる点です。基本シナリオへの回帰を想定する場合、約20%超の上値余地が期待できます。一方で、悲観シナリオ下での下値目途は1,106円であり、下方リスク(-13.2%)よりも上方期待(+20.3%)が上回るリスク・リターン特性を有しています。投資家は、今後の塗料需要の推移と、金利動向に伴う資本コストの変化を注視しつつ、この安全域をどう評価するかが判断の鍵となります。

モンテカルロシミュレーション

シミュレーション結果サマリー

WACC・FCF成長率・永久成長率をそれぞれ正規分布でランダムに変動させ、100,000回のDCF計算を実行した結果です。DCF計算の非線形性(特にゴードン成長モデルの割引構造)により、理論株価の分布は対数正規分布に近い形状となるため、ヒストグラムは対数スケールで表示しています。

平均理論株価
1,932円
中央値
1,885円
90%レンジ(5-95%点)
1,381 〜 2,647円
割安確率
98.1%
理論株価 > 現在株価
モンテカルロシミュレーション:理論株価の確率分布(100,000回・対数スケール)0.0%1.2%2.3%3.5%4.7%5.8%1,280円1,428円1,593円1,777円1,982円2,212円2,467円2,752円シミュレーション分布現在株価

※ ヒストグラムは対数スケールで表示し、外れ値の影響を抑えるため分布の中央96%(2〜98パーセンタイル)を表示しています。対数スケールにより、DCF計算の非線形性に起因する右裾の歪みが補正され、分布の形状をより正確に把握できます。平均・中央値・パーセンタイルなどの統計値は元のスケールで有効サンプル全体から計算しています。

理論株価のパーセンタイル分布

シミュレーション結果を小さい順に並べたとき、各パーセンタイルにおける理論株価を示します。

パーセンタイル 5% 10% 25% 50% 75% 90% 95%
理論株価1,381円1,474円1,655円1,885円2,154円2,442円2,647円

※ 緑色: 現在株価(1,274円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 中央値(50%タイル)

リスク指標

理論株価の標準偏差 393円
5% VaR(下位5%タイル) 1,381円
変動係数(CV = σ / 平均) 20.3%
有効シミュレーション数 100,000 / 100,000

確率分布の解釈

今回のモンテカルロシミュレーションの結果、大日本塗料(4611)の理論株価は、平均値1,932円、中央値1,885円という結果が得られました。平均値が中央値を上回る右裾の長い分布(対数正規分布に近い形状)は、DCFモデルにおけるWACC(加重平均資本コスト)や永久成長率といった変数が分母に位置する非線形的な特性を反映しています。5パーセンタイル(1,381円)から95パーセンタイル(2,647円)という広いレンジは、FCF成長率の標準偏差(2.50%)に起因する将来予測の不確実性を示唆していますが、分布の大部分が現在株価を大きく上回る領域に集中している点が特徴的です。

リスク評価

リスク指標としての「5% VaR(バリュー・アット・リスク)」は1,381円と算出されました。これは、シミュレーション上の非常に悲観的なシナリオ(下位5%のケース)においても、理論上の価値が1,381円を下回る確率は限定的であることを意味します。変動係数(CV)は約20.3%(標準偏差393円 / 平均1,932円)であり、製造業のバリュエーションとしては標準的な感応度を示しています。特筆すべきは、この5% VaRの水準ですら、現在株価(1,274円)よりも約8.4%高い位置にあることから、下方リスクに対する統計的な耐性は極めて高いと評価できます。

現在株価の統計的位置づけ

現在株価1,274円は、本シミュレーションで得られた理論株価の分布において、最下限に近い位置にあります。割安確率は98.1%に達しており、これは100,000回の試行のうち98,100回において「理論株価が現在株価を上回った」ことを示しています。パーセンタイル分布で見ると、現在株価は5%点(1,381円)よりもさらに低い位置にあり、統計的には市場が同社の将来キャッシュフローや成長性を極めて保守的、あるいは過小に評価している状態にあると分析されます。

投資判断への示唆

本シミュレーション結果に基づくと、大日本塗料の現在株価は、バリュエーションの観点から非常に強力な「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」を備えていると言えます。平均理論株価(1,932円)と現在株価(1,274円)の間には約51.6%の乖離があり、大幅な割安圏にあります。悲観的なシナリオである5% VaR(1,381円)を基準としてもなお現在価格を上回っている事実は、中長期投資家にとって魅力的なリスク・リワード・レシオを示唆しています。ただし、この統計的優位性が即座に株価上昇に結びつくとは限らず、市場の流動性や業界動向、資本効率改善に向けた経営施策など、定性的な側面も含めた総合的な判断が求められます。

📖 モンテカルロシミュレーションの読み方:
  • 割安確率: シミュレーション結果のうち、理論株価が現在株価を上回った割合。50%超なら統計的に割安寄り
  • 90%レンジ(5-95%点): 全シミュレーション結果を並べたときの下位5%点から上位95%点までの範囲。幅が広いほど不確実性が高い
  • 5% VaR: 悲観的な条件下でも95%の確率でこの値以上になると期待される最低ライン
  • 変動係数: 平均に対する標準偏差の比率。30%超だとパラメータ感度が高い(結果の信頼性に注意)
⚠️ 免責事項: 本モンテカルロシミュレーションはAIが推定したパラメータの分布に基づく統計的な参考値であり、投資助言ではありません。 入力パラメータに正規分布を仮定し、DCF計算の非線形性により出力は対数正規分布に近い形状となります。パラメータ間の独立性の仮定など、実際の市場とは異なる前提を含んでいます。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS/BPSベース理論株価分析

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 59.50円 1株あたり利益
直近BPS 2275.00円 1株あたり純資産
1株配当 58.00円 年間配当金
EPS成長率 12.0% 予測期間中の年平均
割引率 8.0% 将来EPSの割引率
想定PER 21.40倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2026年3月 2275.00 59.50 58.00 1.50 2276.50 2.62 0.00 21.40 0.56 59.50 1,273
2027年3月 2276.50 66.64 58.00 8.64 2285.14 2.93 12.00 21.40 0.62 61.70 1,426
2028年3月 2285.14 74.64 58.00 16.64 2301.78 3.27 12.00 21.40 0.69 63.99 1,597
2029年3月 2301.78 83.59 58.00 25.59 2327.37 3.63 12.00 21.40 0.77 66.36 1,789
2030年3月 2327.37 93.62 58.00 35.62 2362.99 4.02 12.00 21.40 0.85 68.82 2,004
ターミナル 1363.59
PER×EPS 理論株価
1,273円
-0.1%
DCF合計値
1,683.96円
+32.2%
現在の株価
1,274円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 320.37円
ターミナルバリュー現在価値 1363.59円(全体の81%)
DCF合計理論株価 1,683.96円

EPS/BPSモデルの総合評価

本モデルによる分析の結果、大日本塗料(4611)の理論株価は、評価手法によって異なる側面を見せています。PER(株価収益率)を基準とした理論株価は1,273円となり、現在の市場価格(1,274円)とほぼ一致しています。これは、現在の株価が直近の利益水準と想定PER(21.40倍)を適正に反映していることを示唆しています。一方で、将来の利益成長を割り引いたDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)合計理論株価は1,683.96円となり、現在株価に対して+32.2%の乖離(割安感)が生じています。この乖離は、市場が将来の「年率12.0%」という高いEPS成長継続を完全には織り込んでいない可能性、あるいは資本コストに対する期待がより慎重であることを示しています。

