8127ヤマトインターナショナル株式会社||

ヤマトインターナショナル(8127) 理論株価分析:強固な財務基盤と「クロコダイル」ブランド再構築の行方 カチノメ

決算発表日: 2026-04-102026年8月期 第2四半期
総合業績スコア
54/100
中立

セクション別スコア

業績成長性35収益性25財務健全性85株主還元65成長戦略50理論株価評価65
業績成長性35
収益性25
財務健全性85
株主還元65
成長戦略50
理論株価評価65

※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。

決算履歴(業績推移)

売上高推移(百万円)120億140億160億180億200億220億2017年 2018年 2020年 2021年 2022年 2023年 2025年 '26/8売上高利益推移(営業利益・経常利益・当期純利益)-15億-10億-5億0百万5億10億2017年 2018年 2020年 2021年 2022年 2023年 2025年 '26/80営業利益経常利益純利益利益率推移(%)-10.0%-5.0%0.0%5.0%10.0%2017年 2018年 2020年 2021年 2022年 2023年 2025年 '26/80営業利益率経常利益率純利益率
年度 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 包括利益
2017年 8月期 連結 18,500 700 750 150 -
2017年 8月期 連結 18,705 756 817 208 510
2018年 8月期 連結 16,800 850 900 560 -
2018年 8月期 連結 16,541 648 754 474 507
2019年 8月期 連結 16,818 583 670 530 140
2020年 8月期 連結 14,200 -990 -830 -1,370 -
2020年 8月期 連結 14,252 -924 -760 -1,296 -1,201
2021年 8月期 連結 14,300 -190 90 50 -
2021年 8月期 連結 13,690 -365 90 30 -
2021年 8月期 連結 13,691 -364 93 31 272
2022年 8月期 連結 19,430 100 380 280 -
2022年 8月期 連結 19,390 140 640 450 -
2022年 8月期 連結 19,399 145 641 452 164
2023年 8月期 連結 21,460 250 480 360 -
2023年 8月期 連結 20,800 300 580 560 -
2023年 8月期 連結 20,802 303 588 564 928
2024年 8月期 連結 21,140 263 386 353 920
2025年 8月期 連結 20,300 150 250 200 -
2025年 8月期 連結 19,440 -200 -60 140 -
2025年 8月期 連結 19,445 -202 -62 143 325
★2026年8月期(予想) 20,500 180 270 200

※単位: 百万円

利益率推移

営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

年度 売上高 (百万円) 営業利益率 (%) 経常利益率 (%) 純利益率 (%)
2017年 8月期 連結 18,500 3.78% 4.05% 0.81%
2017年 8月期 連結 18,705 4.04% 4.37% 1.11%
2018年 8月期 連結 16,800 5.06% 5.36% 3.33%
2018年 8月期 連結 16,541 3.92% 4.56% 2.87%
2019年 8月期 連結 16,818 3.47% 3.98% 3.15%
2020年 8月期 連結 14,200 -6.97% -5.85% -9.65%
2020年 8月期 連結 14,252 -6.48% -5.33% -9.09%
2021年 8月期 連結 14,300 -1.33% 0.63% 0.35%
2021年 8月期 連結 13,690 -2.67% 0.66% 0.22%
2021年 8月期 連結 13,691 -2.66% 0.68% 0.23%
2022年 8月期 連結 19,430 0.51% 1.96% 1.44%
2022年 8月期 連結 19,390 0.72% 3.30% 2.32%
2022年 8月期 連結 19,399 0.75% 3.30% 2.33%
2023年 8月期 連結 21,460 1.16% 2.24% 1.68%
2023年 8月期 連結 20,800 1.44% 2.79% 2.69%
2023年 8月期 連結 20,802 1.46% 2.83% 2.71%
2024年 8月期 連結 21,140 1.24% 1.83% 1.67%
2025年 8月期 連結 20,300 0.74% 1.23% 0.99%
2025年 8月期 連結 19,440 -1.03% -0.31% 0.72%
2025年 8月期 連結 19,445 -1.04% -0.32% 0.74%
★2026年8月期(予想) 20,500 0.88% 1.32% 0.98%

※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

決算サマリー

ヤマトインターナショナル株式会社の2026年8月期 第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高が104億81百万円(前年同期比0.6%減)、営業損失が48百万円(前年同期は38百万円の利益)、経常利益が32百万円(同68.1%減)、親会社株主に帰属する中間純利益が77百万円(同3.8%増)となりました。衣料品消費の持ち直しは見られたものの、物価高騰や天候不順による買い控え、原材料価格の上昇が利益面を圧迫しました。営業赤字に転落した一方で、投資有価証券の売却益計上などにより、最終利益は微増を確保しています。

注目ポイント

1. 「クロコダイル」ブランドの次世代戦略

基幹事業である「クロコダイル」において、潜在顧客の獲得を狙った「スウィッチモーション クロコダイル」や「クロコダイル コード」が順調に成長しています。既存顧客の維持に加え、10年後を見据えたブランド認知の拡大を戦略的に進めています。

2. 物流自動化による生産性向上

子会社のヤマトファッションサービスにおいて、EC市場の拡大に伴う小口配送増に対応するため、自動ソーターやカメラ認証システムを導入。積極的な設備投資により、人件費高騰を吸収する省人化・効率化を図っています。

3. 強固なネットキャッシュと資産背景

現金及び預金と有価証券を合わせた手元流動性資金は約69億円に達し、自己資本比率70%と極めて健全な財務体質を維持。この潤沢な資金が、苦境下での配当維持やブランド投資の原動力となっています。

業界動向

アパレル業界は、インバウンド需要の恩恵を受ける一方で、国内消費者は実質賃金の伸び悩みによる生活防衛意識が根強い状況です。特に同社が主力とする中価格帯のカジュアルウェアは、ユニクロ等の大手SPAとの競合や、EC化の加速による販売チャネルの変革を迫られています。原材料費および物流コストの上昇は業界共通の課題です。

投資判断材料

長期投資家の視点では、現在の収益性の低下は懸念材料ですが、PBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく割り込む水準であれば、ネットキャッシュや保有不動産の価値を考慮した「資産株」としての側面が強まります。今後の成長には、ブランド価値の再定義による営業利益率の改善が不可欠です。

セグメント別業績

  • 繊維製品製造販売業: 売上高103億43百万円(前年同期比0.5%減)、セグメント利益2億33百万円(同22.7%減)。主力のクロコダイルが苦戦し、コスト増を価格転嫁しきれず利益率が低下しました。
  • 不動産賃貸事業: 売上高1億38百万円(同3.4%減)、セグメント利益46百万円(同32.7%減)。安定的な収益源ですが、今期は微減となりました。

財務健全性

自己資本比率は70.0%と、前連結会計年度末の74.3%からやや低下したものの、依然として製造業として非常に高い水準にあります。有利子負債も少なく、総資産256億円のうち投資有価証券が70億円を占めるなど、含み益を含めた実質的な財務余力は極めて大きいです。

配当・株主還元

中間配当として1株当たり6円(前年同期は10円、ただし前期末は普通配当4円+記念配当など)を実施。親会社株主に帰属する純利益がプラスを維持していることから、安定配当の方針を堅持しています。資産背景を考慮すると、減配リスクは比較的低いと考えられます。

通期業績予想

PDF内には具体的な通期業績予想の修正に関する記述はありませんが、中間期での営業赤字計上を受け、下期での巻き返しが求められます。特に秋冬物のプロパー販売率の向上と、供給体制の最適化による粗利率の改善が焦点となります。

中長期成長戦略

中期ビジョン「Yamato 2026」を掲げ、ブランドの「シン・ブランド創り」を推進中。店舗、商品、コミュニケーションの一貫性を追求し、顧客エンゲージメントの向上を図っています。また、PenfieldやLightning Boltといったライセンスブランドの育成にも注力しています。

リスク要因

  • 為替・原材料リスク: 円安の進行は輸入コストを押し上げ、利益を直接的に圧迫します。
  • 気候変動リスク: 暖冬や猛暑といった天候不順が衣料品需要を大きく左右します。
  • 競争激化: 低価格SPAや中古市場の拡大による市場シェアの浸食。

バリュエーション

BPS(1株当たり純資産)に対し株価がディスカウントされている傾向があり、PBR面での割安感は顕著です。配当利回りも比較的高水準で推移しており、収益力の回復が伴えば、リバリュエーション(評価見直し)の余地は大きいと言えます。

市場の評判

Yamato International (8127) has mixed investor opinions; some see potential growth, while others criticize management. The company offers stock incentives and a 1.73% dividend yield. Employee reviews highlight work-life balance and career development opportunities.

詳細リサーチレポート

ヤマトインターナショナル株式会社 リサーチレポート

1. 最新の業績動向と今後の見通し

  • 2026年8月期第2四半期累計(2025年9月~2026年2月)の連結営業損益は4,800万円の赤字に転落. 前年同期は3,800万円の黒字.
  • 直近3ヶ月(2025年12月~2026年2月)の連結営業損益は1億6,800万円の赤字. 前年同期は7,200万円の赤字.
  • 上期実績と据え置きの通期計画に基づくと、下期(2026年3月~8月)の連結営業損益は2億2,800万円の黒字に転換する計算. 前年同期は2億3,900万円の赤字.
  • 2026年8月期中間決算は、事前予想を上回る経常利益32百万円を計上.
  • 物価高によるコスト増が影響.
  • 会社側は通期計画を据え置いている.

2. 業界内での競合ポジションと市場シェア

  • ヤマトインターナショナルとよく比較される銘柄として、山喜 <3598>、ルックホールディングス <8029>、ダイドー <3205>、マツオカ <3611>、三陽商会 <8011> が挙げられる.
  • 紳士用カジュアルウェア中堅で、「クロコダイル」ブランドが収益の柱. 女性向け商品の強化を図っている.
  • 市場シェアに関する具体的な数値は確認できなかった.

3. 成長戦略と重点投資分野

  • 中期ビジョン「Yamato 2026」を始動. 10年後を見据え、次世代の潜在顧客獲得に重点を置いた戦略を実践.
  • 既顧客の活性化を大前提とする.
  • 2024年8月期は、以下の3分野に注力:
- 収益率を高める分野(GMS) - 売上を伸長させる分野(EC/CITERA) - 将来の成長基盤を確立する分野(直営店)
  • 基幹ブランド「クロコダイル」は、“大人のTPO”をスマートに演出するブランドとして、顧客起点に立ち返り、商品の強みや付加価値を戦略的に構築.
  • EC事業と「CITERA」ブランドの強化.
  • 物流自動化による効率化を推進.
  • 「クロコダイル コード」の独立型コーナーや、メンズ・レディス複合の直営・アウトレット店を出店.

4. リスク要因と課題

  • 外部環境の変化として、資源価格の高騰や円安を背景とする物価高、金利・賃金の上昇等が挙げられる.
  • アパレル・ファッション業界においては、顧客の生活防衛意識の高まりや、気候変動による購買動機の変容が懸念される.
  • 事業上のリスクに関する詳細な情報は確認できなかった.

5. アナリストの評価と目標株価

  • 2026年4月3日時点では、アナリストによるレーティング、目標株価は確認できなかった.
  • みんかぶによる株価予想は、2026年4月3日時点で「409円で【売り】」と評価されている.

6. 最近の重要ニュースやイベント

  • 2026年4月10日、2026年8月期第2四半期決算を発表。上期営業が赤字転落.
  • 2026年4月10日、株主優待制度の変更を発表.
  • 2026年1月5日、シルバーケイプ・インベストメンツ・リミテッドが大量保有報告書を提出。保有割合16.23%.

7. ESG・サステナビリティへの取り組み

  • サステナビリティに関する環境活動「Project sustainability」を展開.
  • 不要になったクロコダイル商品を回収し、アップサイクルする取り組みを実施.
  • 若手社員を中心とする「Yamato 未来創造プロジェクト」が中心となり、ESGに関する活動を推進.
  • 環境保護への取り組みとして、ごみ減量と再資源化、節電への取り組み、ECOキャップ回収活動などを実施.

8. 配当政策と株主還元

  • 2024年8月期の年間配当は1株あたり16円.
  • 2021年3月19日、配当政策の基本方針を変更。具体的な数値目標を明示しない方針とした.
  • 株主優待として、自社商品(1,000円相当~)がもらえる. 300株以上保有で株主優待の対象となる.
  • 2026年8月末日時点の株主から株主優待制度を変更.
  • 配当利回りは4.90%.
  • 過去には、年間配当金12円以上を前提に、配当性向70%以上の安定配当を基本方針としていた時期があった.

