9743株式会社丹青社||

丹青社(9743) 理論株価分析:過去最高益を更新、万博・インバウンド特需を追い風に高還元を実現 カチノメ

決算発表日: 2026-04-222026年1月期 通期
総合業績スコア
77/100
好決算

セクション別スコア

業績成長性85収益性65財務健全性85株主還元85成長戦略75理論株価評価65
業績成長性85
収益性65
財務健全性85
株主還元85
成長戦略75
理論株価評価65

※ 本記事は後半になるにつれて、内容が専門的になるように構成しています。

決算履歴(業績推移)

売上高推移(百万円)600億700億800億900億1,000億1,100億2017年 2018年 2019年 2021年 2022年 2023年 2024年 2026年 '27/1売上高利益推移(営業利益・経常利益・当期純利益)0百万20億40億60億80億100億2017年 2018年 2019年 2021年 2022年 2023年 2024年 2026年 '27/1営業利益経常利益純利益利益率推移(%)0.0%2.0%4.0%6.0%8.0%10.0%2017年 2018年 2019年 2021年 2022年 2023年 2024年 2026年 '27/1営業利益率経常利益率純利益率
年度 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 包括利益
2017年 1月期 連結 70,800 3,800 3,950 2,550 -
2017年 1月期 連結 70,782 3,930 4,116 2,626 2,651
2018年 1月期 連結 75,000 4,500 4,700 3,200 -
2018年 1月期 連結 75,157 4,588 4,741 3,221 3,701
2019年 1月期 連結 81,900 4,400 4,500 3,500 -
2019年 1月期 連結 82,600 5,000 5,200 4,200 -
2019年 1月期 連結 82,677 5,025 5,219 4,206 3,546
2020年 1月期 連結 81,600 5,670 5,850 4,060 -
2020年 1月期 連結 81,679 5,678 5,870 4,075 3,728
2021年 1月期 連結 70,600 3,700 3,800 2,400 -
2021年 1月期 連結 69,400 4,000 4,200 2,800 -
2021年 1月期 連結 69,226 5,050 5,266 3,438 2,931
2022年 1月期 連結 62,000 2,000 2,150 1,410 -
2022年 1月期 連結 62,714 2,025 2,210 1,435 1,511
2023年 1月期 連結 64,600 200 350 150 -
2023年 1月期 連結 64,000 600 800 450 -
2023年 1月期 連結 64,221 617 794 460 766
2024年 1月期 連結 81,200 3,800 3,900 2,770 -
2024年 1月期 連結 81,201 3,883 3,995 2,771 3,409
2025年 1月期 連結 92,000 5,000 5,100 3,600 -
2025年 1月期 連結 91,858 5,147 5,317 3,876 3,805
2026年 1月期 連結 100,000 7,500 7,600 5,200 -
2026年 1月期 連結 106,000 8,600 8,600 6,000 -
2026年 1月期 連結 107,222 8,358 8,336 5,993 7,253
★2027年1月期(予想) 107,000 8,000 8,100 5,700

※単位: 百万円

利益率推移

営業利益率 = 営業利益÷売上高×100 / 経常利益率 = 経常利益÷売上高×100 / 純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

年度 売上高 (百万円) 営業利益率 (%) 経常利益率 (%) 純利益率 (%)
2017年 1月期 連結 70,800 5.37% 5.58% 3.60%
2017年 1月期 連結 70,782 5.55% 5.82% 3.71%
2018年 1月期 連結 75,000 6.00% 6.27% 4.27%
2018年 1月期 連結 75,157 6.10% 6.31% 4.29%
2019年 1月期 連結 81,900 5.37% 5.49% 4.27%
2019年 1月期 連結 82,600 6.05% 6.30% 5.08%
2019年 1月期 連結 82,677 6.08% 6.31% 5.09%
2020年 1月期 連結 81,600 6.95% 7.17% 4.98%
2020年 1月期 連結 81,679 6.95% 7.19% 4.99%
2021年 1月期 連結 70,600 5.24% 5.38% 3.40%
2021年 1月期 連結 69,400 5.76% 6.05% 4.03%
2021年 1月期 連結 69,226 7.29% 7.61% 4.97%
2022年 1月期 連結 62,000 3.23% 3.47% 2.27%
2022年 1月期 連結 62,714 3.23% 3.52% 2.29%
2023年 1月期 連結 64,600 0.31% 0.54% 0.23%
2023年 1月期 連結 64,000 0.94% 1.25% 0.70%
2023年 1月期 連結 64,221 0.96% 1.24% 0.72%
2024年 1月期 連結 81,200 4.68% 4.80% 3.41%
2024年 1月期 連結 81,201 4.78% 4.92% 3.41%
2025年 1月期 連結 92,000 5.43% 5.54% 3.91%
2025年 1月期 連結 91,858 5.60% 5.79% 4.22%
2026年 1月期 連結 100,000 7.50% 7.60% 5.20%
2026年 1月期 連結 106,000 8.11% 8.11% 5.66%
2026年 1月期 連結 107,222 7.80% 7.77% 5.59%
★2027年1月期(予想) 107,000 7.48% 7.57% 5.33%

※営業利益率 = 営業利益÷売上高×100、経常利益率 = 経常利益÷売上高×100、純利益率 = 当期純利益÷売上高×100

決算サマリー

株式会社丹青社の2026年1月期(第68期)連結決算は、売上高・利益ともに過去最高を更新する極めて好調な内容となりました。売上高は1,072億2,200万円(前年同期比16.7%増)、営業利益は83億5,800万円(同62.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は59億9,300万円(同54.7%増)と、大幅な増収増益を達成しました。

注目ポイント

最大の注目点は、大阪・関西万博関連の大型案件の完工と、インバウンド需要の回復に伴うホテル・エンターテインメント施設の改装需要を確実に取り込んだことです。特に「商業その他施設事業」のセグメント利益が前期比で倍増しており、収益構造の改善が鮮明になっています。また、中期経営計画の最終年度目標を上方修正するなど、経営陣の自信がうかがえる内容です。

業界動向

ディスプレイ業界は、各都市の再開発プロジェクトや大型イベントが相次ぎ、堅調な需要環境にあります。競合の乃村工藝社などと比較しても、丹青社は高付加価値なDX(デジタルトランスフォーメーション)やBIMを活用した設計・施工効率化で差別化を図っており、連結営業利益率を前期の5.6%から7.8%へと大幅に向上させた点は業界内でも際立っています。

投資判断材料

長期投資家にとってのポジティブ材料は、盤石な財務基盤と高い株主還元姿勢です。自己資本比率は67.6%と高水準を維持しつつ、配当性向50%以上を維持する方針に基づき、年間配当を前期の45円から72円へと大幅に増配しました。一方で、文化施設事業の採算悪化が継続している点は、今後の改善リスクとして注視が必要です。

セグメント別業績

  • 商業その他施設事業:売上高721億5,400万円(32.6%増)、セグメント利益68億800万円(106.6%増)。ホテルや万博関連が牽引。
  • チェーンストア事業:売上高256億1,900万円(5.4%減)、セグメント利益19億8,400万円(8.5%増)。大型旗艦店は減少したものの、収益性重視の受注により増益。
  • 文化施設事業:売上高89億2,900万円(10.0%減)、セグメント損失6億1,600万円(前期は9,500万円の損失)。過年度の受注減と工事進捗の遅れが響く。

財務健全性

自己資本比率は67.6%と、前期の61.6%からさらに上昇しました。有利子負債は極めて少なく、営業キャッシュ・フローも37億4,300万円の黒字(前期比2.7倍)と、現金の創出力も高まっています。流動比率も高く、短期的な支払い能力および中長期の投資余力は非常に高い水準にあります。

配当・株主還元

同社は「連結配当性向50%以上」を明確な目標として掲げています。2026年1月期は1株当たり72円(中間35円、期末37円)を実施し、配当性向は56.7%となりました。利益成長に伴う増配が期待できる構造となっており、株主還元への意識は非常に高いといえます。

通期業績予想

2027年1月期の計画として、売上高1,070億円、営業利益80億円、純利益57億円を掲げています。2026年1月期の実績が計画を上回るペースで推移したため、中期経営計画の最終年度目標を上方修正しました。進捗率は非常に良好であり、現在の事業環境が続く限り、安定した業績推移が見込まれます。

中長期成長戦略

「私たちの未来ビジョン2046」を策定し、創業100周年に向けた成長を描いています。BIM等のデジタル技術による生産性向上、サステナビリティ対応(低炭素設計)の強化、さらに空間づくり事業の資源を活用した新規事業の開発に注力しています。単なる施工業者から、空間価値のコンサルティングへと領域を広げています。

リスク要因

最大の懸念事項は、慢性的な人手不足に伴う労務コストの上昇と、資材価格の変動です。また、文化施設事業のように特定の大型案件の進捗や受注状況によって、四半期ごとの業績が変動しやすい特性があります。万博後の需要剥落(ポスト万博リスク)に対する新規案件の獲得継続性が鍵となります。

ESG・サステナビリティ

温室効果ガス(Scope1・2)の排出量を2022年1月期比で40%削減する目標を掲げ、2025年1月期までに11%の削減を達成しています。女性管理職比率を15%以上にする目標や、EcoVadis評価でのシルバーランク取得を目指すなど、非財務情報の開示と取り組みにも積極的です。

経営陣コメント

小林統社長は、良好な市場環境を背景に旺盛な需要を確実に取り込んだことが過去最高益に繋がったと総括しています。今後は「働き方改革」と「人的資本への投資」を加速させ、持続的な企業価値向上を目指すとともに、成長軌道をより確かなものにするための基盤整備に注力する意向を示しています。

バリュエーション

2026年1月期の実績に基づくと、株価収益率(PER)は12.0倍、実績PBRは1.1倍前後となっています。自己資本利益率(ROE)が16.9%と大幅に改善していることを考慮すると、現在の株価水準は、同社の収益力と還元姿勢に対して依然として割安感がある、あるいは適正な評価の範囲内であると判断されます。

過去決算との比較

過去5年間の推移を見ると、コロナ禍の落ち込みから完全に脱却し、成長フェーズに回帰したことが鮮明です。特に営業利益率は1.0%(2023年1月期)から7.8%(2026年1月期)へとV字回復を遂げています。季節性として下半期に売上・利益が偏重する傾向はありますが、年間を通じた受注残高の積み上がりは堅調です。

市場の評判

株式会社丹青社はディスプレイ業界で長年の実績があり、投資家からは安定した収益と高配当が評価されています。2026年1月期には業績と配当を上方修正し、株価も上昇しています。長期的な成長性と財務的な安全性から買い評価が続いています。

年度別バリュエーション推移(PBR/PER/時価総額)

株価推移(高値・安値)05001,0001,5002,000'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)高値安値PBR推移(高値・安値・期末PBR)0.0倍0.5倍1.0倍1.5倍2.0倍2.5倍3.0倍'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)PBR高値PBR安値期末PBRPER推移(高値・安値)0倍20倍40倍60倍80倍100倍'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)PER高値PER安値時価総額推移(高値・安値)0億200億400億600億800億1,000億'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)高値安値ROE推移(PBR÷PERで算出・高値同士/安値同士)0.0%5.0%10.0%15.0%20.0%25.0%'11/1'14/1'17/1'20/1'23/1'26/1最新(株探)ROE高値ROE安値
年度 株価高値 株価安値 PER高値 PER安値 PBR高値 PBR安値 時価総額高値 時価総額安値 期末PBR
2011年1月期 232 84 13.82 5.02 1.19 0.43 112億2445万 40億7258万 1倍
2012年1月期 261 95 22.05 8.01 1.28 0.46 126億3992万 45億9407万 0.55倍
2013年1月期 197 101 8.29 4.26 0.85 0.44 95億3581万 48億9207万 0.78倍
2014年1月期 406 166 7.63 3.12 1.39 0.57 196億6762万 80億4584万 1.21倍
2015年1月期 725 224 8.87 2.74 2 0.62 351億2359万 108億4699万 1.49倍
2016年1月期 1,027 514 11.28 5.65 2.31 1.15 497億3152万 249億2225万 1.71倍
2017年1月期 950 599 17.41 10.97 1.98 1.25 460億286万 290億601万 1.85倍
2018年1月期 1,460 798 21.8 11.92 2.75 1.5 706億9914万 386億4240万 2.31倍
2019年1月期 1,582 976 18.05 11.14 2.81 1.73 766億688万 472億6189万 2.06倍
2020年1月期 1,373 1,066 16.05 12.46 2.31 1.79 664億8624万 516億2005万 2.08倍
2021年1月期 1,282 544 17.76 7.54 2.09 0.89 620億7965万 263億4269万 1.19倍
2022年1月期 994 692 33.01 22.98 1.62 1.13 481億3352万 335億945万 1.17倍
2023年1月期 894 655 92.45 67.74 1.45 1.06 432億9111万 317億1776万 1.17倍
2024年1月期 962 703 16.57 12.11 1.46 1.06 465億8395万 340億4212万 1.28倍
2025年1月期 1,068 772 13 9.4 1.51 1.09 517億1690万 373億8338万 1.28倍
2026年1月期 1,671 859 13.17 6.77 2.1 1.08 809億1662万 415億9627万 1.92倍
最新(株探) 1482 - 12.3倍 - 1.86倍 - 718億円 - 1.86倍

