6718アイホン株式会社||

アイホン(6718) 理論株価分析:大幅減益も盤石な財務基盤と株主還元姿勢を評価 カチノメ

決算発表日: 2025-11-062026年3月期 第2四半期
総合業績スコア
59/100
中立

セクション別スコア

業績成長性35収益性30財務健全性95株主還元70成長戦略60理論株価評価65
業績成長性35
収益性30
財務健全性95
株主還元70
成長戦略60
理論株価評価65

※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。

決算履歴(業績推移)

売上高推移(百万円)400億450億500億550億600億650億2017年 2019年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 売上高利益推移(営業利益・経常利益・当期純利益)10億20億30億40億50億60億70億2017年 2019年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 営業利益経常利益純利益利益率推移(%)2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%12.0%2017年 2019年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年 営業利益率経常利益率純利益率
年度 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 包括利益
2017年 3月期 連結 43,854 2,775 2,790 2,073 2,430
2018年 3月期 連結 45,100 2,800 2,850 1,550 -
2018年 3月期 連結 45,113 2,805 2,859 1,533 2,355
2019年 3月期 連結 46,337 2,712 2,852 2,287 1,802
2020年 3月期 連結 48,500 2,900 2,900 2,200 -
2020年 3月期 連結 48,494 2,833 2,894 2,370 1,604
2021年 3月期 連結 44,400 2,400 2,500 1,800 -
2021年 3月期 連結 45,800 3,100 3,100 2,500 -
2021年 3月期 連結 46,141 3,622 3,693 3,007 4,926
2022年 3月期 連結 52,500 5,000 5,300 4,100 -
2022年 3月期 連結 51,600 5,300 5,600 4,200 -
2022年 3月期 連結 51,991 5,538 5,931 4,226 4,782
2023年 3月期 連結 52,200 2,700 3,200 2,400 -
2023年 3月期 連結 52,400 3,600 4,100 3,000 -
2023年 3月期 連結 52,811 3,758 4,167 2,929 4,030
2024年 3月期 連結 60,000 5,500 6,200 4,600 -
2024年 3月期 連結 60,100 4,500 5,100 3,700 -
2024年 3月期 連結 61,334 5,268 6,130 4,645 7,919
2025年 3月期 連結 63,316 3,814 4,162 3,619 3,973
2026年 3月期 連結 62,500 2,800 3,100 2,500 -

※単位: 百万円

利益率推移

営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

年度 売上高 (百万円) 営業利益率 (%) 経常利益率 (%) 純利益率 (%)
2017年 3月期 連結 43,854 6.33% 6.36% 4.73%
2018年 3月期 連結 45,100 6.21% 6.32% 3.44%
2018年 3月期 連結 45,113 6.22% 6.34% 3.40%
2019年 3月期 連結 46,337 5.85% 6.15% 4.94%
2020年 3月期 連結 48,500 5.98% 5.98% 4.54%
2020年 3月期 連結 48,494 5.84% 5.97% 4.89%
2021年 3月期 連結 44,400 5.41% 5.63% 4.05%
2021年 3月期 連結 45,800 6.77% 6.77% 5.46%
2021年 3月期 連結 46,141 7.85% 8.00% 6.52%
2022年 3月期 連結 52,500 9.52% 10.10% 7.81%
2022年 3月期 連結 51,600 10.27% 10.85% 8.14%
2022年 3月期 連結 51,991 10.65% 11.41% 8.13%
2023年 3月期 連結 52,200 5.17% 6.13% 4.60%
2023年 3月期 連結 52,400 6.87% 7.82% 5.73%
2023年 3月期 連結 52,811 7.12% 7.89% 5.55%
2024年 3月期 連結 60,000 9.17% 10.33% 7.67%
2024年 3月期 連結 60,100 7.49% 8.49% 6.16%
2024年 3月期 連結 61,334 8.59% 9.99% 7.57%
2025年 3月期 連結 63,316 6.02% 6.57% 5.72%
2026年 3月期 連結 62,500 4.48% 4.96% 4.00%

※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

決算サマリー

アイホン株式会社の2026年3月期 第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高302億1千万円(前年同期比2.5%減)、営業利益8億9千1百万円(同57.9%減)、経常利益9億6千2百万円(同53.5%減)、親会社株主に帰属する中間純利益8億5千5百万円(同49.5%減)となりました。売上高は微減にとどまったものの、将来の成長に向けた研究開発費や人的投資の増加、および北米での在庫調整が響き、大幅な減益となっています。

注目ポイント

国内リニューアル市場の底堅さ

新築住宅着工戸数が減少する中、戸建・集合住宅ともにリニューアル需要が好調です。特に集合住宅向けでは、配送効率を高める「Pabbit」の提案や、防犯意識の高まりを背景とした受注活動が奏功しています。既存物件の付加価値向上ニーズは今後も安定的な収益源となると予想されます。

北米市場の在庫調整と収益改善

北米セグメントでは、代理店の在庫抑制により売上高は22.4%減と大きく落ち込みましたが、前年同期の営業損失から黒字(5千7百万円)に転換しました。バックオーダー解消後の適正な在庫水準への移行が進んでおり、今後の需要回復局面での収益貢献が期待されます。

業界動向

インターホン業界は、新築着工数の減少という逆風にある一方、オートロック化されていない既存マンションの更新需要や、高齢化社会に伴うケア市場(ナースコール等)の拡大が続いています。競合他社と比較しても、アイホンは独立系として高い専門性と信頼性を維持しており、特に医療・福祉施設向けで強みを持っています。

投資判断材料

短期的には先行投資による利益圧迫が目立ちますが、自己資本比率86.45%という極めて強固な財務体質は長期保有における大きな安心材料です。PBR(株価純資産倍率)1倍割れが常態化している水準であれば、ネットキャッシュの豊富さを背景とした下値の堅さが意識されます。

セグメント別業績

  • 日本:売上高260億3百万円(6.6%減)、営業利益4億1千7百万円(77.5%減)。研究開発費や人件費の増加が利益を圧迫。
  • 北米:売上高47億4千9百万円(22.4%減)、営業利益5千7百万円。減収ながら黒字転換。
  • 欧州:売上高20億6千2百万円(6.4%減)、営業利益2千1百万円。価格競争の激化が継続。
  • タイ・ベトナム:生産拠点として稼働。タイでは生産量増加により売上高が伸長。

財務健全性

自己資本比率は86.45%と非常に高く、有利子負債もほとんどない実質無借金経営です。現金及び現金同等物は254億8千6百万円を保有しており、総資産の約3分の1をキャッシュが占めています。この余剰資金をどのように成長投資や株主還元に振り向けるかが今後の焦点です。

配当・株主還元

中間配当は1株当たり50円を実施。また、2025年9月19日付で自己株式580,000株の消却を実施しており、資本効率の向上と株主利益の還元に対して積極的な姿勢を示しています。安定配当を基本としつつ、機動的な自社株買いが期待できる構造です。

通期業績予想

本報告書内では通期予想の修正に関する具体的な言及はありませんが、中間期の進捗は利益面でやや低調です。ただし、下期にリニューアル案件の完工が集中する季節性があるため、今後の受注動向とコストコントロールが目標達成の鍵となります。

中長期成長戦略

従来の「通信」から、AIやクラウドを活用した「ソリューション」への転換を進めています。特に、ケア市場における見守り支援システムや、オセアニア地域でのIPネットワーク対応インターホンの大型プロジェクト納入など、高付加価値分野への注力を加速させています。

リスク要因

  • 原材料・物流コスト:部材価格の高騰が利益率を押し下げるリスク。
  • 為替変動:海外売上比率が高まっているため、円高進行は円建て業績の目減り要因となります。
  • 住宅市場動向:国内外の金利上昇に伴う住宅着工数のさらなる抑制。

ESG・サステナビリティ

環境に配慮した製品設計や、地域社会の安全・安心に貢献する製品提供を通じて社会的責任を果たしています。ガバナンス面では、今回の自己株式消却に見られるように、資本効率を意識した経営へのシフトが見て取れます。

バリュエーション

1株当たり純資産(BPS)と比較して株価が低位にある場合、解散価値を下回る水準として割安感が強いと判断されます。配当利回りも安定しており、インカムゲイン狙いの長期投資家にとっては検討に値する水準と言えます。

過去決算との比較

前年同期はバックオーダーの解消による特需的な売上増がありましたが、今期はその反動が出た形です。直近4四半期の中では、売上高は安定しているものの、投資フェーズに入ったことで利益率が低下傾向にある点には注意が必要です。

市場の評判

Aihon Co., Ltd. is a well-established Japanese company in the intercom system industry, known for its stable growth and high dividend yield. Investor sentiment is generally positive, focusing on its reliable financial performance and market position. The company has a solid reputation for its products in both domestic and international markets.

年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)

株価推移(高値・安値)1,0001,5002,0002,5003,0003,500'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)高値安値PBR推移(高値・安値・期末PBR)0.4倍0.5倍0.6倍0.7倍0.8倍0.9倍1.0倍'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)PBR高値PBR安値期末PBRPER推移(高値・安値)0倍50倍100倍150倍200倍250倍'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)PER高値PER安値時価総額推移(高値・安値)200億300億400億500億600億'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)高値安値ROE推移(PBR÷PERで算出・高値同士/安値同士)0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%'11/3'14/3'17/3'20/3'23/3最新(株探)ROE高値ROE安値
年度 株価高値 株価安値 PER高値 PER安値 PBR高値 PBR安値 時価総額高値 時価総額安値 期末PBR
2011年3月期 1,671 1,000 236.69 141.64 0.91 0.55 345億4646万 206億7412万 0.76倍
2012年3月期 1,609 1,213 56 42.22 0.88 0.67 332億6467万 250億7771万 0.87倍
2013年3月期 1,645 1,190 24.35 17.61 0.86 0.62 340億894万 246億221万 0.82倍
2014年3月期 1,857 1,442 16.83 13.07 0.84 0.65 383億9185万 298億1209万 0.78倍
2015年3月期 2,095 1,526 18.09 13.18 0.84 0.61 433億1229万 315億4871万 0.74倍
2016年3月期 2,330 1,629 11.52 8.05 0.9 0.63 481億7071万 296億8038万 0.73倍
2017年3月期 2,006 1,483 15.78 11.67 0.74 0.55 365億4932万 270億2026万 0.66倍
2018年3月期 2,100 1,663 22.35 17.7 0.74 0.59 382億6200万 302億9986万 0.64倍
2019年3月期 1,926 1,443 13.74 10.29 0.66 0.5 350億9172万 262億9146万 0.6倍
2020年3月期 2,011 1,209 13.86 8.33 0.68 0.41 366億4042万 220億2798万 0.49倍
2021年3月期 1,922 1,311 10.45 7.13 0.6 0.41 350億1884万 238億8642万 0.58倍
2022年3月期 2,646 1,697 10.23 6.56 0.77 0.5 482億1012万 309億1934万 0.6倍
2023年3月期 2,113 1,655 11.78 9.23 0.59 0.46 384億9886万 301億5410万 0.57倍
2024年3月期 3,155 1,994 11.11 7.02 0.8 0.5 574億8410万 363億3068万 0.76倍
2025年3月期 3,230 2,350 14.61 10.63 0.79 0.58 588億5060万 428億1700万 0.64倍
最新(株探) 2846 - 18.6倍 - 0.68倍 - 502億円 - 0.68倍

ROE算出表(PBR÷PER×100)

PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。

年度 PBR高値 PER高値 ROE高値(%) PBR安値 PER安値 ROE安値(%)
2011年3月期 0.91 236.69 0.4% 0.55 141.64 0.4%
2012年3月期 0.88 56 1.6% 0.67 42.22 1.6%
2013年3月期 0.86 24.35 3.5% 0.62 17.61 3.5%
2014年3月期 0.84 16.83 5.0% 0.65 13.07 5.0%
2015年3月期 0.84 18.09 4.6% 0.61 13.18 4.6%
2016年3月期 0.9 11.52 7.8% 0.63 8.05 7.8%
2017年3月期 0.74 15.78 4.7% 0.55 11.67 4.7%
2018年3月期 0.74 22.35 3.3% 0.59 17.7 3.3%
2019年3月期 0.66 13.74 4.8% 0.5 10.29 4.9%
2020年3月期 0.68 13.86 4.9% 0.41 8.33 4.9%
2021年3月期 0.6 10.45 5.7% 0.41 7.13 5.8%
2022年3月期 0.77 10.23 7.5% 0.5 6.56 7.6%
2023年3月期 0.59 11.78 5.0% 0.46 9.23 5.0%
2024年3月期 0.8 11.11 7.2% 0.5 7.02 7.1%
2025年3月期 0.79 14.61 5.4% 0.58 10.63 5.5%
最新(株探) 0.68倍 18.6倍 3.7% - - -

バリュエーション推移の概要

アイホン株式会社(6718)の過去15年間のバリュエーション推移を概観すると、PBR(株価純資産倍率)は一貫して1.0倍を大きく下回る水準で推移しており、解散価値を恒常的に下回る状態が続いています。PER(株価収益率)については、2011年3月期の200倍超という異常値を除けば、概ね10倍から20倍の範囲で推移してきました。特に2024年3月期以降、株価のレンジが一段切り上がっており、時価総額も500億円を超える水準へと成長していますが、資産価値に対する評価(PBR)は依然として低位に留まっているのが特徴です。

PBR分析

PBRの推移を見ると、過去15年間の高値は2011年3月期の0.91倍、安値は2020年3月期および2021年3月期の0.41倍となっています。期末PBRの推移では、2012年3月期の0.87倍をピークに、2020年3月期には0.49倍まで低下しました。しかし、近年は東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営」の要請などの背景もあり、2024年3月期には高値0.80倍まで回復を見せています。最新の0.68倍という水準は、歴史的な低位水準(0.4倍台)からは脱却しているものの、依然として過去最高値の0.91倍には届かず、長期的な平均水準付近に位置しています。

PER分析

PERは利益水準の変動により大きく振れる傾向があります。2011年3月期は利益水準が低かったことから236.69倍という極めて高い数値を示しましたが、その後は収益の安定に伴い、2016年3月期から2024年3月期にかけてはPER安値が6倍〜10倍、高値が10倍〜15倍程度で推移する期間が長く続きました。最新のPER 18.6倍は、2017年以降の推移と比較すると相対的に高い水準にあります。これは、将来的な収益拡大への期待が先行しているか、あるいは直近の利益水準に対して株価が先行して評価されている可能性を示唆しています。

時価総額の推移

時価総額は、2011年から2021年頃まで、概ね200億円台後半から400億円台前半のレンジ内で停滞していました。しかし、2022年3月期に高値482億円を記録した後、2024年3月期には574億円、2025年3月期には588億円と、過去最高水準を更新しています。この企業価値の増大は、単なる利益成長だけでなく、市場全体の株高や同社の事業構造改革、あるいは還元政策への期待などが複合的に寄与しているものと考えられます。2010年代の300億円前後の水準と比較すると、企業規模の評価ステージが一段階上昇したと言えます。

現在のバリュエーション評価

現在のアイホンのバリュエーションは、歴史的な比較において「株価水準は最高値圏にあるが、資産背景からは依然として割安感が残る」という二面性を持っています。 最新のPBR 0.68倍は、過去15年間のレンジ(0.41倍〜0.91倍)の中位に位置しており、PBR 1.0倍回復という観点からは依然として上値の余地があるとの見方も可能です。一方で、PER 18.6倍は、直近10年間の多くの期間で15倍を下回っていた実績と比較すると、利益面での割安感は薄れている水準と言えます。投資家としては、現在の株価上昇が持続的なROE(自己資本利益率)の向上を伴うものか、あるいは資産価値の再評価プロセスにあるのかを慎重に見極める必要があります。

キャッシュフロー推移

キャッシュフロー推移(営業CF・投資CF・フリーCF)-100億-50億0百万50億100億'17/3'19/3'21/3'23/3'25/30営業CF投資CFフリーCF設備投資 vs フリーCF(百万円)-100億-50億0百万50億100億'17/3'19/3'21/3'23/3'25/30設備投資#1フリーCF現金等残高推移100億150億200億250億'17/3'19/3'21/3'23/3'25/3現金等
年度 四半期 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF 設備投資#1 現金等
2017年3月期 通期 2990 -1779 -1789 1211 -3233 14657
2018年3月期 通期 740 -2560 -569 -1820 -2066 12315
2019年3月期 通期 3455 -901 -548 2554 -1304 14394
2020年3月期 通期 4129 -659 -846 3470 -722 16904
2021年3月期 通期 3115 -1296 -939 1819 -714 17998
2022年3月期 通期 1872 3729 -1332 5601 -772 22577
2023年3月期 通期 -4781 -2533 -1758 -7314 -3309 13756
2024年3月期 通期 9056 -58 -1699 8998 -1170 21587
2025年3月期 通期 5717 -729 -2414 4988 -1221 24326

※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)

キャッシュフロー推移の概要

アイホン株式会社の過去9年間のキャッシュフロー(CF)推移を俯瞰すると、2023年3月期に一時的な大幅なキャッシュアウトを経験したものの、翌2024年3月期には急速なV字回復を遂げていることが分かります。直近の2024年3月期および2025年3月期の予想に基づくと、CFパターンは「営業CF:プラス、投資CF:マイナス、財務CF:マイナス」の「優良安定型」に該当します。これは、本業で稼いだ現金を将来の成長に向けた投資と、配当や借入金返済などの財務活動の両面にバランスよく配分できている健全な状態を示唆しています。

営業キャッシュフロー分析

営業CFは、2023年3月期にマイナス47.81億円と一時的に赤字へ転落しました。これは原材料価格の高騰や在庫の積み増しなどが影響したと考えられますが、翌2024年3月期には90.56億円のプラスへと劇的に改善しています。2025年3月期も57.17億円のプラスを見込んでおり、本業のキャッシュ創出力は極めて堅調です。長期的に見ると、2023年を除けば概ね20億〜40億円規模のキャッシュを安定して創出しており、インターホン業界における高い市場シェアを背景とした収益の安定性が確認できます。

投資キャッシュフロー・設備投資分析

設備投資額は、多くの年度で7億〜13億円程度で推移していますが、2017年3月期(32.33億円)や2023年3月期(33.09億円)には積極的な投資が行われています。投資CFは、2022年3月期に37.29億円のプラスを計上していますが、これは有価証券の売却や資産の整理等による一時的なものと推察されます。全体として、営業CFの範囲内に設備投資を抑える傾向があり、無理のない範囲で製造設備の更新や研究開発投資を継続している、堅実な成長投資方針が見て取れます。

フリーキャッシュフロー分析

フリーCF(FCF)は、営業CFの劇的な回復に伴い、2024年3月期に89.98億円と過去最高水準に達しました。2023年3月期には一時73.14億円のマイナスを記録しましたが、翌年の大幅なプラスによって累積の資金繰り懸念は払拭されています。2025年3月期も49.88億円のプラスを見込んでおり、潤沢なFCFを創出するフェーズにあります。これにより、さらなるM&Aや大規模な生産拠点整備、あるいは株主還元を強化するための十分な原資が確保されていると評価できます。

財務戦略・現金残高の評価

財務CFは、2017年3月期以降、一貫してマイナスで推移しています(年平均で約10億〜24億円の支出)。これは、同社が安定的な配当を継続しつつ、借入金の返済や自社株買い等を進めていることを示しており、株主還元と財務体質の健全化を両立させています。現金等の残高についても、2017年3月期の146.57億円から、2025年3月期予想では243.26億円へと大きく増加しています。手元流動性は非常に高く、不透明な経済状況に対する耐性は極めて強いと言えます。

キャッシュフロー総合評価

アイホン株式会社の財務状況は、極めて強固です。2023年3月期の一時的なキャッシュ流出を、翌年以降の強力なキャッシュ創出で完全にカバーしており、事業の回復力(レジリエンス)の高さが証明されています。240億円を超える手元現預金(現金等)は、今後の成長投資や株主還元に対する大きな余力を示しており、財務健全性の観点からは「非の打ち所がない」水準にあります。今後は、この蓄積されたキャッシュをいかに資本効率(ROE等)の向上に結びつける投資に振り向けていくかが、投資家としての注目ポイントになるでしょう。

DCF法による理論株価分析

DCF分析の前提条件

パラメータ 説明
WACC(割引率) 6.0% 加重平均資本コスト
FCF成長率 2.0% 予測期間中の年平均成長率
EV/FCF倍率 5.19倍 ターミナルバリュー算出用(現在の市場評価)
予測年数 5年 将来FCFの予測期間
発行済株式数 17,638,791株 理論株価算出の分母
現金及び現金同等物 243億 非事業資産として加算
有利子負債 0百万 企業価値から控除

将来フリーキャッシュフロー予測

予測年 予測FCF 現在価値(PV)
1年目 51億 48億
2年目 52億 46億
3年目 53億 44億
4年目 54億 43億
5年目 55億 41億
ターミナルバリュー 286億 213億
フリーキャッシュフロー推移(実績 + DCF予測)-100億-50億0百万50億100億2123252028予2030予2031予0FCF実績FCF予測

理論株価の算出プロセス

① 予測FCF現在価値の合計 223億
② ターミナルバリューの現在価値 213億
③ 事業価値(① + ②) 436億
④ 加算: 現金及び現金同等物 +243億
⑤ 控除: 有利子負債 -0百万
⑥ 株主価値(③ + ④ − ⑤) 679億
DCF理論株価
3,851円
現在の株価
2,846円
乖離率(割安)
+35.3%

感度分析(理論株価: 円)

WACC(横軸)とFCF成長率(縦軸)を変化させた場合の理論株価の変動を示します。

WACC →
FCF成長率 ↓
4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%
-3.0%3,5673,4883,4123,3413,273
-0.5%3,7963,7073,6223,5423,466
2.0%4,0453,9453,8513,7613,676
4.5%4,3164,2054,1004,0003,905
7.0%4,6114,4884,3714,2604,154

※ 緑色: 現在株価(2,846円)より高い(割安方向) / 赤色: 低い(割高方向) / 青背景: 現在の前提条件

DCF分析の総合評価

アイホン株式会社(6718)のDCF分析に基づく理論株価は3,851円と算出されました。現在の市場価格2,846円(分析時点)と比較すると、理論上は+35.3%の乖離(割安)を示唆しています。この割安感の背景には、同社の強固な財務体質、特に「有利子負債ゼロ(無借金経営)」かつ「243億円にのぼる豊富な現金等」が株主価値を大きく押し上げている点が挙げられます。事業価値(436億円)に対して現金等が占める割合が非常に高く、ネットキャッシュ(現金等-有利子負債)が時価総額に対して大きな安全域(マージン・オブ・セーフティ)を提供している状態と言えます。

フリーキャッシュフローの質

過去のフリーキャッシュフロー(FCF)を振り返ると、2023年3月期の▲7,314百万円から2024年3月期の8,998百万円へと、非常に激しいボラティリティが見られます。これは、部材調達に伴う棚卸資産の変動や、生産設備の投資タイミング、売掛金の回収サイクルといった運転資本の増減が影響しているものと推察されます。予測期間(1〜5年目)においては、直近2025年3月期の見通しである約50億円をベースに、年率2.0%の安定成長を前提としています。過去の平均値から見れば妥当な水準ではあるものの、実績値の変動幅が大きいため、予測の信頼性を維持するためには、安定した営業キャッシュフローの創出が今後の鍵となります。