情報源

年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)

株価推移(高値・安値)200300400500600700'10/8'13/8'16/8'19/8'22/8'25/8最新(株探)高値安値PBR推移(高値・安値・期末PBR)0.2倍0.3倍0.4倍0.5倍0.6倍0.7倍0.8倍0.9倍'10/8'13/8'16/8'19/8'22/8'25/8最新(株探)PBR高値PBR安値期末PBRPER推移(高値・安値)0倍50倍100倍150倍200倍250倍'10/8'13/8'16/8'19/8'22/8'25/8最新(株探)PER高値PER安値時価総額推移(高値・安値)40億60億80億100億120億140億160億'10/8'13/8'16/8'19/8'22/8'25/8最新(株探)高値安値ROE推移(PBR÷PERで算出・高値同士/安値同士)0.0%1.0%2.0%3.0%4.0%'10/8'13/8'16/8'19/8'22/8'25/8最新(株探)ROE高値ROE安値
年度 株価高値 株価安値 PER高値 PER安値 PBR高値 PBR安値 時価総額高値 時価総額安値 期末PBR
2010年8月期 388 310 16.71 13.35 0.43 0.34 87億3077万 69億7562万 0.37倍
2011年8月期 415 278 13.47 9.02 0.45 0.3 93億3833万 62億5555万 0.36倍
2012年8月期 416 318 19.01 14.53 0.45 0.34 93億6122万 71億5593万 0.4倍
2013年8月期 477 344 17.5 12.62 0.47 0.34 107億3390万 77億4100万 0.42倍
2014年8月期 465 400 99.15 85.29 0.46 0.4 104億6386万 90億117万 0.44倍
2015年8月期 445 381 84.76 72.57 0.44 0.38 100億1380万 85億7361万 0.4倍
2016年8月期 431 371 赤字 赤字 0.53 0.45 96億9876万 79億338万 0.47倍
2017年8月期 485 381 48.94 38.45 0.58 0.45 103億3192万 81億1641万 0.54倍
2018年8月期 692 419 30.19 18.28 0.81 0.49 147億4163万 89億2593万 0.63倍
2019年8月期 540 360 20.95 13.97 0.64 0.43 115億358万 76億6905万 0.48倍
2020年8月期 418 248 赤字 赤字 0.54 0.32 89億462万 52億8312万 0.46倍
2021年8月期 371 317 248.99 212.75 0.48 0.41 79億338万 67億5303万 0.42倍
2022年8月期 336 270 15.27 12.27 0.43 0.35 71億5778万 57億5179万 0.35倍
2023年8月期 314 231 11.45 8.42 0.38 0.28 66億8912万 49億2097万 0.34倍
2024年8月期 390 280 22.71 16.31 0.46 0.33 83億814万 59億6482万 0.4倍
2025年8月期 419 294 60.11 42.18 0.5 0.35 89億2593万 62億6306万 0.48倍
最新(株探) 607 - 61.8倍 - 0.69倍 - 129億円 - 0.69倍

ROE算出表(PBR÷PER×100)

PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。

年度 PBR高値 PER高値 ROE高値(%) PBR安値 PER安値 ROE安値(%)
2010年8月期 0.43 16.71 2.6% 0.34 13.35 2.5%
2011年8月期 0.45 13.47 3.3% 0.3 9.02 3.3%
2012年8月期 0.45 19.01 2.4% 0.34 14.53 2.3%
2013年8月期 0.47 17.5 2.7% 0.34 12.62 2.7%
2014年8月期 0.46 99.15 0.5% 0.4 85.29 0.5%
2015年8月期 0.44 84.76 0.5% 0.38 72.57 0.5%
2016年8月期 0.53 赤字 - 0.45 赤字 -
2017年8月期 0.58 48.94 1.2% 0.45 38.45 1.2%
2018年8月期 0.81 30.19 2.7% 0.49 18.28 2.7%
2019年8月期 0.64 20.95 3.1% 0.43 13.97 3.1%
2020年8月期 0.54 赤字 - 0.32 赤字 -
2021年8月期 0.48 248.99 0.2% 0.41 212.75 0.2%
2022年8月期 0.43 15.27 2.8% 0.35 12.27 2.9%
2023年8月期 0.38 11.45 3.3% 0.28 8.42 3.3%
2024年8月期 0.46 22.71 2.0% 0.33 16.31 2.0%
2025年8月期 0.5 60.11 0.8% 0.35 42.18 0.8%
最新(株探) 0.69倍 61.8倍 1.1% - - -

バリュエーション推移の概要

ヤマトインターナショナル(8127)の過去15年余りのバリュエーション推移を確認すると、PBR(株価純資産倍率)が一貫して1倍を下回る「解散価値割れ」の状態が継続しています。PER(株価収益率)は、純利益の変動に伴い数倍から200倍超まで極めて広範囲に推移しており、業績のボラティリティが指標に強く反映される傾向があります。足元では株価の回復に伴い、PBR・PERともに過去10年の平均水準を上回る上昇傾向にあります。

PBR分析

PBRは長らく0.3倍から0.5倍のレンジで推移してきました。歴史的な安値は2023年8月期の0.28倍であり、この水準が強力な下値支持線として機能してきました。一方で、高値圏は2018年8月期に記録した0.81倍ですが、それ以外の期間では概ね0.6倍が上値抵抗線となっています。現在の0.69倍(最新値)は、2018年のピーク水準に次ぐ過去15年間での高位圏に位置しており、資産価値に対する評価が歴史的に見て高まっている局面と言えます。

PER分析

PERは、2016年8月期および2020年8月期の赤字転落、ならびに2021年8月期の極低水準の利益(PER 248.99倍)など、収益性の不安定さによって大きく変動しています。安定期においては12倍から18倍程度が概ねの目安でしたが、2024年8月期以降は株価の上昇が先行し、直近では61.8倍に達しています。これは過去の安定期と比較して非常に高い数値であり、市場が将来的な大幅な利益改善、あるいは資本効率の向上を織り込み始めている可能性を示唆しています。

時価総額の推移

時価総額は、2023年8月期に記録した49億2097万円を底に、直近では129億円まで急回復しています。過去最高値である2018年8月期の147億4163万円には届かないものの、過去15年間の推移の中では上位20%以内の高水準に位置しています。2022年から2023年にかけて時価総額が50億〜70億円規模に低迷していた時期と比較すると、企業価値の評価は倍増しており、投資家心理の明確な改善が窺えます。

現在のバリュエーション評価

現在のバリュエーションを歴史的水準と比較すると、PBR(0.69倍)およびPER(61.8倍)ともに、過去15年間の平均値を大幅に上回っています。特にPBRは、2023年の0.3倍台から短期間で0.7倍近くまで切り上がっており、割安感はかつてほど顕著ではありません。現在の株価水準は、単なる資産価値の評価(PBR)を超え、業績回復への強い期待(PER)を内包した位置にあると考えられます。今後の投資判断においては、現在の高PERを正当化するだけの利益成長が伴うか、あるいはPBR1倍に向けたさらなる資本政策が打ち出されるかが重要な焦点となります。

キャッシュフロー推移

キャッシュフロー推移(営業CF・投資CF・フリーCF)-30億-20億-10億0百万10億20億'17/8'19/8'21/8'23/8'25/80営業CF投資CFフリーCF設備投資 vs フリーCF(百万円)-20億-15億-10億-5億0百万5億10億'17/8'19/8'21/8'23/8'25/80設備投資#1フリーCF現金等残高推移50億60億70億80億90億100億'17/8'19/8'21/8'23/8'25/8現金等
年度 四半期 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF 設備投資#1 現金等
2017年8月期 通期 403 456 -510 860 -464 9469
2018年8月期 通期 580 -2239 -878 -1658 -200 6925
2019年8月期 通期 735 239 -375 973 -261 7526
2020年8月期 通期 -1485 -169 -536 -1654 -271 5334
2021年8月期 通期 759 57 -300 817 -60 5851
2022年8月期 通期 1123 -307 -62 817 -137 6606
2023年8月期 通期 474 -174 112 299 -159 7018
2024年8月期 通期 1038 -63 -535 975 -359 7456
2025年8月期 通期 -903 -39 -335 -941 -234 6180

※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)

キャッシュフロー推移の概要

ヤマトインターナショナル(8127)の過去9年間のキャッシュフロー(CF)推移を俯瞰すると、アパレル業界特有の景気変動や消費動向の影響を受け、営業CFが大きく変動する傾向が見て取れます。2024年8月期までは、本業で稼いだ資金を投資や配当に充てる「優良安定型(営業CF+、投資CF-、財務CF-)」の局面が多く見られましたが、直近の2025年8月期においては、営業CF・投資CF・財務CFのすべてがマイナスとなる「危機型」のパターンに陥っています。これは本業での現金流出に加え、投資と財務上の支払い(配当や返済)が重なった結果であり、次期以降のキャッシュ創出力の回復が喫緊の課題となっています。

営業キャッシュフロー分析

営業CFは、2022年8月期の11.23億円をピークに、2024年8月期も10.38億円と高い水準を維持していましたが、2025年8月期には-9.03億円と大幅な赤字に転じています。過去にも2020年8月期(コロナ禍の影響)に-14.85億円を記録しており、数年おきに大きなキャッシュの流出が発生する不安定さが懸念材料です。本業のキャッシュ創出力は、棚卸資産(在庫)の増減や仕入債務の決済タイミングに左右されやすく、安定的な黒字基調を維持するためのオペレーション効率化が求められる状況にあります。

投資キャッシュフロー・設備投資分析

投資CFの推移を見ると、2017年(+4.56億円)、2019年(+2.39億円)、2021年(+0.57億円)と、定期的に資産売却などによるプラスを計上しており、資産の入れ替えを行っている様子が伺えます。一方で、設備投資額は概ね年間1億円から3億円程度で推移しており(2017年の4.64億円を除く)、大規模な成長投資というよりは、既存店舗の改修やシステム維持といった維持更新型の投資が中心であると推察されます。2024年8月期は設備投資を3.59億円に増額しましたが、2025年8月期は2.34億円へと抑制傾向にあり、キャッシュ流出に合わせた投資のコントロールが見られます。

フリーキャッシュフロー分析

フリーCF(FCF)は、2024年8月期までの直近4年間はプラスを維持(8.17億円〜9.75億円)しており、株主還元や借入返済に充てる自由な資金を十分に確保できていました。特に2024年8月期は9.75億円の潤沢なFCFを創出しましたが、2025年8月期は営業CFの悪化に伴い、-9.41億円と一転して大幅なマイナスを記録しています。このように、FCFの変動幅が大きいため、単年度の数値ではなく、数年単位の平均値で還元余力を評価する必要があります。

財務戦略・現金残高の評価

財務CFは、多くの年度でマイナス(-3億円〜-8億円規模)となっており、配当支払いや借入金の返済を継続している「安定企業」の振る舞いを示しています。特筆すべきは同社の手元流動性の高さです。現金等残高は、2017年の94.69億円から減少傾向にあるものの、2025年8月期末時点でも61.80億円を確保しています。年間の設備投資額や財務支出の規模に照らせば、依然として高いキャッシュ保有水準(キャッシュ・リッチ)を維持しており、短期的には財務的な健全性に大きな支障はないと言えます。

キャッシュフロー総合評価

総合的に判断すると、ヤマトインターナショナルは「本業の収益安定性には課題があるものの、極めて強固な財務基盤(キャッシュ保有量)を持つ企業」と評価できます。2025年8月期の「危機型」CFパターンは、一時的な在庫積み増しや損益の悪化を、潤沢な内部留保で吸収している状態です。投資家としては、今後この流出が一時的なものに留まり、再び営業CFが10億円規模のプラス(優良安定型)に回帰できるかどうかが焦点となります。豊富な手元資金(約61.8億円)を、将来の成長のための積極投資に振り向けるのか、あるいは現状の維持に留めるのか、経営陣の資本配分戦略が今後の企業価値を左右するでしょう。

DCF法による理論株価分析

DCF分析の前提条件

パラメータ 説明
WACC(割引率) 6.0% 加重平均資本コスト
FCF成長率 1.5% 予測期間中の年平均成長率
EV/FCF倍率 9.14倍 ターミナルバリュー算出用(現在の市場評価)
予測年数 5年 将来FCFの予測期間
発行済株式数 21,252,059株 理論株価算出の分母
現金及び現金同等物 62億 非事業資産として加算
有利子負債 5億 企業価値から控除

将来フリーキャッシュフロー予測

予測年 予測FCF 現在価値(PV)
1年目 8億 8億
2年目 8億 7億
3年目 8億 7億
4年目 8億 7億
5年目 9億 6億
ターミナルバリュー 78億 58億
フリーキャッシュフロー推移(実績 + DCF予測)-10億-5億0百万5億10億2123252028予2030予2031予0FCF実績FCF予測