ROE算出表(PBR÷PER×100)

PBR = ROE × PER の関係式から逆算。高値同士・安値同士で算出しています。

年度 PBR高値 PER高値 ROE高値(%) PBR安値 PER安値 ROE安値(%)
2011年1月期 1.19 13.82 8.6% 0.43 5.02 8.6%
2012年1月期 1.28 22.05 5.8% 0.46 8.01 5.7%
2013年1月期 0.85 8.29 10.3% 0.44 4.26 10.3%
2014年1月期 1.39 7.63 18.2% 0.57 3.12 18.3%
2015年1月期 2 8.87 22.5% 0.62 2.74 22.6%
2016年1月期 2.31 11.28 20.5% 1.15 5.65 20.4%
2017年1月期 1.98 17.41 11.4% 1.25 10.97 11.4%
2018年1月期 2.75 21.8 12.6% 1.5 11.92 12.6%
2019年1月期 2.81 18.05 15.6% 1.73 11.14 15.5%
2020年1月期 2.31 16.05 14.4% 1.79 12.46 14.4%
2021年1月期 2.09 17.76 11.8% 0.89 7.54 11.8%
2022年1月期 1.62 33.01 4.9% 1.13 22.98 4.9%
2023年1月期 1.45 92.45 1.6% 1.06 67.74 1.6%
2024年1月期 1.46 16.57 8.8% 1.06 12.11 8.8%
2025年1月期 1.51 13 11.6% 1.09 9.4 11.6%
2026年1月期 2.1 13.17 15.9% 1.08 6.77 16.0%
最新(株探) 1.86倍 12.3倍 15.1% - - -

バリュエーション推移の概要

株式会社丹青社(9743)の過去15年間のバリュエーション推移を俯瞰すると、2011年1月期から2019年1月期にかけて、市場評価が大きく切り上がる「リレーティング」の局面が見て取れます。2011年時点ではPBR1倍割れ、PER5倍〜13倍程度で推移していましたが、2019年にはPBR2.81倍、時価総額766億円にまで到達しました。その後、新型コロナウイルス感染症の影響による収益悪化で2023年1月期には一時的なPERの急騰(高値92.45倍)とPBRの低下を経験しましたが、足元では収益性の回復に伴い、再び歴史的な平均水準を上回る評価を形成しつつあります。

PBR分析

PBRの推移において、特筆すべきは2011年から2013年頃の「ディープバリュー期(0.43倍〜0.85倍)」から、2016年以降の「プレミアム評価期(1.5倍〜2.8倍)」への構造的変化です。 歴史的な安値は2011年1月期の0.43倍、高値は2019年1月期の2.81倍となっています。2021年から2023年にかけては1.0倍台前半まで調整しましたが、直近のデータでは1.86倍まで回復しています。これは、資本効率への市場の期待が再び高まっていることを示唆しており、過去15年のレンジ(概ね0.4倍〜2.8倍)の中では、中高位圏に位置しています。

PER分析

PERは、事業環境の変化を敏感に反映しています。2014年から2016年頃は利益成長に伴いPERは10倍以下で推移する局面もありましたが、利益水準が安定した2017年から2020年にかけては11倍〜20倍程度が妥当なレンジとなりました。 2023年1月期には、一時的な利益の落ち込みによりPER高値が92.45倍という異常値を示しましたが、2024年以降は12倍〜16倍程度に落ち着いています。最新の12.3倍という数値は、同社の歴史的平均(巡航速度時)と比較して過熱感は乏しく、収益実態に見合った評価レベルにあると分析されます。

時価総額の推移

時価総額は、2011年1月期の安値40億円から、2019年1月期の高値766億円まで、約19倍という爆発的な成長を記録しました。その後、コロナ禍の影響で2021年には一時263億円(安値)まで半減したものの、直近では718億円まで回復しており、過去最高値圏(766億円)を射程圏内に捉えています。この時価総額の回復は、単なる株価の上昇だけでなく、着実な自己資本の積み上げと、成長期待の再醸成が寄与していると考えられます。

現在のバリュエーション評価

最新のバリュエーション(PER 12.3倍、PBR 1.86倍)を歴史的水準と比較すると、PBRの観点では過去15年のレンジにおいてやや高い位置にあり、資産効率に対する期待先行の側面が伺えます。一方で、PER 12.3倍は過去の利益成長期と同水準、あるいはやや控えめな評価に留まっており、利益面での割高感は限定的です。 2026年1月期の予測値(PBR高値 2.1倍)を含めると、市場はさらなる企業価値向上を織り込みつつあると言えます。投資家としては、現在の株価が過去最高値圏にある時価総額を維持・更新できるだけの利益成長が継続するかどうかが、今後の判断の焦点となるでしょう。

キャッシュフロー推移

キャッシュフロー推移(営業CF・投資CF・フリーCF)-20億0百万20億40億60億80億'17/1'19/1'21/1'23/1'25/1'26/10営業CF投資CFフリーCF設備投資 vs フリーCF(百万円)-20億0百万20億40億60億80億'17/1'19/1'21/1'23/1'25/1'26/10設備投資#1フリーCF現金等残高推移130億140億150億160億170億180億'17/1'19/1'21/1'23/1'25/1'26/1現金等
年度 四半期 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF 設備投資#1 現金等
2017年1月期 通期 5755 -480 -1906 5275 -166 16196
2018年1月期 通期 791 -527 -2100 264 -345 14385
2019年1月期 通期 4812 118 -2346 4930 -155 16940
2020年1月期 通期 -906 405 -2543 -501 -143 13895
2021年1月期 通期 6150 60 -2118 6210 -202 17986
2022年1月期 通期 -994 823 -1449 -171 -158 16357
2023年1月期 通期 1810 -1075 -1365 735 -211 15740
2024年1月期 通期 2781 -379 -1469 2402 -147 16694
2025年1月期 通期 1018 945 -1464 1963 -225 17204
2026年1月期 通期 3743 -194 -3161 3549 -484 17589

※単位: 百万円。データ出典: IRBank(irbank.net)

キャッシュフロー推移の概要

過去10年間のキャッシュフロー(CF)推移を俯瞰すると、同社は特定の年度(2020年、2022年)に営業CFが一時的にマイナスとなるものの、長期的には本業で着実に現金を創出する能力を維持しています。直近の2026年1月期(予測値含む)のデータに基づくと、営業CFがプラス(37.4億円)、投資CFがマイナス(1.9億円)、財務CFがマイナス(31.6億円)となっており、CFパターンは「優良安定型」に判定されます。これは本業で稼いだ現金を、将来の成長のための投資や、株主還元・債務返済にバランスよく配分できている健全な状態を示唆しています。

営業キャッシュフロー分析

営業CFは、2020年1月期(-9.0億円)や2022年1月期(-9.9億円)に一時的な落ち込みを見せていますが、これはディスプレイ業界特有の大型案件の完了時期や仕入債務・売上債権の決済タイミングによる変動と考えられます。しかし、2024年1月期の27.8億円から2026年1月期の37.4億円へと、足元では力強い回復基調にあります。本業によるキャッシュ創出力は安定しており、事業環境の変化に対して柔軟に対応できる耐性を備えていると評価できます。

投資キャッシュフロー・設備投資分析

投資CFは、多くの年度で±10億円以内の範囲に収まっており、大規模な工場や設備を必要としない「アセットライト」なビジネスモデルであることが読み取れます。設備投資額は概ね1.4億円〜2.2億円程度で推移してきましたが、2026年1月期には4.8億円へと増加する計画です。投資CFがプラスの年度(2022年、2025年など)は、保有資産の売却や有価証券の回収等によって現金を確保している形跡があり、投資効率を意識した資産管理が行われている様子が伺えます。

フリーキャッシュフロー分析

営業CFと投資CFを合算したフリーCF(FCF)は、過去10年間のうち8期でプラスを維持しています。特に2021年1月期(62.1億円)や2026年1月期(35.4億円)には多額の余剰資金を生み出しており、事業継続に必要な資金を十分に自給できている状態です。この豊富なFCFが、外部資本に依存しない機動的な経営や、後述する積極的な株主還元の源泉となっています。

財務戦略・現金残高の評価

財務CFは一貫してマイナス(流出)が続いており、2026年1月期には過去最大規模となる31.6億円のマイナスを見込んでいます。これは、借入金の返済や配当金の支払い、自社株買いといった株主還元を積極的に実施している結果と推察されます。それだけの流出がありながらも、現金等残高は140億円〜170億円台の高水準で安定して推移しており(2026年1月期末は175.8億円)、手元流動性は極めて潤沢です。財務的な安全性は非常に高く、不況時への備えも万全と言えます。

キャッシュフロー総合評価

株式会社丹青社のキャッシュフロー構造は、総じて極めて健全です。本業での確かなキャッシュ創出力(営業CF)を背景に、必要最小限の設備投資に留めつつ(投資CF)、創出した余剰資金を積極的に株主還元や財務体質の強化(財務CF)に充てるという、成熟企業の理想的なサイクルを形成しています。175億円を超える豊富な現預金は、今後のM&Aや新たな事業領域への投資余力として十分すぎる規模であり、安定性と成長投資へのポテンシャルを兼ね備えた財務状況にあると分析されます。

DCF法による理論株価分析

DCF分析の前提条件

パラメータ 説明
WACC(割引率) 7.5% 加重平均資本コスト
FCF成長率 7.0% 予測期間中の年平均成長率
EV/FCF倍率 15.70倍 ターミナルバリュー算出用(現在の市場評価)
予測年数 5年 将来FCFの予測期間
発行済株式数 48,448,043株 理論株価算出の分母
現金及び現金同等物 176億 非事業資産として加算
有利子負債 15億 企業価値から控除

将来フリーキャッシュフロー予測

予測年 予測FCF 現在価値(PV)
1年目 38億 35億
2年目 41億 35億
3年目 43億 35億
4年目 47億 35億
5年目 50億 35億
ターミナルバリュー 781億 544億
フリーキャッシュフロー推移(実績 + DCF予測)-10億0百万10億20億30億40億50億2224262028予2030予2031予0FCF実績FCF予測

理論株価の算出プロセス

① 予測FCF現在価値の合計 175億
② ターミナルバリューの現在価値 544億
③ 事業価値(① + ②) 719億
④ 加算: 現金及び現金同等物 +176億
⑤ 控除: 有利子負債 -15億
⑥ 株主価値(③ + ④ − ⑤) 880億
DCF理論株価
1,817円
現在の株価
1,482円
乖離率(割安)
+22.6%

感度分析(理論株価: 円)

WACC(横軸)とFCF成長率(縦軸)を変化させた場合の理論株価の変動を示します。

WACC →
FCF成長率 ↓
5.5%6.5%7.5%8.5%9.5%
2.0%1,6351,5811,5301,4821,436
4.5%1,7851,7241,6671,6131,561
7.0%1,9481,8811,8171,7561,699
9.5%2,1272,0521,9801,9121,848
12.0%2,3222,2382,1592,0832,012