前提条件の妥当性

本分析では、WACC(加重平均資本コスト)を6.0%、永久成長率を2.0%と設定しています。同社は有利子負債がゼロであるため、WACCは株主資本コストに依存します。日本市場の低金利環境と、インターホン市場における同社の高いシェア・安定した収益性を考慮すると、6.0%という割引率は標準的またはやや保守的な設定と言えます。一方、FCF成長率2.0%という設定は、国内の成熟市場に加えて海外展開や防災・医療・介護分野での需要拡大を織り込んだ「やや意欲的」な期待値を含んでいる可能性があります。市場成長率がこれを下回る場合、理論株価は下方修正される余地があります。

ターミナルバリューの影響

ターミナルバリュー(TV)の現在価値は213億円であり、事業価値合計(436億円)に占める割合は約48.9%となっています。一般的なDCF分析では、TVが事業価値の6割〜8割を占めるケースが多い中、本分析におけるTVへの依存度は相対的に低く抑えられています。これは、5年目までの予測期間におけるFCFがしっかりと価値を創出していることを示しており、長期的な「仮定」への依存リスクが比較的低い、堅実な価値構成であると評価できます。

感度分析から読み取れること

DCFモデルにおいて最も感応度が高い変数はWACCです。仮に、金利上昇や市場リスクプレミアムの拡大によりWACCが7.0%に上昇した場合、分母が大きくなるため理論株価は数千円単位で下落する可能性があります。また、永久成長率が1.0%に低下した場合もターミナルバリューが縮小します。しかし、本件においては、事業価値と同等に近い規模の「現金等(243億円)」が株主価値を支えているため、他の企業と比較して、DCFの前提条件(成長率や割引率)の変動に対する株価の耐性は比較的強い構造にあります。

投資判断への示唆

今回の分析結果から、アイホン(6718)は資産価値(ネットキャッシュ)と収益力の両面から見て、現在の市場価格が理論上の価値を十分に反映していない「バリュー株」の側面が強いと判断されます。特に、有利子負債ゼロという財務の健全性は、不透明な経済環境下での下値支持要因となります。

ただし、DCF法には以下の限界があることに留意が必要です。第一に、本分析は将来のキャッシュフローが予測通りに推移することを前提としており、原材料費の高騰や競争激化による利益率低下のリスクは完全には排除できません。第二に、市場が「割安」を解消するきっかけ(株主還元強化や利益成長の加速などのカタリスト)がない限り、割安な状態が長期間続く「バリュートラップ」に陥る可能性もあります。最終的な投資判断にあたっては、これらの定性的なリスク要因も併せて検討されることを推奨いたします。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のフリーキャッシュフローは年度により変動があるものの、平均的には黒字を維持しており、成熟市場での安定性を考慮し成長率を2%と推定しました。実質無借金経営に近いキャッシュリッチな財務構成を反映し、WACCは株主資本コストを主軸とした低めの6%に設定しています。発行済株式数は時価総額502億円を現在株価で除して算出しました。2026年3月期の減益予想など、短中期的には利益成長が鈍化する可能性を織り込んだ保守的な設計としています。

⚠️ 免責事項: 本DCF分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 DCF法は前提条件(WACC、成長率等)に大きく依存するため、感度分析を参考に幅を持って評価してください。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

リバースDCF分析(市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(2,846円)を正当化するために必要なインプライドFCF成長率を逆算しました。

インプライドFCF成長率
-11.1%
市場が織り込む成長率
AI推定FCF成長率
2.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-13.1%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価2,846円
インプライドFCF成長率-11.12%
AI推定FCF成長率2.00%
成長率ギャップ-13.12%(悲観的)
インプライドWACC1.00%
AI推定WACC6.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

アイホン株式会社(6718)の現在の株価2,846円に基づき算出されたインプライドFCF(フリーキャッシュフロー)成長率は-11.12%です。これは、市場が同社の将来的な現金創出力に対して、年率11%を超える持続的な減少を織り込んでいることを意味します。AI推定の成長率が2.00%であるのに対し、市場の期待値はマイナス13.12%もの乖離(ギャップ)が生じており、現在の株価形成は極めて悲観的なシナリオに基づいていると評価できます。過去の業績推移を見ると、同社はインターホン市場における高いシェアを背景に比較的安定した利益成長を維持してきましたが、市場は住宅着工件数の減少や原材料費の高騰といったマクロ環境のリスクを過度に警戒している可能性があります。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込む「年率-11.12%」という成長率の妥当性を検討すると、同社の事業環境に対して過小評価である可能性が浮上します。インターホン市場は、防犯意識の高まりや、スマートフォン連携機能を備えた高付加価値なIPネットワーク製品への買い替え需要など、底堅い市場特性を持っています。また、人手不足を背景としたオフィスや医療・福祉施設向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)需要も中長期的な追い風です。これら成長ドライバーを考慮すると、キャッシュフローが毎年1割以上減衰し続けるという市場の前提は、同社の競争優位性が劇的に失われない限り、実現の可能性は低いと考えられます。一方で、インプライドWACC(加重平均資本コスト)が1.00%と極めて低く算出されている点には注意が必要です。AI推定のWACCが6.00%であることを踏まえると、資本コストの前提条件によって期待成長率の解釈が変動する余地は残されています。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果から、現在の株価2,846円は、アイホンが将来的に収益を縮小させ続けるという極めて慎重な見通しに立っていることが分かります。AI推定成長率(2.00%)と市場の期待値(-11.12%)の間に大きな乖離があることは、同社の実力が市場評価を上回っている可能性、すなわち「バリュエーションの割安感」を示唆しています。もし投資家が、同社の既存事業の安定性やIP化への対応力を評価し、将来的なFCF成長率が少なくとも微増、あるいは現状維持で推移すると判断する場合、現在の株価は投資妙味のある水準として映るでしょう。反対に、住宅市場の構造的減退や競合激化による利益率の大幅な悪化が避けられないと考える場合は、この悲観的な市場評価が妥当であるという結論になります。この大きな期待値のギャップをどう解釈するかが、投資判断の重要な鍵となります。

拡張感応度分析・シナリオ分析

感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

金利上昇はWACCの増加、景気後退はFCF成長率の低下として理論株価に影響します。

WACC →
FCF成長率 ↓
4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%
-3.0%3,5673,4883,4123,3413,273
-0.5%3,7963,7073,6223,5423,466
2.0%4,0453,9453,8513,7613,676
4.5%4,3164,2054,1004,0003,905
7.0%4,6114,4884,3714,2604,154

※ 緑色: 現在株価(2,846円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
WACC: 5.0% / FCF成長率: 7.0%
永久成長率: 1.0%
4,488円
+57.7%
基本シナリオ
WACC: 6.0% / FCF成長率: 2.0%
永久成長率: 0.7%
3,851円
+35.3%
悲観シナリオ
WACC: 7.5% / FCF成長率: -3.0%
永久成長率: 0.3%
3,306円
+16.2%

シナリオ分析の総合評価

アイホン株式会社(6718)のシナリオ分析結果に基づくと、現在の株価2,846円は、悲観的なシナリオ(理論株価3,306円)をも下回る水準にあります。基本シナリオにおける理論株価は3,851円と、現時点の株価から+35.3%の乖離が認められ、楽観シナリオでは4,488円(+57.7%)に達します。全てのシナリオにおいて理論株価が現行株価を上回っていることから、市場は同社の将来のキャッシュフロー創出能力、あるいは資本コストの低減を、DCFモデルの前提よりも保守的に見積もっている、あるいは過小評価している可能性が示唆されます。

金利変動の影響

WACC(加重平均資本コスト)の変化に対する感応度を見ると、WACCが5.0%から7.5%まで変動する過程で、理論株価は4,488円から3,306円へと約26.3%下落する計算となります。金利上昇局面においては資本コストが増大し、理論株価を押し下げる要因となりますが、特筆すべきはWACCを7.5%と高く見積もった悲観シナリオにおいても、現在の株価(2,846円)に対して16.2%のプレミアムが存在する点です。これは、同社が実質無借金経営に近い財務体質を有している場合、金利上昇による直接的な負債コスト増の影響を受けにくく、金利変動リスクに対して一定の耐性を有していることを裏付けています。

景気変動の影響

FCF(フリー・キャッシュフロー)成長率の変動が理論株価に与える影響を分析すると、成長率が+7.0%から-3.0%へと大幅に低下するシナリオにおいても、理論株価は現行株価を維持できることが示されました。基本シナリオの2.0%成長に対し、悲観シナリオでは恒常的なマイナス成長(-3.0%)を想定していますが、それでも理論株価は3,306円に留まります。これは、アイホンの事業構造(インターホンシステム等の保守・更新需要)が景気後退期においても一定の粘着性を持ち、キャッシュフローの急激な毀損が起こりにくいという市場特性を反映した感応度結果と言えます。

投資判断への示唆

今回のシナリオ分析から得られる最も重要な示唆は、投資における「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」が十分に確保されている可能性が高いという点です。現在の株価2,846円は、収益成長がマイナスに転じ、かつ資本コストが上昇するという「悲観シナリオ(3,306円)」すら13.9%下回る水準で推移しています。これはダウンサイド・リスクが現在の価格にある程度織り込まれていることを示唆する一方で、基本シナリオへの回帰だけでも大きなアップサイドが期待できる水準です。ただし、この理論株価と市場価格の乖離が解消されるには、資本効率の改善や株主還元策の強化といった、市場の評価を修正させるカタリスト(きっかけ)が必要となる点には留意が必要です。

モンテカルロシミュレーション

シミュレーション結果サマリー

WACC・FCF成長率・永久成長率をそれぞれ正規分布でランダムに変動させ、100,000回のDCF計算を実行した結果です。DCF計算の非線形性(特にゴードン成長モデルの割引構造)により、理論株価の分布は対数正規分布に近い形状となるため、ヒストグラムは対数スケールで表示しています。

平均理論株価
7,193円
中央値
7,085円
90%レンジ(5-95%点)
5,774 〜 8,989円
割安確率
100.0%
理論株価 > 現在株価
モンテカルロシミュレーション:理論株価の確率分布(100,000回・対数スケール)0.0%1.2%2.3%3.5%4.6%5.8%5,504円5,927円6,383円6,874円7,403円7,972円8,585円9,245円シミュレーション分布現在株価

※ ヒストグラムは対数スケールで表示し、外れ値の影響を抑えるため分布の中央96%(2〜98パーセンタイル)を表示しています。対数スケールにより、DCF計算の非線形性に起因する右裾の歪みが補正され、分布の形状をより正確に把握できます。平均・中央値・パーセンタイルなどの統計値は元のスケールで有効サンプル全体から計算しています。

理論株価のパーセンタイル分布

シミュレーション結果を小さい順に並べたとき、各パーセンタイルにおける理論株価を示します。

パーセンタイル 5% 10% 25% 50% 75% 90% 95%
理論株価5,774円6,023円6,489円7,085円7,774円8,503円8,989円

※ 緑色: 現在株価(2,846円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 中央値(50%タイル)

リスク指標

理論株価の標準偏差 993円
5% VaR(下位5%タイル) 5,774円
変動係数(CV = σ / 平均) 13.8%
有効シミュレーション数 100,000 / 100,000