理論株価の算出プロセス

① 予測FCF現在価値の合計 35億
② ターミナルバリューの現在価値 58億
③ 事業価値(① + ②) 93億
④ 加算: 現金及び現金同等物 +62億
⑤ 控除: 有利子負債 -5億
⑥ 株主価値(③ + ④ − ⑤) 150億
DCF理論株価
704円
現在の株価
607円
乖離率(割安)
+16.0%

感度分析(理論株価: 円)

WACC(横軸)とFCF成長率(縦軸)を変化させた場合の理論株価の変動を示します。

WACC →
FCF成長率 ↓
4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%
-3.5%650635621608595
-1.0%694677661646631
1.5%741722704687671
4.0%793772752733715
6.5%850826804782762

※ 緑色: 現在株価(607円)より高い(割安方向) / 赤色: 低い(割高方向) / 青背景: 現在の前提条件

DCF分析の総合評価

ヤマトインターナショナル(8127)のDCF分析に基づく理論株価は704円と算出されました。現在の市場価格607円に対し、乖離率は+16.0%の割安水準にあります。この結果からは、現在の株価は事業が将来生み出すキャッシュフローと保有する正味の現金資産を十分に織り込んでいない可能性が示唆されています。ただし、乖離率16%という数値は、将来予測の不確実性を考慮した「安全余裕率」としてはやや限定的であり、後述するフリーキャッシュフローの変動性を考慮すると、慎重な見極めが必要です。

フリーキャッシュフローの質

過去のフリーキャッシュフロー(FCF)実績を確認すると、2018年8月期(-1,658百万円)や2020年8月期(-1,654百万円)、さらには直近の2025年8月期予測(-941百万円)など、数年おきに大幅なマイナスを計上しています。これはアパレル業界特有の在庫投資や店舗設備への資本支出、あるいは運転資金の変動が激しいことを示唆しています。予測期間においては802百万円〜851百万円と安定的な推移を前提としていますが、実績値の標準偏差が大きいことから、この予測値が「平均的な実力値」として定着するかどうかが、理論株価の妥当性を左右する最大の焦点となります。

前提条件の妥当性

WACC(加重平均資本コスト)を6.0%に設定している点は、現在の低金利環境および同社の有利子負債の少なさを踏まえると、標準的な設定と言えます。また、永続成長率を1.5%と設定している点は、国内アパレル市場の成熟度を考慮すると、やや強気あるいは現状維持を前提とした設定です。特筆すべきは、2025年8月期の予測FCF(-941百万円)から予測1年目の802百万円への急回復を前提としている点です。このV字回復の実現性が、本分析の信頼性の土台となっています。

ターミナルバリューの影響

事業価値93億円のうち、5年目以降の価値を示すターミナルバリュー(TV)の現在価値は58億円にのぼり、事業価値全体の約62%を占めています。これは、企業価値の過半が予測期間以降の不確実な将来に依存していることを意味します。一方で、同社は62億円の現預金に対し有利子負債が5億円と極めて少なく、ネットキャッシュ(正味現金等)が57億円存在します。株主価値150億円のうち、このネットキャッシュが約38%を占めている事実は、事業の不確実性に対する一定の下値支え(ダウンサイド・プロテクション)として機能しています。

感度分析から読み取れること

WACCが6.0%と比較的低く設定されているため、割引率の変化に対する理論株価の感応度は高くなります。仮にWACCが1%上昇して7.0%になった場合、ターミナルバリューは大幅に減少し、理論株価は現在の市場価格である607円近辺まで低下する可能性があります。同様に、予測FCFが前提を10%下回るだけで、乖離率は急速に縮小します。本件は「高い成長性」を期待する投資案件というよりも、「安定的なFCFの創出と、豊富な手元流動性の評価」という側面が強い分析結果となっています。

投資判断への示唆

本DCF分析によれば、ヤマトインターナショナルは資産背景(ネットキャッシュ)と将来のキャッシュフロー創出力の合算において、現状の市場評価を上回る価値を有していると判断されます。しかし、DCF法は入力する前提条件(特に将来FCFの予測とWACCの設定)によって結果が大きく変動するという限界を持ちます。特に同社のようにFCFの年次変動が激しい企業の場合、単年度の予測誤差が理論株価を大きく歪めるリスクがあります。投資家におかれましては、本分析の理論株価を絶対的な指標とするのではなく、同社の在庫管理効率の改善や、ブランド再編による利益率の向上が予測通りに進展するかを注視し、最終的な判断を行っていただく必要があります。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去のフリーキャッシュフローが年度により大きく変動しているため、成熟したアパレル業界の特性を考慮し、成長率は1.5%と保守的に設定しました。WACCは日本市場の低金利環境と、同社の豊富な現預金による財務安定性を踏まえ、リスクプレミアムを加味して6.0%と推定しています。発行済株式数は時価総額129億円を現在株価607円で除して算出しました。有利子負債については、現預金が60億円以上ありPBRが1倍を大幅に下回る資産背景から、極めて低水準であると判断し500百万円と見積もっています。

⚠️ 免責事項: 本DCF分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 DCF法は前提条件(WACC、成長率等)に大きく依存するため、感度分析を参考に幅を持って評価してください。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

リバースDCF分析(市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(607円)を正当化するために必要なインプライドFCF成長率を逆算しました。

インプライドFCF成長率
-4.4%
市場が織り込む成長率
AI推定FCF成長率
1.5%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-5.9%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価607円
インプライドFCF成長率-4.42%
AI推定FCF成長率1.50%
成長率ギャップ-5.92%(悲観的)
インプライドWACC30.00%
AI推定WACC6.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

ヤマトインターナショナル(8127)の現在株価607円から算出されるインプライドFCF(フリーキャッシュフロー)成長率は-4.42%です。これは、市場が同社の将来的な現金創出力について、長期にわたり年率4%を超える減衰が続くと織り込んでいることを意味します。AIが推定する成長率1.50%と比較すると-5.92%の大きな乖離(ギャップ)が生じており、現在の市場評価は極めて「悲観的」な水準にあると言えます。

特筆すべきは、インプライドWACC(加重平均資本コスト)が30.00%という異常値を示している点です。一般的な日本企業のWACCが5~8%程度であることを鑑みると、現在の株価は純粋な収益性だけでなく、アパレル業界特有の構造的リスクや流動性リスクが過剰に織り込まれている、あるいは事業継続性に対して強い警戒感が持たれている可能性を示唆しています。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込む「毎年4.42%の収益減少」というシナリオの実現可能性を検討すると、同社の主力ブランドである「クロコダイル」等のブランド力や、これまでの安定した財務基盤を考慮した場合、過度に厳しい評価であるとの見方も可能です。国内アパレル市場は少子高齢化や消費行動の変化により厳しい環境にありますが、同社が推進する不採算店舗の整理やECチャネルの強化といった構造改革が実を結べば、AI推定値である1.50%程度の緩やかな成長、あるいは少なくとも現状維持(0%成長)を達成するハードルは決して高くはないと考えられます。

しかし、原材料費の高騰や円安によるコスト増が長期化し、価格転嫁が想定通りに進まない場合、市場の悲観的な予測が現実味を帯びるリスクも否定できません。過去数年の実績成長率と照らし合わせ、この「マイナス成長の織り込み」が一時的なものか、あるいは不可避なトレンドなのかを慎重に見極める必要があります。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果は、現在の株価が企業の潜在的なキャッシュフロー創出力に対して、かなりの「安全余裕(マージン・オブ・セーフティ)」を含んでいる可能性を示しています。市場の期待値(-4.42%)とAIの推定値(1.50%)の間に存在する約6%のギャップは、投資家にとってのアップサイド・ポテンシャルとなり得ます。

もし投資家が、同社の業績が「市場の予想ほど悪化しない(=-4.42%を上回る)」と判断するのであれば、現在の株価は割安なエントリーポイントとして機能する可能性があります。一方で、インプライドWACCの高さが示す通り、資本効率や市場評価の低迷が続くリスクも存在します。本分析結果を一つの指標とし、同社の純資産価値(PBR)や配当利回り、今後の経営戦略の進捗を総合的に判断した上で、最終的な投資決定を行うことが肝要です。

拡張感応度分析・シナリオ分析

感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

金利上昇はWACCの増加、景気後退はFCF成長率の低下として理論株価に影響します。

WACC →
FCF成長率 ↓
4.0%5.0%6.0%7.0%8.0%
-3.5%650635621608595
-1.0%694677661646631
1.5%741722704687671
4.0%793772752733715
6.5%850826804782762

※ 緑色: 現在株価(607円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
WACC: 4.5% / FCF成長率: 6.5%
永久成長率: 0.8%
838円
+38.1%
基本シナリオ
WACC: 6.0% / FCF成長率: 1.5%
永久成長率: 0.5%
704円
+16.0%
悲観シナリオ
WACC: 7.5% / FCF成長率: -4.5%
永久成長率: 0.2%
587円
-3.3%

シナリオ分析の総合評価

ヤマトインターナショナル(8127)の理論株価は、基本シナリオにおいて704円と算出され、現在株価(607円)に対して+16.0%の乖離(割安)を示しています。 分析結果のレンジは587円(悲観)から838円(楽観)に及びますが、特筆すべきは現在株価の位置づけです。現在の株価は悲観シナリオの587円をわずかに上回る水準にとどまっており、 市場はすでにかなりの事業リスクや業績の下振れを織り込んでいる可能性が高いと推察されます。基本シナリオ以上の進捗が確認された場合、上方への修正余地が大きい状況にあります。

金利変動の影響

本分析では、資本コスト(WACC)を4.5%から7.5%の範囲で設定しています。基本シナリオのWACC 6.0%から、金利上昇やリスクプレミアムの増大を想定して7.5%まで引き上げた場合、 他の変数(FCF成長率等)の悪化と相まって理論株価は587円まで低下します。しかし、この悲観的な条件下でも現在株価からの下落率は-3.3%に抑制されています。 これは、同社の資本構成や資産背景が金利変動に対して一定の耐性を持っていることを示唆しており、金融環境のタイト化に対する下値抵抗力は比較的強いと評価できます。

景気変動の影響

FCF(フリーキャッシュフロー)成長率の変化による影響度を見ると、楽観シナリオ(+6.5%)と悲観シナリオ(-4.5%)の間には大きな隔たりがあります。 アパレル業界特有の消費動向への敏感さを反映し、景気後退局面でFCF成長率がマイナス圏に沈むと、理論株価は現在値を割り込む計算となります。 一方で、永久成長率を0.5%と保守的に見積もっている基本シナリオにおいても、現在株価を100円近く上回る704円という数値が出ており、 中長期的なキャッシュフロー創出力が維持される限り、現在の市場評価はやや過小評価の域にあると考えられます。

投資判断への示唆

今回のシナリオ分析に基づくと、現在株価607円は「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」が確保されつつある水準と判断されます。 最悪に近いシナリオ(悲観:587円)でも現行株価との乖離がわずかである一方、基本から楽観シナリオへ転じた際の期待リターン(+16.0%〜+38.1%)はそれを大きく上回る非対称な構造となっています。 ただし、本分析は特定の前提に基づいた理論値であり、実際の市場価格は今後の業績推移や自己資本利益率(ROE)の改善策、配当政策などのコーポレートアクションに大きく左右される点に留意が必要です。

モンテカルロシミュレーション

シミュレーション結果サマリー

WACC・FCF成長率・永久成長率をそれぞれ正規分布でランダムに変動させ、100,000回のDCF計算を実行した結果です。DCF計算の非線形性(特にゴードン成長モデルの割引構造)により、理論株価の分布は対数正規分布に近い形状となるため、ヒストグラムは対数スケールで表示しています。

平均理論株価
998円
中央値
980円
90%レンジ(5-95%点)
799 〜 1,257円
割安確率
100.0%
理論株価 > 現在株価
モンテカルロシミュレーション:理論株価の確率分布(100,000回・対数スケール)0.0%1.2%2.4%3.5%4.7%5.9%764円824円889円959円1,035円1,116円1,204円1,299円シミュレーション分布現在株価

※ ヒストグラムは対数スケールで表示し、外れ値の影響を抑えるため分布の中央96%(2〜98パーセンタイル)を表示しています。対数スケールにより、DCF計算の非線形性に起因する右裾の歪みが補正され、分布の形状をより正確に把握できます。平均・中央値・パーセンタイルなどの統計値は元のスケールで有効サンプル全体から計算しています。

理論株価のパーセンタイル分布

シミュレーション結果を小さい順に並べたとき、各パーセンタイルにおける理論株価を示します。

パーセンタイル 5% 10% 25% 50% 75% 90% 95%
理論株価799円834円897円980円1,079円1,185円1,257円

※ 緑色: 現在株価(607円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 中央値(50%タイル)

リスク指標

理論株価の標準偏差 143円
5% VaR(下位5%タイル) 799円
変動係数(CV = σ / 平均) 14.3%
有効シミュレーション数 100,000 / 100,000