ROE推移の見通し

モデル上では、ROE(自己資本利益率)が2.62%から2030年3月期には4.02%へと段階的に改善する見通しとなっています。特筆すべきは、1株当たり配当(58.00円)が直近EPS(59.50円)に対して非常に高い配当性向(約97%)で設定されている点です。これにより、利益の大部分が株主に還元されるため、期末BPS(1株純資産)の蓄積が緩やかになります(2,275円から2,363円への微増)。通常、BPSが蓄積されるとROEは低下圧力を受けますが、本ケースでは分母となる純資産の伸びを抑えつつ、分子となるEPSが12.0%成長することで、資本効率が向上するシナリオとなっています。ただし、依然としてROEの水準は割引率(8.0%)を下回っており、PBR(株価純資産倍率)も0.56倍から0.85倍の低水準に留まる予測です。

前提条件の妥当性

本モデルの前提条件については、慎重な検討が必要です。まず、EPS成長率12.0%という設定は、成熟産業である塗料業界において比較的強気な見通しと言えます。この成長が達成されない場合、DCF合計値は大きく下方修正されるリスクがあります。また、想定PER 21.40倍は、現在のROE水準(2〜4%台)に対しては割高な評価とも読み取れます。一般的にROEが資本コスト(本モデルでは8.0%)を下回る企業は、PBR1倍割れが常態化しやすく、高いPERを維持するには、特筆すべき成長性や株主還元方針の継続が不可欠となります。割引率8.0%は、標準的なエクイティ・リスク・プレミアムを考慮すると妥当な水準です。

投資判断への示唆

以上の分析を踏まえると、現在の株価1,274円は短期的にはPERベースの妥当水準にありますが、長期的には将来の成長性と高い配当利回りが下支えとなる可能性があります。現在の配当利回りは約4.55%(58円/1,274円)と高水準であり、インカムゲインを重視する投資家にとっては魅力的な水準と言えるでしょう。投資判断に際しては、「年率12%の利益成長が維持可能か」という点と、PBR1倍割れ改善に向けた「更なる資本効率向上(ROEの改善)」が実現するかを注視する必要があります。市場価格とDCF理論株価の32.2%の乖離を、将来のキャピタルゲインの余地と捉えるか、あるいは成長期待に対する不透明感と捉えるかは、投資家のリスク許容度と成長シナリオへの信頼に委ねられます。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のEPS推移は2025年にかけて急拡大の傾向にありますが、塗料業界の成熟性と景気循環による利益変動リスクを考慮し、今後5年間の持続可能な成長率を12%と推定しました。割引率は、日本企業の一般的な資本コストを基準に、同社の安定した事業基盤を反映して8.0%に設定しています。現状のPBR0.56倍という低水準な評価は、市場が将来の成長持続性に対して慎重であることを示唆しており、これらを総合的に反映した保守的なパラメータとしています。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS成長率0%が続く場合の理論株価

将来のEPS成長率を0%(横ばい)と仮定した場合の試算です。本編のベースシナリオとは前提が異なります。

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 59.50円 1株あたり利益
直近BPS 2275.00円 1株あたり純資産
1株配当 58.00円 年間配当金
EPS成長率 0.0% 予測期間中の年平均
割引率 8.0% 将来EPSの割引率
想定PER 21.40倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2026年3月 2275.00 59.50 58.00 1.50 2276.50 2.62 0.00 21.40 0.56 59.50 1,273
2027年3月 2276.50 59.50 58.00 1.50 2278.00 2.61 0.00 21.40 0.56 55.09 1,273
2028年3月 2278.00 59.50 58.00 1.50 2279.50 2.61 0.00 21.40 0.56 51.01 1,273
2029年3月 2279.50 59.50 58.00 1.50 2281.00 2.61 0.00 21.40 0.56 47.23 1,273
2030年3月 2281.00 59.50 58.00 1.50 2282.50 2.61 0.00 21.40 0.56 43.73 1,273
ターミナル 866.59
PER×EPS 理論株価
1,273円
-0.1%
DCF合計値
1,123.15円
-11.8%
現在の株価
1,274円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 256.56円
ターミナルバリュー現在価値 866.59円(全体の77.2%)
DCF合計理論株価 1,123.15円

0%成長シナリオの意味

本シナリオは、大日本塗料(4611)が将来にわたって収益性を高めることができず、EPS(1株当たり利益)が59.50円で横ばいに推移すると仮定した「ゼロ成長モデル」です。この分析により、現在の株価にどの程度の成長期待が織り込まれているかを可視化することができます。

特筆すべき点は、想定PER(21.40倍)を用いた理論株価(1,273円)が、現在の市場価格(1,274円)とほぼ一致している点です。これは、現在の市場価格が「成長を前提とせず、現在の利益水準を維持し続けること」を一定程度織り込んだ水準にある可能性を示唆しています。一方で、ROEが2.6%台と低位に留まる中、配当性向を極めて高く維持(EPS 59.50円に対し配当58.00円)することで、BPSの蓄積よりも株主還元に比重を置いた構造が浮き彫りとなっています。

ベースシナリオとの対比

本編のベースシナリオ(EPS成長率:約12.0%)と比較すると、本0%成長シナリオでは理論上の価値が大きく抑制されています。ベースシナリオが示す「成長による上値余地」に対し、本シナリオは「現状維持に留まった場合のボトムライン(底値圏)」を把握するための指標となります。

  • バリュエーションの差: 成長率を12%から0%に引き下げたことで、DCF法による理論株価(1,123.15円)は現在株価を約11.8%下回る結果となりました。これは、投資家が現在の株価を正当化するためには、少なくとも一定の成長、あるいは資本効率(ROE)の改善を期待している必要があることを示しています。
  • 配当の役割: 利益成長がゼロであっても、現在株価に対する配当利回りは約4.5%と高い水準にあります。成長が期待できない局面では、この高い配当利回りが株価の下支え要因として機能する一方で、再投資による自己資本の積み上げ(BPS成長)が限定的になるというトレードオフの関係が確認できます。

留意点

本モデルは特定の前提条件に基づいた試算であり、将来の株価推移を保証するものではありません。以下の点に留意が必要です。

  • PERの妥当性: 本モデルでは想定PERを21.40倍と置いていますが、成長率が長期的に0%と見なされた場合、市場が許容するPERが低下(マルチプルの縮小)し、理論株価がさらに下押しされるリスクがあります。
  • 資本効率の影響: ROEが2.6%台という水準は、一般的に資本コストを下回っている可能性があり、この状態が継続することはPBRの低迷(本シナリオでは0.56倍)が常態化することを意味します。
  • 外部環境の変化: 塗料業界特有の原材料価格の変動や、主要顧客である自動車・建設業界の動向により、利益が「横ばい」を維持できず減益に転じるリスクも考慮すべき要素です。

以上の分析結果は、投資判断における一つの参照情報として活用し、最終的な意思決定はご自身の判断で行ってください。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のEPS推移は2025年にかけて急拡大の傾向にありますが、塗料業界の成熟性と景気循環による利益変動リスクを考慮し、今後5年間の持続可能な成長率を12%と推定しました。割引率は、日本企業の一般的な資本コストを基準に、同社の安定した事業基盤を反映して8.0%に設定しています。現状のPBR0.56倍という低水準な評価は、市場が将来の成長持続性に対して慎重であることを示唆しており、これらを総合的に反映した保守的なパラメータとしています。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

拡張感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

WACC(加重平均資本コスト)は、株主資本コストと負債コストを資本構成比率で加重平均した「企業の資金調達コスト」です。WACCが高いほど将来キャッシュフローの現在価値は低くなり、理論株価は下がります。FCF成長率は、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた「企業が自由に使えるキャッシュ(フリーキャッシュフロー)」が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準のWACC(6.5%)とFCF成長率(3.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

割引率は、将来の利益やキャッシュフローを現在価値に換算するための率で、投資家が求めるリターン(期待収益率)に相当します。割引率が高いほど将来利益の現在価値は低くなり、理論株価は下がります。EPS成長率は、1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準の割引率(8.0%)とEPS成長率(12.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: PER × EPS(理論株価: 円)

PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PERが高いほど市場がその企業の将来成長に高い期待を持っていることを意味します。EPS(1株あたり利益)は、企業の純利益を発行済株式数で割った値で、1株あたりの収益力を表します。

基準のPER(21.4倍)とEPS(60円)から、PERは1倍刻み(±100倍)・EPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

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拡張感度分析: PBR × BPS(理論株価: 円)

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回ると、株価が解散価値を下回っていることを意味し、割安と判断される場合があります。BPS(1株あたり純資産)は、企業の純資産を発行済株式数で割った値で、1株あたりの解散価値を表します。

基準のPBR(0.6倍)とBPS(2275円)から、PBRは0.1倍刻み(±10.0倍)・BPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

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残留利益モデル分析(Residual Income Model)

残留利益モデル(Residual Income Model)

残留利益モデルは、現在のBPS(1株純資産)に将来の「超過利益」の現在価値を加算して理論株価を算出します。 株主資本コストを上回るROEを持続できる企業ほど、BPSに大きなプレミアムが付きます。

理論株価 = BPS₀ + Σ[(ROEₜ − r) × BPSₜ₋₁ / (1+r)ᵗ] + TV/(1+r)ⁿ

前提条件

パラメータ 説明
直近BPS 2275.00円 1株あたり純資産(出発点)
直近EPS 59.50円 1株あたり利益
株主資本コスト (r) 8.0% 株主の要求収益率(エクイティチャージの基準)
EPS成長率 12.0% 予測期間中の年平均
1株配当 58.00円 年間配当金(BPS蓄積に影響)
予測年数 5年 個別予測期間

残留利益の年次予測

年度 期首BPS EPS ROE(%) エクイティチャージ 残留利益 PV(残留利益) 期末BPS
2026年3月 2275.00 59.50 2.62 182.00 -122.50 -113.43 2276.50
2027年3月 2276.50 66.64 2.93 182.12 -115.48 -99.01 2285.14
2028年3月 2285.14 74.64 3.27 182.81 -108.17 -85.87 2301.78
2029年3月 2301.78 83.59 3.63 184.14 -100.55 -73.91 2327.37
2030年3月 2327.37 93.62 4.02 186.19 -92.57 -63.00 2362.99
ターミナル 残留利益の永続価値: -1,157.12円 → PV: -787.52円 -787.52
理論株価の構成
現在BPS
2,275円
簿価部分
+
残留利益PV合計
-435.21円
超過利益の現在価値
+
ターミナルPV
-787.52円
永続価値の現在価値
=
RIM理論株価
1,052円
-17.4%
現在の株価: 1,274円
残留利益モデル:ROEとエクイティチャージの推移2.0%3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%2627282930ROE(%)株主資本コスト(8.0%)
残留利益と現在価値の推移-130円-120円-110円-100円-90円-80円-70円-60円2627282930残留利益(円)PV(残留利益)(円)
📖 残留利益モデルの読み方:
  • 残留利益 > 0(ROE > 株主資本コスト)→ 企業はBPS以上の価値を創出。理論株価 > BPS となりプレミアム付与
  • 残留利益 < 0(ROE < 株主資本コスト)→ 資本効率が不十分。理論株価 < BPS となりディスカウント
  • DCF法との違い: RIMはBPS(純資産)を出発点とするため、資産ベースの評価に強く、安定企業・金融機関の評価に適しています

残留利益の評価

本モデルにおける大日本塗料(4611)の評価で最も顕著な点は、予測期間中(2026年3月期〜2030年3月期)のROEが2.62%から4.02%という低水準に留まっていることです。投資家が期待する株主資本コスト(8.0%)を大きく下回っており、エクイティチャージ(資本コスト相当額)を利益でカバーできていない状態が示唆されています。その結果、各年度の残留利益は-122.50円から-92.57円と継続的にマイナスとなっており、会計上の利益は計上されているものの、資本効率の観点からは「価値創造」に至っていない厳しい評価結果となりました。

BPSプレミアム/ディスカウントの解釈

理論株価の算出過程において、現在BPS(2275.00円)に対し、将来の残留利益PV合計(-435.21円)とターミナルバリューPV(-787.52円)が大きなマイナス要因として作用しています。このことは、企業の解散価値であるBPSに対し、市場価値が大幅にディスカウントされるべき状況を意味します。理論株価1,052円はBPSの約46%の水準に相当し、現状の低いROEが継続すると仮定した場合、資産価値の半分以上が資本効率の低さによって毀損していると解釈されます。

他の評価手法との比較

PBR(株価純資産倍率)の観点では、現在株価1,274円に対しBPSが2,275円であるため、実績PBRは約0.56倍となります。これは「PBR1倍割れ」の状態であり、本RIMモデルが示す「ROE < 株主資本コスト」という構造的課題と整合性があります。一方で、DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)と比較した場合、RIMはBPSという実在の会計数値を起点とするため、成長期待への過度な依存を抑えた保守的な評価になりやすい傾向があります。現在株価(1,274円)が理論株価(1,052円)を上回っている事実は、市場がモデル想定以上のROE改善や、保有資産の含み益、あるいは業界再編への期待を一定程度織り込んでいる可能性を示唆しています。

投資判断への示唆

本RIMモデルによる解析の結果、理論株価は1,052円となり、現在株価(1,274円)との乖離率は-17.4%と算出されました。この数値は、現在の株価が資本効率の実態に対してやや割高な水準にあることを示唆しています。投資家が注目すべきポイントは、同社が今後ROEを資本コストである8.0%にどこまで近づけられるかという点に集約されます。東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請を受け、収益性改善や株主還元強化が加速し、ROEがモデル想定の4.02%を超えて上昇するシナリオを描けるかどうかが、投資判断の鍵となるでしょう。

⚠️ 注意: 残留利益モデルの結果は、EPS成長率・株主資本コスト・BPSの前提条件に大きく依存します。 また、会計基準の違い(日本基準/IFRS)によりBPSの定義が異なる場合があります。投資判断の際は他の手法と合わせてご検討ください。

リバースDCF分析(EPSベース・市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(1,274円)を正当化するために必要なインプライドEPS成長率を逆算しました。

インプライドEPS成長率
3.6%
市場が織り込む成長率
AI推定EPS成長率
12.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-8.4%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価1,274円
インプライドEPS成長率3.64%
AI推定EPS成長率12.00%
成長率ギャップ-8.36%(悲観的)
インプライド割引率50.00%
AI推定割引率8.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

大日本塗料株式会社(4611)の現在の株価1,274円に基づくリバースDCF分析の結果、市場が織り込んでいる将来のEPS成長率(インプライド成長率)は3.64%となりました。これは、AIが推定する成長率である12.00%と比較して-8.36%の大幅な乖離があり、現在の市場の評価は極めて「悲観的」であると捉えることができます。また、インプライド割引率が50.00%という非常に高い数値を示している点は、市場が将来の利益確定に対して極めて高い不確実性(リスク)を見込んでいるか、あるいは現在の株価がファンダメンタルズに対して著しく割安な水準に放置されている可能性を示唆しています。

インプライド成長率の実現可能性

市場が期待する年率3.64%という成長率は、塗料業界の成熟度や大日本塗料の過去の業績推移を考慮すると、保守的で十分に実現可能な水準であると考えられます。一方で、AIが推定する12.00%という成長率は、原材料価格の安定化や高付加価値製品へのシフト、あるいは構造改革による利益率の改善など、同社がポジティブな成長シナリオを歩むことを前提としています。市場が織り込む3.64%とAI推定の12.00%との間にある8.36%のギャップは、投資家が同社の成長ポテンシャルを現時点では収益に反映させていないことを意味しており、この乖離が解消されるかどうかが今後の株価動向の鍵となります。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果からは、現在の株価は将来の成長期待をほとんど織り込んでいない「割安圏」にあるという側面が浮き彫りになりました。AI推定割引率(8.00%)に対してインプライド割引率(50.00%)があまりに高いことは、現在の株価が適正価値を大きく下回っている可能性、あるいは市場が特定の重大な懸念事項を強く警戒している可能性の両面を示しています。投資家の皆様におかれましては、この3.64%という低い市場期待値が「過小評価によるチャンス」であるのか、あるいは「業界環境や個別リスクを反映した妥当な警戒」であるのか、最新の決算短信や中期経営計画における利益成長の進捗を確認しつつ、慎重にご判断いただくのが肝要です。