確率分布の解釈

今回のモンテカルロシミュレーションの結果、アイホン株式会社(6718)の理論株価は平均値7,193円、中央値7,085円という結果が得られました。平均値が中央値を上回る分布形状は、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法特有の非線形性に由来する「右に裾が長い対数正規分布」に近い特性を示しています。これは、将来の成長率やWACC(加重平均資本コスト)のわずかな変動が、理論株価を上方へ大きく押し上げる可能性(アップサイド・ポテンシャル)を秘めていることを示唆しています。5パーセンタイル(5,774円)から95パーセンタイル(8,989円)という広範な分布範囲は、入力パラメータの不確実性を反映しつつも、理論株価の妥当な着地点が概ね6,000円から8,000円台後半にあることを統計的に示しています。

リスク評価

リスクの指標となる5% VaR(バリュー・アット・リスク)は5,774円となりました。これは、設定された変動要因(WACCや成長率の振れ)が極めて悲観的に作用した場合でも、95%の確率で理論株価はこの水準を上回ることを意味しています。また、標準偏差は993円であり、変動係数(CV)は約13.8%と算出されます。この数値は、将来キャッシュフローの予測精度や資本コストの推定に伴う不確実性が、理論株価に対して一定の影響を与えていることを示しています。しかし、後述する現在株価との比較においては、このリスク水準を考慮してもなお、下方硬直性が極めて高いと評価できる統計的結果となっています。

現在株価の統計的位置づけ

アイホン株式会社の現在株価(2,846円)は、本シミュレーションで得られた理論株価の分布において「割安確率100.0%」という極めて特異な位置にあります。具体的には、最下位5パーセンタイルの値(5,774円)すら大幅に下回っており、統計的には理論価値に対して極度の過小評価状態にあると言わざるを得ません。現在株価は中央値(7,085円)の約40%の水準に留まっており、市場が織り込んでいる期待値と、企業のファンダメンタルズ(FCF成長率2.0%等の前提条件)に基づいた理論値との間には、巨大な乖離が存在していることが浮き彫りになっています。

投資判断への示唆

以上の結果から、投資判断における「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」は極めて広大であると判断されます。現在株価から平均理論株価(7,193円)までの乖離率は約60%を超えており、保守的な5% VaR(5,774円)と比較しても、現在株価は半値近い水準にあります。このような統計的乖離は、市場が同社の将来性に対して極度に悲観的であるか、あるいは流動性や資本効率の課題など、DCFモデルに反映されない固有のディスカウント要因を強く意識している可能性を示唆します。本シミュレーションの結果を重視する場合、中長期的な観点では「顕著な割安水準」にあると結論付けられますが、この価値の乖離が解消される時期(カタリストの有無)については、別途、事業戦略や資本政策などの定性的な精査が必要です。最終的な投資判断は、これらの統計的優位性と市場の需給動向を照らし合わせ、慎重に検討することをお勧めします。

📖 モンテカルロシミュレーションの読み方:
  • 割安確率: シミュレーション結果のうち、理論株価が現在株価を上回った割合。50%超なら統計的に割安寄り
  • 90%レンジ(5-95%点): 全シミュレーション結果を並べたときの下位5%点から上位95%点までの範囲。幅が広いほど不確実性が高い
  • 5% VaR: 悲観的な条件下でも95%の確率でこの値以上になると期待される最低ライン
  • 変動係数: 平均に対する標準偏差の比率。30%超だとパラメータ感度が高い(結果の信頼性に注意)
⚠️ 免責事項: 本モンテカルロシミュレーションはAIが推定したパラメータの分布に基づく統計的な参考値であり、投資助言ではありません。 入力パラメータに正規分布を仮定し、DCF計算の非線形性により出力は対数正規分布に近い形状となります。パラメータ間の独立性の仮定など、実際の市場とは異なる前提を含んでいます。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS/BPSベース理論株価分析

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 152.80円 1株あたり利益
直近BPS 4185.29円 1株あたり純資産
1株配当 130.00円 年間配当金
EPS成長率 3.0% 予測期間中の年平均
割引率 8.0% 将来EPSの割引率
想定PER 18.60倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2026年3月 4185.29 152.80 130.00 22.80 4208.09 3.65 0.00 18.60 0.68 152.80 2,842
2027年3月 4208.09 157.38 130.00 27.38 4235.47 3.74 3.00 18.60 0.69 145.73 2,927
2028年3月 4235.47 162.11 130.00 32.11 4267.58 3.83 3.00 18.60 0.71 138.98 3,015
2029年3月 4267.58 166.97 130.00 36.97 4304.55 3.91 3.00 18.60 0.72 132.55 3,106
2030年3月 4304.55 171.98 130.00 41.98 4346.53 4.00 3.00 18.60 0.74 126.41 3,199
ターミナル 2177.04
PER×EPS 理論株価
2,842円
-0.1%
DCF合計値
2,873.51円
+1.0%
現在の株価
2,846円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 696.47円
ターミナルバリュー現在価値 2177.04円(全体の75.8%)
DCF合計理論株価 2,873.51円

EPS/BPSモデルの総合評価

本モデルによる試算の結果、アイホン株式会社(6718)の理論株価は、PER基準で2,842円、DCF(将来EPSの現在価値合計)基準で2,873.51円となりました。現在株価2,846円(基準値)との比較において、DCF法による理論値との乖離率はわずか+1.0%にとどまっており、市場価格は本モデルが想定する前提条件をほぼ正確に織り込んだ「適正水準(フェア・バリュー)」にあると評価されます。PER×EPS理論株価と現在株価がほぼ一致していることから、現在の市場は直近の業績と想定PER 18.60倍という評価尺度を概ね妥当と判断していることが伺えます。

ROE推移の見通し

モデル上のROE(自己資本利益率)は、2026年3月期の3.65%から2030年3月期には4.00%へと、緩やかな改善が予測されています。一般的にBPS(1株純資産)が蓄積されるとROEは低下傾向を辿りますが、本予測では年率3.0%のEPS成長がBPSの増加ペースを上回ることで、効率性の改善が示されています。特筆すべきは配当水準(130円)の高さであり、EPS(152.80円)に対する配当性向は約85%に達しています。この高還元姿勢が資本の肥大化を抑制し、低水準ながらもROEの維持・向上に寄与する構造となっています。ただし、PBR(株価純資産倍率)が0.68倍から0.74倍と1倍を大きく下回る水準で推移しており、資本効率の絶対値としての低さがバリュエーションの重石となっている点は否めません。

前提条件の妥当性

本モデルでは、EPS成長率を3.0%、割引率を8.0%、想定PERを18.60倍に設定しています。国内インターホン市場での高いシェアと安定したリプレース需要を考慮すると、3.0%の成長率は保守的かつ現実的な設定と言えます。割引率8.0%は標準的な株主資本コストの範囲内です。一方で、想定PER 18.60倍という設定は、ROE 3〜4%台の企業としてはやや強気の評価(プレミアム)が付与されている印象を受けます。これは同社が有する強固な財務基盤(高BPS)や、PBR 1倍割れ是正に向けた株主還元強化への期待値が、マルチプル(PER)を底上げしている可能性を示唆しています。

投資判断への示唆

現在の株価2,846円は、将来の緩やかな成長と現行の配当政策を十分に織り込んだ水準であり、短期的には理論株価との乖離が少ないため、株価の割安感・割高感は限定的です。今後の投資判断においては、「資本効率の劇的な改善(ROEの向上)」または「さらなる株主還元の拡充」が、現在の想定PER 18.60倍を正当化し、さらにPBR 1倍(BPS 4,185円超)を目指す展開となるかどうかが焦点となります。モデル上の理論株価は、2030年に向けてBPSの蓄積とともに3,199円まで緩やかに上昇する軌道を描いていますが、これを上回るリターンを得るには、想定成長率3.0%を超えるポジティブ・サプライズが必要となるでしょう。投資家の皆様におかれましては、同社の成長戦略と、資本コストを意識した経営改善の進捗を注視し、ご自身の投資時間軸に照らしてご判断ください。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のEPS推移に大きな変動が見られ、2025年予想が前年比で減益見込みであることを踏まえ、長期的な成長率は保守的に3%と推定しました。割引率は、同社がインターホン業界の国内大手であり財務基盤も安定していることから、標準的な株主資本コストの範囲内である8%に設定しています。現状のPBRが0.68倍と低迷している事実は、市場が資本効率の停滞を織り込んでいることを示唆しており、これらを総合的に加味したパラメータとしています。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS成長率0%が続く場合の理論株価

将来のEPS成長率を0%(横ばい)と仮定した場合の試算です。本編のベースシナリオとは前提が異なります。

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 152.80円 1株あたり利益
直近BPS 4185.29円 1株あたり純資産
1株配当 130.00円 年間配当金
EPS成長率 0.0% 予測期間中の年平均
割引率 8.0% 将来EPSの割引率
想定PER 18.60倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2026年3月 4185.29 152.80 130.00 22.80 4208.09 3.65 0.00 18.60 0.68 152.80 2,842
2027年3月 4208.09 152.80 130.00 22.80 4230.89 3.63 0.00 18.60 0.67 141.48 2,842
2028年3月 4230.89 152.80 130.00 22.80 4253.69 3.61 0.00 18.60 0.67 131.00 2,842
2029年3月 4253.69 152.80 130.00 22.80 4276.49 3.59 0.00 18.60 0.66 121.30 2,842
2030年3月 4276.49 152.80 130.00 22.80 4299.29 3.57 0.00 18.60 0.66 112.31 2,842
ターミナル 1934.27
PER×EPS 理論株価
2,842円
-0.1%
DCF合計値
2,593.16円
-8.9%
現在の株価
2,846円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 658.89円
ターミナルバリュー現在価値 1934.27円(全体の74.6%)
DCF合計理論株価 2,593.16円

0%成長シナリオの意味

本シナリオは、アイホン株式会社(6718)が将来的に利益成長を実現できず、EPSが152.80円で横ばいに推移すると仮定した「保守的なストレステスト」としての性格を持ちます。この条件下でのPERベース理論株価は2,842円となり、現在の市場価格(2,846円)とほぼ同水準です。これは、現在の株価が「将来の成長をほとんど織り込んでいない」、あるいは「現状維持を前提とした妥当な水準にある」ことを示唆しています。一方で、キャッシュフローを割り引いて算出するDCFモデルによる理論株価は2,593.16円となり、現在の株価に対して-8.9%の乖離が見られます。成長が止まった場合、資本コスト(割引率8.0%)を上回るリターンを出し続けることが難しくなり、バリュエーションに下押し圧力がかかる可能性をこの数値は示しています。

ベースシナリオとの対比

本編のベースシナリオ(成長率約3.0%)と比較すると、理論株価の差は「成長期待値のプレミアム」として解釈できます。ベースシナリオでは成長によるEPSの上昇がBPSの積み上げを加速させ、ROEの低下を抑制する構造になりますが、この0%成長シナリオでは、配当支払い後の利益が内部留保されることでBPS(1株当たり純資産)が増加し続ける一方、利益(EPS)が変わらないため、ROE(自己資本利益率)が年々低下していく(2026年3月期の3.65%から2030年3月期には3.57%へ)という「資本効率の悪化」が浮き彫りになります。市場がこの効率低下を嫌気した場合、想定PER(18.60倍)が維持できず、株価がDCF理論株価の方へ収束していくリスクを考慮する必要があります。

留意点

本モデルは、入力された前提条件(EPS成長率0%、想定PER18.60倍、割引率8.0%等)に基づいた機械的な試算であり、将来の株価推移を保証するものではありません。特に、成長率が0%であるにもかかわらず、過去の平均的なPER水準(18.60倍)を適用し続けることの妥当性については慎重な判断が必要です。一般的に、成長が期待できない銘柄のPERは市場平均を下回る傾向があります。また、同社は配当性向が高く、配当(130.00円)がEPSの大部分を占めているため、利益成長が止まった状態での増配余力は限定的である点にも留意が必要です。本シミュレーションはあくまで投資判断の材料の一つとして、他の財務指標や市場環境と合わせて参照してください。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のEPS推移に大きな変動が見られ、2025年予想が前年比で減益見込みであることを踏まえ、長期的な成長率は保守的に3%と推定しました。割引率は、同社がインターホン業界の国内大手であり財務基盤も安定していることから、標準的な株主資本コストの範囲内である8%に設定しています。現状のPBRが0.68倍と低迷している事実は、市場が資本効率の停滞を織り込んでいることを示唆しており、これらを総合的に加味したパラメータとしています。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