確率分布の解釈

今回のモンテカルロシミュレーションの結果、ヤマトインターナショナル(8127)の理論株価は平均値998円、中央値980円となりました。平均値が中央値を上回るこの分布特性は、DCF計算においてパラメータがプラス方向に振れた際の影響が大きく出る対数正規分布に近い形状を示しています。5パーセンタイル(799円)から95パーセンタイル(1,257円)という広いレンジは、FCF成長率の標準偏差(2.75%)といった将来予測の不確実性を反映していますが、分布の最頻値が現在株価を大きく上回る領域に集中している点は注目に値します。

リスク評価

リスクの指標となる5% VaR(バリュー・アット・リスク)は799円となりました。これは、WACCの上昇や成長率の鈍化といった悲観的なシナリオが95%の確率で発生したとしても、理論上の価値は799円以上を維持することを示唆しています。変動係数(CV)は約14.3%(143円/998円)であり、個別のパラメータ変動が理論株価に与える影響度は中程度に抑制されています。統計的な観点からは、ダウンサイドリスク(理論価値が現在株価を下回るリスク)は極めて限定的であると評価できます。

現在株価の統計的位置づけ

現在の市場株価607円は、シミュレーションされた100,000回の結果すべてを下回っており、割安確率は100.0%という極めて異例の数値を示しています。パーセンタイル分布で見ても、最も悲観的な下位5%のライン(799円)よりもさらに約24%低い位置に現在の株価が放置されている計算となります。これは、現在の市場価格が企業のファンダメンタルズに基づく理論的価値の分布から統計的に大きく乖離(ディスコネクト)している状態にあることを意味します。

投資判断への示唆

本シミュレーションの結果、ヤマトインターナショナル(8127)の株価には非常に強力な「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」が存在していると判断されます。平均理論株価998円に対する現在株価の割引率は約39%に達しており、保守的な成長シナリオ(永久成長率0.5%)を前提としても、現在の株価水準は極めて割安な水準にあります。ただし、この統計的乖離が解消されるためには、市場における流動性の向上や資本効率の改善、あるいは株主還元施策などのカタリスト(きっかけ)が必要となる場合もあります。本データは投資の絶対的なリターンを保証するものではなく、最終的な投資判断は市場環境や同社の経営戦略を多角的に考慮した上で、慎重に行ってください。

📖 モンテカルロシミュレーションの読み方:
  • 割安確率: シミュレーション結果のうち、理論株価が現在株価を上回った割合。50%超なら統計的に割安寄り
  • 90%レンジ(5-95%点): 全シミュレーション結果を並べたときの下位5%点から上位95%点までの範囲。幅が広いほど不確実性が高い
  • 5% VaR: 悲観的な条件下でも95%の確率でこの値以上になると期待される最低ライン
  • 変動係数: 平均に対する標準偏差の比率。30%超だとパラメータ感度が高い(結果の信頼性に注意)
⚠️ 免責事項: 本モンテカルロシミュレーションはAIが推定したパラメータの分布に基づく統計的な参考値であり、投資助言ではありません。 入力パラメータに正規分布を仮定し、DCF計算の非線形性により出力は対数正規分布に近い形状となります。パラメータ間の独立性の仮定など、実際の市場とは異なる前提を含んでいます。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS/BPSベース理論株価分析

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 9.80円 1株あたり利益
直近BPS 879.71円 1株あたり純資産
1株配当 14.00円 年間配当金
EPS成長率 -8.0% 予測期間中の年平均
割引率 9.0% 将来EPSの割引率
想定PER 61.80倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2026年8月 879.71 9.80 14.00 -4.20 875.51 1.11 0.00 61.80 0.69 9.80 606
2027年8月 875.51 9.02 14.00 -4.98 870.53 1.03 -8.00 61.80 0.64 8.27 557
2028年8月 870.53 8.29 14.00 -5.71 864.82 0.95 -8.00 61.80 0.59 6.98 513
2029年8月 864.82 7.63 14.00 -6.37 858.45 0.88 -8.00 61.80 0.55 5.89 472
2030年8月 858.45 7.02 14.00 -6.98 851.47 0.82 -8.00 61.80 0.51 4.97 434
ターミナル 281.99
PER×EPS 理論株価
606円
-0.2%
DCF合計値
317.9円
-47.6%
現在の株価
607円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 35.91円
ターミナルバリュー現在価値 281.99円(全体の88.7%)
DCF合計理論株価 317.9円

EPS/BPSモデルの総合評価

ヤマトインターナショナル(8127)の理論株価モデルを分析すると、現在の株価607円は「PER×EPS理論株価(606円)」とほぼ一致しており、市場は直近の利益水準と高いPER(61.80倍)を基準に値を形成していることが伺えます。しかし、将来のキャッシュフローを現在価値に割り戻した「DCF合計理論株価」は317.9円にとどまり、現在株価との乖離率は-47.6%と極めて大きい結果となりました。この乖離は、現在の株価が収益性や成長性といったファンダメンタルズよりも、資産性や需給、あるいは過去のPER水準などの要因に強く支えられている可能性を示唆しています。

ROE推移の見通し

ROE(自己資本利益率)の推移は、2026年8月期の1.11%から2030年8月期には0.82%へと低下する見通しです。通常、利益を内部留保することでBPS(1株純資産)が蓄積されROEが低下しますが、同社の場合、1株配当(14.00円)がEPS(9.80円)を上回る設定となっており、期末BPSは879.71円から851.47円へと減少する予測となっています。BPSが減少しているにもかかわらずROEが低下し続けるのは、EPS成長率が-8.0%と利益の減少速度が資本の減少を上回るためです。資本効率の改善には、不採算部門の整理やブランド価値の再構築による抜本的な利益成長、あるいは更なる株主還元による自己資本の圧縮が必要な状況にあると言えます。

前提条件の妥当性

本モデルでは、想定PERを61.80倍と非常に高い水準に設定しています。これは同社の過去実績に基づいたものと考えられますが、アパレル業界の平均的な水準を大きく上回っており、このPERが維持されるかどうかが理論株価606円を正当化する鍵となります。また、EPS成長率-8.0%という前提は、近年の厳しい消費環境を反映した保守的な見積もりですが、これが継続する場合、ターミナルバリューを含めた企業価値(DCF合計)を押し下げる主因となります。割引率9.0%は、小~中型株のリスクプレミアムを考慮すると妥当な範囲内ですが、業績の反転攻勢(V字回復)の兆しが見えない限り、保守的な評価を優先すべき局面であると考えられます。

投資判断への示唆

モデルの結果は、現在の株価水準が「資産価値(PBR約0.69倍)」や「配当利回り(約2.3%)」、および「高いPER許容度」に依拠していることを示しています。DCF法による理論株価との大きな乖離は、収益力に対する割高感を示す一方で、PBRが1倍を大きく割り込んでいる事実は、解散価値に対する割安感という矛盾した側面を浮き彫りにしています。投資家としては、現在の高PER水準が維持されるという前提に立つのか、あるいはDCF合計値(317.9円)が示す収益性の現実に注目するのかによって、評価が分かれるところです。同社の今後の構造改革による収益性の改善(ROEの反転)が確認できるかどうかが、長期的な株価の底堅さを判断する重要な指標となるでしょう。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去3年間のEPSが急激な減少傾向にあり、2025年予想も低水準に留まることから、今後5年間も厳しい事業環境が継続すると仮定し、成長率を-8%と推定しました。PERが61.8倍と高水準なのは利益がボトム圏にあることを示唆しますが、PBR0.69倍という低評価は資本効率の低さを反映しています。割引率は、アパレル業界のビジネスリスクと小型株プレミアムを考慮し、株主資本コストとして9%に設定しました。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS成長率0%が続く場合の理論株価

将来のEPS成長率を0%(横ばい)と仮定した場合の試算です。本編のベースシナリオとは前提が異なります。

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 9.80円 1株あたり利益
直近BPS 879.71円 1株あたり純資産
1株配当 14.00円 年間配当金
EPS成長率 0.0% 予測期間中の年平均
割引率 9.0% 将来EPSの割引率
想定PER 61.80倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2026年8月 879.71 9.80 14.00 -4.20 875.51 1.11 0.00 61.80 0.69 9.80 606
2027年8月 875.51 9.80 14.00 -4.20 871.31 1.12 0.00 61.80 0.70 8.99 606
2028年8月 871.31 9.80 14.00 -4.20 867.11 1.12 0.00 61.80 0.70 8.25 606
2029年8月 867.11 9.80 14.00 -4.20 862.91 1.13 0.00 61.80 0.70 7.57 606
2030年8月 862.91 9.80 14.00 -4.20 858.71 1.14 0.00 61.80 0.71 6.94 606
ターミナル 393.62
PER×EPS 理論株価
606円
-0.2%
DCF合計値
435.17円
-28.3%
現在の株価
607円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 41.55円
ターミナルバリュー現在価値 393.62円(全体の90.5%)
DCF合計理論株価 435.17円

0%成長シナリオの意味

本シナリオは、ヤマトインターナショナルが将来にわたって現在の収益水準(EPS 9.80円)を維持し、成長も衰退もしないという「停滞的な安定」を仮定したサンドボックス分析です。 この条件下では、PER(株価収益率)ベースの理論株価は606円となり、現在の市場価格(607円)とほぼ完全に一致します。これは、現在の株価が「利益成長を期待していない状態」、あるいは「現状維持を前提としたバリュエーション」によって形成されている可能性を示唆しています。 一方で、配当(14.00円)がEPS(9.80円)を上回っているため、0%成長であっても内部留保が取り崩され、BPS(1株当たり純資産)が年々減少していく構造になっている点に注意が必要です。

ベースシナリオとの対比

本編のベースシナリオ(成長率:約-8.0%)と比較すると、成長率を0%に固定した本シナリオは、より楽観的な(あるいは下方硬直性を期待した)前提に立っています。 ベースシナリオでは利益の減少に伴い理論株価の下押し圧力が強まりますが、0%成長シナリオでは利益が一定であるため、PER 61.80倍という高いマルチプルを維持できるかどうかが価格正当化の焦点となります。 DCF合計理論株価(435.17円)が現株価を大きく下回っている事実は、将来のキャッシュフロー創出能力だけでは現在の株価水準を説明しきれず、高いPBR水準や資産価値、あるいは株主還元姿勢が株価を下支えしている側面があることを示しています。

留意点

本モデルは入力された前提条件に基づく機械的な計算結果であり、将来の株価推移を保証するものではありません。 特に、想定PER(61.80倍)は一般的な市場平均と比較して非常に高い水準に設定されており、このマルチプルの妥当性が理論株価の信頼性に直結します。 また、配当性向が100%を超えている状態での0%成長は、長期的には自己資本の毀損を招くリスクを含んでいます。市場環境の変化や経営戦略の進捗により、実際のEPS成長率や割引率は変動するため、本シミュレーションは投資判断の多角的な視点を得るための参考情報としてご活用ください。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

過去3年間のEPSが急激な減少傾向にあり、2025年予想も低水準に留まることから、今後5年間も厳しい事業環境が継続すると仮定し、成長率を-8%と推定しました。PERが61.8倍と高水準なのは利益がボトム圏にあることを示唆しますが、PBR0.69倍という低評価は資本効率の低さを反映しています。割引率は、アパレル業界のビジネスリスクと小型株プレミアムを考慮し、株主資本コストとして9%に設定しました。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

拡張感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

WACC(加重平均資本コスト)は、株主資本コストと負債コストを資本構成比率で加重平均した「企業の資金調達コスト」です。WACCが高いほど将来キャッシュフローの現在価値は低くなり、理論株価は下がります。FCF成長率は、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた「企業が自由に使えるキャッシュ(フリーキャッシュフロー)」が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準のWACC(6.0%)とFCF成長率(1.5%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

割引率は、将来の利益やキャッシュフローを現在価値に換算するための率で、投資家が求めるリターン(期待収益率)に相当します。割引率が高いほど将来利益の現在価値は低くなり、理論株価は下がります。EPS成長率は、1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準の割引率(9.0%)とEPS成長率(-8.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

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拡張感度分析: PER × EPS(理論株価: 円)

PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PERが高いほど市場がその企業の将来成長に高い期待を持っていることを意味します。EPS(1株あたり利益)は、企業の純利益を発行済株式数で割った値で、1株あたりの収益力を表します。

基準のPER(61.8倍)とEPS(10円)から、PERは1倍刻み(±100倍)・EPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

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拡張感度分析: PBR × BPS(理論株価: 円)

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回ると、株価が解散価値を下回っていることを意味し、割安と判断される場合があります。BPS(1株あたり純資産)は、企業の純資産を発行済株式数で割った値で、1株あたりの解散価値を表します。