感応度分析・シナリオ分析

感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

金利上昇は割引率の増加、景気後退はEPS成長率の低下として理論株価に影響します。

割引率 →
EPS成長率 ↓
6.0%7.0%8.0%9.0%10.0%
7.0%1,5501,4881,4281,3721,318
9.5%1,6861,6171,5521,4901,431
12.0%1,8301,7551,6841,6171,553
14.5%1,9851,9031,8251,7511,682
17.0%2,1492,0601,9751,8951,819

※ 緑色: 現在株価(1,274円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
割引率: 6.5% / EPS成長率: 16.0%
2,038円
+60.0%
基本シナリオ
割引率: 8.0% / EPS成長率: 12.0%
1,684円
+32.2%
悲観シナリオ
割引率: 9.5% / EPS成長率: 6.0%
1,300円
+2.1%

シナリオ分析の総合評価

大日本塗料(4611)の現在株価(1,274円)を基準としたシナリオ分析の結果、理論株価のレンジは1,300円から2,038円となりました。特筆すべき点は、最も保守的な前提を置いた「悲観シナリオ」においても、理論株価が1,300円と算出され、現在株価を約2.1%上回っていることです。基本シナリオにおける理論株価は1,684円であり、現状の市場価格は、企業の成長性や資本コストを考慮した理論的価値に対して、約32.2%のディスカウント状態で取引されている可能性が示唆されています。

金利変動の影響

割引率(資本コスト)の変化は、同社の理論株価に極めて大きな影響を及ぼします。基本シナリオの8.0%から、金利低下やリスクプレミアムの縮小を想定した楽観シナリオ(6.5%)へ移行した場合、理論株価は2,038円まで上昇します。一方で、金利上昇局面を想定した悲観シナリオ(9.5%)では1,300円まで低下します。割引率が1.5%変動するごとに、理論株価が数百円単位で上下する特性を持っており、マクロ経済における金利動向や、同社の資本効率改善によるリスク低減が、株価形成における重要な変数となります。

景気変動の影響

EPS成長率の変化も、理論株価を大きく左右する要因です。基本シナリオでは年率12.0%の成長を見込んでいますが、これを景気後退や原材料価格の高騰を想定して6.0%(悲観シナリオ)まで下方修正した場合、理論株価は1,300円となります。逆に、需要回復や構造改革が奏功し16.0%(楽観シナリオ)の成長が実現した場合は、2,038円という高い評価が導き出されます。現在の株価水準は、市場が将来のEPS成長率を年率6.0%未満、あるいは割引率を9.5%以上と非常に慎重に見積もっている状態であると解釈できます。

投資判断への示唆

今回の分析結果は、現在の市場価格が理論的な「悲観シナリオ」をも下回る水準にあり、下方硬直性が期待できる一方で、上値のポテンシャルが大きいことを示しています。投資家は、現在株価と理論株価(1,684円)との間の約3割の乖離を「割安な投資機会」と捉えるか、あるいは「分析モデルに含まれない固有のリスク(塗料需要の長期的な減退、流動性の低さ等)」が反映された結果と捉えるかが判断の分かれ目となります。これらの数値はあくまで一定の前提に基づいた理論値であり、最終的な投資判断は、今後の業績推移や市場環境の変化を注視しつつ、投資家ご自身の責任において行われるようお願いいたします。

デュポン分析(ROE分解)

ROEの3要素分解(デュポン分析)

ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。

年度 純利益率(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍) = ROE(%)
17年 3月期 5.50 × 1.059 × 2.53 = 0.15
18年 3月期 6.08 × 0.972 × 2.43 = 0.14
19年 3月期 4.88 × 0.935 × 2.33 = 0.11
20年 3月期 4.79 × 0.950 × 2.11 = 0.10
21年 3月期 1.58 × 0.738 × 2.27 = 0.03
22年 3月期 3.00 × 0.761 × 2.24 = 0.05
23年 3月期 4.58 × 0.776 × 2.20 = 0.08
24年 3月期 6.42 × 0.706 × 2.21 = 0.10
25年 3月期 5.81 × 0.555 × 2.45 = 0.08
デュポン分析:ROEの3要素推移0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%1719212325純利益率(%)ROE(%)
総資産回転率と財務レバレッジの推移0.501.001.502.002.503.001719212325総資産回転率(回)財務レバレッジ(倍)
直近年度のROE構成(2025年 3月期 連結)
純利益率
5.81%
収益性
×
総資産回転率
0.555回
効率性
×
財務レバレッジ
2.45倍
借入で資本効率を145%ブースト
=
ROE
0.08%
株主資本利益率
📊 ROE変動の主因: 直近の変動は主に「総資産回転率」の変化によるものです。資産の活用効率の変化がROEに影響しています。

ROEの質の評価

大日本塗料(4611)のROEは、2017年3月期の15%(0.15)をピークに長期的な低下傾向にあり、直近の2025年3月期では8%(0.08)となっています。ROEの内訳を見ると、純利益率は2017年3月期の5.50%から2024年3月期には6.42%へと上昇を見せる局面もあり、収益性そのものは一定の水準を維持しています。しかし、ROEの主因分析にある通り、総資産回転率が1.059回(2017年)から0.555回(2025年)へと大幅に低下しており、これがROEを押し下げる要因となっています。現在のROEは収益性によって支えられているものの、資産効率の低下が全体の質を抑制している状態と評価できます。

財務レバレッジの影響

財務レバレッジは、2017年3月期の2.53倍から2020年3月期の2.11倍まで低下した後、直近の2025年3月期には2.45倍へと再び上昇しています。一般的に製造業において2倍前後のレバレッジは標準的な範囲内と言えますが、直近のROE低下局面においてレバレッジが上昇している点には注意が必要です。これは、総資産回転率の低下(資産の肥大化または売上の停滞)を、負債比率を高めることで補い、ROEの下支えを図っている構図が見て取れます。過剰なレバレッジによるリスクは現時点では限定的と考えられますが、金利上昇局面においては財務コストが収益を圧迫する可能性を留意すべきでしょう。

トレンド分析

過去9年間の推移を分析すると、明確な構造変化が確認できます。2017年から2021年にかけては、総資産回転率と純利益率の両方が低下し、ROEが15%から3%へと急落しました。その後、2022年から2024年にかけて純利益率が3.00%から6.42%へ改善したことで、ROEは10%まで回復を見せました。しかし、特筆すべきは総資産回転率の一貫した下落傾向です。2025年3月期には、純利益率が5.81%と底堅さを維持しているにもかかわらず、回転率が0.555回まで落ち込んだことで、ROEは再び8%へと低下しました。売上高に対して資産(在庫、設備投資、あるいは債権など)が効率的に機能していない、もしくは資産の膨張に売上成長が追いついていない状況が鮮明になっています。