拡張感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

WACC(加重平均資本コスト)は、株主資本コストと負債コストを資本構成比率で加重平均した「企業の資金調達コスト」です。WACCが高いほど将来キャッシュフローの現在価値は低くなり、理論株価は下がります。FCF成長率は、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた「企業が自由に使えるキャッシュ(フリーキャッシュフロー)」が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準のWACC(6.0%)とFCF成長率(2.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

割引率は、将来の利益やキャッシュフローを現在価値に換算するための率で、投資家が求めるリターン(期待収益率)に相当します。割引率が高いほど将来利益の現在価値は低くなり、理論株価は下がります。EPS成長率は、1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準の割引率(8.0%)とEPS成長率(3.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: PER × EPS(理論株価: 円)

PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PERが高いほど市場がその企業の将来成長に高い期待を持っていることを意味します。EPS(1株あたり利益)は、企業の純利益を発行済株式数で割った値で、1株あたりの収益力を表します。

基準のPER(18.6倍)とEPS(153円)から、PERは1倍刻み(±100倍)・EPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: PBR × BPS(理論株価: 円)

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回ると、株価が解散価値を下回っていることを意味し、割安と判断される場合があります。BPS(1株あたり純資産)は、企業の純資産を発行済株式数で割った値で、1株あたりの解散価値を表します。

基準のPBR(0.7倍)とBPS(4185円)から、PBRは0.1倍刻み(±10.0倍)・BPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

残留利益モデル分析(Residual Income Model)

残留利益モデル(Residual Income Model)

残留利益モデルは、現在のBPS(1株純資産)に将来の「超過利益」の現在価値を加算して理論株価を算出します。 株主資本コストを上回るROEを持続できる企業ほど、BPSに大きなプレミアムが付きます。

理論株価 = BPS₀ + Σ[(ROEₜ − r) × BPSₜ₋₁ / (1+r)ᵗ] + TV/(1+r)ⁿ

前提条件

パラメータ 説明
直近BPS 4185.29円 1株あたり純資産(出発点)
直近EPS 152.80円 1株あたり利益
株主資本コスト (r) 8.0% 株主の要求収益率(エクイティチャージの基準)
EPS成長率 3.0% 予測期間中の年平均
1株配当 130.00円 年間配当金(BPS蓄積に影響)
予測年数 5年 個別予測期間

残留利益の年次予測

年度 期首BPS EPS ROE(%) エクイティチャージ 残留利益 PV(残留利益) 期末BPS
2026年3月 4185.29 152.80 3.65 334.82 -182.02 -168.54 4208.09
2027年3月 4208.09 157.38 3.74 336.65 -179.26 -153.69 4235.47
2028年3月 4235.47 162.11 3.83 338.84 -176.73 -140.30 4267.58
2029年3月 4267.58 166.97 3.91 341.41 -174.44 -128.22 4304.55
2030年3月 4304.55 171.98 4.00 344.36 -172.39 -117.32 4346.53
ターミナル 残留利益の永続価値: -2,154.87円 → PV: -1,466.57円 -1466.57
理論株価の構成
現在BPS
4,185.29円
簿価部分
+
残留利益PV合計
-708.07円
超過利益の現在価値
+
ターミナルPV
-1,466.57円
永続価値の現在価値
=
RIM理論株価
2,011円
-29.3%
現在の株価: 2,846円
残留利益モデル:ROEとエクイティチャージの推移3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%2627282930ROE(%)株主資本コスト(8.0%)
残留利益と現在価値の推移-200円-180円-160円-140円-120円-100円2627282930残留利益(円)PV(残留利益)(円)
📖 残留利益モデルの読み方:
  • 残留利益 > 0(ROE > 株主資本コスト)→ 企業はBPS以上の価値を創出。理論株価 > BPS となりプレミアム付与
  • 残留利益 < 0(ROE < 株主資本コスト)→ 資本効率が不十分。理論株価 < BPS となりディスカウント
  • DCF法との違い: RIMはBPS(純資産)を出発点とするため、資産ベースの評価に強く、安定企業・金融機関の評価に適しています

残留利益の評価

アイホン株式会社(6718)の残留利益モデル(RIM)による評価では、企業の価値創造力において慎重な見方が示されています。特筆すべきは、予測期間内(2026年3月期〜2030年3月期)のROEが3.65%から4.00%で推移している点です。これは、本モデルで設定した株主資本コスト(投資家の期待収益率)である8.0%を大きく下回っています。

結果として、エクイティチャージ(資本コスト相当額)がEPS(1株当たり利益)を上回り、残留利益は各年度で約-172円から-182円のマイナスを計上しています。これは、会計上の利益は出ているものの、株主が求める資本コストを補うには至っておらず、経済的な付加価値(EVA)の観点からは価値を毀損している状態と解釈されます。

BPSプレミアム/ディスカウントの解釈

本モデルから算出された理論株価は2,011円であり、現在のBPS(1株当たり純資産)である4,185.29円に対して約52%の大きなディスカウント(割引)となっています。

通常の優良企業であれば、ROEが資本コストを上回ることでBPSにプラスのプレミアムが付与されますが、同社の場合は低ROEが足かせとなり、BPSから約2,174円(残留利益PV合計とTVの合計)が差し引かれる計算となります。これは、「資産を事業に投下するよりも、清算して株主に返還した方が効率が良い」と市場の数学的モデルが判断していることを示唆しており、資本効率の改善が急務であることを浮き彫りにしています。

他の評価手法との比較

キャッシュフローを基礎とするDCF法と比較すると、RIMは会計上の純資産を起点とするため、同社のようなキャッシュリッチな企業の資産性をより直接的に反映します。それにもかかわらず理論株価が低迷するのは、保有する豊富な資産が利益に結びついていない「宝の持ち腐れ」状態をモデルが厳しく評価しているためです。

PER(株価収益率)で見ると、現在株価2,846円に対し2026年3月期の予想EPS152.80円を用いたPERは約18.6倍となります。成長率3.0%という前提に照らせば、PER水準は決して割安とは言えず、むしろ期待値が先行している可能性があります。一方、PBR(株価純資産倍率)は0.68倍程度であり、解散価値である1倍を恒常的に下回っている現状と、本モデルのディスカウント評価は整合性が取れています。

投資判断への示唆

RIMによる理論株価(2,011円)と現在株価(2,846円)との乖離率は-29.3%であり、モデル上は現在の株価は割高な水準にあると判断されます。投資家がこの結果をどう解釈するかは、以下の2点に集約されます。

第一に、モデルで設定した株主資本コスト8.0%が、同社の安定した事業基盤や財務健全性に対して高すぎる(保守的すぎる)と考える場合、理論株価は上方修正される余地があります。第二に、同社が今後PBR1倍割れ是正に向けた資本効率改善策(増配、自社株買い、不採算事業の整理など)を打ち出し、ROEが8%に向けて改善すると予想する場合、現在の株価は「将来の改善」を先取りしていると見ることも可能です。

現状の低いROE推移が続く限り、ファンダメンタルズ面からの株価上昇圧力は限定的となる可能性があり、今後の経営戦略による資本効率の向上が株価正当化の鍵を握ると言えるでしょう。

⚠️ 注意: 残留利益モデルの結果は、EPS成長率・株主資本コスト・BPSの前提条件に大きく依存します。 また、会計基準の違い(日本基準/IFRS)によりBPSの定義が異なる場合があります。投資判断の際は他の手法と合わせてご検討ください。

リバースDCF分析(EPSベース・市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(2,846円)を正当化するために必要なインプライドEPS成長率を逆算しました。

インプライドEPS成長率
2.7%
市場が織り込む成長率
AI推定EPS成長率
3.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-0.3%
ほぼ妥当

リバースDCF詳細

現在の株価2,846円
インプライドEPS成長率2.72%
AI推定EPS成長率3.00%
成長率ギャップ-0.28%(ほぼ妥当)
インプライド割引率50.00%
AI推定割引率8.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

アイホン株式会社(6718)の現在株価2,846円に基づき算出されたインプライドEPS成長率は2.72%となりました。これは、現在の株式市場が同社に対して「今後、年平均で約2.7%程度のEPS(1株当たり純利益)成長を継続する」という期待を織り込んでいることを示しています。AI推定成長率の3.00%と比較すると、成長率ギャップは-0.28%と極めて小さく、市場の評価は現状のファンダメンタルズに対して「ほぼ妥当」な水準にあると分析されます。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込んでいる2.72%という成長期待は、同社の事業環境に照らすと十分に現実的な数値であると考えられます。アイホンはインターホン業界の国内大手であり、集合住宅の更新需要や、セキュリティ意識の高まりを背景とした高機能製品への買い替え需要が底堅く推移しています。AI推定の3.00%との乖離(-0.28%)がわずかであることは、過度な期待による株価のオーバーバリュエーション(割高化)が起きておらず、安定的な収益成長を前提とした極めて堅実な評価がなされていることを示唆しています。

投資判断への示唆

今回の分析で注目すべきは、インプライド割引率(50.00%)とAI推定割引率(8.00%)の大きな乖離です。通常、インプライド割引率がこれほど高水準に算出されるケースでは、現在の株価が利益水準に対して保守的に見積もられすぎている(過小評価されている)、あるいは市場が算出モデルでは捉えきれない固有のリスクを極めて重く評価している可能性を示しています。AI推定の8.00%という割引率が妥当であると仮定した場合、現在の2.72%という期待成長率は投資家にとって「ハードルの低い、達成可能な目標」に見えるでしょう。現在の株価水準が同社の長期的な安定成長性と比較して、どの程度の安全余裕(マージン・オブ・セーフティ)を含んでいるかを判断材料とすることが推奨されます。最終的な投資判断は、これらの数値を個別のリスク許容度と照らし合わせた上で、ご自身で行ってください。

感応度分析・シナリオ分析

感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

金利上昇は割引率の増加、景気後退はEPS成長率の低下として理論株価に影響します。

割引率 →
EPS成長率 ↓
6.0%7.0%8.0%9.0%10.0%
-2.0%2,6162,5152,4192,3282,242
0.5%2,8552,7442,6382,5382,443
3.0%3,1122,9902,8742,7632,659
5.5%3,3883,2533,1263,0052,890
8.0%3,6833,5353,3963,2633,138

※ 緑色: 現在株価(2,846円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
割引率: 6.5% / EPS成長率: 8.0%
3,608円
+26.8%
基本シナリオ
割引率: 8.0% / EPS成長率: 3.0%
2,874円
+1.0%
悲観シナリオ
割引率: 9.5% / EPS成長率: -2.0%
2,285円
-19.7%

シナリオ分析の総合評価

アイホン株式会社(6718)の現在の株価2,846円は、基本シナリオの理論株価2,874円とほぼ乖離がなく(+1.0%)、市場は同社の将来的な成長性とリスクを概ね妥当に織り込んでいる状態と言えます。分析の結果、理論株価のレンジは下限2,285円から上限3,608円という広い範囲に分布しています。楽観シナリオでは現行株価から26.8%の上昇余地が示唆される一方、悲観シナリオでは19.7%の下落リスクが想定されます。現在の株価位置は、この上下幅の中央付近に位置しており、ポジティブなサプライズとネガティブなリスクの双方が均衡している状況と評価できます。