※ 緑色: 現在株価(1,482円)より高い(割安方向) / 赤色: 低い(割高方向) / 青背景: 現在の前提条件

DCF分析の総合評価

今回のDCF分析の結果、株式会社丹青社(9743)の理論株価は1,817円と算出されました。現在の市場株価1,482円と比較すると、乖離率は+22.6%であり、理論上は現在の株価が「割安」な水準にあることを示唆しています。この2割を超えるプラスの乖離は、市場が同社の将来のキャッシュフロー創出力に対して、慎重な見積もりを立てているか、あるいは事業環境の不透明さをリスクプレミアムとして織り込んでいる可能性を示しています。投資判断においては、この22.6%の「安全余裕率(マージン・オブ・セーフティ)」をどう評価するかが鍵となります。

フリーキャッシュフローの質

過去のフリーキャッシュフロー(FCF)の実績を確認すると、2020年1月期のマイナス5.01億円や2022年1月期のマイナス1.71億円など、年度ごとの変動が激しい傾向が見て取れます。これは、同社が手掛ける商業施設や展示空間の施工事業がプロジェクトベースであり、運転資本の増減や大型案件の検収時期にFCFが強く依存するためです。一方で、直近の2026年1月期予測(35.49億円)に向けては回復基調にあり、予測期間(1年目〜5年目)においても37.97億円から49.78億円へと着実な成長が前提となっています。この予測の信頼性は、同社が安定的な受注残高を維持できるか、および原材料費高騰等のコスト増を適切に価格転嫁できるかにかかっています。

前提条件の妥当性

本分析では、WACC(加重平均資本コスト)を7.5%、FCF成長率を7.0%に設定しています。WACC 7.5%は、日本のスタンダードな中型株のリスクプロファイルとして妥当な水準と言えます。一方で、5年間の予測期間におけるFCF成長率7.0%は、過去の変動性を考慮すると、やや意欲的な(楽観的な)設定であるとの見方も可能です。また、出口マルチプルとして設定されたEV/FCF倍率15.70倍は、同業他社や過去のヒストリカル・マルチプルと比較して、同社の成長期待をどの程度反映しているかを精査する必要があります。これらの前提条件が1%変化するだけで、理論株価は大きく変動する点に注意が必要です。

ターミナルバリューの影響

計算結果によれば、事業価値719億円のうち、ターミナルバリュー(TV)の現在価値が544億円を占めており、その比率は約75.7%に達しています。これは、企業価値の大部分が予測期間(5年)以降の将来価値に依存していることを意味します。DCF法においてTVの比率が高いことは一般的ではありますが、裏を返せば、5年後以降の永続的な成長性や再投資効率に関する仮定が、理論株価の妥当性を左右する最大の不確実性要素であることを示しています。

感度分析から読み取れること

WACC(割引率)と成長率の2つのパラメータが理論株価に与える影響は極めて大きいです。例えば、WACCが7.5%から8.5%へ上昇(リスク認識の増大)、あるいは成長率が7.0%から6.0%へ低下(成長鈍化)した場合、現在算出されている1,817円という理論株価は、現在の市場株価である1,482円付近まで急速に収束する可能性があります。特に、TVへの依存度が高い本モデルにおいては、出口マルチプル(15.70倍)の微減が株価評価を大きく引き下げる要因となるため、金利動向やセクター全体のバリュエーション変化に敏感な構造と言えます。

投資判断への示唆

以上の分析から、株式会社丹青社は数値上、魅力的な割安水準にあると評価されます。176億円という豊富な現預金を有し、有利子負債が15億円に抑えられている財務の健全性(ネットキャッシュ状態)は、下値の限定要因として機能するでしょう。しかしながら、DCF法はあくまで「将来の仮定」に基づく試算であり、特にプロジェクト型ビジネス特有のFCFのボラティリティや、成長率設定の妥当性については慎重な検討が求められます。本分析結果は一つの参考指標としつつ、今後の受注動向や利益率の推移を注視しながら、最終的な投資判断を下されることを推奨いたします。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

直近の純利益が拡大傾向にあるものの、ディスプレイ業界の景気敏感性と過去のFCFの変動性を考慮し、今後5年間の成長率を保守的に7%と推定しました。WACCは、同社のキャッシュリッチな財務体質と自己資本比率の高さを踏まえ、株主資本コストを主軸とした7.5%に設定しています。発行済株式数は時価総額718億円を現在株価で除して算出し、有利子負債は実質無借金に近い財務状況を反映して低水準に推計しました。

⚠️ 免責事項: 本DCF分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 DCF法は前提条件(WACC、成長率等)に大きく依存するため、感度分析を参考に幅を持って評価してください。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

リバースDCF分析(市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(1,482円)を正当化するために必要なインプライドFCF成長率を逆算しました。

インプライドFCF成長率
1.1%
市場が織り込む成長率
AI推定FCF成長率
7.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-5.9%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価1,482円
インプライドFCF成長率1.07%
AI推定FCF成長率7.00%
成長率ギャップ-5.93%(悲観的)
インプライドWACC30.00%
AI推定WACC7.50%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

現在の株価1,482円から逆算されるインプライドFCF(フリーキャッシュフロー)成長率は1.07%です。これは、市場が丹青社の将来的な成長に対して極めて慎重、あるいは「悲観的」な見方をしていることを示唆しています。AIが推定する成長率7.00%と比較すると、-5.93%もの大きな乖離(ギャップ)が生じています。過去の業績推移を見ると、同社は商業施設や文化施設、展示会など幅広い空間演出において国内トップクラスの実績を維持しており、1.07%という数字は、実質的にゼロ成長に近い保守的な期待値であると評価できます。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込んでいる1.07%という成長率は、現在の事業環境を鑑みると十分に達成可能な、あるいは低すぎる水準である可能性があります。インバウンド需要の回復や都市再開発プロジェクトの継続、さらには「体験型消費」へのシフトに伴う商空間デザインの高度化など、同社の事業領域には追い風となる要因が複数存在します。また、インプライドWACCが30.00%という極めて高い値を示している点は、現在の株価がビジネスのリスクを過剰に織り込んでいるか、あるいは資本コストの前提が市場平均(AI推定の7.50%)から大きく逸脱して割安に放置されている可能性を示唆しています。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果、現在の丹青社の株価は、AIが推定する企業のファンダメンタルズ(成長率7.00%、WACC 7.50%)と比較して、市場の期待値が著しく低い状態にあることが浮き彫りとなりました。もし投資家が、同社の将来的なキャッシュフロー創出能力が年率1.07%を上回ると判断し、かつ適切なリスクプレミアム(WACC)を適用すべきだと考えるならば、現在の株価は割安な水準にあると解釈できます。一方で、建設資材の高騰や人手不足といった業界特有のリスクが将来の収益性を圧迫し、成長が停滞すると予測する場合には、現在の慎重な市場評価が妥当であるという結論になります。最終的な投資判断にあたっては、これらの成長率の乖離とマクロ経済環境を照らし合わせ、慎重に検討されることを推奨いたします。

拡張感応度分析・シナリオ分析

感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

金利上昇はWACCの増加、景気後退はFCF成長率の低下として理論株価に影響します。

WACC →
FCF成長率 ↓
5.5%6.5%7.5%8.5%9.5%
2.0%1,6351,5811,5301,4821,436
4.5%1,7851,7241,6671,6131,561
7.0%1,9481,8811,8171,7561,699
9.5%2,1272,0521,9801,9121,848
12.0%2,3222,2382,1592,0832,012

※ 緑色: 現在株価(1,482円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
WACC: 6.0% / FCF成長率: 12.0%
永久成長率: 1.5%
2,280円
+53.8%
基本シナリオ
WACC: 7.5% / FCF成長率: 7.0%
永久成長率: 1.0%
1,817円
+22.6%
悲観シナリオ
WACC: 9.0% / FCF成長率: 2.0%
永久成長率: 0.5%
1,459円
-1.6%

シナリオ分析の総合評価

株式会社丹青社(9743)の理論株価は、基本シナリオにおいて1,817円と算出され、現在の市場価格(1,482円)を22.6%上回る結果となりました。シナリオ全体のレンジは、悲観的な想定の1,459円から楽観的な想定の2,280円までと幅広く分布しています。特筆すべきは、現在の株価が悲観シナリオ(1,459円)に極めて近い水準にある点です。これは、現在の市場価格が「WACCの上昇」や「成長率の大幅な鈍化」といったリスク要素を、既に相当程度織り込んでいる可能性を示唆しています。

金利変動の影響

本分析におけるWACC(加重平均資本コスト)の変化に対する感応度を確認すると、金利上昇やリスクプレミアムの拡大によりWACCが9.0%(基本比+1.5pt)まで上昇した場合、理論株価は1,459円まで下落します。これは現在の株価1,482円からわずか1.6%の下落に相当します。一方で、金融緩和環境が続きWACCが6.0%まで低下した場合は、楽観シナリオの一助となり株価を大きく押し上げる要因となります。現在の株価水準は、将来的な金利上昇リスクに対して一定の耐性(レジリエンス)を既に備えている状態と言えます。

景気変動の影響

FCF(フリー・キャッシュ・フロー)成長率の変動は、理論株価に最も大きな影響を与える変数です。基本シナリオの成長率7.0%に対し、景気後退や商業施設需要の停滞により成長率が2.0%まで急減速する悲観シナリオでは、理論株価は1,459円となります。しかし、現時点の市場価格が既にこの水準に近いことから、景気後退による業績下振れリスクの多くは価格に反映済みであると解釈できます。逆に、インバウンド需要の拡大や都市再開発プロジェクトの加速により成長率が12.0%に達する楽観シナリオでは、現在株価の約1.5倍となる2,280円が視野に入ります。

投資判断への示唆

以上の分析結果を踏まえると、現在の株価1,482円は、悲観的なシナリオ下での理論株価(1,459円)と比較して「下値の目処」に近い位置にあると考えられます。基本シナリオ(1,817円)に対する安全域(マージン・オブ・セーフティ)は約2割確保されており、下方リスクよりも上方余地の方が大きい非対称なリターン構造が示唆されています。投資家としては、同社の受注動向や利益率の推移が「基本シナリオ」の前提を維持できるかどうか、あるいは「悲観シナリオ」を回避できる状況にあるかを継続的に注視することが、重要な判断材料となるでしょう。

モンテカルロシミュレーション

シミュレーション結果サマリー

WACC・FCF成長率・永久成長率をそれぞれ正規分布でランダムに変動させ、100,000回のDCF計算を実行した結果です。DCF計算の非線形性(特にゴードン成長モデルの割引構造)により、理論株価の分布は対数正規分布に近い形状となるため、ヒストグラムは対数スケールで表示しています。

平均理論株価
1,835円
中央値
1,809円
90%レンジ(5-95%点)
1,477 〜 2,285円
割安確率
94.7%
理論株価 > 現在株価
モンテカルロシミュレーション:理論株価の確率分布(100,000回・対数スケール)0.0%1.2%2.4%3.5%4.7%5.9%現在株価 1,482円1,409円1,516円1,631円1,755円1,888円2,031円2,185円2,350円シミュレーション分布現在株価

※ ヒストグラムは対数スケールで表示し、外れ値の影響を抑えるため分布の中央96%(2〜98パーセンタイル)を表示しています。対数スケールにより、DCF計算の非線形性に起因する右裾の歪みが補正され、分布の形状をより正確に把握できます。平均・中央値・パーセンタイルなどの統計値は元のスケールで有効サンプル全体から計算しています。

理論株価のパーセンタイル分布

シミュレーション結果を小さい順に並べたとき、各パーセンタイルにおける理論株価を示します。

パーセンタイル 5% 10% 25% 50% 75% 90% 95%
理論株価1,477円1,540円1,659円1,809円1,980円2,162円2,285円

※ 緑色: 現在株価(1,482円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 中央値(50%タイル)

リスク指標

理論株価の標準偏差 250円
5% VaR(下位5%タイル) 1,477円
変動係数(CV = σ / 平均) 13.6%
有効シミュレーション数 100,000 / 100,000

確率分布の解釈

今回のモンテカルロシミュレーション結果によると、株式会社丹青社(9743)の理論株価の平均値は1,835円、中央値は1,809円となりました。平均値が中央値を上回るこの分布特性は、DCF計算の非線形性に由来する典型的な対数正規分布に近い形状を示しています。これは、将来のFCF(フリーキャッシュフロー)成長率が上振れた際の理論株価の跳ね上がりが、下振れた際の影響よりも統計的に大きく現れることを意味しています。5パーセンタイル(1,477円)から95パーセンタイル(2,285円)という広範な分布範囲は、WACCや成長率といった不確実な変数に基づいた理論株価の妥当な変動幅を可視化しており、中心的なシナリオ(中央値付近)だけでなく、楽観的・悲観的なシナリオの可能性を網羅的に示しています。