投資判断への示唆

本分析から導き出される同社の課題は、収益性(マージン)の維持よりも、資産の効率的な活用(回転率)にあります。純利益率は2024年3月期に過去最高水準の6.42%を記録しており、コスト管理や価格転嫁などの収益改善策は一定の成果を上げていると推察されます。一方で、総資産回転率の継続的な低下は、投資家にとって「資本効率の改善余地」と捉えるか、「事業構造の重厚長大化による停滞」と捉えるかの分かれ目となります。今後、同社が資産圧縮や売上高の拡大を通じて回転率を反転させることができれば、ROEの再上昇が期待できますが、回転率の低下が止まらない場合は、さらなるレバレッジへの依存やROEの低迷を招くリスクを含んでいます。資産効率の改善策が中期経営計画等でどのように示されているかを確認することが、重要な判断材料となるでしょう。

⚠️ 注意: デュポン分析の数値はIRBankから取得した財務データに基づいています。 会計基準(日本基準/IFRS)の違いにより、株主資本の定義が異なる場合があります。

借金が利益に与える影響分析

有利子負債の概要

項目 説明
有利子負債 116億 銀行借入・社債等の利息付き負債
推定金利 1.50% 営業利益と経常利益の差から推定
推定支払利息 2億 有利子負債 × 推定金利
利息 / 純利益 比率 4.0% 純利益に対する利息負担の大きさ
推定実効税率 14.0% 1 − (純利益 / 経常利益) から推定

「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション

有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。

年度 有利子負債 推定利息 経常利益
実績
経常利益
借金なし
純利益
実績
純利益
借金なし
ROE
実績
ROE
借金なし
レバレッジ
効果
2017/03 53億 1億 65億 66億 41億 42億 14.76% 12.59% +2.17%pt
2018/03 20億 1億 69億 70億 45億 46億 14.34% 13.68% +0.66%pt
2019/03 32億 49百万 62億 63億 36億 36億 10.63% 9.78% +0.85%pt
2020/03 42億 62百万 58億 59億 35億 35億 9.59% 8.70% +0.89%pt
2021/03 59億 89百万 17億 18億 10億 11億 2.65% 2.41% +0.24%pt
2022/03 43億 64百万 33億 34億 20億 20億 5.11% 4.70% +0.41%pt
2023/03 50億 75百万 42億 43億 33億 34億 7.84% 7.13% +0.71%pt
2024/03 51億 77百万 51億 51億 46億 47億 9.99% 9.10% +0.89%pt
2025/03 116億 2億 50億 52億 43億 44億 7.89% 6.73% +1.16%pt
純利益推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション10億20億30億40億50億2017/032019/032021/032023/032025/03実績純利益借金なし純利益ROE推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション0.0%5.0%10.0%15.0%2017/032019/032021/032023/032025/03実績ROE借金なしROE
レバレッジ効果の評価(直近年度)
借金が利益を増やしている(レバレッジ効果あり)
実績ROE
7.89%
借金なしROE
6.73%
レバレッジ効果
+1.16%pt

事業利益率が借入金利を上回っており、借金によるレバレッジが株主リターン(ROE)を押し上げています。

借金の利益インパクト

大日本塗料株式会社(4611)の2025年3月期における有利子負債は116億円であり、前年度の51億円から大幅に増加しています。これに伴い、推定支払利息は2億円(推定金利1.50%)に達しています。

この支払利息が純利益に与える影響を分析すると、利息/純利益比率は4.0%にとどまっており、利益を大きく圧迫する水準ではありません。シミュレーション上、借金が全くない場合の純利益は44億円(実績比+1億円)と算出されます。経常利益ベースで見ても、借金がない場合の52億円に対し実績は50億円となっており、負債による利息負担は収益性の許容範囲内に収まっていると言えます。

レバレッジ効果の評価

財務レバレッジの効果をROE(自己資本利益率)の観点から評価すると、2025年3月期の実績ROEは7.89%に対し、借金なしと仮定した場合のROEは6.73%となります。この差分である+1.16%ptがレバレッジ効果であり、負債を活用することで株主リターンを効率的に高めていることが示されています。

過去9年間の推移を振り返ると、レバレッジ効果は一貫して「正(プラス)」を維持しています。特に2025年3月期は負債額が倍増したことで、レバレッジ効果も前年の+0.89%ptから拡大しました。これは、借入コストを上回る効率で事業利益を創出できていることを意味しており、財務レバレッジの活用が株主利益の最大化に寄与していると評価できます。

財務戦略の考察

同社の推定金利1.50%は、現在の金融環境下では標準的な水準ですが、特筆すべきは2025年3月期に有利子負債を116億円まで積み増した点です。これまでの50億円前後という保守的な負債水準から一歩踏み出し、外部資金を積極活用するフェーズへ移行した可能性が示唆されます。

塗料業界は原材料価格の変動や需要動向の影響を受けやすいものの、同社は安定して経常利益を計上しており、支払利息を十分にカバーできる「インタレスト・カバレッジ・レシオ」の高い水準を維持しています。負債が増加した現在も、ROEの実績値が借入コストを大きく上回っていることから、積極的な資金調達が成長投資や運転資金の効率化に繋がっているかどうかが今後の焦点となります。

投資家へのポイント

大日本塗料の財務状況と利益への影響を踏まえ、投資判断における注目点を整理します。

  • 資本効率の向上: 負債の活用によりROEが底上げされており、資本効率を意識した経営姿勢が見て取れます。
  • 負債急増の背景: 2025年3月期の有利子負債倍増が、将来の収益拡大(設備投資やM&A等)に向けた布石であるのか、一時的な資金需要によるものかを見極める必要があります。
  • 金利上昇リスク: 現在のレバレッジ効果は低金利環境に支えられています。今後、国内金利が上昇した際に、金利コストの上昇を上回る利益成長を継続できるかがリスク要因となります。
  • 業績の安定性: 借金なしROE(6.73%)が堅実に推移していることから、本業の稼ぐ力は安定していますが、レバレッジ依存度が高まりすぎないか注視が必要です。

負債によるリターンの増幅は、業績拡大局面では強力な武器となりますが、後退局面では逆の作用を及ぼします。同社の健全な財務レバレッジが、今後の企業価値向上にどう結びつくかを注視することが肝要です。

⚠️ 注意事項: 本分析は営業利益と経常利益の差額から支払利息を推定しており、実際の支払利息とは異なる場合があります。 営業外収支には受取利息・配当金・為替差損益等も含まれるため、あくまで参考値としてご活用ください。 また、借金を全額返済した場合の実際の影響は資金調達構造の変化を伴うため、単純なシミュレーションとは異なります。

ROIC分析(投下資本利益率)

ROIC(投下資本利益率)推移

ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。

年度 NOPAT(百万円) 投下資本(百万円) ROIC(%) WACC(%) スプレッド(%pt)
17年 3月期 4,163 33,071 12.59 6.07 +6.52
18年 3月期 4,565 33,375 13.68 6.78 +6.90
19年 3月期 3,496 37,105 9.42 6.44 +2.98
20年 3月期 3,379 40,651 8.31 6.35 +1.97
21年 3月期 882 43,654 2.02 6.13 -4.11
22年 3月期 1,939 43,351 4.47 6.37 -1.90
23年 3月期 2,986 47,112 6.34 6.34 +0.00
24年 3月期 4,281 51,126 8.37 6.39 +1.98
25年 3月期 4,128 66,091 6.25 5.92 +0.32
ROIC vs WACC推移2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%12.0%14.0%1719212325ROIC(%)WACC(%)
直近年度のROIC評価(2025年 3月期 連結)
ROIC
6.25%
投下資本利益率
WACC
5.92%
加重平均資本コスト
=
スプレッド
+0.32%pt
価値創造

ROIC水準の評価

大日本塗料(4611)のROIC(投下資本利益率)は、過去9年間で大きな変動を見せています。2017年3月期(12.59%)から2018年3月期(13.68%)にかけては10%を超える高い資本効率を誇っていましたが、その後は低下傾向を辿り、2021年3月期には新型コロナウイルス感染症の影響や原材料価格の高騰等の外部要因により2.02%まで落ち込みました。しかし、直近の2024年3月期には8.37%まで回復しており、塗料業界の中堅企業としては標準的、あるいはやや良好な水準まで持ち直しています。特筆すべきは、2025年3月期の予測において投下資本が前年度の511億円から660億円へと大幅に増加している点です。これにより、ROICは6.25%へと低下する見通しですが、これは将来の収益拡大に向けた積極的な資産投入が行われた結果と推察されます。