基準のPBR(0.7倍)とBPS(880円)から、PBRは0.1倍刻み(±10.0倍)・BPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

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残留利益モデル分析(Residual Income Model)

残留利益モデル(Residual Income Model)

残留利益モデルは、現在のBPS(1株純資産)に将来の「超過利益」の現在価値を加算して理論株価を算出します。 株主資本コストを上回るROEを持続できる企業ほど、BPSに大きなプレミアムが付きます。

理論株価 = BPS₀ + Σ[(ROEₜ − r) × BPSₜ₋₁ / (1+r)ᵗ] + TV/(1+r)ⁿ

前提条件

パラメータ 説明
直近BPS 879.71円 1株あたり純資産(出発点)
直近EPS 9.80円 1株あたり利益
株主資本コスト (r) 9.0% 株主の要求収益率(エクイティチャージの基準)
EPS成長率 -8.0% 予測期間中の年平均
1株配当 14.00円 年間配当金(BPS蓄積に影響)
予測年数 5年 個別予測期間

残留利益の年次予測

年度 期首BPS EPS ROE(%) エクイティチャージ 残留利益 PV(残留利益) 期末BPS
2026年8月 879.71 9.80 1.11 79.17 -69.37 -63.65 875.51
2027年8月 875.51 9.02 1.03 78.80 -69.78 -58.73 870.53
2028年8月 870.53 8.29 0.95 78.35 -70.05 -54.09 864.82
2029年8月 864.82 7.63 0.88 77.83 -70.20 -49.73 858.45
2030年8月 858.45 7.02 0.82 77.26 -70.24 -45.65 851.47
ターミナル 残留利益の永続価値: -780.44円 → PV: -507.24円 -507.24
理論株価の構成
現在BPS
879.71円
簿価部分
+
残留利益PV合計
-271.86円
超過利益の現在価値
+
ターミナルPV
-507.24円
永続価値の現在価値
=
RIM理論株価
101円
-83.4%
現在の株価: 607円
残留利益モデル:ROEとエクイティチャージの推移0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%2627282930ROE(%)株主資本コスト(9.0%)
残留利益と現在価値の推移-75円-70円-65円-60円-55円-50円-45円2627282930残留利益(円)PV(残留利益)(円)
📖 残留利益モデルの読み方:
  • 残留利益 > 0(ROE > 株主資本コスト)→ 企業はBPS以上の価値を創出。理論株価 > BPS となりプレミアム付与
  • 残留利益 < 0(ROE < 株主資本コスト)→ 資本効率が不十分。理論株価 < BPS となりディスカウント
  • DCF法との違い: RIMはBPS(純資産)を出発点とするため、資産ベースの評価に強く、安定企業・金融機関の評価に適しています

残留利益の評価

ヤマトインターナショナル(8127)の残留利益モデル(RIM)による分析結果は、同社の価値創造能力が極めて厳しい状況にあることを示唆しています。評価の核心となるのは、予測ROE(自己資本利益率)と株主資本コスト(9.0%)の乖離です。2026年8月期の予測ROEは1.11%にとどまり、その後も2030年には0.82%まで低下する見通しとなっています。

この結果、毎期約70円前後の「負の残留利益(エクイティチャージがEPSを上回る状態)」が発生しています。これは、企業が事業活動を通じて、投資家が期待する最低限の収益(資本コスト)を賄えておらず、経済的な意味で「株主価値を毀損している」状態を意味します。5年間の残留利益の現在価値合計は-271.86円、さらに将来にわたるターミナルバリューの現在価値も-507.24円と大幅なマイナスとなっており、将来の収益力に対する評価は極めて限定的です。

BPSプレミアム/ディスカウントの解釈

理論株価(101円)と直近のBPS(879.71円)を比較すると、BPSに対して約88.5%という大幅なディスカウントが適用されています。 通常、ROEが株主資本コストを上回る企業ではBPSにプレミアム(プラスの付加価値)が付きますが、同社の場合はその逆です。

このディスカウントは、同社が保有する純資産(約880円分)を事業に投下しても、そこから生み出される利益が極めて少ない、あるいは資産を有効活用できていないというモデル上の判断を反映しています。投資家から見れば、「1円の資産を使って、それに見合う利益を稼げていない」ため、資産価値そのものを額面通りに評価できないという論理的な帰結になります。

他の評価手法との比較

本モデルによる理論株価(101円)は、現在の市場株価(607円)を83.4%下回っています。この大きな乖離は、評価手法ごとの視点の違いを浮き彫りにしています。

1. 資産価値アプローチ(PBR)との比較: 現在の株価607円はPBR約0.69倍に相当します。市場は「解散価値(BPS)」に対して一定のディスカウントをしているものの、RIMが示す101円(PBR約0.11倍)ほど悲観的には見ていません。これは、市場が将来的な業績回復や、豊富なネットキャッシュ、不動産含み益などの「清算価値」を一定程度織り込んでいる可能性を示唆します。

2. 収益還元法(PER)との比較: EPS成長率を-8.0%と設定した本モデルでは、収益力の減退を厳しく見積もっています。配当利回りやキャッシュフローを重視するDCF法を用いた場合、設備投資が抑制されていれば、純利益ベースのRIMよりも高い評価が出る可能性があります。

投資判断への示唆

RIMの結果から導き出される論点は、以下の通りです。

第一に、本モデルの前提(ROE約1%・成長率-8%)が継続する場合、同社の理論上の企業価値は現在の株価を大幅に下回ることになります。現在の株価607円を維持、あるいは上昇させるためには、資本コスト(9.0%)を意識した劇的なROEの改善、あるいは抜本的な事業構造改革による増益シナリオが不可欠です。

第二に、市場価格(607円)と理論株価(101円)の乖離をどう捉えるかです。この「500円以上の差」を、モデルが織り込めていない隠れた資産価値(含み資産等)と見るか、あるいは現在の市場価格が収益力に対して依然として割高であると見るかが判断の分かれ目となります。

最終的な投資判断にあたっては、この極めて低い資本効率が今後改善される見込みがあるのか、あるいは株主還元(自己株式取得や増配)によってBPSそのものを圧縮しROEを底上げする動きがあるのかを慎重に見極める必要があります。

⚠️ 注意: 残留利益モデルの結果は、EPS成長率・株主資本コスト・BPSの前提条件に大きく依存します。 また、会計基準の違い(日本基準/IFRS)によりBPSの定義が異なる場合があります。投資判断の際は他の手法と合わせてご検討ください。

リバースDCF分析(EPSベース・市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(607円)を正当化するために必要なインプライドEPS成長率を逆算しました。

インプライドEPS成長率
9.1%
市場が織り込む成長率
AI推定EPS成長率
-8.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
+17.1%
楽観的

リバースDCF詳細

現在の株価607円
インプライドEPS成長率9.11%
AI推定EPS成長率-8.00%
成長率ギャップ+17.11%(楽観的)
インプライド割引率50.00%
AI推定割引率9.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

ヤマトインターナショナル(8127)の現在株価607円から算出されるインプライドEPS成長率は9.11%です。これは、市場が同社に対して今後数年間にわたり、毎年約9%ずつの純利益成長を継続するという期待を価格に反映していることを意味します。AIが推定するEPS成長率が-8.00%(減益予想)であるのに対し、市場の期待値はそれを大幅に上回る+17.11%の乖離(ギャップ)が生じており、現在の株価水準はファンダメンタルズの予測に対して「楽観的」な評価がなされていると分析できます。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込んでいる9.11%という成長率は、アパレル業界の成熟した市場環境や、同社の近年の業績推移を照らし合わせると、非常に高いハードルであると言わざるを得ません。AI推定の-8.00%という数値は、少子高齢化による国内需要の減退や原材料コストの上昇といった外部環境を反映した保守的な見通しを示しています。また、注目すべきは50.00%という極めて高いインプライド割引率です。これは、通常の資本コスト(AI推定の9.00%)を遥かに上回っており、市場が同社の将来利益に対して非常に高いリスクプレミアムを要求しているか、あるいは株価が利益成長以外の要素(例えば、PBR1倍を大きく下回る水準での資産価値や、自己株式取得などの株主還元策への期待)によって支えられている可能性を示唆しています。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果は、収益力(EPS)の観点のみで見れば、現在の株価は将来の成長期待を過剰に織り込んでいるリスクを示しています。17.11%という成長率ギャップは、業績が市場の期待(9.11%成長)に届かなかった場合、株価に下方修正圧力がかかる可能性を内包しています。一方で、インプライド割引率が50.00%という異常値を示している点は、現在の株価形成が純粋な利益成長モデルだけでは説明しきれないことを示しています。投資家は、同社の「収益の成長性」に期待するのか、あるいは低PBRや保有資産といった「バリュー面での下支え」を重視するのか、自身の投資スタンスに照らし合わせて慎重に判断する必要があります。

感応度分析・シナリオ分析

感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

金利上昇は割引率の増加、景気後退はEPS成長率の低下として理論株価に影響します。

割引率 →
EPS成長率 ↓
7.0%8.0%9.0%10.0%11.0%
-13.0%281269258248238
-10.5%312299287275264
-8.0%346332318305292
-5.5%383367352337323
-3.0%423405388372356

※ 緑色: 現在株価(607円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
割引率: 7.5% / EPS成長率: -2.0%
430円
-29.1%
基本シナリオ
割引率: 9.0% / EPS成長率: -8.0%
318円
-47.6%
悲観シナリオ
割引率: 10.5% / EPS成長率: -14.0%
233円
-61.7%

シナリオ分析の総合評価

ヤマトインターナショナル(8127)の理論株価算出において、楽観シナリオ(430円)、基本シナリオ(318円)、悲観シナリオ(233円)のいずれも、現在の市場価格である607円を下回る結果となりました。最も良好な条件を想定した楽観シナリオにおいても、現在株価は理論値を約29.1%上回っており、市場価格がファンダメンタルズに基づく試算値を大きく超過している現状が浮き彫りとなっています。この乖離は、現在の株価が純利益(EPS)以外の要素、例えば豊富なネットキャッシュや自己資本、あるいは将来的な事業構造改革への期待値を織り込んでいる可能性を示唆しています。

金利変動の影響

本分析における割引率(資本コスト)の変化は、理論株価に顕著な影響を与えています。割引率を基本の9.0%から7.5%へと1.5ポイント引き下げた楽観シナリオでは、理論株価は318円から430円へと約35.2%上昇します。一方で、10.5%へと引き上げた悲観シナリオでは、基本シナリオ比で約26.7%の下落(233円)となります。アパレル業界特有の業績変動リスクが資本コストに反映されやすい性質上、市場金利の上昇やリスクプレミアムの拡大は、同社の理論上の評価額を大きく押し下げる要因となる点に留意が必要です。

景気変動の影響

EPS成長率の前提条件が理論株価に与える影響も甚大です。基本シナリオでは年率-8.0%という厳しい収益見通しを置いていますが、これが-2.0%にまで改善されると想定した場合、理論株価は100円以上底上げされます。しかし、収益悪化が加速し-14.0%に達する悲観シナリオでは、株価は200円台前半まで低減する計算となります。現在のマイナス成長の前提は、国内衣料品市場の成熟やコスト増を反映したものですが、この成長率の鈍化をいかに食い止め、プラス圏へ浮上させるかが、中長期的な価値回復の鍵となります。

投資判断への示唆

今回のシナリオ分析の結果は、現在の株価607円が収益力(EPS)に基づいた理論的な裏付けを超え、高いプレミアムを伴って推移していることを示しています。投資家にとっての注目点は、この理論値と市場価格の「乖離の理由」をどう解釈するかです。市場がEPSモデルに含まれない資産価値(PBR面での割安感など)を評価していると見るか、あるいは現在の収益減少見通しが過度に保守的であると判断するかで、評価は分かれるでしょう。現状の収益トレンドが継続すると仮定した場合、下値リスクに対する警戒感は拭えませんが、一方で資産背景や株主還元方針の変化が株価を支える要因となる可能性も排除できません。以上の分析結果を踏まえ、最終的な投資判断はご自身の投資方針に照らして慎重にご検討ください。

限界利益分析(CVP分析)

高低点法による費用構造の推定

売上高が最大の年度と最小の年度を比較し、総費用(売上高−営業利益)の変化から変動費率と固定費を推定します。

推定変動費率
92.1%
売上高に対する変動費の割合
推定限界利益率
7.9%
1 − 変動費率
推定固定費
1,449
百万円
基準: 2023年 8月期 連結(売上高 21,460 百万円)と 2021年 8月期 連結(売上高 13,690 百万円)の比較