リスク評価

リスク管理の指標となる5% VaR(バリュー・ア・リスク)は1,477円と算出されました。これは、設定されたパラメータ条件下において、95%の確率で理論株価がこの水準を上回ることを示唆しており、理論的な下値の目安となります。変動係数(CV)は約13.6%(250円 / 1,835円)であり、個別の事業会社としては標準的なボラティリティと言えます。パーセンタイル分布の幅(95%値と5%値の差)は808円となっており、これは主に平均7.0%と設定されたFCF成長率の標準偏差(2.50%)がもたらす将来予測の不確実性を反映しています。投資家は、この価格変動幅が自身の許容リスク範囲内にあるかを検討する必要があります。

現在株価の統計的位置づけ

現在株価1,482円は、シミュレーション結果の5パーセンタイル値(1,477円)の極めて近くに位置しています。統計学的な観点から見ると、現在の株価は「理論株価が想定し得る範囲の最下位5%付近」にあることを示しており、非常に保守的な評価を受けている状況と言えます。割安確率は94.7%に達しており、これは100,000回の試行のうち、約94,700回において理論株価が現在株価を上回ったことを意味します。このことから、市場価格はシミュレーション上の平均的な期待値から大きく乖離し、統計的に見て顕著な割安圏にあると分析されます。

投資判断への示唆

本シミュレーションの結果は、株式会社丹青社の現在株価に対して十分な「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」が存在している可能性を示唆しています。現在株価(1,482円)と平均理論株価(1,835円)との間には約19.2%の乖離があり、最悪に近いシナリオ(5% VaR:1,477円)が既に株価に織り込まれている計算になります。ただし、平均7.0%というFCF成長率の前提が同社の事業環境や中期経営計画に照らして妥当であるかについては、慎重な精査が必要です。統計上は下値リスクが限定的で上昇余力の大きい魅力的な水準にありますが、最終的な投資判断にあたっては、配当政策や受注環境などの定性的要因も含めて総合的に検討されることを推奨いたします。

📖 モンテカルロシミュレーションの読み方:
  • 割安確率: シミュレーション結果のうち、理論株価が現在株価を上回った割合。50%超なら統計的に割安寄り
  • 90%レンジ(5-95%点): 全シミュレーション結果を並べたときの下位5%点から上位95%点までの範囲。幅が広いほど不確実性が高い
  • 5% VaR: 悲観的な条件下でも95%の確率でこの値以上になると期待される最低ライン
  • 変動係数: 平均に対する標準偏差の比率。30%超だとパラメータ感度が高い(結果の信頼性に注意)
⚠️ 免責事項: 本モンテカルロシミュレーションはAIが推定したパラメータの分布に基づく統計的な参考値であり、投資助言ではありません。 入力パラメータに正規分布を仮定し、DCF計算の非線形性により出力は対数正規分布に近い形状となります。パラメータ間の独立性の仮定など、実際の市場とは異なる前提を含んでいます。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS/BPSベース理論株価分析

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 120.50円 1株あたり利益
直近BPS 796.77円 1株あたり純資産
1株配当 80.00円 年間配当金
EPS成長率 8.0% 予測期間中の年平均
割引率 9.0% 将来EPSの割引率
想定PER 12.30倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2027年1月 796.77 120.50 80.00 40.50 837.27 15.12 0.00 12.30 1.77 120.50 1,482
2028年1月 837.27 130.14 80.00 50.14 887.41 15.54 8.00 12.30 1.80 119.39 1,601
2029年1月 887.41 140.55 80.00 60.55 947.96 15.84 8.00 12.30 1.82 118.30 1,729
2030年1月 947.96 151.80 80.00 71.80 1019.76 16.01 8.00 12.30 1.83 117.21 1,867
2031年1月 1019.76 163.94 80.00 83.94 1103.70 16.08 8.00 12.30 1.83 116.14 2,016
ターミナル 1310.55
PER×EPS 理論株価
1,482円
+0.0%
DCF合計値
1,902.09円
+28.3%
現在の株価
1,482円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 591.54円
ターミナルバリュー現在価値 1310.55円(全体の68.9%)
DCF合計理論株価 1,902.09円

EPS/BPSモデルの総合評価

本モデルによる算出結果では、直近EPS(120.50円)に想定PER(12.30倍)を乗じた理論株価は1,482円となり、現在の市場価格(1,482円)と完全に一致しています。これは、現在の株価が短期的な収益力に基づいた妥当な水準(PER 12.3倍)で推移していることを示唆しています。

一方で、将来の利益成長と資本の蓄積を考慮した「DCF合計理論株価」は1,902.09円と算出されました。現在株価との乖離率は+28.3%であり、今後5年間のEPS成長(年率8.0%)およびターミナルバリュー(継続価値)を考慮した長期的な視点では、現在の株価は割安な圏内にあると評価できます。

ROE推移の見通し

本予測モデルの特筆すべき点は、ROE(自己資本利益率)の推移にあります。通常、配当後の利益剰余金がBPS(1株純資産)を押し上げることでROEは低下しやすくなりますが、本モデルではROEが2027年1月期の15.12%から、2031年1月期には16.08%へと上昇する軌道を描いています。

これは、年率8.0%というEPS成長率がBPSの増加スピードを上回ることを前提としているためです。期首BPSが796.77円から1019.76円へと拡大する中でも、高い資本効率を維持・改善できるかどうかが、中長期的な理論株価(2,016円)への到達に向けた重要な鍵となります。

前提条件の妥当性

本モデルで設定された「EPS成長率 8.0%」は、同社の過去の業績推移やディスプレイ業界の市場環境を鑑みると、一定の成長持続を前提とした意欲的な数字と言えます。「割引率 9.0%」は、一般的な中小型株の資本コストとして標準的であり、リスクプレミアムが適正に反映されています。

また、「想定PER 12.30倍」についても、現在の市場平均や同社の過去の評価倍率と比較して過度な期待を含まない保守的な設定です。1株配当を80.00円で据え置く前提となっていますが、将来的な増益に伴い配当性向が低下する計算となるため、株主還元方針の変更(増配等)があれば、さらに資本効率(ROE)や理論株価が上振れする余地も残されています。

投資判断への示唆

以上の分析を総合すると、株式会社丹青社の現在の株価(1,482円)は、足元の収益力に対しては極めてニュートラルな評価を受けている状態です。投資家が注目すべき点は、本モデルが示す「DCF合計理論株価:1,902.09円」という長期的なポテンシャルと、現在価格の28.3%の乖離をどう捉えるかという点に集約されます。

同社が年間8%の利益成長を継続し、かつ15%を超える高いROEを維持できると判断する場合、現在の株価は将来の成長を十分に織り込んでいない可能性があります。一方で、受注環境の変化や資材高騰等により成長率が鈍化するシナリオを想定する場合は、現在のPER 12.3倍という評価が下限の支えとなるかを慎重に見極める必要があります。最終的な投資判断にあたっては、これらの数値モデルと併せて、業界動向や中期経営計画の進捗を確認されることを推奨いたします。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

2023年以降のEPS急回復と2026年の利益予測を背景に、ディスプレイ業界の需要回復を織り込みつつ、中長期的な景気循環リスクを考慮して今後5年間の成長率を8%と推定しました。割引率は、同社がプライム市場の中堅企業であり、一定の業績変動性を有することを踏まえ、株主資本コストとして妥当な9%に設定しています。現在のPER12.3倍というバリュエーションは、堅調な利益成長と配当利回りのバランスを市場が概ね適正に評価している状態と判断されます。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

EPS成長率0%が続く場合の理論株価

将来のEPS成長率を0%(横ばい)と仮定した場合の試算です。本編のベースシナリオとは前提が異なります。

理論株価モデルの前提条件

パラメータ 説明
直近EPS 120.50円 1株あたり利益
直近BPS 796.77円 1株あたり純資産
1株配当 80.00円 年間配当金
EPS成長率 0.0% 予測期間中の年平均
割引率 9.0% 将来EPSの割引率
想定PER 12.30倍 理論株価算出に使用

EPS/BPS予測と理論株価

年度 期首BPS EPS 配当 自己資本増加 期末BPS ROE(%) EPS成長率(%) PER(倍) PBR(倍) DCF 理論株価
2027年1月 796.77 120.50 80.00 40.50 837.27 15.12 0.00 12.30 1.77 120.50 1,482
2028年1月 837.27 120.50 80.00 40.50 877.77 14.39 0.00 12.30 1.69 110.55 1,482
2029年1月 877.77 120.50 80.00 40.50 918.27 13.73 0.00 12.30 1.61 101.42 1,482
2030年1月 918.27 120.50 80.00 40.50 958.77 13.12 0.00 12.30 1.55 93.05 1,482
2031年1月 958.77 120.50 80.00 40.50 999.27 12.57 0.00 12.30 1.48 85.37 1,482
ターミナル 963.30
PER×EPS 理論株価
1,482円
+0.0%
DCF合計値
1,474.19円
-0.5%
現在の株価
1,482円

DCF内訳

予測期間EPS現在価値合計(5年分) 510.89円
ターミナルバリュー現在価値 963.30円(全体の65.3%)
DCF合計理論株価 1,474.19円

0%成長シナリオの意味

本シナリオは、株式会社丹青社が将来にわたって利益成長を実現できず、EPS(1株当たり純利益)が直近実績の120.50円で横ばいに推移すると仮定した「保守的なケース」を想定しています。計算結果によると、このゼロ成長前提での理論株価(DCF方式)は1,474.19円となり、現在の市場価格(1,482円)とほぼ同水準(乖離率 -0.5%)に収束しました。

この結果が示唆するのは、現在の株価は「将来の利益成長をほとんど織り込んでいない」という点です。言い換えれば、市場は同社に対して、成長期待というよりも、現状の利益水準と配当維持能力をベースにしたバリュエーションを下限として評価している可能性が高いと考えられます。年80円の配当が維持される前提であれば、配当利回りは約5.4%と高水準であり、利益成長がゼロであってもインカムゲインによる投資妙味が株価の下支え要因となっている構図が浮かび上がります。

ベースシナリオとの対比

本編のベースシナリオ(成長率約8.0%)と比較すると、理論株価には大きな差が生じます。ベースシナリオでは成長を織り込むことでより高い理論価格が算出されますが、この0%成長シナリオとの対比により以下のことが読み取れます。

  • 期待値のギャップ: 現在の市場価格が0%成長シナリオの理論株価に近いということは、もし同社が中期経営計画等に沿った利益成長(約8%水準)を実際に達成した場合、現在の株価は「過小評価(割安)」の状態にあると解釈できます。
  • ROEの推移: 利益が横ばいの一方で、配当しきれない利益が内部留保として積み上がる(BPSが増加する)ため、ROE(自己資本利益率)は15.12%から12.57%へと徐々に低下する構造になります。資本効率を維持するためには、成長への再投資、あるいは配当性向の引き上げによる株主還元強化が必要になることを示唆しています。
  • ダウンサイド・リスクの限定: すでに「成長ゼロ」に近い評価が市場でなされているため、業績が極端に悪化しない限り、現在の株価水準からの更なる大幅な下落リスクは、バリュエーション面からは限定的であるとの見方も可能です。

留意点

本モデルは、入力された前提条件(割引率9.0%、想定PER12.30倍など)に基づくシミュレーションであり、将来の株価動向を保証するものではありません。以下の点に留意が必要です。

  • 外部環境の変化: 商業施設やイベント・展示会市場は景気変動の影響を受けやすく、EPSが一定で推移するという前提自体が崩れるリスクがあります。
  • 金利・割引率の変動: 市場金利の変動により割引率が上昇した場合、成長率が0%のシナリオでは株価の理論値が大きく低下する感受性を持っています。
  • 配当政策の不確実性: 本モデルでは年80円の配当維持を前提としていますが、業績悪化や資本政策の変更により減配が発生した場合は、理論株価の前提が大きく変わります。