ROIC-WACCスプレッド分析

企業の価値創造力を示すROIC-WACCスプレッドを確認すると、分析期間の大半において正(プラス)の値を維持しており、概ね「価値創造」の状態にあると評価できます。 2018年3月期には+6.90%ptという高いスプレッドを記録しましたが、2021年3月期(-4.11%pt)および2022年3月期(-1.90%pt)は、ROICが資本コスト(WACC)を下回る「価値破壊」の局面を経験しました。これは、利益(NOPAT)の急減に対して投下資本の圧縮が追いつかなかったことが要因です。 その後、2023年3月期にスプレッド0.00%ptと均衡点に戻し、2024年3月期には+1.98%ptまで回復したことは、構造改革や価格転嫁が進展したポジティブな兆候と言えます。2025年3月期はスプレッドが+0.32%ptまで縮小する見込みですが、これはWACCが5.92%まで低下した一方で、大幅な資本投下に伴うROICの一時的な押し下げが要因であり、ネガティブな減益というよりは「成長に向けた足踏み」の側面が強いと考えられます。

投資家へのポイント

本分析から、投資家が注目すべきポイントは以下の3点に集約されます。 第一に「資本効率の回復力」です。2%台まで低迷したROICを、数年でWACC超の水準まで戻した経営の規律は評価に値します。 第二に「2025年3月期における投下資本の急増」の背景です。株主資本あるいは有利子負債が大幅に積み増されたことで、分母が拡大しています。この投下資本が次期以降、どの程度のNOPAT(税引後営業利益)を創出するのか、その投資回収のスピードが今後の株価形成に大きな影響を与えるでしょう。 第三に「WACCの安定性」です。同社のWACCは6%前後で安定しており、資本コストを意識した経営が定着しているかが問われます。 以上の数値を踏まえ、現在の資本投下が将来のキャッシュフロー増大に繋がる「先行投資」であると判断するか、あるいは「効率性の鈍化」と捉えるかが、投資判断の分かれ目となります。

⚠️ 注意: WACCは簡易推定値です(株主資本コスト7%想定、負債コストは推定支払利息から算出)。 実際のWACCはCAPMや市場データに基づくより精緻な計算が必要です。

ROIC逆ツリー分析

ROIC逆ツリー分解

ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。

年度 売上高(百万円) NOPATマージン(%) × 投下資本回転率(回) = ROIC(%)
17年 3月期 74,500 5.59 × 2.253 = 12.59
18年 3月期 74,000 6.17 × 2.217 = 13.68
19年 3月期 73,740 4.74 × 1.987 = 9.42
20年 3月期 73,000 4.63 × 1.796 = 8.31
21年 3月期 63,300 1.39 × 1.450 = 2.02
22年 3月期 66,700 2.91 × 1.539 = 4.47
23年 3月期 72,000 4.15 × 1.528 = 6.34
24年 3月期 71,700 5.97 × 1.402 = 8.37
25年 3月期 74,000 5.58 × 1.120 = 6.25
ROIC逆ツリー: NOPATマージンと投下資本回転率1.002.003.004.005.006.007.001719212325NOPATマージン(%)投下資本回転率(回)
ROIC逆ツリー分解(2025年 3月期 連結)
NOPATマージン
5.58%
NOPAT 4,128百万円 ÷ 売上 74,000百万円
×
投下資本回転率
1.120回
売上 74,000百万円 ÷ IC 66,091百万円
=
ROIC
6.25%
📊 ROIC変動の主因: 直近の変動は主に「投下資本回転率」の変化によるものです。資産の効率的活用(または非効率化)がROICを動かしています。

ROIC変動要因の分解

大日本塗料(4611)の過去9年間のROIC推移を分析すると、2018年3月期の13.68%をピークに、2021年3月期には2.02%まで大きく落ち込み、その後回復基調にあるものの、直近の2025年3月期予想では6.25%と、ピーク時の水準には届いていない状況が見て取れます。

この変動を分解すると、収益性を示す「NOPATマージン」は、2021年3月期の1.39%を底に、2024年3月期には5.97%まで回復しており、過去最高水準(2018年3月期の6.17%)に近いレベルまで改善しています。しかし、効率性を示す「投下資本回転率」は、2017年3月期の2.253回から一貫して低下傾向にあり、2025年3月期には1.120回まで半減する見込みです。ROICがかつての2桁水準に戻りきっていない主因は、マージンの悪化ではなく、投下資本回転率の継続的な低下にあることが明確に示されています。

改善ドライバーの特定

今後のROIC向上に向けた最大の改善ドライバーは、低下が続く「投下資本回転率」の反転、すなわち資産効率の適正化です。NOPATマージンが5%台後半で安定しつつある現状において、分母となる投下資本の管理が経営課題として浮上しています。

具体的には、以下の要素に注目すべきと考えられます。第一に、棚卸資産や売上債権といった運転資本の圧縮によるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善です。第二に、近年実施された設備投資や資産の積み増しが、期待通り売上高の拡大に寄与しているかの検証です。投下資本回転率が低下していることは、投下した資本に対して売上高の伸びが追いついていない「資産の肥大化」が生じている可能性を示唆しており、不採算資産の売却や設備利用率の向上が、ROICを再び押し上げる鍵となります。

投資家へのポイント

本分析から読み取れる経営の方向性として、同社は「利益を出す力(マージン)」については、原材料価格の変動や市場環境を克服し、一定の回復を果たしたと言えます。一方で、バランスシートの効率化については、依然として改善の余地を多く残しています。今後の決算において、経営陣が「資本効率の向上」に向けた具体的な施策(政策保有株式の削減、在庫削減、あるいは成長投資の厳選など)をどの程度打ち出してくるかが、株主価値向上の分岐点となるでしょう。

投資家の皆様におかれましては、営業利益やNOPATの額面だけでなく、投下資本の増加ペースに対して売上高がバランスよく成長しているか、あるいは資産圧縮による効率化が進んでいるかという「効率性の質」を継続的に注視していくことが、中長期的な投資判断の一助になると考えられます。

EVA(経済的付加価値)分析

EVA(経済的付加価値)推移

EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。

年度 NOPAT(百万円) 資本コスト(百万円) EVA(百万円) ROIC(%) WACC(%)
17年 3月期 4,163 2,007 2,156 12.59 6.07
18年 3月期 4,565 2,263 2,303 13.68 6.78
19年 3月期 3,496 2,390 1,106 9.42 6.44
20年 3月期 3,379 2,581 800 8.31 6.35
21年 3月期 882 2,676 -1,795 2.02 6.13
22年 3月期 1,939 2,761 -823 4.47 6.37
23年 3月期 2,986 2,987 -1 6.34 6.34
24年 3月期 4,281 3,267 1,013 8.37 6.39
25年 3月期 4,128 3,913 212 6.25 5.92
EVA(経済的付加価値)推移-200002.0千4.0千6.0千17192123250EVA(百万円)NOPAT(百万円)
EVA評価サマリー
直近EVA
212
百万円(2025年 3月期 連結)
累積EVA
4,971
百万円(9年間合計)
価値創造評価
価値創造

EVAの推移と評価

大日本塗料(4611)の過去9年間のEVA(経済的付加価値)推移を分析すると、大きく「価値創造期」「停滞・破壊期」「回復期」の3つのフェーズに分かれます。2017年3月期から2018年3月期にかけては、ROIC(投下資本利益率)が12~13%台と高く、WACC(加重平均資本コスト)を大きく上回る20億円超のEVAを創出していました。