年度別 限界利益指標

年度 売上高 限界利益 限界利益率 損益分岐点 安全余裕率 経営レバレッジ
17年 8月期 18,500 1,464 7.9% 18,301 1.1% 2.09倍
17年 8月期 18,705 1,481 7.9% 18,301 2.2% 1.96倍
18年 8月期 16,800 1,330 7.9% 18,301 -8.9% 1.56倍
18年 8月期 16,541 1,309 7.9% 18,301 -10.6% 2.02倍
19年 8月期 16,818 1,331 7.9% 18,301 -8.8% 2.28倍
20年 8月期 14,200 1,124 7.9% 18,301 -28.9% -
20年 8月期 14,252 1,128 7.9% 18,301 -28.4% -
21年 8月期 14,300 1,132 7.9% 18,301 -28.0% -
21年 8月期 13,690 1,084 7.9% 18,301 -33.7% -
21年 8月期 13,691 1,084 7.9% 18,301 -33.7% -
22年 8月期 19,430 1,538 7.9% 18,301 5.8% 15.38倍
22年 8月期 19,390 1,535 7.9% 18,301 5.6% 10.96倍
22年 8月期 19,399 1,535 7.9% 18,301 5.7% 10.59倍
23年 8月期 21,460 1,699 7.9% 18,301 14.7% 6.79倍
23年 8月期 20,800 1,646 7.9% 18,301 12.0% 5.49倍
23年 8月期 20,802 1,646 7.9% 18,301 12.0% 5.43倍
24年 8月期 21,140 1,673 7.9% 18,301 13.4% 6.36倍
25年 8月期 20,300 1,607 7.9% 18,301 9.8% 10.71倍
25年 8月期 19,440 1,539 7.9% 18,301 5.9% -
25年 8月期 19,445 1,539 7.9% 18,301 5.9% -
売上高と損益分岐点売上高の推移1億1億2億2億2億2億1718202122232525売上高(百万円)損益分岐点(百万円)
安全余裕率と経営レバレッジの推移-40.0-30.0-20.0-10.00.010.020.017182021222325250安全余裕率(%)経営レバレッジ(倍)
直近年度の損益分岐点分析(2025年 8月期 連結)
売上高
19,445
百万円
損益分岐点
18,301
百万円
安全余裕率
5.9%
安全余裕が低い
経営レバレッジ
-
中程度の経営リスク

費用構造の評価

ヤマトインターナショナル株式会社の費用構造は、推定変動費率が92.1%と極めて高く、限界利益率が7.9%にとどまる「変動費型」のビジネスモデルであると言えます。アパレル業界特有の仕入原価や販売手数料といった変動費の比重が大きいことが推察されます。推定固定費は1,449百万円と、売上規模に対しては比較的抑制された水準にありますが、限界利益率が低いため、わずかな売上の変動が利益を大きく圧迫、あるいは押し上げる構造となっています。原材料価格の高騰や円安といった外部要因が変動費率をさらに押し上げた場合、収益性が急激に低下するリスクを内包しています。

損益分岐点と安全余裕率

本分析による損益分岐点売上高は18,301百万円と算出されます。過去の推移をみると、2020年8月期から2021年8月期にかけては売上高が14,000百万円前後まで落ち込み、安全余裕率がマイナス30%前後となるなど、損益分岐点を大きく下回る厳しい経営状況にありました。その後、2023年8月期には売上高が21,000百万円規模まで回復し、安全余裕率は12.0%〜14.7%とプラス圏に浮上しています。しかし、一般的に健全とされる30%の基準と比較すると依然として低い水準にあり、売上高が10%程度減少するだけで再び損失を計上する可能性があるため、収益の安定性については注意深い監視が必要です。

経営レバレッジとリスク

経営レバレッジは、2022年8月期に一時15倍を超えるなど非常に高い水準を示し、直近の2023年8月期でも5.4倍から6.7倍程度で推移しています。これは「ローリスク・ローリターン」ではなく、売上の増減が営業利益に数倍のインパクトを与える「景気感応度の高い」構造であることを示しています。損益分岐点を超えた領域では、売上のわずかな成長が劇的な利益改善をもたらす一方、売上が減少局面に入った際の下振れリスクも相応に大きくなります。特に2025年8月期の予測値において安全余裕率が再び一桁台(5.9%など)へ低下する見通しが示されている点は、リスク管理の観点から留意すべき指標と言えます。

投資判断への示唆

以上の限界利益分析から、同社は損益分岐点付近での攻防が続く「高レバレッジ型」のフェーズにあると評価できます。投資家としては、以下の2点に注目することが肝要です。第一に、売上高が損益分岐点である18,301百万円を安定的に上回り続けることができるかという「トップラインの維持能力」です。第二に、92.1%という高い変動費率を、適正な価格転嫁やサプライチェーンの最適化によっていかに抑制できるかという「マージンの改善策」です。景気回復局面での利益の伸びには期待が持てるものの、安全余裕率の低さが示す通り、外部環境の悪化に対する耐性は必ずしも高くありません。これらリスクとリターンのバランスをどのように評価するかが判断の分かれ目となります。

⚠️ 注意: 本分析は高低点法による推定値です。実際の変動費・固定費は有価証券報告書の費用明細と異なる場合があります。 費用構造が大きく変化した期間を含む場合、推定精度が低下する可能性があります。投資判断の際は他の指標と合わせてご確認ください。

デュポン分析(ROE分解)

ROEの3要素分解(デュポン分析)

ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。

年度 純利益率(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍) = ROE(%)
17年 8月期 0.81 × 0.778 × 1.41 = 0.01
18年 8月期 3.33 × 0.718 × 1.38 = 0.03
19年 8月期 3.15 × 0.719 × 1.37 = 0.03
20年 8月期 -9.65 × 0.679 × 1.36 = -0.09
21年 8月期 0.35 × 0.681 × 1.37 = 0.00
22年 8月期 1.44 × 0.909 × 1.37 = 0.02
23年 8月期 1.68 × 0.955 × 1.40 = 0.02
24年 8月期 1.67 × 0.881 × 1.49 = 0.02
25年 8月期 0.99 × 0.871 × 1.47 = 0.01
デュポン分析:ROEの3要素推移-10.0%-5.0%0.0%5.0%17192123250純利益率(%)ROE(%)
総資産回転率と財務レバレッジの推移0.600.801.001.201.401.601719212325総資産回転率(回)財務レバレッジ(倍)
直近年度のROE構成(2025年 8月期 連結)
純利益率
0.99%
収益性
×
総資産回転率
0.871回
効率性
×
財務レバレッジ
1.47倍
借入で資本効率を47%ブースト
=
ROE
0.01%
株主資本利益率
📊 ROE変動の主因: 直近の変動は主に「純利益率」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROEに直結しています。

ROEの質の評価

ヤマトインターナショナルのROEは、過去9年間を通じて-0.09%から0.03%(実質的なパーセンテージ表記では数%未満)の範囲で推移しており、絶対水準として極めて低い水準にあります。ROE変動の主因が「純利益率」であることから、同社の収益性は本業の利益動向に強く依存しています。2024年8月期のROEは0.02%(純利益率1.67%)、2025年8月期の予想は0.01%(純利益率0.99%)と、資本コストを大きく下回る状態が継続しています。内部留保が厚く、収益性が低いために「低ROE」という構造的な課題を抱えており、投資効率の観点からは「質の高いROE」とは言い難い状況です。

財務レバレッジの影響

財務レバレッジは1.3倍から1.4倍台(2024年8月期は1.49倍)と、極めて保守的な水準で推移しています。これは負債によるレバレッジを効かせず、自己資本を中心とした堅実な経営を行っていることを示唆しています。過剰レバレッジによる財務リスクは極めて低い一方、余剰資金を十分に活用しきれていない「資本の低効率性」という側面も持ち合わせています。2024年・2025年には1.4倍後半へと微増していますが、依然として財務の健全性は非常に高く、倒産リスクは低いと評価されますが、ROEを押し上げるほどのレバレッジ戦略は採用されていません。

トレンド分析

経年推移を見ると、新型コロナウイルスの影響を強く受けた2020年8月期(純利益率-9.65%)を底として、業績は回復基調にありました。特に注目すべきは「総資産回転率」の推移です。2021年の0.681回から2023年には0.955回まで改善しており、資産の活用効率が高まっていた時期が見て取れます。しかし、2024年以降は回転率が0.881回、2025年予想で0.871回と再び低下に転じる見通しです。純利益率も2023年の1.68%をピークに鈍化傾向にあり、2022年から2023年にかけて見られた改善トレンドが停滞し、再び収益性と効率性が減速する兆候が確認されます。

投資判断への示唆

デュポン分析の結果から、同社は「極めて高い財務安定性を持ちながらも、資本効率と収益性の向上に課題を抱える企業」であると言えます。総資産回転率が1.0回を下回り、純利益率も1%前後で推移している現状では、ROEの劇的な改善には抜本的な利益率の向上か、あるいは株主還元策による自己資本の圧縮が不可欠です。投資家としては、今後の経営戦略において、低迷する純利益率をいかに高めるか、あるいは積み上がった資本をいかに活用して株主価値に転換するかという、経営陣の「資本効率に対する意識改革」を注視する必要があります。 ⚠️ 注意: デュポン分析の数値はIRBankから取得した財務データに基づいています。 会計基準(日本基準/IFRS)の違いにより、株主資本の定義が異なる場合があります。

借金が利益に与える影響分析

有利子負債の概要

項目 説明
有利子負債 8億 銀行借入・社債等の利息付き負債
推定金利 1.50% 営業利益と経常利益の差から推定
推定支払利息 12百万 有利子負債 × 推定金利
利息 / 純利益 比率 6.0% 純利益に対する利息負担の大きさ
推定実効税率 20.0% 1 − (純利益 / 経常利益) から推定

「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション

有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。

年度 有利子負債 推定利息 経常利益
実績
経常利益
借金なし
純利益
実績
純利益
借金なし
ROE
実績
ROE
借金なし
レバレッジ
効果
2017/08 14億 20百万 8億 8億 2億 2億 0.89% 0.90% -0.01%pt
2018/08 9億 14百万 9億 9億 6億 6億 3.31% 3.19% +0.13%pt
2019/08 10億 14百万 7億 7億 5億 5億 3.11% 3.01% +0.10%pt
2020/08 8億 12百万 -8億 -8億 -14億 -14億 -8.90% -8.41% -0.48%pt
2021/08 6億 9百万 90百万 99百万 50百万 55百万 0.33% 0.35% -0.02%pt
2022/08 7億 10百万 4億 4億 3億 3億 1.79% 1.76% +0.03%pt
2023/08 9億 14百万 5億 5億 4億 4億 2.24% 2.18% +0.06%pt
2024/08 8億 12百万 4億 4億 4億 4億 2.20% 2.14% +0.05%pt
2025/08 8億 12百万 3億 3億 2億 2億 1.26% 1.26% +0.00%pt
純利益推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション-15億-10億-5億0百万5億10億2017/082019/082021/082023/082025/080実績純利益借金なし純利益ROE推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション-10.0%-5.0%0.0%5.0%2017/082019/082021/082023/082025/080実績ROE借金なしROE
レバレッジ効果の評価(直近年度)
借金の影響は限定的
実績ROE
1.26%
借金なしROE
1.26%
レバレッジ効果
+0.00%pt

有利子負債の水準が小さい、または事業利益率と借入金利がほぼ均衡しています。

借金の利益インパクト

ヤマトインターナショナル(8127)の直近(2025年8月期予想)における有利子負債は8億円であり、これに対する推定支払利息は約12百万円と算出されます。この支払利息が純利益に与える影響度を示す「利息/純利益比率」は6.0%となっており、同社の利益規模に対して金利負担が一定の重みを持っていることがわかります。シミュレーション上、借金が全くなかったと仮定した場合、純利益は実績の2億円から約10百万円(税引き後ベース)上乗せされる計算となります。支払利息そのものは経常利益(3億円)の約4%に相当し、事業収益を大きく圧迫する水準ではありませんが、利益率が低下する局面ではこの利息負担が収益の押し下げ要因となる点には留意が必要です。

レバレッジ効果の評価

直近のレバレッジ効果は+0.00%ptとなっており、財務レバレッジを活用することによる株主資本利益率(ROE)の向上効果は現状ほぼ「中立」の状態にあります。過去の推移を振り返ると、2018年や2019年には+0.10%pt前後のプラス効果が見られた一方、赤字に転落した2020年には-0.48%ptと負の効果が顕著に表れています。ROEの実績値が1.26%と低水準で推移していることから、借入金による資金調達が資本効率を劇的に改善させるまでには至っておらず、借金による財務的なテコ入れ効果は極めて限定的であると評価できます。