以上の分析は、投資の意思決定を支援するための参考情報であり、最終的な投資判断は、市場環境や企業のリスク要因を総合的に考慮した上で、投資家ご自身の責任において行われるようお願いいたします。

パラメータ推定の根拠(AI分析)

2023年以降のEPS急回復と2026年の利益予測を背景に、ディスプレイ業界の需要回復を織り込みつつ、中長期的な景気循環リスクを考慮して今後5年間の成長率を8%と推定しました。割引率は、同社がプライム市場の中堅企業であり、一定の業績変動性を有することを踏まえ、株主資本コストとして妥当な9%に設定しています。現在のPER12.3倍というバリュエーションは、堅調な利益成長と配当利回りのバランスを市場が概ね適正に評価している状態と判断されます。

⚠️ 免責事項: 本理論株価分析はAIが推定したパラメータに基づく参考値であり、投資助言ではありません。 EPS成長率・割引率・PER等の前提条件により結果は大きく変動します。 実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。

拡張感度分析: WACC × FCF成長率(理論株価: 円)

WACC(加重平均資本コスト)は、株主資本コストと負債コストを資本構成比率で加重平均した「企業の資金調達コスト」です。WACCが高いほど将来キャッシュフローの現在価値は低くなり、理論株価は下がります。FCF成長率は、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いた「企業が自由に使えるキャッシュ(フリーキャッシュフロー)」が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準のWACC(7.5%)とFCF成長率(7.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

割引率は、将来の利益やキャッシュフローを現在価値に換算するための率で、投資家が求めるリターン(期待収益率)に相当します。割引率が高いほど将来利益の現在価値は低くなり、理論株価は下がります。EPS成長率は、1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)が年率何%で伸びるかの想定値です。

基準の割引率(9.0%)とEPS成長率(8.0%)から±100bpの範囲で、1%刻みの理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: PER × EPS(理論株価: 円)

PER(株価収益率)は、株価が1株あたり利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PERが高いほど市場がその企業の将来成長に高い期待を持っていることを意味します。EPS(1株あたり利益)は、企業の純利益を発行済株式数で割った値で、1株あたりの収益力を表します。

基準のPER(12.3倍)とEPS(121円)から、PERは1倍刻み(±100倍)・EPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

拡張感度分析: PBR × BPS(理論株価: 円)

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍で評価されているかを示す指標です。PBRが1倍を下回ると、株価が解散価値を下回っていることを意味し、割安と判断される場合があります。BPS(1株あたり純資産)は、企業の純資産を発行済株式数で割った値で、1株あたりの解散価値を表します。

基準のPBR(1.9倍)とBPS(797円)から、PBRは0.1倍刻み(±10.0倍)・BPSは1%刻み(±100%)の理論株価をシミュレーションします。

📊 巨大感度分析テーブルを計算中...

残留利益モデル分析(Residual Income Model)

残留利益モデル(Residual Income Model)

残留利益モデルは、現在のBPS(1株純資産)に将来の「超過利益」の現在価値を加算して理論株価を算出します。 株主資本コストを上回るROEを持続できる企業ほど、BPSに大きなプレミアムが付きます。

理論株価 = BPS₀ + Σ[(ROEₜ − r) × BPSₜ₋₁ / (1+r)ᵗ] + TV/(1+r)ⁿ

前提条件

パラメータ 説明
直近BPS 796.77円 1株あたり純資産(出発点)
直近EPS 120.50円 1株あたり利益
株主資本コスト (r) 9.0% 株主の要求収益率(エクイティチャージの基準)
EPS成長率 8.0% 予測期間中の年平均
1株配当 80.00円 年間配当金(BPS蓄積に影響)
予測年数 5年 個別予測期間

残留利益の年次予測

年度 期首BPS EPS ROE(%) エクイティチャージ 残留利益 PV(残留利益) 期末BPS
2027年1月 796.77 120.50 15.12 71.71 48.79 44.76 837.27
2028年1月 837.27 130.14 15.54 75.35 54.79 46.11 887.41
2029年1月 887.41 140.55 15.84 79.87 60.68 46.86 947.96
2030年1月 947.96 151.80 16.01 85.32 66.48 47.10 1019.76
2031年1月 1019.76 163.94 16.08 91.78 72.16 46.90 1103.70
ターミナル 残留利益の永続価値: 801.78円 → PV: 521.1円 521.10
理論株価の構成
現在BPS
796.77円
簿価部分
+
残留利益PV合計
231.73円
超過利益の現在価値
+
ターミナルPV
521.1円
永続価値の現在価値
=
RIM理論株価
1,550円
+4.6%
現在の株価: 1,482円
残留利益モデル:ROEとエクイティチャージの推移8.0%10.0%12.0%14.0%16.0%18.0%2728293031ROE(%)株主資本コスト(9.0%)
残留利益と現在価値の推移40円45円50円55円60円65円70円75円2728293031残留利益(円)PV(残留利益)(円)
📖 残留利益モデルの読み方:
  • 残留利益 > 0(ROE > 株主資本コスト)→ 企業はBPS以上の価値を創出。理論株価 > BPS となりプレミアム付与
  • 残留利益 < 0(ROE < 株主資本コスト)→ 資本効率が不十分。理論株価 < BPS となりディスカウント
  • DCF法との違い: RIMはBPS(純資産)を出発点とするため、資産ベースの評価に強く、安定企業・金融機関の評価に適しています

残留利益の評価

本モデルにおいて、株式会社丹青社の価値創造力は非常に堅調であると評価されます。残留利益モデル(RIM)の核心は、ROE(自己資本利益率)と株主資本コストの差(エクイティ・スプレッド)にあります。同社の株主資本コストを9.0%と設定したのに対し、予測期間中のROEは15.12%から16.08%へと推移する見通しとなっています。

各年度の「エクイティチャージ(株主が期待する最低限の利益)」を、予測EPS(一株当たり利益)が大きく上回っており、結果として残留利益は2027年1月期の48.79円から2031年1月期には72.16円へと拡大する計算です。これは、同社が事業を通じて資本コストを上回る付加価値を継続的に創出し、株主価値を積み上げていることを示唆しています。

BPSプレミアム/ディスカウントの解釈

算出された理論株価1,550円は、期首BPS(一株当たり純資産)である796.77円に対し、約94%のプレミアムが付与された水準です。RIMの構造上、このプレミアム(約753円分)は、将来生み出される残留利益の現在価値合計(231.73円)と、さらにその先の成長を織り込んだターミナルバリューの現在価値(521.10円)によって構成されています。

一般にPBR(株価純資産倍率)が1倍を超える企業は、ROEが資本コストを上回っていると解釈されますが、本モデルによる理論PBRは約1.95倍となります。これは、丹青社のディスプレイ事業等における高い専門性や市場シェアが、単なる資産の裏付け以上の収益力を生み出す「見えない資産(のれん)」として高く評価されている結果と言えます。

他の評価手法との比較

本手法(RIM)は、現金収支に基づくDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)と比較して、会計上の利益と純資産をベースにするため、業績予測の連続性を捉えやすい特徴があります。丹青社のような受注生産型のビジネスモデルでは、運転資本の変動によりフリー・キャッシュ・フローが単年度で大きく振れることがありますが、RIMでは純資産の蓄積とROEの推移に着目することで、より安定的な価値評価が可能です。

また、PER(株価収益率)の観点では、現在の株価1,482円は2027年1月期予測EPS(120.50円)に対して約12.3倍となります。本モデルの理論株価1,550円に基づくPERは約12.9倍となり、現在の市場価格は、同社の将来の収益性と資本効率の向上を概ね適正に織り込みつつも、わずかに保守的な評価に留まっている可能性が示唆されます。

投資判断への示唆

残留利益モデルから導き出された理論株価は1,550円となり、現在株価(1,482円)との乖離率は+4.6%です。この数値は、現在の株価が概ね適正水準(フェアバリュー)の範囲内にあり、将来の利益成長(EPS成長率8.0%)と高水準なROEの維持が市場からある程度信頼されていることを示しています。

今後の注目点としては、予測通りにROEを15%〜16%台へ向上・維持できるか、また、資本コスト(9.0%)を上回る利益成長を継続できるかが焦点となります。理論株価と現行株価の乖離が比較的小さいことから、マクロ環境の変化や受注動向による短期的な価格変動が、長期的な価値創出力とどのように整合するかを注視する必要があります。なお、本試算は一定の前提条件に基づいたものであり、実際の投資判断に際しては、事業リスクや市場環境の変化を十分に考慮することが求められます。

⚠️ 注意: 残留利益モデルの結果は、EPS成長率・株主資本コスト・BPSの前提条件に大きく依存します。 また、会計基準の違い(日本基準/IFRS)によりBPSの定義が異なる場合があります。投資判断の際は他の手法と合わせてご検討ください。

リバースDCF分析(EPSベース・市場の期待値)

市場が織り込んでいる成長期待

現在の株価(1,482円)を正当化するために必要なインプライドEPS成長率を逆算しました。

インプライドEPS成長率
0.2%
市場が織り込む成長率
AI推定EPS成長率
8.0%
ファンダメンタル分析ベース
成長率ギャップ
-7.8%
悲観的

リバースDCF詳細

現在の株価1,482円
インプライドEPS成長率0.17%
AI推定EPS成長率8.00%
成長率ギャップ-7.83%(悲観的)
インプライド割引率50.00%
AI推定割引率9.00%
📖 読み方:
  • インプライド成長率 > AI推定成長率 → 市場は楽観的。期待通りの成長が実現しなければ株価下落リスク
  • インプライド成長率 < AI推定成長率 → 市場は悲観的。実態より過小評価されている可能性
  • 両者がほぼ一致 → 市場の評価はファンダメンタルに整合的

市場の期待値の評価

現在の株価1,482円から算出されるインプライドEPS成長率は0.17%となっており、市場は株式会社丹青社に対して「ほぼゼロ成長」という極めて慎重、かつ悲観的な見通しを立てていることがわかります。AIが推定する期待成長率8.00%との間には-7.83%という大幅な成長率ギャップが存在しており、現在の株価水準は、同社の将来的な収益拡大の可能性をほとんど織り込んでいない状態と言えます。また、インプライド割引率が50.00%という異例の高水準に達していることは、市場が将来の不確実性やリスクに対して、極めて高いプレミアムを要求していることを示唆しています。

インプライド成長率の実現可能性

市場が織り込んでいる0.17%という成長率は、現在のディスプレイ業界や内装工事市場の環境を鑑みると、非常に保守的な数字です。丹青社が手掛ける商業施設や博物館、展示会などの空間づくり事業は、人流の回復や都市再開発プロジェクトの進展に伴い、底堅い需要が見込まれます。AI推定の8.00%という成長率は、過去のトレンドや業界予測に基づいた標準的な回復シナリオを反映していますが、これに対して市場の期待(0.17%)は、原材料費の高騰や人手不足によるコスト増といったネガティブ要因を過剰に警戒している可能性、あるいは将来の収益安定性に対する強い疑念を抱いている可能性があります。

投資判断への示唆

リバースDCF分析の結果は、現在の株価が「期待値の過小評価」の状態にある可能性を提示しています。投資家にとっての注目点は、市場が設定した「0.17%」というハードルを、同社が今後どの程度の確度で上回っていけるかという点に集約されます。もしAI推定の8.00%に近い成長が実現されると考えるならば、現在の株価は割安圏にあると解釈できます。一方で、インプライド割引率が50.00%という極端な値を示している背景には、市場特有の流動性リスクや、成長の持続性に対する構造的な懸念が隠れている可能性も否定できません。これらの数値の乖離を「市場の誤り」と見るか「目に見えないリスクの反映」と見るか、最終的な判断は各投資家のリスク許容度と事業分析に委ねられます。

感応度分析・シナリオ分析

感度分析: 割引率 × EPS成長率(理論株価: 円)

金利上昇は割引率の増加、景気後退はEPS成長率の低下として理論株価に影響します。

割引率 →
EPS成長率 ↓
7.0%8.0%9.0%10.0%11.0%
3.0%1,7481,6851,6241,5661,512
5.5%1,8951,8251,7581,6951,635
8.0%2,0521,9751,9021,8331,767
10.5%2,2192,1352,0551,9801,908
13.0%2,3972,3062,2192,1372,059