しかし、2019年3月期以降はROICの低下とともにEVAが縮小し、2021年3月期には新型コロナウイルス感染症の影響や原材料価格の高騰等の要因により、EVAは-1,795百万円と大幅なマイナスに転じました。2021年度から2023年度までの3期間は、会計上の利益(NOPAT)は計上されているものの、資本コストを補填するほどのリターンは得られず、投資家視点では「価値破壊」の状態が続いていました。特筆すべきは2024年3月期で、ROICが8.37%まで回復し、1,013百万円のEVAを創出、再び価値創造のサイクルへと回帰しています。

価値創造力の持続性

累積EVAが4,971百万円のプラスであることから、長期的には株主資本コストを上回る価値を積み上げてきたといえます。しかし、その持続性については精査が必要です。2024年3月期に力強い回復を見せた一方で、2025年3月期の予測ではEVAが212百万円と前年比で大幅に減少する見込みとなっています。

この要因として、WACCが5.92%と低水準に抑えられているものの、ROICが6.25%へと低下し、資本コストとの差(EVAスプレッド)が0.33%まで縮小している点が挙げられます。また、資本コストの絶対額が3,913百万円と過去最高水準に達しており、投下資本の拡大に見合った利益成長を継続できるかどうかが、今後の価値創造の持続性を占う分岐点となります。

投資家へのポイント

本分析結果を踏まえた、投資判断における注目点は以下の通りです。

  • 資本効率の回復トレンド: 2021年度のボトムから脱却し、EVAが再びプラス圏に浮上した点は、事業の収益性が資本コストを上回る水準まで復調したことを示唆しています。
  • EVAスプレッドの縮小への懸念: 2025年3月期の予測に見られるように、ROICとWACCの乖離が縮まっています。今後、原材料価格の変動や需要動向によって、再びEVAがマイナス圏へ沈むリスクがないか、収益管理の動向が注目されます。
  • 投下資本の拡大とリターン: 資本コスト(WACC × 投下資本)が増加傾向にあることから、企業規模の拡大に向けた投資が行われていることが推察されます。これらの投資が将来的にROICを押し上げる「質の高い成長」に繋がるかを見極める必要があります。

以上の通り、同社は再び価値創造フェーズに入っていますが、その余力(EVAスプレッド)は直近でタイトになっています。今後の決算において、NOPATの成長が投下資本の増加を上回り、EVAを拡大させていけるかどうかが、中長期的な株価形成の鍵を握ると考えられます。

⚠️ 注意: EVAは簡易推定値です。WACCは株主資本コスト7%想定に基づく簡易計算であり、 正確なEVA算出にはβ値やリスクフリーレートの精緻な設定が必要です。

営業レバレッジ分析

営業レバレッジ度(DOL)推移

DOL = 営業利益変化率 ÷ 売上高変化率。売上が1%変化したとき営業利益が何%変化するかを示し、固定費比率の高さ(経営リスク)を表します。

平均DOL
4.76倍
有効年度の平均
リスク評価
中程度
DOL≤2: 低 / 2-5: 中 / 5+: 高
年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 営業利益率(%) 売上変化率(%) 営業利益変化率(%) DOL(倍)
17年 3月期 74,500 6,600 8.86 - - -
17年 3月期 72,789 6,533 8.98 -2.30 -1.02 0.44
18年 3月期 74,000 7,000 9.46 1.66 7.15 4.30
18年 3月期 74,119 6,588 8.89 0.16 -5.89 -
19年 3月期 73,740 6,030 8.18 -0.51 -8.47 16.56
19年 3月期 73,743 6,039 8.19 0.00 0.15 -
20年 3月期 73,000 5,600 7.67 -1.01 -7.27 7.21
20年 3月期 72,709 5,547 7.63 -0.40 -0.95 -
21年 3月期 63,300 1,500 2.37 -12.94 -72.96 5.64
21年 3月期 62,500 2,000 3.20 -1.26 33.33 -26.37
21年 3月期 62,500 2,500 4.00 0.00 25.00 -
21年 3月期 62,470 2,820 4.51 -0.05 12.80 -
21年 3月期 62,475 2,828 4.53 0.01 0.28 -
22年 3月期 66,700 3,200 4.80 6.76 13.15 1.95
22年 3月期 66,948 3,183 4.75 0.37 -0.53 -
23年 3月期 72,000 3,800 5.28 7.55 19.38 2.57
23年 3月期 72,849 3,946 5.42 1.18 3.84 3.26
24年 3月期 71,700 4,700 6.56 -1.58 19.11 -12.11
24年 3月期 71,940 4,901 6.81 0.33 4.28 -
25年 3月期 74,000 4,800 6.49 2.86 -2.06 -0.72
25年 3月期 72,510 4,710 6.50 -2.01 -1.87 0.93
25年 3月期 72,511 4,716 6.50 0.00 0.13 -
26年 3月期 92,000 4,100 4.46 26.88 -13.06 -0.49
26年 3月期 92,000 4,100 4.46 0.00 0.00 -
営業レバレッジ度(DOL)と営業利益率の推移-30.0-20.0-10.00.010.020.01718202121232425260DOL(倍)営業利益率(%)

費用構造の特徴

大日本塗料株式会社の平均DOL(営業レバレッジ度)は4.76倍となっており、分析指標においては「中程度」のリスク水準に分類されます。これは、同社の費用構造において、売上高の変動が営業利益に対して約4.8倍の影響を与える特性があることを示しています。塗料業界という製造業の特性上、生産設備や研究開発費などの固定費が一定規模存在する一方で、原材料価格(石油化学製品等)の変動が変動費として利益を圧迫あるいは押し上げる要因となります。2021年3月期に見られた売上高12.94%の減少に対し、営業利益が72.96%という大幅な減益となった局面(DOL 5.64倍)は、固定費負担が利益を下押しする典型的な「固定費型ビジネス」の挙動を反映しています。

景気変動への感応度

過去のデータ推移を見ると、同社の業績は景気変動や市場需要の変化に対して高い感応度を持っています。例えば、2023年3月期には売上高が7.55%増加した際、営業利益は19.38%増(DOL 2.57倍)と、売上の伸びを上回る利益成長を達成しました。このように、需要が回復・拡大する局面では営業レバレッジがプラスに働き、利益率を押し上げる効果が確認できます。一方で、2026年3月期の予測値では売上高が26.88%の大幅増を見込むものの、営業利益は13.06%の減益(DOL -0.49倍)と試算されており、これは営業レバレッジの枠組みを超えたコスト構造の変化や、原材料費の急騰、あるいは戦略的な先行投資等の外部・内部要因が利益を圧迫する可能性を示唆しています。

投資家へのポイント

大日本塗料への投資を検討する際、この「4.76倍」という平均レバレッジは、収益のボラティリティ(振れ幅)を理解する上で重要な指標となります。売上高が微増であっても利益が大きく改善する「高効率な成長」が期待できる反面、売上高が減少に転じた場合には利益が急速に縮小するリスクを内包しています。特に、営業利益率が3%台から9%台の間で推移していることから、損益分岐点に近い売上水準ではレバレッジがより極端に作用する傾向があります。今後の原材料価格の推移や、2026年3月期に向けた増収減益予想の背景にある費用構造の変化を注視し、同社のリスク・リターン特性を判断することが重要です。投資の最終決定は、これらのレバレッジ特性がご自身の許容リスクに見合っているかを精査された上で行ってください。

⚠️ 注意: 営業レバレッジ度は前年比の変化率から算出しており、売上や利益が急変する年度では極端な値になることがあります。 複数年の平均値での評価を推奨します。

持続的成長率分析(SGR)