財務戦略の考察

同社の推定金利は1.50%であり、直近の経常利益率やROEの水準と比較すると、借入コストと事業収益性が均衡している状態です。有利子負債8億円という水準は、同社の事業規模から見て過大ではありませんが、ROEが1%台で推移している現状では、さらなる借入によるレバレッジ拡大はリスクに見合ったリターンを生みにくい状況にあると言えます。アパレル業界は在庫リスクや流行の変化に晒されやすく、キャッシュフローの変動が激しい傾向にあります。そのため、同社はあえて大きなレバレッジをかけず、財務の健全性を維持する保守的な戦略をとっているものと推察されます。同業他社と比較しても、財務リスクを抑えた経営姿勢は評価できますが、一方で資本効率の改善が今後の課題となります。

投資家へのポイント

本分析から導き出される投資判断に向けたポイントは以下の通りです。

  • 財務の安定性:有利子負債は抑制されており、金利上昇局面においても急激な業績悪化を招くリスクは低いと考えられます。
  • 資本効率の課題:レバレッジ効果がほぼゼロであることは、現在のビジネスモデルが負債を利益に変換する力が弱いことを示唆しています。投資家としては、財務操作ではなく、本業の営業利益率改善によるROEの向上を注視する必要があります。
  • ダウンサイド・リスク:2020年の実績が示す通り、赤字転落時には負債がROEを押し下げる要因となります。売上高の変動に対する利益の感応度をチェックしておくことが重要です。
以上の通り、同社は借金によるリスクも恩恵も少ない「低レバレッジ・安定型」の財務構造にあります。この安定性を安心材料と見るか、成長の鈍さと見るかが判断の分かれ目となるでしょう。

⚠️ 注意事項: 本分析は営業利益と経常利益の差額から支払利息を推定しており、実際の支払利息とは異なる場合があります。 営業外収支には受取利息・配当金・為替差損益等も含まれるため、あくまで参考値としてご活用ください。 また、借金を全額返済した場合の実際の影響は資金調達構造の変化を伴うため、単純なシミュレーションとは異なります。

ROIC分析(投下資本利益率)

ROIC(投下資本利益率)推移

ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。

年度 NOPAT(百万円) 投下資本(百万円) ROIC(%) WACC(%) スプレッド(%pt)
17年 8月期 350 18,225 1.92 6.52 -4.60
18年 8月期 529 17,847 2.96 6.66 -3.70
19年 8月期 461 18,009 2.56 6.67 -4.11
20年 8月期 -693 16,185 -4.28 6.69 -10.98
21年 8月期 -106 15,924 -0.66 6.75 -7.41
22年 8月期 74 16,314 0.45 6.74 -6.29
23年 8月期 188 17,007 1.10 6.66 -5.56
24年 8月期 241 16,841 1.43 6.72 -5.29
25年 8月期 120 16,663 0.72 6.70 -5.98
ROIC vs WACC推移-6.0%-4.0%-2.0%0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%17192123250ROIC(%)WACC(%)
直近年度のROIC評価(2025年 8月期 連結)
ROIC
0.72%
投下資本利益率
WACC
6.70%
加重平均資本コスト
=
スプレッド
-5.98%pt
価値破壊

ROIC水準の評価

ヤマトインターナショナル(8127)の直近9期間におけるROIC(投下資本利益率)は、最高値であった2018年8月期の2.96%をピークに、概ね0%から3%未満の低水準で推移しています。2020年8月期には新型コロナウイルス感染症の影響等により-4.28%まで落ち込み、その後は2024年8月期の1.43%まで緩やかな回復基調にありましたが、2025年度の予測値は0.72%と再び低下する見通しです。 一般的に日本企業の平均的なROICは5〜6%程度と言われており、アパレル業界特有の在庫リスクや資本回転率の課題を考慮しても、同社の収益性は投下資本に対して極めて限定的であると評価せざるを得ません。特に、投下資本が160億〜180億円規模で推移しているのに対し、NOPAT(税引後営業利益)が数億円規模に留まっている点は、事業効率の改善が急務であることを示唆しています。

ROIC-WACCスプレッド分析

資本効率を測る重要な指標であるROIC-WACCスプレッド(ROIC-加重平均資本コスト)を確認すると、全期間を通じてマイナス圏で推移しており、財務上の「価値破壊」が継続している状態です。 WACC(資本コスト)が6.5%〜6.7%程度で安定しているのに対し、ROICがそれを大幅に下回っているため、事業を継続するほど株主価値を毀損している計算になります。 ポジティブな側面としては、2020年8月期に-10.98%ptまで拡大したマイナス幅が、2024年8月期には-5.29%ptまで縮小したことが挙げられます。これは主に不採算事業の整理やコスト削減によるNOPATの改善(-693百万円から241百万円への回復)が寄与しました。しかし、2025年8月期の予測ではNOPATが120百万円に半減する見込みであり、スプレッドは再び-5.98%ptへと悪化する見通しです。資本コストを上回る利益を創出する体制の構築には、まだ距離があると言えます。

投資家へのポイント

本分析に基づき、投資家が注目すべきポイントは以下の3点に集約されます。

  1. 資本コストの超過状態の継続: 過去9年間、一度もROICがWACCを上回っていない事実は重く受け止める必要があります。経営陣が今後、このスプレッドをどのように正転させるか(あるいは資本構成をどう最適化するか)という具体的な資本政策の有無が鍵となります。
  2. 利益成長の持続性: 2024年8月期までの回復歩調が、2025年8月期の予測で足踏みする計画となっています。原材料価格の高騰や消費動向の変化を背景に、再び利益水準が停滞するリスクを注視すべきでしょう。
  3. 資産効率の改善策: 投下資本(約167億円)に対して生み出される利益が僅少であるため、過剰な手元資金や不動産、あるいは在庫管理の効率化など、B/S(貸借対照表)のスリム化によるROIC向上の余地がどの程度あるかを精査することが重要です。

以上の通り、現状の数値は厳しい局面を示していますが、今後の事業構造改革や株主還元方針の変化によって、資本効率が劇的に改善する可能性も否定できません。現在の低評価が「改善への期待」として投資機会になるか、あるいは「価値毀損の継続」と見るか、慎重な判断が求められます。

⚠️ 注意: WACCは簡易推定値です(株主資本コスト7%想定、負債コストは推定支払利息から算出)。 実際のWACCはCAPMや市場データに基づくより精緻な計算が必要です。

ROIC逆ツリー分析

ROIC逆ツリー分解

ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。

年度 売上高(百万円) NOPATマージン(%) × 投下資本回転率(回) = ROIC(%)
17年 8月期 18,500 1.89 × 1.015 = 1.92
18年 8月期 16,800 3.15 × 0.941 = 2.96
19年 8月期 16,818 2.74 × 0.934 = 2.56
20年 8月期 14,200 -4.88 × 0.877 = -4.28
21年 8月期 14,300 -0.74 × 0.898 = -0.66
22年 8月期 19,430 0.38 × 1.191 = 0.45
23年 8月期 21,460 0.87 × 1.262 = 1.10
24年 8月期 21,140 1.14 × 1.255 = 1.43
25年 8月期 20,300 0.59 × 1.218 = 0.72
ROIC逆ツリー: NOPATマージンと投下資本回転率-6.00-4.00-2.000.002.004.0017192123250NOPATマージン(%)投下資本回転率(回)
ROIC逆ツリー分解(2025年 8月期 連結)
NOPATマージン
0.59%
NOPAT 120百万円 ÷ 売上 20,300百万円
×
投下資本回転率
1.218回
売上 20,300百万円 ÷ IC 16,663百万円
=
ROIC
0.72%
📊 ROIC変動の主因: 直近の変動は主に「NOPATマージン」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROICに直結しています。

ROIC変動要因の分解

ヤマトインターナショナル(8127)の過去9期にわたるROIC推移を分析すると、その変動の主因は明らかにNOPATマージン(収益性)にあります。 2020年8月期には新型コロナウイルス感染症の影響等により、NOPATマージンが-4.88%まで落ち込み、ROICも-4.28%と大きく毀損しました。その後、2022年8月期(ROIC 0.45%)から黒字転換し、2024年8月期には1.43%まで回復を見せています。

特筆すべきは、投下資本回転率(効率性)の推移です。2017年から2021年までは0.8回〜1.0回程度で推移していましたが、2022年以降は1.2回前後の高い水準を維持しています。これは、売上規模に対して投下資本(在庫や有形固定資産等)をより効率的に活用できる体制へシフトしていることを示唆しています。 しかし、2018年8月期に記録したROIC 2.96%という水準に対し、直近の2024年8月期は1.43%に留まっており、回転率の向上をNOPATマージンの低下(3.15%から1.14%への縮小)が相殺している格好となっています。

改善ドライバーの特定

同社がROICをさらに改善し、資本コストを上回る価値創造を行うための最優先課題は、「NOPATマージンの再引き上げ」に集約されます。 投下資本回転率は2023年8月期に1.262回と過去最高水準にあり、資産効率の面では既に一定の成果が見られます。一方で、2025年8月期の予測ではNOPATマージンが0.59%へと低下し、結果としてROICも0.72%へ下落する見通しとなっています。

収益性改善に向けた具体的なドライバーとしては、以下の2点が挙げられます。 第一に、売上総利益率の向上です。原材料価格や物流コストの影響を適切に価格転嫁し、ブランド力を背景とした値引き抑制が求められます。 第二に、販管費の最適化です。売上高に対する固定費比率をコントロールし、営業レバレッジが効きやすい体質を構築することが、マージン回復の鍵となります。

投資家へのポイント

本分析から読み取れる経営の方向性として、同社は「資産を絞り込み、効率的に売上を稼ぐ体制」へは移行済みであるものの、その売上を最終的な利益に繋げる「稼ぐ力(収益性)」の回復が道半ばであるという現状が浮き彫りになりました。

投資家としては、以下の視点が判断材料の一つになると考えられます。

  • マージンの底打ち確認:2025年8月期のマージン低下予測が一時的な投資(システム投資や広告宣伝等)によるものか、あるいは構造的なコスト増によるものか。
  • 回転率の維持:現在好調な投下資本回転率(1.2回台)を維持したまま、利益率を過去水準(3%台)へ戻すことができれば、ROIC 3.5%〜4.0%程度への飛躍的な向上が理論上可能となります。
同社が効率性を維持しつつ、ブランド再構築や不採算部門の整理を通じて収益性をどこまで高められるか。今後の決算におけるマージン推移が、企業価値評価を左右する重要な指標となるでしょう。

EVA(経済的付加価値)分析

EVA(経済的付加価値)推移

EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。

年度 NOPAT(百万円) 資本コスト(百万円) EVA(百万円) ROIC(%) WACC(%)
17年 8月期 350 1,188 -838 1.92 6.52
18年 8月期 529 1,189 -660 2.96 6.66
19年 8月期 461 1,201 -740 2.56 6.67
20年 8月期 -693 1,083 -1,776 -4.28 6.69
21年 8月期 -106 1,075 -1,180 -0.66 6.75
22年 8月期 74 1,100 -1,026 0.45 6.74
23年 8月期 188 1,133 -945 1.10 6.66
24年 8月期 241 1,132 -891 1.43 6.72
25年 8月期 120 1,116 -996 0.72 6.70
EVA(経済的付加価値)推移-2000-1500-1000-50005001.0千17192123250EVA(百万円)NOPAT(百万円)
EVA評価サマリー
直近EVA
-996
百万円(2025年 8月期 連結)
累積EVA
-9,052
百万円(9年間合計)
価値創造評価
価値破壊

EVAの推移と評価

ヤマトインターナショナル(8127)の過去9年間(2017年8月期〜2025年8月期予想)のEVA(経済的付加価値)を分析すると、全期間を通じてマイナス圏で推移しており、累積EVAは-9,052百万円に達しています。これは、同社が事業を通じて得た利益(NOPAT)が、株主や債権者が期待する資本コスト(WACC)を一度も上回ることができていないことを示しています。

特に注目すべきは、会計上の利益と経済的利益の乖離です。2022年8月期以降、NOPATはプラスに転じ、2024年8月期には241百万円の利益を計上していますが、同期間の資本コストは約1,100百万円台で推移しています。つまり、会計上は黒字であっても、投下資本に対して約5%以上の「リターンの不足」が発生しており、経済的な観点からは価値が毀損されている状態(価値破壊)が継続していると評価せざるを得ません。

価値創造力の持続性

EVAのトレンドを見ると、2020年8月期の大きな落ち込み(EVA -1,776百万円、ROIC -4.28%)からは回復傾向にありますが、その歩みは緩やかです。2024年8月期のROICは1.43%まで回復したものの、WACC(6.72%)との間には依然として5.29ポイントもの乖離(ネガティブ・スプレッド)が存在します。