※ 緑色: 現在株価(1,482円)より高い(割安) / 赤色: 低い(割高) / 青背景: 現在の前提条件

シナリオ分析(楽観・基本・悲観)

金利環境・景気動向の変化に応じた3つのシナリオで理論株価を比較します。

楽観シナリオ
割引率: 7.5% / EPS成長率: 13.0%
2,351円
+58.6%
基本シナリオ
割引率: 9.0% / EPS成長率: 8.0%
1,902円
+28.3%
悲観シナリオ
割引率: 10.5% / EPS成長率: 1.0%
1,444円
-2.6%

シナリオ分析の総合評価

今回のシナリオ分析の結果、株式会社丹青社(9743)の理論株価は、悲観シナリオの1,444円から楽観シナリオの2,351円という広いレンジが算出されました。特筆すべきは、現在株価(1,482円)の位置付けです。現在株価は悲観シナリオ(理論株価1,444円)に極めて近く、下落余地が現在価格から約2.6%に留まる一方で、基本シナリオ(1,902円)に対しては+28.3%、楽観シナリオ(2,351円)に対しては+58.6%という大幅な乖離が確認されます。この数値は、現在の市場価格が将来の成長性やリスクプレミアムの低下をほとんど織り込んでいない、保守的な水準に留まっている可能性を示唆しています。

金利変動の影響

割引率を9.0%とした基本シナリオに対し、割引率を7.5%に設定した楽観シナリオと、10.5%に設定した悲観シナリオでは、理論株価に顕著な差異が生じています。割引率が1.5%低下する(リスク許容度の拡大や金利低下を想定する)だけで、理論株価を大きく押し上げる要因となります。丹青社のような受注型ビジネスにおいては、資本コスト(WACC)の変動が企業価値評価に与える感応度が高く、マクロ経済における金利動向や、投資家の要求リターン(リスクプレミアム)の変化が株価形成における重要なボラティリティ要因となることが確認されます。

景気変動の影響

EPS成長率の変動も理論株価に決定的な影響を与えます。基本シナリオの成長率8.0%に対し、悲観シナリオで想定した1.0%(ほぼ横ばい)の成長率では、理論株価は1,444円まで低下します。丹青社の主要事業である商業施設やディスプレイ展示等の空間演出は、企業の設備投資意欲に強く依存するため、景気後退局面におけるEPS成長率の鈍化は直接的な株価下押し圧力となります。一方で、インバウンド需要の回復や都市再開発の進展により成長率が13.0%まで加速する楽観シナリオでは、理論株価は2,000円を大きく超える水準となります。成長率の見通し如何で、バリュエーションが数段階変動する構造にあります。

投資判断への示唆

本分析結果は、現在の丹青社の株価が「最悪に近いシナリオ」を既に一定程度織り込んでいる可能性を浮き彫りにしています。現在株価1,482円は、悲観シナリオにおけるEPS成長率1.0%、割引率10.5%という厳しい前提条件での理論株価(1,444円)をわずかに上回る水準です。投資家としては、今後の国内景気や設備投資動向が「現状維持(基本シナリオ)」以上で推移すると考えるか、あるいは「更なる景気減速(悲観シナリオ以下)」を想定するかによって、本銘柄の評価は大きく分かれるでしょう。現状の価格水準における下方リスクの限定性と、成長回復時のリターンの振れ幅をどのように天秤にかけるかが、投資判断の焦点となります。

限界利益分析(CVP分析)

高低点法による費用構造の推定

売上高が最大の年度と最小の年度を比較し、総費用(売上高−営業利益)の変化から変動費率と固定費を推定します。

推定変動費率
85.9%
売上高に対する変動費の割合
推定限界利益率
14.1%
1 − 変動費率
推定固定費
6,717
百万円
基準: 2026年 1月期 連結(売上高 107,222 百万円)と 2022年 1月期 連結(売上高 62,000 百万円)の比較

年度別 限界利益指標

年度 売上高 限界利益 限界利益率 損益分岐点 安全余裕率 経営レバレッジ
17年 1月期 70,800 9,954 14.1% 47,775 32.5% 2.62倍
17年 1月期 70,782 9,952 14.1% 47,775 32.5% 2.53倍
18年 1月期 75,000 10,545 14.1% 47,775 36.3% 2.34倍
18年 1月期 75,157 10,567 14.1% 47,775 36.4% 2.30倍
19年 1月期 81,900 11,515 14.1% 47,775 41.7% 2.62倍
19年 1月期 82,600 11,613 14.1% 47,775 42.2% 2.32倍
19年 1月期 82,677 11,624 14.1% 47,775 42.2% 2.31倍
20年 1月期 81,600 11,473 14.1% 47,775 41.5% 2.02倍
20年 1月期 81,679 11,484 14.1% 47,775 41.5% 2.02倍
21年 1月期 70,600 9,926 14.1% 47,775 32.3% 2.68倍
21年 1月期 69,400 9,757 14.1% 47,775 31.2% 2.44倍
21年 1月期 69,226 9,733 14.1% 47,775 31.0% 1.93倍
22年 1月期 62,000 8,717 14.1% 47,775 22.9% 4.36倍
22年 1月期 62,714 8,817 14.1% 47,775 23.8% 4.35倍
23年 1月期 64,600 9,082 14.1% 47,775 26.1% 45.41倍
23年 1月期 64,000 8,998 14.1% 47,775 25.4% 15.00倍
23年 1月期 64,221 9,029 14.1% 47,775 25.6% 14.63倍
24年 1月期 81,200 11,416 14.1% 47,775 41.2% 3.00倍
24年 1月期 81,201 11,416 14.1% 47,775 41.2% 2.94倍
25年 1月期 92,000 12,935 14.1% 47,775 48.1% 2.59倍
25年 1月期 91,858 12,915 14.1% 47,775 48.0% 2.51倍
26年 1月期 100,000 14,060 14.1% 47,775 52.2% 1.87倍
26年 1月期 106,000 14,903 14.1% 47,775 54.9% 1.73倍
26年 1月期 107,222 15,075 14.1% 47,775 55.4% 1.80倍
売上高と損益分岐点売上高の推移4億5億6億7億8億9億10億11億171819212223242626売上高(百万円)損益分岐点(百万円)
安全余裕率と経営レバレッジの推移0.010.020.030.040.050.060.0171819212223242626安全余裕率(%)経営レバレッジ(倍)
直近年度の損益分岐点分析(2026年 1月期 連結)
売上高
107,222
百万円
損益分岐点
47,775
百万円
安全余裕率
55.4%
十分な安全余裕
経営レバレッジ
1.80倍
低い経営リスク

費用構造の評価

株式会社丹青社の費用構造を分析すると、推定変動費率が85.9%と非常に高く、推定固定費が6,717百万円という、典型的な「変動費型ビジネス」の特性を有しています。限界利益率は14.1%にとどまっており、売上高の増加がそのまま大きな利益増に直結しにくい構造ですが、一方で売上が減少した際にも損失が急拡大しにくい柔軟性を備えています。同社が属するディスプレイ業界の特性上、材料費や外注費といった施工直接費の割合が高いため、効率的なプロジェクト管理と調達コストの抑制が収益性向上の鍵となります。

損益分岐点と安全余裕率

損益分岐点売上高は47,775百万円と推定されます。過去の推移を見ると、コロナ禍の影響を強く受けた2022年1月期においても売上高62,000百万円以上を維持しており、損益分岐点を大きく割り込むリスクは限定的であったと言えます。安全余裕率に注目すると、2022年1月期の22.9%を底として、直近の2024年1月期には41.2%まで回復、さらに2026年1月期の予測値では55.4%に達する見込みです。一般的に30%以上が望ましいとされる指標において、50%を超える予測は、経営の安定性が著しく高まっていることを示唆しています。

経営レバレッジとリスク

経営レバレッジは、2023年1月期に一時45.41倍という極めて高い数値を示しました。これは営業利益が損益分岐点付近まで低下したため、わずかな売上変動が利益に多大な影響を与える状態にあったことを意味します。しかし、売上の回復に伴い、2026年1月期の予測では1.80倍程度まで低下し、安定期に入る見通しです。経営レバレッジの低下は、爆発的な利益成長の期待値が下がる一方で、景気後退局面における利益の下支えが効きやすい状態への移行を示しており、事業環境の変化に対する耐性が強まっていると分析されます。

投資判断への示唆

本分析から得られる示唆として、同社はコロナ禍による低迷期を脱し、売上高1,000億円の大台を目指す成長フェーズにあることが伺えます。固定費が約67億円と一定に抑えられている中で、売上高の拡大とともに安全余裕率が大幅に改善(2022年比で約2.4倍の55.4%へ)する見通しは、財務的な健全性の高まりを示しています。一方で、限界利益率が14.1%と一定であるため、利益を拡大するためにはトップライン(売上高)の継続的な伸長が不可欠です。投資家の皆様におかれましては、今後の受注動向や大型案件の進捗、および高低点法による推定値である点に留意しつつ、この強固な収益構造をどう評価するかが判断のポイントとなります。

⚠️ 注意: 本分析は高低点法による推定値です。実際の変動費・固定費は有価証券報告書の費用明細と異なる場合があります。 費用構造が大きく変化した期間を含む場合、推定精度が低下する可能性があります。投資判断の際は他の指標と合わせてご確認ください。

デュポン分析(ROE分解)

ROEの3要素分解(デュポン分析)

ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ に分解し、収益性の源泉を可視化します。

年度 純利益率(%) × 総資産回転率(回) × 財務レバレッジ(倍) = ROE(%)
17年 1月期 3.60 × 1.718 × 1.86 = 0.11
18年 1月期 4.27 × 1.706 × 1.82 = 0.13
19年 1月期 4.27 × 1.877 × 1.67 = 0.13
20年 1月期 4.98 × 1.745 × 1.68 = 0.15
21年 1月期 3.40 × 1.659 × 1.45 = 0.08
22年 1月期 2.27 × 1.370 × 1.55 = 0.05
23年 1月期 0.23 × 1.543 × 1.44 = 0.01
24年 1月期 3.41 × 1.603 × 1.65 = 0.09
25年 1月期 3.91 × 1.698 × 1.67 = 0.11
26年 1月期 5.20 × 1.795 × 1.57 = 0.15
デュポン分析:ROEの3要素推移0.0%1.0%2.0%3.0%4.0%5.0%6.0%171921232526純利益率(%)ROE(%)
総資産回転率と財務レバレッジの推移1.301.401.501.601.701.801.90171921232526総資産回転率(回)財務レバレッジ(倍)
直近年度のROE構成(2026年 1月期 連結)
純利益率
5.20%
収益性
×
総資産回転率
1.795回
効率性
×
財務レバレッジ
1.57倍
借入で資本効率を57%ブースト
=
ROE
0.15%
株主資本利益率
📊 ROE変動の主因: 直近の変動は主に「純利益率」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROEに直結しています。

ROEの質の評価

株式会社丹青社のROE(自己資本利益率)は、2023年1月期の0.01(1%)を底に、2026年1月期には0.15(15%)まで回復する見通しとなっています。この変動の主因は「純利益率」の推移にあり、2023年1月期の0.23%から2026年1月期には5.20%へと大幅な改善が予想されています。財務レバレッジに頼ることなく、本業の収益性(純利益率)と資産の効率的な活用(総資産回転率)の両面からROEを押し上げており、その質は非常に高いと評価できます。特に、過去最高水準の利益率を目指す2026年1月期の計画は、収益構造の抜本的な強化を示唆しています。

財務レバレッジの影響

財務レバレッジは、2017年1月期の1.86倍から、直近の予測では1.5倍〜1.6倍前後で安定的に推移しています。これは、過度な負債に依存してROEを嵩上げしている状態ではなく、自己資本の蓄積が進んでいること、あるいは借入金を抑制した堅実な財務運営を行っていることを示しています。レバレッジを抑えながらもROEを二桁台に乗せている点は、財務的な健全性と資本効率を両立させている証左といえます。金利上昇局面においても、財務リスクによるROEへの下押し圧力は相対的に低いと考えられます。