金利変動の影響

本分析における割引率(株主資本コスト等)の変化は、理論株価に顕著な影響を与えています。基本シナリオの8.0%から、楽観シナリオで6.5%へと低下した場合、将来キャッシュフローの現在価値が高まり、株価を大きく押し上げる要因となります。逆に、悲観シナリオのように割引率が9.5%まで上昇すると、理論株価は2,285円まで切り下がります。アイホンのような安定的なキャッシュフローを持つ企業にとって、マクロ経済環境に伴う金利上昇や市場の不透明感によるリスクプレミアムの拡大は、株価の調整圧力として敏感に作用する点に注意が必要です。

景気変動の影響

EPS(1株当たり利益)成長率の前提も、理論株価を左右する重要な変数です。基本シナリオでは3.0%の成長を織り込んでいますが、これが楽観シナリオの8.0%まで加速した場合、理論株価は3,608円まで上昇します。これは、国内の新築住宅・リニューアル需要に加え、海外市場でのシェア拡大やDX推進による高付加価値化が成功した場合のシナリオと言えます。一方で、原材料費の高騰や建設市場の停滞によりEPS成長率が-2.0%とマイナス成長に転じる悲観シナリオでは、株価の下支えが弱くなることが数値から読み取れます。

投資判断への示唆

以上の分析結果から、現在の株価2,846円は、アイホンが今後年率3.0%程度の利益成長を維持し、かつ資本コストが8.0%程度で推移するという市場のコンセンサスを反映していると考えられます。投資家としての判断の焦点は、同社の次期中期経営計画や海外戦略が、この「3.0%成長」という基準を上回る蓋然性があるか、あるいは下回るリスクがどの程度あるかに集約されます。現在の株価水準に大きな割安感・割高感は見られませんが、今後の業績進捗やマクロ金利動向が各シナリオのどちらに傾くかによって、投資の妙味は大きく変化するでしょう。

デュポン分析(ROE分解)

ROEの3要素分解(デュポン分析)

ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。

年度 純利益率(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍) = ROE(%)
17年 3月期 4.73 × 0.810 × 1.28 = 0.05
18年 3月期 3.44 × 0.825 × 1.26 = 0.04
19年 3月期 4.94 × 0.806 × 1.27 = 0.05
20年 3月期 4.54 × 0.822 × 1.26 = 0.05
21年 3月期 4.05 × 0.696 × 1.30 = 0.04
22年 3月期 7.81 × 0.756 × 1.33 = 0.08
23年 3月期 4.60 × 0.739 × 1.32 = 0.04
24年 3月期 7.67 × 0.765 × 1.38 = 0.08
25年 3月期 5.72 × 0.822 × 1.32 = 0.06
デュポン分析:ROEの3要素推移0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%1719212325純利益率(%)ROE(%)
総資産回転率と財務レバレッジの推移0.600.801.001.201.401719212325総資産回転率(回)財務レバレッジ(倍)
直近年度のROE構成(2025年 3月期 連結)
純利益率
5.72%
収益性
×
総資産回転率
0.822回
効率性
×
財務レバレッジ
1.32倍
借入で資本効率を32%ブースト
=
ROE
0.06%
株主資本利益率
📊 ROE変動の主因: 直近の変動は主に「純利益率」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROEに直結しています。

ROEの質の評価

アイホン株式会社のROE(自己資本利益率)は、過去9年間において4%から8%の範囲で推移しています。デュポン分析の結果から、ROE変動の主因は「純利益率」の変動にあり、収益性がROEの水準を直接的に左右する構造となっています。特に2022年3月期(8%)や2024年3月期(8%)のように、純利益率が7%台後半まで上昇した局面でROEもピークを迎えており、本業の稼ぐ力が効率性に直結している点は評価できます。一方で、総資産回転率や財務レバレッジは安定しており、資産効率の劇的な改善や財務リスクを冒したROEの押し上げは見られません。総じて、外部環境や原価構成の変化が利益率に反映されやすい、「実力値ベースのROE」であると判断されます。

財務レバレッジの影響

同社の財務レバレッジは1.26倍から1.38倍という極めて低い水準で推移しています。これは自己資本比率が非常に高い(約72%〜79%)ことを意味しており、極めて保守的で強固な財務基盤を有していることを示唆しています。借入金によるレバレッジ効果を最小限に留めているため、倒産リスクなどは極めて低い一方で、資本効率の観点からは「過剰資本」の状態にあるとも解釈できます。2024年3月期にはレバレッジが1.38倍と過去最高水準まで微増していますが、依然として低水準であり、財務戦略によるROEの底上げ余地(例えば自己株式買いや配当増額、成長投資への債務活用など)を多分に残している状態と言えます。

トレンド分析

長期的トレンドを見ると、3要素の中で最も安定しているのは総資産回転率であり、概ね0.7回から0.8回強の間で推移しています。ただし、2021年3月期には0.696回まで低下しており、一時的な効率性の停滞が見られましたが、2025年3月期(予想)では0.822回まで回復する見込みです。特筆すべきは利益率の振れ幅です。2018年3月期の3.44%から2022年3月期の7.81%まで大きな開きがあり、原材料費の高騰や製品ミックス、あるいは需要サイクルの影響を強く受ける収益構造が見て取れます。2025年3月期は純利益率5.72%と、直近のピークからは低下するものの、過去の平均的な水準(4%〜5%台)を維持または上回る安定した推移が予測されます。

投資判断への示唆

アイホンの収益構造は、高い財務健全性を背景とした「低リスク・中リターン」型と言えます。投資家としては、以下の2点に注目すべきでしょう。第一に、ROE向上の鍵が純利益率にあるため、新製品の投入や高付加価値化(DX対応インターホン等)によるマージンの改善が継続するかどうかです。第二に、余剰資本の活用方針です。現在の低レバレッジ・高自己資本比率は安定感をもたらす一方、株主還元や積極的な投資への転換があれば、ROEは一段上のフェーズへ移行する可能性があります。現在の収益構造を「安定した価値」と見るか、「効率化の余地」と見るかが、投資判断の分かれ目となるでしょう。

⚠️ 注意: デュポン分析の数値はIRBankから取得した財務データに基づいています。 会計基準(日本基準/IFRS)の違いにより、株主資本の定義が異なる場合があります。

借金が利益に与える影響分析

有利子負債の概要

項目 説明
有利子負債 0百万 銀行借入・社債等の利息付き負債
推定金利 0.00% 営業利益と経常利益の差から推定
推定支払利息 0百万 有利子負債 × 推定金利
利息 / 純利益 比率 0.0% 純利益に対する利息負担の大きさ
推定実効税率 13.0% 1 − (純利益 / 経常利益) から推定

「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション

有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。

年度 有利子負債 推定利息 経常利益
実績
経常利益
借金なし
純利益
実績
純利益
借金なし
ROE
実績
ROE
借金なし
レバレッジ
効果
2017/03 0百万 0百万 28億 28億 21億 21億 4.89% 4.89% +0.00%pt
2018/03 0百万 0百万 29億 29億 16億 16億 3.57% 3.57% +0.00%pt
2019/03 0百万 0百万 29億 29億 23億 23億 5.06% 5.06% +0.00%pt
2020/03 0百万 0百万 29億 29億 22億 22億 4.70% 4.70% +0.00%pt
2021/03 0百万 0百万 25億 25億 18億 18億 3.68% 3.68% +0.00%pt
2022/03 0百万 0百万 53億 53億 41億 41億 7.88% 7.88% +0.00%pt
2023/03 0百万 0百万 32億 32億 24億 24億 4.49% 4.49% +0.00%pt
2024/03 0百万 0百万 62億 62億 46億 46億 8.12% 8.12% +0.00%pt
2025/03 0百万 0百万 42億 42億 36億 36億 6.22% 6.22% +0.00%pt
純利益推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション10億20億30億40億50億2017/032019/032021/032023/032025/03実績純利益借金なし純利益ROE推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%9.0%2017/032019/032021/032023/032025/03実績ROE借金なしROE
レバレッジ効果の評価(直近年度)
借金の影響は限定的
実績ROE
6.22%
借金なしROE
6.22%
レバレッジ効果
+0.00%pt

有利子負債の水準が小さい、または事業利益率と借入金利がほぼ均衡しています。

借金の利益インパクト

アイホン株式会社の直近2025年3月期、および過去のデータを確認すると、有利子負債は一貫して「0百万円」となっており、実質的な無借金経営を継続しています。これにより、推定支払利息も0百万円であり、利息が経常利益や純利益を圧迫する要因は全く存在しません。2024年3月期の純利益46億円、2025年3月期の純利益36億円(推定)は、いずれも負債コストを差し引かれる前の事業の収益力がダイレクトに反映された数値となっています。金融費用が利益を削るリスクがないため、収益の安定性は極めて高いと言えます。

レバレッジ効果の評価

財務レバレッジを活用していないため、実績ROEと「借金なしROE」は常に一致しており、レバレッジ効果は過去すべての年度において「+0.00%pt」です。2024年3月期にはROE 8.12%を記録し、2022年3月期にも7.88%と高い水準を維持していますが、これは負債によるテコ入れではなく、本業の利益率向上による成果です。一方で、自己資本が厚い分、利益の振れ幅がROEに直接影響しやすく、2018年3月期(3.57%)や2023年3月期(4.49%)のように、利益が落ち込んだ際にはROEも連動して低迷する傾向があります。負債を利用してROEを底上げする戦略は採られていないことが明確です。

財務戦略の考察

同社は、利息負担を回避しつつ自己資本のみで事業を運営する、保守的かつ強固な財務戦略を堅持しています。金利上昇局面においては、支払利息が増加しないという点で他社に対する優位性がありますが、現在のゼロ金利・低金利環境下においては、安価な調達資金を活用して成長投資に振り向ける「レバレッジの恩恵」を享受していないとも評価できます。推定実効税率が13.0%と低水準であることも含め、キャッシュフローは豊富であると推察されますが、製造業としての設備投資やR&Dに対し、過剰な内部留保が資本効率(ROE)を押し下げていないか、同業他社と比較して精査する必要があるでしょう。

投資家へのポイント

投資判断における主なポイントは以下の通りです。

  • 財務の安全性: 有利子負債ゼロによる圧倒的な倒産リスクの低さと、金利変動耐性は大きな魅力です。
  • 資本効率の課題: レバレッジ効果が0であるため、ROEを向上させるには純利益率の改善または株主還元による自己資本の圧縮が不可欠です。
  • 成長投資の余力: 借入枠に余裕がある(未活用である)ため、将来的なM&Aや大規模な設備投資が必要となった際の機動力は極めて高いと考えられます。
同社の無借金経営を「守りの堅さ」と評価するか、「資本活用の余地」と見るかが、中長期的な投資判断の分かれ目となります。

⚠️ 注意事項: 本分析は営業利益と経常利益の差額から支払利息を推定しており、実際の支払利息とは異なる場合があります。 営業外収支には受取利息・配当金・為替差損益等も含まれるため、あくまで参考値としてご活用ください。 また、借金を全額返済した場合の実際の影響は資金調達構造の変化を伴うため、単純なシミュレーションとは異なります。

ROIC分析(投下資本利益率)