持続的成長率(SGR)推移

SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。

年度 ROE(%) 配当性向(%) 内部留保率(%) SGR(%) 実際成長率(%)
17年 3月期 14.76 推定30% 70.0 10.33 -
18年 3月期 14.34 推定30% 70.0 10.04 -0.67
19年 3月期 10.63 推定30% 70.0 7.44 -0.35
20年 3月期 9.59 推定30% 70.0 6.71 -1.00
21年 3月期 2.65 推定30% 70.0 1.85 -13.29
22年 3月期 5.11 34.9 65.1 3.33 5.37
23年 3月期 7.84 20.5 79.5 6.23 7.95
24年 3月期 9.99 21.6 78.3 7.83 -0.42
25年 3月期 7.89 14.8 85.2 6.72 3.21
持続的成長率(SGR)vs 実際の売上成長率-15.0%-10.0%-5.0%0.0%5.0%10.0%15.0%17192123250SGR(%)実際成長率(%)
ROEと配当性向の推移0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%1719212325ROE(%)配当性向(%)
持続的成長率の評価(2025年 3月期 連結)
ROE
7.89%
×
内部留保率
85.2%
=
SGR
6.72%
📊 成長持続性の評価: 実際の成長率がSGRを下回っており、資金余力がある(成長投資の余地)

SGR水準の評価

大日本塗料(4611)の持続的成長率(SGR)は、過去9年間で大きな変動を見せています。2017年3月期から2018年3月期にかけては、14%を超える高いROE(自己資本利益率)を背景に10%台のSGRを維持していましたが、その後はROEの低下とともにSGRも下降トレンドを辿りました。特に2021年3月期にはROEが2.65%まで落ち込み、SGRも1.85%と最低水準を記録しています。

近年の動向として特筆すべきは、ROEの回復と内部留保率の上昇です。2024年3月期にはROEが9.99%まで改善し、SGRは7.83%まで回復しました。また、2025年3月期の予想では配当性向を14.8%に抑え、内部留保率を85.2%まで高めることで、ROEが7.89%に低下する局面でも6.72%という中程度のSGRを維持する計画となっています。現在のSGR水準は、積極的な内部留保による資本蓄積が主因となって支えられていると言えます。

成長の持続可能性

SGRと実際の売上成長率(または利益成長率としての実績)を比較すると、同社の成長の持続可能性と財務的な余裕が見て取れます。過去の推移では、多くの年度において実際の成長率がSGRを下回っています。2024年3月期はSGR 7.83%に対し実際成長率は-0.42%、2025年3月期予想もSGR 6.72%に対し実際成長率は3.21%に留まっています。

SGR(外部調達なしで達成可能な成長率)を実際の成長率が下回っている状態は、理論上、成長のために外部資金を必要とせず、むしろ内部に資金的な余力が蓄積されていることを示唆しています。2022年3月期および2023年3月期は実際成長率がSGRを上回り、一時的に資金需要が高まった時期もありましたが、直近では再び「成長の余力」がある状態へと回帰しています。現在の事業規模を維持・拡大する上で、財務的な制約がボトルネックになる可能性は低いと評価されます。

投資家へのポイント

本分析を踏まえた投資判断の注目点は、蓄積された「資金余力」の使途です。

  • 成長投資への期待: 実際成長率がSGRを下回っている現状は、設備投資やR&D、M&Aなどの成長戦略に充当できる資金が社内に豊富にあることを意味します。これらの投資が将来のROE向上に結びつくかが焦点となります。
  • 株主還元方針の検証: 2025年3月期の配当性向は14.8%と、過去と比較しても低い水準にあります。内部留保率(85.2%)を高く保つことでSGRを底上げしていますが、投資家としては、この高い内部留保が将来的な資本効率の向上につながるのか、あるいは将来の増配余地として蓄積されているのかを注視する必要があります。
  • 資本効率の安定性: ROEが10%前後で推移すれば、現在の高い内部留保率と相まって、高い成長ポテンシャルを維持できます。一方で、売上成長が停滞したまま内部留保のみが進めば、自己資本の肥大化によりROEが低下する懸念もあります。

同社が「余力」をどのように活用し、持続的な企業価値向上に繋げていくのか。成長投資による規模拡大か、あるいは資本効率改善のための還元策か、その経営判断の方向性が今後の株価形成における重要な鍵となるでしょう。

⚠️ 注意: 配当データが取得できない年度は内部留保率70%(配当性向30%)を仮定しています。 実際の配当政策と異なる場合があります。

インタレストカバレッジレシオ推移

インタレストカバレッジレシオ推移

ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。

直近ICR
∞(利息負担なし)
>10: 極めて安全 / 3-10: 安全 / 1-3: 要注意 / <1: 危険
安全性評価
極めて安全
年度 営業利益(百万円) 推定支払利息(百万円) ICR(倍) 有利子負債(百万円) 有利子負債比率(%) 推定借入金利(%)
17年 3月期 6,600 100 66.0 5,294 7.5 1.89
18年 3月期 7,000 100 70.0 1,990 2.6 5.03
19年 3月期 6,030 - 3,237 4.1 -
20年 3月期 5,600 - 4,160 5.4 -
21年 3月期 1,500 - 5,900 6.9 -
22年 3月期 3,200 - 4,250 4.8 -
23年 3月期 3,800 - 5,000 5.4 -
24年 3月期 4,700 - 5,100 5.0 -
25年 3月期 4,800 - 11,576 8.7 -
インタレストカバレッジレシオと有利子負債比率の推移0.020.040.060.080.01719212325ICR(倍)有利子負債比率(%)

利払い安全性の評価

大日本塗料(4611)のインタレストカバレッジレシオ(ICR)は、分析期間を通じて「極めて安全」な水準を維持しています。2017年3月期の66.0倍、2018年3月期の70.0倍という数値自体も非常に高い水準ですが、2019年3月期以降は「∞(無限大)」と算出されています。これは推定支払利息が営業利益と比較して極めて僅少、あるいは受取利息等の営業外収益が支払利息を上回る実質無借金に近い状態であることを示唆しています。2021年3月期には営業利益が1,500百万円まで落ち込む局面もありましたが、その際も利払い負担がボトルネックになることはなく、財務的なレジリエンス(復元力)の高さが証明されています。直近の2025年3月期予想においても、営業利益4,800百万円に対し、金利負担による安全性への懸念は見当たりません。

有利子負債の状況

有利子負債比率の推移を見ると、概ね10%未満という極めて低い水準でコントロールされています。2018年3月期の2.6%を底に、その後は4%〜6%前後で推移してきましたが、2025年3月期には有利子負債が11,576百万円へと増加し、有利子負債比率は8.7%に上昇する見込みです。負債額は前年度の5,100百万円から倍増していますが、それでもなお比率は1桁台に留まっており、製造業としては非常に保守的で健全な財務体質を維持しています。推定借入金利が極めて低位に抑えられていることから、金融機関からの高い信用力と、効率的な資金調達環境を保持しているものと評価されます。

投資家へのポイント

投資判断における注目点は、同社の「強固な財務基盤」と「資本効率」のバランスにあります。ICRが無限大で有利子負債比率も10%以下という現状は、倒産リスクが極めて低く、金利上昇局面においても業績への悪影響が軽微であることを意味します。一方で、これほど潤沢な財務余力(フィナンシャル・スラック)を、将来の成長投資や株主還元にどのように活用していくかが焦点となります。2025年3月期に向けた負債の増加が、設備投資や研究開発といった前向きな資金需要によるものか、あるいは運転資本の確保によるものかを精査することが肝要です。極めて高い安全性を背景に、持続的な企業価値向上に向けた攻めの経営に転じる余地を十分に持っている企業と言えます。

⚠️ 注意: 支払利息は「営業利益−経常利益」から推定しています。 営業外収益が大きい企業では過小評価になる可能性があります。正確な支払利息は有価証券報告書の注記をご確認ください。

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