トレンド分析

過去10年弱のトレンドを俯瞰すると、2021年1月期から2023年1月期にかけて、新型コロナウイルス感染症拡大等の影響により純利益率および総資産回転率が低下し、ROEが急減した「V字の底」が見て取れます。しかし、2024年1月期以降は全ての指標が反転しており、特に総資産回転率が1.6回から1.8回弱へと再上昇している点は、事業環境の回復と施工・プロジェクト管理の効率化が進んでいることを物語っています。2026年1月期の予測値(ROE 15%)は、コロナ禍前の2020年1月期水準への完全回復、あるいはそれを上回る成長軌道への回帰を目指す強い姿勢が反映されています。

投資判断への示唆

デュポン分析から導き出される同社の収益構造は、「純利益率の変動に敏感な高付加価値型」へとシフトしつつあるといえます。総資産回転率が安定して1.7回前後を維持していることから、一定の資産効率を保ちつつ、どれだけ利益率の高い案件を受注し、コストコントロールを徹底できるかがROEのさらなる向上を左右します。投資家の皆様においては、今後この高い純利益率(5%台)が一時的なものか、あるいは構造的な改善によるものかを見極めることが重要です。また、安定した財務レバレッジを背景とした、次なる成長投資や株主還元策の余力についても注視すべきポイントとなるでしょう。

⚠️ 注意: デュポン分析の数値はIRBankから取得した財務データに基づいています。 会計基準(日本基準/IFRS)の違いにより、株主資本の定義が異なる場合があります。

借金が利益に与える影響分析

有利子負債の概要

項目 説明
有利子負債 4億 銀行借入・社債等の利息付き負債
推定金利 1.50% 営業利益と経常利益の差から推定
推定支払利息 6百万 有利子負債 × 推定金利
利息 / 純利益 比率 0.1% 純利益に対する利息負担の大きさ
推定実効税率 31.6% 1 − (純利益 / 経常利益) から推定

「もし借金がなかったら」年度別シミュレーション

有利子負債による支払利息を除外した場合の仮想利益を試算しています。

年度 有利子負債 推定利息 経常利益
実績
経常利益
借金なし
純利益
実績
純利益
借金なし
ROE
実績
ROE
借金なし
レバレッジ
効果
2017/01 13億 19百万 40億 40億 26億 26億 11.49% 10.92% +0.56%pt
2018/01 5億 8百万 47億 47億 32億 32億 13.27% 13.02% +0.25%pt
2019/01 3億 5百万 45億 45億 35億 35億 13.36% 13.22% +0.14%pt
2020/01 1億 2百万 59億 59億 41億 41億 14.56% 14.48% +0.07%pt
2021/01 0百万 0百万 38億 38億 24億 24億 8.17% 8.17% +0.00%pt
2022/01 4億 5百万 22億 22億 14億 14億 4.84% 4.80% +0.05%pt
2023/01 2億 3百万 4億 4億 2億 2億 0.51% 0.52% +0.00%pt
2024/01 0百万 0百万 39億 39億 28億 28億 9.01% 9.01% +0.00%pt
2025/01 7億 10百万 51億 51億 36億 36億 11.06% 10.86% +0.20%pt
2026/01 4億 6百万 76億 76億 52億 52億 14.61% 14.46% +0.16%pt
純利益推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション0百万10億20億30億40億50億60億2017/012019/012021/012023/012025/012026/01実績純利益借金なし純利益ROE推移: 実績 vs 借金なしシミュレーション0.0%5.0%10.0%15.0%2017/012019/012021/012023/012025/012026/01実績ROE借金なしROE
レバレッジ効果の評価(直近年度)
借金の影響は限定的
実績ROE
14.61%
借金なしROE
14.46%
レバレッジ効果
+0.16%pt

有利子負債の水準が小さい、または事業利益率と借入金利がほぼ均衡しています。

借金の利益インパクト

株式会社丹青社の直近(2026年1月期予想)における有利子負債は4億円であり、推定される支払利息は年間約6百万円にとどまります。これは経常利益(実績見込み)76億円に対してわずか0.08%程度、純利益に対する比率でも0.1%と、極めて限定的な影響です。シミュレーション上の「借金が全くなかった場合」の純利益と比較しても、その差はわずか4百万円(52億4百万 vs 52億円)であり、金利負担が同社の最終的な利益を圧迫している状況にはありません。実質的には無借金経営に近い、極めて健全な財務体質を維持していると言えます。

レバレッジ効果の評価

2026年1月期の実績ROE(自己資本利益率)は14.61%に対し、借金がないと仮定した場合のROEは14.46%となります。財務レバレッジによるROEの押し上げ効果は+0.16%ptと算出されており、負債を活用したリターン向上効果は限定的です。過去10年間の推移を見ても、レバレッジ効果が1%を超えた年はなく、同社の高いROEは負債による財務操作ではなく、本業の収益性の高さ(資産効率の良さ)によってもたらされていることが分かります。特に2023年1月期のように利益が落ち込んだ局面でも、負債による逆レバレッジ(マイナス効果)が最小限に抑えられており、ボトムラインの安定性に寄与しています。

財務戦略の考察

同社の有利子負債水準は、年間の利益規模に対して過小と言えるほど低水準に抑えられています。推定金利1.50%に対し、事業から得られるリターン(ROE 14.61%)が大幅に上回っている現状では、理論上は借入を増やして事業投資に回すことで、さらに株主リターンを高める余地があります。しかし、空間ディスプレイ業界は景気変動の影響を受けやすく、受注状況によって運転資金の需要が変動するため、あえて低レバレッジを維持することで、不況時の耐性を高めているものと推察されます。同業他社と比較しても、この保守的な財務構成は強固な信用力の源泉となっており、金利上昇局面においても業績が揺らぎにくい構造を構築しています。

投資家へのポイント

投資判断における注目点は以下の通りです。まず、財務面でのリスクは極めて低く、金利上昇が直接的に純利益を大きく削るリスクは現時点では無視できる水準です。一方で、多額のキャッシュを抱え、負債を抑えた「持たざる経営」に近いスタイルであるため、今後の成長投資や株主還元(配当・自社株買い)にその余力をどう配分していくかが焦点となります。 ROEが14%台と高い水準にあることは評価できますが、これはあくまで本業の稼ぐ力によるものです。投資家としては、「安定した財務基盤」を安心材料と捉える一方で、将来的な資本効率のさらなる向上に向けた経営陣の資本政策(現金の活用方法)を注視していく必要があります。最終的な投資の是非は、これら財務の健全性と、商業施設や文化施設等の受注環境の見通しを照らし合わせてご判断ください。

⚠️ 注意事項: 本分析は営業利益と経常利益の差額から支払利息を推定しており、実際の支払利息とは異なる場合があります。 営業外収支には受取利息・配当金・為替差損益等も含まれるため、あくまで参考値としてご活用ください。 また、借金を全額返済した場合の実際の影響は資金調達構造の変化を伴うため、単純なシミュレーションとは異なります。

ROIC分析(投下資本利益率)

ROIC(投下資本利益率)推移

ROIC = NOPAT(税引後営業利益)÷ 投下資本(株主資本+有利子負債)。資本コスト(WACC)を上回れば価値を創造していると評価できます。

年度 NOPAT(百万円) 投下資本(百万円) ROIC(%) WACC(%) スプレッド(%pt)
17年 1月期 2,453 23,457 10.46 6.66 +3.80
18年 1月期 3,064 24,621 12.44 6.87 +5.57
19年 1月期 3,422 26,501 12.91 6.93 +5.99
20年 1月期 3,935 28,040 14.03 6.97 +7.07
21年 1月期 2,337 29,373 7.96 7.00 +0.96
22年 1月期 1,312 29,464 4.45 6.92 -2.47
23年 1月期 100 29,347 0.34 6.96 -6.62
24年 1月期 2,699 30,731 8.78 7.00 +1.78
25年 1月期 3,529 33,213 10.63 6.87 +3.75
26年 1月期 5,132 35,995 14.26 6.93 +7.33
ROIC vs WACC推移0.0%5.0%10.0%15.0%171921232526ROIC(%)WACC(%)
直近年度のROIC評価(2026年 1月期 連結)
ROIC
14.26%
投下資本利益率
WACC
6.93%
加重平均資本コスト
=
スプレッド
+7.33%pt
高い価値創造力

ROIC水準の評価

株式会社丹青社のROIC(投下資本利益率)は、2020年1月期の14.03%をピークに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を色濃く受けた2023年1月期(0.34%)まで急激に低下しました。しかし、2024年1月期(8.78%)からは力強い回復基調にあり、2025年1月期は10.63%、2026年1月期には過去最高水準を更新する14.26%を見込むV字回復のシナリオを描いています。ディスプレイ業界は一般に景気動動向や商業施設の投資サイクルに左右されやすい特性がありますが、10%を超えるROIC水準は、同社の高い専門性と市場における優位性を背景とした資本効率の高さを示しています。

ROIC-WACCスプレッド分析

資本コスト(WACC)が6.8%〜7.0%程度で安定して推移する中、ROIC-WACCスプレッドは劇的な変化を遂げています。2017年から2021年まではプラスのスプレッドを維持し価値創造を実現していましたが、業績が底を打った2022年1月期(-2.47pt)および2023年1月期(-6.62pt)は、資本コストを下回る利益率となり、一時的な価値破壊の状態に陥りました。特筆すべきは、2024年1月期に再びスプレッドを+1.78ptと正に転じさせ、2026年1月期予測では+7.33ptという極めて高い価値創造力を見込んでいる点です。これはNOPAT(税引後営業利益)が2023年1月期の100百万円から2026年1月期予測の5,132百万円へと大幅に改善する一方で、投下資本の膨らみを抑制できていることが主因と考えられます。

投資家へのポイント

投資判断における注目点は、この高いROIC成長予測の実現性と、拡大する投下資本の使途にあります。2024年1月期から2026年1月期にかけて、投下資本は30,731百万円から35,995百万円へと増加傾向にありますが、それ以上に利益成長が加速する計画となっています。これは、既存事業の収益性向上に加え、成長分野への投資が効率的に寄与し始めている可能性を示唆しています。一方で、同社の事業構造は外部環境(商業施設、ホテル、イベント需要等)の影響を受けやすいため、この高水準なROICが持続可能なものであるか、あるいは景気サイクルの一時的なピークであるかを見極める必要があります。資本効率を重視する経営姿勢が定着している点は、長期的な企業価値向上を目指す投資家にとって重要な評価材料となるでしょう。 ⚠️ 注意: WACCは簡易推定値です(株主資本コスト7%想定、負債コストは推定支払利息から算出)。 実際のWACCはCAPMや市場データに基づくより精緻な計算が必要です。

ROIC逆ツリー分析

ROIC逆ツリー分解

ROIC = NOPATマージン × 投下資本回転率 に分解し、収益性の改善ドライバーを特定します。

年度 売上高(百万円) NOPATマージン(%) × 投下資本回転率(回) = ROIC(%)
17年 1月期 70,800 3.46 × 3.018 = 10.46
18年 1月期 75,000 4.09 × 3.046 = 12.44
19年 1月期 81,900 4.18 × 3.090 = 12.91
20年 1月期 81,600 4.82 × 2.910 = 14.03
21年 1月期 70,600 3.31 × 2.404 = 7.96
22年 1月期 62,000 2.12 × 2.104 = 4.45
23年 1月期 64,600 0.15 × 2.201 = 0.34
24年 1月期 81,200 3.32 × 2.642 = 8.78
25年 1月期 92,000 3.84 × 2.770 = 10.63
26年 1月期 100,000 5.13 × 2.778 = 14.26
ROIC逆ツリー: NOPATマージンと投下資本回転率0.001.002.003.004.005.006.00171921232526NOPATマージン(%)投下資本回転率(回)
ROIC逆ツリー分解(2026年 1月期 連結)
NOPATマージン
5.13%
NOPAT 5,132百万円 ÷ 売上 100,000百万円
×
投下資本回転率
2.778回
売上 100,000百万円 ÷ IC 35,995百万円
=
ROIC
14.26%
📊 ROIC変動の主因: 直近の変動は主に「NOPATマージン」の変化によるものです。本業の収益力の変化がROICに直結しています。

ROIC変動要因の分解

株式会社丹青社のROIC(投下資本利益率)推移を分析すると、その変動は「NOPATマージン(収益性)」の変化に強く相関していることが分かります。2017年1月期から2020年1月期にかけては、NOPATマージンが3.46%から4.82%へと上昇し、それに伴いROICも10.46%から14.03%まで向上する高収益フェーズにありました。この期間、投下資本回転率は3.0回前後と高い水準で安定しており、効率的な資産運用と高い付加価値の提供が両立されていたと言えます。