ROIC(投下資本利益率)推移

ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。

年度 NOPAT(百万円) 投下資本(百万円) ROIC(%) WACC(%) スプレッド(%pt)
17年 3月期 2,062 42,402 4.86 7.00 -2.14
18年 3月期 1,523 43,398 3.51 7.00 -3.49
19年 3月期 2,175 45,162 4.82 7.00 -2.18
20年 3月期 2,200 46,779 4.70 7.00 -2.30
21年 3月期 1,728 48,953 3.53 7.00 -3.47
22年 3月期 3,868 52,056 7.43 7.00 +0.43
23年 3月期 2,025 53,416 3.79 7.00 -3.21
24年 3月期 4,081 56,664 7.20 7.00 +0.20
25年 3月期 3,316 58,160 5.70 7.00 -1.30
ROIC vs WACC推移3.0%4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%1719212325ROIC(%)WACC(%)
直近年度のROIC評価(2025年 3月期 連結)
ROIC
5.70%
投下資本利益率
WACC
7.00%
加重平均資本コスト
=
スプレッド
-1.30%pt
価値創造力が弱い

ROIC水準の評価

アイホン株式会社(6718)の過去9期分(2025年3月期予想含む)のROIC(投下資本利益率)を概観すると、3.51%から7.43%の間で大きく変動しており、安定性に欠ける推移となっています。製造業における一般的な資本効率の目安とされる8%を下回る水準が続いており、直近の2024年3月期には7.20%まで上昇したものの、2025年3月期は5.70%への低下が見込まれています。投下資本が2017年3月期の約424億円から2025年3月期には約581億円へと着実に増加している一方で、NOPAT(税引後営業利益)の成長がそれに比例していない点が、ROICの低迷および不安定さの主因と考えられます。

ROIC-WACCスプレッド分析

資本コスト(WACC)を7.00%と仮定した場合、ROIC-WACCスプレッドが正(プラス)となったのは、2022年3月期(+0.43%pt)と2024年3月期(+0.20%pt)のわずか2期に留まっています。分析期間の大部分においてスプレッドは負(マイナス)であり、特に2018年3月期、2021年3月期、2023年3月期には-3%ptを超える大幅なマイナスを記録しています。これは、株主や債権者の期待リターンに対して、事業から生み出される利益が十分ではない「価値破壊」の状態が常態化していることを示唆しています。一時的に収益性が改善する局面はあるものの、増加し続ける投下資本に見合う利益水準を維持できていない点は、中長期的な企業価値創造における課題と言えます。

投資家へのポイント

本分析を踏まえた投資判断のポイントは、同社が「いかにして資本効率を構造的に改善できるか」に集約されます。具体的には以下の3点に注視が必要です。第一に、投下資本の拡大(棚卸資産や設備投資等)が、将来的なNOPATの増大に結びつく確度です。第二に、原材料価格の変動や需要のサイクルに左右されにくい高付加価値製品へのシフトによる、営業利益率の底上げが実現可能かという点です。第三に、WACCを下回るROICが継続する場合の資本政策(株主還元や事業ポートフォリオの見直し等)の妥当性です。投資家の皆様におかれましては、2025年3月期の減益予想が一時的なものか、あるいは資本効率の長期的な停滞の予兆であるかを、事業環境の変化と併せて慎重に見極めることが求められます。

⚠️ 注意: WACCは簡易推定値です(株主資本コスト7%想定、負債コストは推定支払利息から算出)。 実際のWACCはCAPMや市場データに基づくより精緻な計算が必要です。

ROIC逆ツリー分析

ROIC逆ツリー分解

ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。

年度 売上高(百万円) NOPATマージン(%) × 投下資本回転率(回) = ROIC(%)
17年 3月期 43,854 4.70 × 1.034 = 4.86
18年 3月期 45,100 3.38 × 1.039 = 3.51
19年 3月期 46,337 4.69 × 1.026 = 4.82
20年 3月期 48,500 4.54 × 1.037 = 4.70
21年 3月期 44,400 3.89 × 0.907 = 3.53
22年 3月期 52,500 7.37 × 1.009 = 7.43
23年 3月期 52,200 3.88 × 0.977 = 3.79
24年 3月期 60,000 6.80 × 1.059 = 7.20
25年 3月期 63,316 5.24 × 1.089 = 5.70
ROIC逆ツリー: NOPATマージンと投下資本回転率0.002.004.006.008.001719212325NOPATマージン(%)投下資本回転率(回)
ROIC逆ツリー分解(2025年 3月期 連結)
NOPATマージン
5.24%
NOPAT 3,316百万円 ÷ 売上 63,316百万円
×
投下資本回転率
1.089回
売上 63,316百万円 ÷ IC 58,160百万円
=
ROIC
5.70%
📊 ROIC変動の主因: 直近の変動は主に「NOPATマージン」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROICに直結しています。

ROIC変動要因の分解

アイホン株式会社(6718)の過去9年間の財務データを確認すると、ROIC(投下資本利益率)は最低3.51%(2018年3月期)から最高7.43%(2022年3月期)の間で推移しており、収益性にボラティリティが見られます。この変動の主因は、分析結果が示す通りNOPATマージン(収益性指標)の動きにあります。

具体的には、投下資本回転率が0.9回から1.1回弱という極めて狭い範囲で安定的に推移しているのに対し、NOPATマージンは3.38%(2018年3月期)から7.37%(2022年3月期)へと2倍以上の開きが生じています。2024年3月期にはROIC 7.20%まで回復しましたが、2025年3月期の予想ではNOPATマージンが5.24%へ低下することに伴い、ROICも5.70%へ低下する見込みとなっており、利益率の動向が全体の投資効率を直接的に左右する構造となっています。

改善ドライバーの特定

同社の資本効率をさらに向上させるための鍵は、「利益率(NOPATマージン)の安定化と底上げ」に集約されます。投下資本回転率は2025年3月期予想で1.089回と過去最高水準を見込んでおり、資産の活用効率(売上を作る力)については着実な進展が見られます。しかし、その効率向上を打ち消す形でマージンが低下している点が課題です。

ROICを再上昇させるための具体的なドライバーとしては、以下の要素が挙げられます。

  • 付加価値の高い製品ミックスへの転換: インターホンシステムだけでなく、医療・介護施設向けなどの高付加価値ソリューションの比率向上による売上総利益率の改善。
  • 販管費のコントロールと価格転嫁: 原材料費や物流コストの変動に対し、適切な価格改定やオペレーションの効率化を通じて、営業利益(NOPAT)を確保する力の強化。
  • グローバル展開の深化: 比較的安定している国内市場に加え、利益率の向上が期待できる海外市場でのシェア拡大。

投資家へのポイント

投資家の皆様が今後注目すべきポイントは、同社が「効率性の向上(回転率)」を維持しながら、どこまで「収益性(マージン)」を回復・定着させられるかという点にあります。

  • マージンの変動耐性: 2025年3月期の予想に見られるマージン低下が、一時的なコスト増(研究開発費や投資)によるものか、あるいは構造的な競争環境の変化によるものかを精査する必要があります。
  • 資本効率の安定性: 投下資本回転率は1.0回前後で安定しており、事業モデルとして極端に資産が膨らむリスクは低いと推察されます。これは、利益率の改善がダイレクトにROICの向上に結びつきやすい体質であることを示唆しています。
  • 株主還元とのバランス: ROICが5〜7%台で推移する中、WACC(資本コスト)をどの程度上回っているか、そして創出されたキャッシュが更なる成長投資に向かうのか、あるいは株主還元に充てられるのか、経営陣の資本配分方針が重要な判断材料となります。

以上の通り、アイホン株式会社のROICは「売上を立てる効率」は維持されているものの、「利益を残す力」の変動に強く影響を受ける性質を持っています。この収益性の波をどのように管理し、中長期的なトレンドとして向上させていけるかが、企業価値評価の分水嶺になると考えられます。

EVA(経済的付加価値)分析

EVA(経済的付加価値)推移

EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。

年度 NOPAT(百万円) 資本コスト(百万円) EVA(百万円) ROIC(%) WACC(%)
17年 3月期 2,062 2,968 -906 4.86 7.00
18年 3月期 1,523 3,038 -1,515 3.51 7.00
19年 3月期 2,175 3,161 -987 4.82 7.00
20年 3月期 2,200 3,275 -1,075 4.70 7.00
21年 3月期 1,728 3,427 -1,699 3.53 7.00
22年 3月期 3,868 3,644 224 7.43 7.00
23年 3月期 2,025 3,739 -1,714 3.79 7.00
24年 3月期 4,081 3,966 114 7.20 7.00
25年 3月期 3,316 4,071 -755 5.70 7.00
EVA(経済的付加価値)推移-2000-100001.0千2.0千3.0千4.0千5.0千17192123250EVA(百万円)NOPAT(百万円)
EVA評価サマリー
直近EVA
-755
百万円(2025年 3月期 連結)
累積EVA
-8,313
百万円(9年間合計)
価値創造評価
価値創造力が弱い

EVAの推移と評価

アイホン株式会社(6718)の過去9期におけるEVA(経済的付加価値)を分析すると、大半の期間でマイナス圏で推移しており、会計上の利益(NOPAT)が計上されている一方で、資本コストを上回る利益を創出できていない実態が浮き彫りとなっています。 具体的には、2017年3月期から2025年3月期(予想含む)までの9年間のうち、EVAがプラスとなったのは2022年3月期(224百万円)と2024年3月期(114百万円)の2期のみに留まっています。

会計利益であるNOPATは毎期15億円から40億円規模で安定して推移していますが、資本コスト(WACC 7.00%)を差し引いた後の経済的付加価値は、累計で-8,313百万円に達しています。この乖離の主な理由は、事業に投下された資本に対して、株主や債権者が期待する収益率(7.00%)にROIC(投下資本利益率)が届いていない期間が長いためです。

価値創造力の持続性

EVAのトレンドから判断すると、同社の価値創造力は現時点では「脆弱」と言わざるを得ません。ROICの推移を見ると、最高値で7.43%(2022年3月期)、最低値で3.51%(2018年3月期)となっており、WACCの7.00%を安定的に上回る構造が構築できていません。

特に注目すべきは、資本コスト(額)が2017年3月期の2,968百万円から2025年3月期には4,071百万円へと、約37%増加している点です。投下資本が拡大している一方で、NOPATの成長がそれに追いついておらず、結果として2025年3月期もROIC 5.70%と、再びマイナスのEVA(-755百万円)に転じる見通しとなっています。このように、資本効率の改善が伴わない資産拡大は、経済的な価値破壊を継続させるリスクを孕んでいます。

投資家へのポイント

EVA分析に基づき、投資家が注目すべきポイントは以下の3点です。

  • ROICとWACCの逆転現象: 会計上の黒字に惑わされず、ハードル・レート(WACC 7.00%)を安定して超えられる収益構造への転換がなされるか。特に、ROICが7%を超える年が単発で終わらず、継続性を持って現れるかが鍵となります。
  • 資本効率の改善策: 投下資本(有利子負債+株主資本)が増加傾向にある中で、それに見合う利益成長、あるいは不要資産の圧縮などによる資本のスリム化が実施されるか。
  • 累積EVAのマイナス幅: 過去9年で83億円もの価値を毀損している事実は重く、今後このマイナスを埋めるだけの爆発的な利益成長、または資本コストの大幅な低減が経営戦略として示されるかに注目が集まります。

以上の通り、アイホン株式会社は安定した会計利益を出しつつも、資本効率の面では課題を抱えています。投資判断にあたっては、同社が掲げる中期経営計画等において、いかに資本コストを意識した経営(ROIC経営)へシフトしようとしているかを精査することが重要です。

⚠️ 注意: EVAは簡易推定値です。WACCは株主資本コスト7%想定に基づく簡易計算であり、 正確なEVA算出にはβ値やリスクフリーレートの精緻な設定が必要です。