2025年8月期の予想においても、ROICは0.72%と再び低下する見込みであり、現時点でのビジネスモデルにおいて、資本コストを上回るリターンを安定的に創出する「価値創造力」の持続性には厳しい見方を示さざるを得ません。投下資本に対してNOPATが過小であるという構造的な課題が解決されない限り、今後もEVAのマイナス状態が継続する可能性が高いと考えられます。

投資家へのポイント

投資家が本分析を踏まえて注目すべき点は以下の通りです。

  • ROICとWACCのスプレッド: 同社のWACCは約6.5%〜6.7%程度で推移しています。これに対し、ROICは直近のピークでも1.43%に留まっており、この大きな溝を埋めるための収益性向上策、あるいは資本効率の改善策(資産の圧縮や事業の再編など)が打ち出されるかが焦点となります。
  • 資本効率の改善期待: 多額の投下資本(資本コストとして年間約11億円規模)を抱えながら、それに見合う利益を生み出せていない現状は、資本の有効活用という面で課題を残しています。今後の経営計画において、ROIC重視の経営への転換が明確に示されるかが判断材料の一つとなるでしょう。
  • 低ROICの常態化: 長期間にわたりROICが1%前後で推移していることは、同社が属するアパレル市場の競争環境や同社のブランド力の現状を反映している可能性があります。

以上のEVA分析結果は、同社が「会計上の利益」以上の「資本コストというハードル」に直面していることを示唆しています。投資に際しては、これらの数値推移が改善に向かう具体的なシナリオを同社の経営戦略に見出せるかどうかを慎重に判断する必要があります。

⚠️ 注意: EVAは簡易推定値です。WACCは株主資本コスト7%想定に基づく簡易計算であり、 正確なEVA算出にはβ値やリスクフリーレートの精緻な設定が必要です。

営業レバレッジ分析

営業レバレッジ度(DOL)推移

DOL = 営業利益変化率 ÷ 売上高変化率。売上が1%変化したとき営業利益が何%変化するかを示し、固定費比率の高さ(経営リスク)を表します。

平均DOL
11.75倍
有効年度の平均
リスク評価
高リスク
DOL≤2: 低 / 2-5: 中 / 5+: 高
年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 営業利益率(%) 売上変化率(%) 営業利益変化率(%) DOL(倍)
17年 8月期 18,500 700 3.78 - - -
17年 8月期 18,705 756 4.04 1.11 8.00 7.22
18年 8月期 16,800 850 5.06 -10.18 12.43 -1.22
18年 8月期 16,541 648 3.92 -1.54 -23.76 15.41
19年 8月期 16,818 583 3.47 1.67 -10.03 -5.99
20年 8月期 14,200 -990 -6.97 -15.57 -269.81 17.33
20年 8月期 14,252 -924 -6.48 0.37 6.67 -
21年 8月期 14,300 -190 -1.33 0.34 79.44 -
21年 8月期 13,690 -365 -2.67 -4.27 -92.11 21.59
21年 8月期 13,691 -364 -2.66 0.01 0.27 -
22年 8月期 19,430 100 0.51 41.92 127.47 3.04
22年 8月期 19,390 140 0.72 -0.21 40.00 -
22年 8月期 19,399 145 0.75 0.05 3.57 -
23年 8月期 21,460 250 1.16 10.62 72.41 6.82
23年 8月期 20,800 300 1.44 -3.08 20.00 -6.50
23年 8月期 20,802 303 1.46 0.01 1.00 -
24年 8月期 21,140 263 1.24 1.62 -13.20 -8.12
25年 8月期 20,300 150 0.74 -3.97 -42.97 10.81
25年 8月期 19,440 -200 -1.03 -4.24 -233.33 -
25年 8月期 19,445 -202 -1.04 0.03 -1.00 -
営業レバレッジ度(DOL)と営業利益率の推移-10.00.010.020.030.017182021222325250DOL(倍)営業利益率(%)

費用構造の特徴

ヤマトインターナショナル株式会社の平均DOL(営業レバレッジ度)は11.75倍と極めて高く、同社の収益構造が「固定費型ビジネス」であることを示唆しています。一般的にDOLが5倍を超えると高リスクとされますが、同社はそれを大きく上回る水準にあります。アパレル業界特有の店舗賃借料、人件費、および在庫管理コストなどの固定費負担が重いと考えられ、売上のわずかな変動が利益に劇的な影響を与える構造です。例えば、2021年8月期には売上高が4.27%減少した際、営業利益は92.11%も減少し、DOLは21.59倍に達しました。このように、損益分岐点付近で推移している時期は、レバレッジがより極端に作用する特徴が見て取れます。

景気変動への感応度

同社の業績は、マクロ経済や消費動向による売上高の振れに対し、非常に高いボラティリティ(変動率)を持っています。好況期や需要拡大期には強力な利益成長が期待でき、実際に2023年8月期(連結)では、売上高が10.62%増加したことで営業利益が72.41%増加(DOL 6.82倍)するという、高い利益弾力性を示しました。一方で、不況期や消費減退期には赤字転落のリスクが急激に高まります。2020年8月期のコロナ禍における大幅な減益や、最新の2025年8月期予想で見られる売上高3.97%の減少予想に対し営業利益が42.97%減少(DOL 10.81倍)するという試算は、景気後退局面における利益下押し圧力の強さを浮き彫りにしています。

投資家へのポイント

投資判断において注目すべきは、同社の「高い営業レバレッジ」をリスクと捉えるか、あるいは回復期の「利益成長のレバレッジ」と捉えるかという点です。営業利益率が0%〜1%台と低水準で推移しているため、売上の前提がわずかに狂うだけで業績予想が大きく乖離する可能性を常に孕んでいます。直近の2025年8月期予想では再び赤字転落の可能性も示唆されており、コスト構造の改革や損益分岐点の引き下げがどの程度進展するかが、今後のダウンサイドリスクを抑制する鍵となります。売上高の増減傾向が利益に何倍ものインパクトを与える現在の特性を踏まえ、より慎重なトップライン(売上高)の分析が求められる局面といえます。

⚠️ 注意: 営業レバレッジ度は前年比の変化率から算出しており、売上や利益が急変する年度では極端な値になることがあります。 複数年の平均値での評価を推奨します。

持続的成長率分析(SGR)

持続的成長率(SGR)推移

SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。

年度 ROE(%) 配当性向(%) 内部留保率(%) SGR(%) 実際成長率(%)
17年 8月期 0.89 推定30% 70.0 0.62 -
18年 8月期 3.31 推定30% 70.0 2.32 -9.19
19年 8月期 3.11 推定30% 70.0 2.18 0.11
20年 8月期 -8.90 推定30% 70.0 -6.23 -15.57
21年 8月期 0.33 推定30% 70.0 0.23 0.70
22年 8月期 1.79 27.3 72.7 1.30 35.87
23年 8月期 2.24 43.8 56.2 1.26 10.45
24年 8月期 2.20 93.0 7.0 0.15 -1.49
25年 8月期 1.26 100.0 0.0 0.00 -3.97
持続的成長率(SGR)vs 実際の売上成長率-20.0%-10.0%0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%17192123250SGR(%)実際成長率(%)
ROEと配当性向の推移-20.0%0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%17192123250ROE(%)配当性向(%)
持続的成長率の評価(2025年 8月期 連結)
ROE
1.26%
×
内部留保率
0.0%
=
SGR
0.00%
📊 成長持続性の評価: 実際の成長率がSGRを下回っており、資金余力がある(成長投資の余地)

SGR水準の評価

ヤマトインターナショナルのSGR(持続的成長率)は、2025年8月期予想において0.00%まで低下しています。この推移を分析すると、要因は「低位で推移するROE」と「急増する配当性向」の二点に集約されます。ROEは2022年以降、1.26%〜2.24%の低水準に留まっており、自己資本を効率的に利益に結び付けられていない現状があります。一方で、配当性向は2022年8月期の27.3%から、2025年8月期には100.0%に達する見込みです。利益の全額を配当に回す方針により内部留保率が0.0%となったことが、SGRをゼロへと押し下げた直接的な主因といえます。

成長の持続可能性

実際の売上高成長率とSGRを比較すると、2022年(35.87%)や2023年(10.45%)は、SGR(約1.3%)を大幅に上回る成長を記録しました。これは外部資金の活用や効率改善による一時的な押し上げを示唆しますが、2024年以降は実際の成長率もマイナス圏(-1.49%〜-3.97%)に転じています。現在のSGRが0.00%であることは、内部資金のみでは事業規模を維持することが理論上限界であることを示しています。将来的な成長投資に回す資金を配当に振り向けているため、現在の事業モデルを維持しながらの自律的な再成長は、数値上、非常に困難な局面にあると評価されます。

投資家へのポイント

投資家としては、同社の「資本配分方針の転換」をどう評価するかが鍵となります。SGRが0%であることは、企業が「内部留保による事業拡大」よりも「利益の全額還元」を選択していることを意味します。直近の配当性向100%という数字は株主還元を重視する姿勢の現れであり、インカムゲインを重視する投資家には魅力的に映る可能性があります。しかし、ROEが低水準な中で内部留保をゼロにする戦略は、将来の設備投資や新ブランド開発に向けた原資を欠くリスクも孕んでいます。今後の業績回復によるROEの向上、あるいは外部資金調達を通じた成長戦略の有無を注視し、収益性と還元方針のバランスを慎重に見極める必要があります。

⚠️ 注意: 配当データが取得できない年度は内部留保率70%(配当性向30%)を仮定しています。 実際の配当政策と異なる場合があります。

インタレストカバレッジレシオ推移

インタレストカバレッジレシオ推移

ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。

直近ICR
∞(利息負担なし)
>10: 極めて安全 / 3-10: 安全 / 1-3: 要注意 / <1: 危険
安全性評価
極めて安全
年度 営業利益(百万円) 推定支払利息(百万円) ICR(倍) 有利子負債(百万円) 有利子負債比率(%) 推定借入金利(%)
17年 8月期 700 - 1,357 5.7 -
18年 8月期 850 - 942 4.0 -
19年 8月期 583 - 965 4.1 -
20年 8月期 -990 - 786 3.8 -
21年 8月期 -190 - 618 2.9 -
22年 8月期 100 - 673 3.1 -
23年 8月期 250 - 926 4.1 -
24年 8月期 263 - 778 3.2 -
25年 8月期 150 - 816 3.5 -

利払い安全性の評価

ヤマトインターナショナル(8127)のインタレストカバレッジレシオ(ICR)は、対象となる全期間(2017年8月期〜2025年8月期予想)において「∞(無限大)」という極めて特異かつ堅実な数値を示しています。これは推定支払利息が営業外収益等との相殺により実質的にゼロ、あるいは極めて少額であることを意味しており、財務上の利払い負担が損益を圧迫するリスクはほぼ皆無と言えます。2020年8月期(-990百万円)および2021年8月期(-190百万円)には営業赤字を計上していますが、その際も過度な利払い負担が生じていないため、事業の立て直しに専念できる財務的猶予がありました。2022年8月期以降は営業利益が黒字化し、直近2024年8月期には263百万円まで回復していますが、この利益成長がそのまま企業の純資産蓄積に寄与しやすい構造となっています。

有利子負債の状況

有利子負債の推移を見ると、2017年8月期の1,357百万円から減少傾向を辿り、近年は600億円〜900百万円台で推移しています。特筆すべきは「有利子負債比率」の低さであり、分析期間を通じて2.9%〜5.7%という極めて低い水準を維持しています。一般にアパレルメーカーは在庫投資や店舗展開のために一定の負債を抱える傾向がありますが、同社は自己資本を中心とした「実質的な無借金経営」に近い財務形態を維持していると評価できます。2025年8月期の予測においても、有利子負債は816百万円(有利子負債比率3.5%)と低水準に抑えられており、金利上昇局面においても業績への直接的な悪影響は限定的であると考えられます。

投資家へのポイント

財務安全性の観点からは、倒産リスクや利払いによるキャッシュフローの悪化を懸念する必要がほとんどない「極めて安全」な銘柄といえます。投資判断に際しては、以下の3点が重要な焦点となります。第一に、この強固な財務基盤(低い負債比率と実質的な無利息負担)が、景気後退時や消費動向の急変時における強力な防波堤となる点です。第二に、余剰資金や低い負債比率を活かした今後の成長投資、あるいは株主還元への期待です。第三に、財務の安全性は完璧である一方、2025年8月期の営業利益予想(150百万円)に見られるような、収益のボラティリティや成長性の鈍化をどう評価するかという点です。同社への投資は、資産背景の堅牢さを重視するのか、あるいは将来の収益回復によるバリュエーションの修正を期待するのか、投資家自身の投資スタンスに委ねられます。

⚠️ 注意: 支払利息は「営業利益−経常利益」から推定しています。 営業外収益が大きい企業では過小評価になる可能性があります。正確な支払利息は有価証券報告書の注記をご確認ください。

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