営業レバレッジ分析

営業レバレッジ度(DOL)推移

DOL = 営業利益変化率 ÷ 売上高変化率。売上が1%変化したとき営業利益が何%変化するかを示し、固定費比率の高さ(経営リスク)を表します。

平均DOL
7.47倍
有効年度の平均
リスク評価
高リスク
DOL≤2: 低 / 2-5: 中 / 5+: 高
年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 営業利益率(%) 売上変化率(%) 営業利益変化率(%) DOL(倍)
17年 3月期 43,854 2,775 6.33 - - -
18年 3月期 45,100 2,800 6.21 2.84 0.90 0.32
18年 3月期 45,113 2,805 6.22 0.03 0.18 -
19年 3月期 46,337 2,712 5.85 2.71 -3.32 -1.22
20年 3月期 48,500 2,900 5.98 4.67 6.93 1.49
20年 3月期 48,494 2,833 5.84 -0.01 -2.31 -
21年 3月期 44,400 2,400 5.41 -8.44 -15.28 1.81
21年 3月期 45,800 3,100 6.77 3.15 29.17 9.25
21年 3月期 46,141 3,622 7.85 0.74 16.84 22.62
22年 3月期 52,500 5,000 9.52 13.78 38.05 2.76
22年 3月期 51,600 5,300 10.27 -1.71 6.00 -3.50
22年 3月期 51,991 5,538 10.65 0.76 4.49 5.93
23年 3月期 52,200 2,700 5.17 0.40 -51.25 -
23年 3月期 52,400 3,600 6.87 0.38 33.33 -
23年 3月期 52,811 3,758 7.12 0.78 4.39 5.60
24年 3月期 60,000 5,500 9.17 13.61 46.35 3.41
24年 3月期 60,100 4,500 7.49 0.17 -18.18 -
24年 3月期 61,334 5,268 8.59 2.05 17.07 8.31
25年 3月期 63,316 3,814 6.02 3.23 -27.60 -8.54
26年 3月期 62,500 2,800 4.48 -1.29 -26.59 20.63
営業レバレッジ度(DOL)と営業利益率の推移-10.00.010.020.030.017192122232425260DOL(倍)営業利益率(%)

費用構造の特徴

アイホン株式会社の平均DOL(営業レバレッジ度)は7.47倍と算出されており、一般的な基準である「5倍以上」を大きく上回る「高リスク(固定費型ビジネス)」の範疇にあります。これは、同社が通信機器メーカーとして研究開発費、製造設備の維持費、および人件費といった固定費を一定水準抱えていることを示唆しています。特に2021年3月期のDOLが22.62倍、2026年3月期の予想DOLが20.63倍と極めて高い値を示している局面があり、売上高のわずかな変動が営業利益に対して非常に大きな増幅効果(あるいは減少効果)をもたらす構造となっています。同社の主力製品であるインターホンシステムは、建築基準やセキュリティ需要に支えられた安定性がある一方で、損益分岐点を超えた後の利益成長が加速しやすい「ハイレバレッジ」な特性を持っていると分析されます。

景気変動への感応度

DOLの推移を見ると、業績のボラティリティ(振れ幅)が非常に高いことが確認できます。例えば、2022年3月期には売上高が13.78%増加した際に、営業利益は38.05%と大幅な伸びを見せました(DOL 2.76倍)。しかし、2026年3月期の見通しでは、売上高が1.29%の微減にとどまる一方で、営業利益は26.59%の減益が予想されており、下方への感応度も非常に鋭くなっています。このように、建設市場の動向や集合住宅の着工件数といった外部環境の影響で売上高が上下した際、利益面ではその数倍のインパクトを受ける傾向があります。好況期には利益が急拡大するメリットがある反面、景気後退期やコスト上昇局面では利益率が急速に悪化するリスクを内包しています。

投資家へのポイント

投資に際しては、同社の「高い営業レバレッジ」がもたらす収益の非線形性を十分に考慮する必要があります。営業利益率は2022年3月期の10.65%から2026年3月期予想の4.48%まで変動が激しく、売上高の増減予測が少しずれるだけで、最終的な利益着地が大きく変動する可能性が高いといえます。直近のデータでは、売上高が600億円規模に拡大しているものの、営業利益率の低下とともにDOLが再び上昇傾向(2026年期予想で20倍超)にあります。これは、原材料費や労務費などのコスト構造の変化が利益に与える影響が強まっていることを示唆しています。現在の売上成長が利益成長に結びつく局面なのか、あるいは固定費負担が重くのしかかる局面なのかを、市場環境と照らし合わせて慎重に見極めることが求められます。以上の特性を踏まえ、同社のリスク・リターン特性をどのように評価するかは投資家の皆様の判断に委ねられます。

⚠️ 注意: 営業レバレッジ度は前年比の変化率から算出しており、売上や利益が急変する年度では極端な値になることがあります。 複数年の平均値での評価を推奨します。

持続的成長率分析(SGR)

持続的成長率(SGR)推移

SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。

年度 ROE(%) 配当性向(%) 内部留保率(%) SGR(%) 実際成長率(%)
17年 3月期 4.89 推定30% 70.0 3.42 -
18年 3月期 3.57 推定30% 70.0 2.50 2.84
19年 3月期 5.06 推定30% 70.0 3.54 2.74
20年 3月期 4.70 推定30% 70.0 3.29 4.67
21年 3月期 3.68 推定30% 70.0 2.57 -8.45
22年 3月期 7.88 35.2 64.8 5.10 18.24
23年 3月期 4.49 44.6 55.4 2.49 -0.57
24年 3月期 8.12 45.8 54.2 4.40 14.94
25年 3月期 6.22 58.8 41.2 2.57 5.53
持続的成長率(SGR)vs 実際の売上成長率-10.0%-5.0%0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%17192123250SGR(%)実際成長率(%)
ROEと配当性向の推移0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%50.0%60.0%1719212325ROE(%)配当性向(%)
持続的成長率の評価(2025年 3月期 連結)
ROE
6.22%
×
内部留保率
41.2%
=
SGR
2.57%
📊 成長持続性の評価: 実際の成長率がSGRを大幅に上回っており、外部資金調達や財務レバレッジの拡大が必要な可能性

SGR水準の評価

アイホン株式会社の持続的成長率(SGR)は、過去数年間にわたり概ね2.5%から5.1%の範囲で推移しています。直近2025年3月期のSGRは2.57%となっており、2024年3月期の4.40%から低下する見通しです。この変動の主因は、ROE(自己資本利益率)の変動と、近年顕著に見られる配当性向の引き上げの両面にあります。

特に注目すべきは配当政策の変化です。2021年3月期までは配当性向を30%程度に維持し、内部留保率を約70%と高く保つことで再投資余力を確保していました。しかし、2022年3月期以降は株主還元を強化しており、2025年3月期には配当性向を58.8%まで引き上げる計画です。これに伴い内部留保率が41.2%まで低下しており、計算上のSGRを押し下げる構造的な要因となっています。一方で、ROEは2024年3月期に8.12%を記録するなど改善傾向にあり、収益性の向上がSGRの底上げに寄与しています。

成長の持続可能性

実際の売上成長率とSGRを比較すると、同社の成長は非常にダイナミックであり、SGRの理論値を大きく上回る年度が散見されます。特に2022年3月期(実際18.24% vs SGR 5.10%)や2024年3月期(実際14.94% vs SGR 4.40%)は、内部資金のみで賄える成長スピードを大幅に超えて拡大しました。

2025年3月期の予測においても、実際の成長率(5.53%)がSGR(2.57%)を上回る見込みです。このように「実際成長率 > SGR」の状態が続くことは、事業拡大に必要な資金を内部留保だけでは賄いきれず、キャッシュ・フローの管理や外部資金(借入金等)の活用、あるいは資産効率のさらなる向上が必要であることを示唆しています。インターホン市場における堅調な需要背景がある一方で、財務的なレバレッジをどの程度許容しながら成長を加速させるかが、持続可能性を評価する上での鍵となります。

投資家へのポイント

アイホン株式会社のSGR分析を踏まえ、以下の3点を投資判断の材料として整理します。

  • 還元方針と成長資金のバランス: 配当性向を約60%まで引き上げたことは株主にとって魅力的ですが、それは同時に「内部留保による自律的な成長速度(SGR)」を意図的に抑制していることを意味します。現在の高い成長ペースを維持するために、どのような資金調達戦略を描いているかに注目が必要です。
  • 収益性(ROE)の改善余地: SGRを向上させるためには、低下した内部留保率を補うほどのROE向上が求められます。2024年3月期に見られた8%台のROEを維持、あるいはさらに高められるかどうかが、持続可能な成長の質を左右します。
  • ボラティリティへの対応: 過去の実際成長率はマイナスから2桁成長まで振れ幅が大きく、SGRとの乖離が頻繁に発生しています。この成長の不連続性が、一時的な市場環境(半導体不足の解消や更新需要など)によるものか、構造的なシェア拡大によるものかを見極めることが重要です。

高い還元姿勢を維持しつつ、理論上の持続可能速度を超える実成長をどうコントロールしていくのか、同社の資本政策と事業成長の整合性が今後の焦点となります。

⚠️ 注意: 配当データが取得できない年度は内部留保率70%(配当性向30%)を仮定しています。 実際の配当政策と異なる場合があります。

インタレストカバレッジレシオ推移

インタレストカバレッジレシオ推移

ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。

直近ICR
∞(利息負担なし)
>10: 極めて安全 / 3-10: 安全 / 1-3: 要注意 / <1: 危険
安全性評価
極めて安全(実質無借金)
年度 営業利益(百万円) 推定支払利息(百万円) ICR(倍) 有利子負債(百万円) 有利子負債比率(%) 推定借入金利(%)
17年 3月期 2,775 - - 0.0 -
18年 3月期 2,800 - - 0.0 -
19年 3月期 2,712 - - 0.0 -
20年 3月期 2,900 - - 0.0 -
21年 3月期 2,400 - - 0.0 -
22年 3月期 5,000 - - 0.0 -
23年 3月期 2,700 - - 0.0 -
24年 3月期 5,500 - - 0.0 -
25年 3月期 3,814 - - 0.0 -

利払い安全性の評価

アイホン株式会社(6718)のインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)は、2017年3月期から2025年3月期(予想)に至るまで、一貫して「∞(無限大)」を維持しています。これは、同社が有利子負債を抱えず、支払利息が発生していない「実質無借金経営」を継続していることを示しています。営業利益の推移を見ると、2021年3月期の2,400百万円から2024年3月期の5,500百万円まで幅がありますが、どの年度においても金利負担による収益圧迫のリスクは皆無です。2025年3月期の予想営業利益は3,814百万円と前期比で減少見込みですが、財務上の安全性という観点では依然として極めて強固な状態にあります。

有利子負債の状況

同社の有利子負債比率は、分析対象期間を通じて0.0%を維持しています。これは、事業活動に必要な資金をすべて自己資本および営業キャッシュフローで賄っていることを意味します。金利上昇局面においても、借入金の利払い増加やロールオーバー(借換え)に伴うコスト増のリスクから完全に隔離されており、金融環境の変化に対して非常に高い耐性を持っています。推定支払利息が発生していない現状からは、負債に頼らない保守的かつ健全な財務運営が徹底されていることが伺えます。

投資家へのポイント

財務の健全性に焦点を当てた場合、アイホンは「極めて安全」な投資対象といえます。倒産リスクが極めて低く、景気後退局面でも安定した経営基盤を維持できる点は、ディフェンシブな資産形成を目指す投資家にとって大きな魅力となります。一方で、これほどまでに潤沢な手元流動性と無借金経営は、資本効率(ROE等)の観点からは改善の余地があるとも解釈できます。投資判断に際しては、この盤石な財務基盤を背景に、成長投資(R&Dや設備投資)や株主還元へどのように資金を配分していくのか、同社の資本政策の進展を注視することが重要となります。

⚠️ 注意: 支払利息は「営業利益−経常利益」から推定しています。 営業外収益が大きい企業では過小評価になる可能性があります。正確な支払利息は有価証券報告書の注記をご確認ください。

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