しかし、2021年1月期以降、新型コロナウイルス感染症拡大等の外部環境変化により、ROICは急激に悪化しました。特に2023年1月期には、投下資本回転率が2.201回と一定水準を維持した一方で、NOPATマージンが0.15%まで落ち込んだことにより、ROICは0.34%という極めて低い水準に達しました。2024年1月期からはV字回復を見せており、2026年1月期にはNOPATマージンが過去最高の5.13%まで改善することで、ROICも14.26%と、コロナ禍前の水準を上回る計画となっています。

改善ドライバーの特定

分析の結果、同社のROICをさらに改善・維持するための主たるドライバーは「NOPATマージンのさらなる向上」にあることが明確です。投下資本回転率は概ね2.1回から3.1回の範囲で推移しており、同社のビジネスモデル(ディスプレイ業・空間演出)が大規模な設備投資を必要としないアセットライトな側面を持つことを示唆しています。したがって、売上規模の拡大以上に、個々のプロジェクトにおける採算性の管理や、高付加価値なソリューション提供による利益率の確保が、投資効率を高める最短ルートとなります。

具体的には、2026年1月期に向けた予測値において、投下資本回転率は2.778回と、2019年以前の水準(3.0回超)には届かないものの、NOPATマージンを5.13%まで引き上げることでROICの最大化を図るシナリオとなっています。今後は、資材価格の高騰や労務コストの上昇を適切に価格転嫁できるか、また、より利益率の高いIT・デジタル活用型の空間構築案件をどれだけ獲得できるかが、改善の持続性を左右する要素となるでしょう。

投資家へのポイント

投資家の皆様に注目していただきたいのは、同社が「収益性の劇的な回復プロセス」の途上にあるという点です。2023年1月期を底としたROICの回復軌道は力強く、特にNOPATマージンの改善によってROICを押し上げる構造は、経営陣がコスト構造の最適化や高単価案件へのシフトを強く意識している結果と読み取れます。

一方で、投下資本回転率がコロナ禍前の3.0回水準までは回復していない点については、受注サイクルの変化や、手元流動性の確保状況、あるいは先行投資による資本の積み増しなどが影響している可能性があります。2026年1月期のROIC見通し14.26%という数字は、同社の過去10年の中でも最高水準の資本効率を目指す野心的な目標です。この目標達成に向けた「収益性の改善(マージン向上)」が計画通りに進捗するか、四半期ごとの利益率推移を注視することが、今後の投資判断における重要な指標となるでしょう。最終的な投資判断は、これらの数値を踏まえ、市場環境の変化を考慮した上で行っていただくようお願いいたします。

EVA(経済的付加価値)分析

EVA(経済的付加価値)推移

EVA = (ROIC − WACC) × 投下資本。資本コストを超えるリターンを生み出し、株主価値を真に創造しているかを測定する指標です。

年度 NOPAT(百万円) 資本コスト(百万円) EVA(百万円) ROIC(%) WACC(%)
17年 1月期 2,453 1,562 891 10.46 6.66
18年 1月期 3,064 1,691 1,372 12.44 6.87
19年 1月期 3,422 1,837 1,586 12.91 6.93
20年 1月期 3,935 1,954 1,981 14.03 6.97
21年 1月期 2,337 2,056 281 7.96 7.00
22年 1月期 1,312 2,039 -728 4.45 6.92
23年 1月期 100 2,043 -1,942 0.34 6.96
24年 1月期 2,699 2,151 548 8.78 7.00
25年 1月期 3,529 2,282 1,247 10.63 6.87
26年 1月期 5,132 2,494 2,638 14.26 6.93
EVA(経済的付加価値)推移-200002.0千4.0千6.0千1719212325260EVA(百万円)NOPAT(百万円)
EVA評価サマリー
直近EVA
2,638
百万円(2026年 1月期 連結)
累積EVA
7,874
百万円(10年間合計)
価値創造評価
高い価値創造力

EVAの推移と評価

株式会社丹青社のEVA(経済的付加価値)の推移を分析すると、大きなV字回復の過程にあることが鮮明に見て取れます。2017年1月期から2020年1月期にかけては、ROIC(投下資本利益率)が10.46%から14.03%へと上昇し、EVAも891百万円から1,981百万円へと拡大、資本コスト(WACC約7%)を大幅に上回る高い価値創造を実現していました。

しかし、2021年1月期より低下に転じ、2022年1月期(-728百万円)、2023年1月期(-1,942百万円)にはEVAがマイナスを記録しました。特に2023年1月期はNOPAT(税引後営業利益)が100百万円まで落ち込み、ROICが0.34%と資本コストを大きく下回ったことで、会計上の利益は確保しつつも経済的には「価値を破壊」している状態に陥りました。これは主に外部環境の変化による受注減や採算性の悪化が、資本コストというハードルを越えられなかったことを示唆しています。

2024年1月期(548百万円)からは再びプラス圏に浮上しており、2026年1月期には過去最高水準のEVA(2,638百万円)およびROIC(14.26%)を見込むなど、収益性の急激な改善が期待されるフェーズにあります。

価値創造力の持続性

累積EVAが7,874百万円というプラスの値を維持している点は、長期的な視点での価値創造力を裏付けています。過去の推移から、同社のビジネスモデルはマクロ経済や市場環境の影響を受けやすいサイクル性を持つものの、苦境から早期に脱却し、再び高い資本効率を実現できる底力があると考えられます。

特に注目すべきは、WACC(資本コスト)が約6.8%〜7.0%と一定の範囲内で安定している一方で、ROICが大きく変動している点です。2025年以降の予測値では、ROICが再び10%を超える二桁水準へ戻る見通しであり、投下資本(資本コスト総額も増加傾向)に対して、それを上回る利益を創出する体制が整いつつあります。このトレンドが継続すれば、持続的な企業価値の向上が期待できるステージへ移行したと評価できます。

投資家へのポイント

EVA分析の観点から投資判断を行う際、以下の3点が重要な焦点となります。

以上の数値および予測は、同社が資本効率を重視した経営へ回帰していることを示していますが、実際の投資にあたっては、将来予測の実現可能性や市場環境の不確実性を十分にご検討ください。

⚠️ 注意: EVAは簡易推定値です。WACCは株主資本コスト7%想定に基づく簡易計算であり、 正確なEVA算出にはβ値やリスクフリーレートの精緻な設定が必要です。

営業レバレッジ分析

営業レバレッジ度(DOL)推移

DOL = 営業利益変化率 ÷ 売上高変化率。売上が1%変化したとき営業利益が何%変化するかを示し、固定費比率の高さ(経営リスク)を表します。

平均DOL
6.34倍
有効年度の平均
リスク評価
高リスク
DOL≤2: 低 / 2-5: 中 / 5+: 高
年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 営業利益率(%) 売上変化率(%) 営業利益変化率(%) DOL(倍)
17年 1月期 70,800 3,800 5.37 - - -
17年 1月期 70,782 3,930 5.55 -0.03 3.42 -
18年 1月期 75,000 4,500 6.00 5.96 14.50 2.43
18年 1月期 75,157 4,588 6.10 0.21 1.96 -
19年 1月期 81,900 4,400 5.37 8.97 -4.10 -0.46
19年 1月期 82,600 5,000 6.05 0.85 13.64 15.95
19年 1月期 82,677 5,025 6.08 0.09 0.50 -
20年 1月期 81,600 5,670 6.95 -1.30 12.84 -9.85
20年 1月期 81,679 5,678 6.95 0.10 0.14 -
21年 1月期 70,600 3,700 5.24 -13.56 -34.84 2.57
21年 1月期 69,400 4,000 5.76 -1.70 8.11 -4.77
21年 1月期 69,226 5,050 7.29 -0.25 26.25 -
22年 1月期 62,000 2,000 3.23 -10.44 -60.40 5.79
22年 1月期 62,714 2,025 3.23 1.15 1.25 1.09
23年 1月期 64,600 200 0.31 3.01 -90.12 -29.97
23年 1月期 64,000 600 0.94 -0.93 200.00 -
23年 1月期 64,221 617 0.96 0.35 2.83 -
24年 1月期 81,200 3,800 4.68 26.44 515.88 19.51
24年 1月期 81,201 3,883 4.78 0.00 2.18 -
25年 1月期 92,000 5,000 5.43 13.30 28.77 2.16
25年 1月期 91,858 5,147 5.60 -0.15 2.94 -
26年 1月期 100,000 7,500 7.50 8.86 45.72 5.16
26年 1月期 106,000 8,600 8.11 6.00 14.67 2.44
26年 1月期 107,222 8,358 7.80 1.15 -2.81 -2.44
営業レバレッジ度(DOL)と営業利益率の推移-30.0-20.0-10.00.010.020.01718192122232426260DOL(倍)営業利益率(%)

費用構造の特徴

株式会社丹青社の平均DOL(営業レバレッジ度)は6.34倍と算出されており、これは分析指標において「高リスク(固定費型ビジネス)」に分類される水準です。商業施設や文化施設、展示会などの空間づくりを手掛ける同社の業種特性上、高度な専門性を有する専門スタッフの人件費や拠点維持費といった固定費の比率が高い構造にあると推察されます。2024年1月期において、売上高が26.44%増加した際、営業利益が515.88%という極めて高い伸びを示したことは、損益分岐点を超えた後の売上増加が利益に直結しやすい、典型的な高レバレッジ構造であることを裏付けています。

景気変動への感応度

DOLの推移を見ると、景気や社会情勢に伴う業績のボラティリティ(振れ幅)が非常に大きいことが分かります。特に2023年1月期から2024年1月期にかけては、コロナ禍からの回復局面においてDOLが19.51倍という突出した数値を示しており、需要の回復が利益を爆発的に押し上げました。一方で、売上高が微減した2021年1月期や2022年1月期には利益が大幅に減少しており、不況期や投資抑制期には固定費負担が重くのしかかり、利益が急速に圧縮されるリスクを内包しています。好況時の恩恵は大きい反面、景気後退局面では売上の減少率以上に利益が落ち込む「諸刃の剣」としての側面が顕著です。

投資家へのポイント

投資家としては、同社が「売上高の変化が利益に与える影響が極めて大きい企業」であることを認識する必要があります。2025年1月期以降の予測値では、売上高が10%前後の成長を維持しつつ、営業利益率も7%台後半への改善が見込まれており、DOLは2.16〜5.16倍程度と、これまでの乱高下から一定の安定感へ向かうシナリオが描かれています。しかし、高レバレッジ体質であることに変わりはなく、受注環境のわずかな変化が、一株当たり利益(EPS)や配当原資に大きな影響を与える可能性があります。将来の売上成長の見通しとともに、固定費のコントロール状況を注視することが、リスク・リターンの判断において肝要となります。

⚠️ 注意: 営業レバレッジ度は前年比の変化率から算出しており、売上や利益が急変する年度では極端な値になることがあります。 複数年の平均値での評価を推奨します。

持続的成長率分析(SGR)

持続的成長率(SGR)推移

SGR = ROE × 内部留保率。外部からの資金調達なしで持続可能な売上成長率を示します。実際の成長率と比較することで、成長の持続可能性を評価します。

年度 ROE(%) 配当性向(%) 内部留保率(%) SGR(%) 実際成長率(%)
17年 1月期 11.49 推定30% 70.0 8.04 -
18年 1月期 13.27 推定30% 70.0 9.29 5.93
19年 1月期 13.36 推定30% 70.0 9.35 9.20
20年 1月期 14.56 推定30% 70.0 10.19 -0.37
21年 1月期 8.17 推定30% 70.0 5.72 -13.48
22年 1月期 4.84 推定30% 70.0 3.39 -12.18
23年 1月期 0.51 100.0 0.0 0.00 4.19
24年 1月期 9.01 51.6 48.4 4.36 25.70
25年 1月期 11.06 54.7 45.3 5.01 13.30
26年 1月期 14.61 56.7 43.3 6.32 8.70
持続的成長率(SGR)vs 実際の売上成長率-20.0%-10.0%0.0%10.0%20.0%30.0%1719212325260SGR(%)実際成長率(%)
ROEと配当性向の推移0.0%20.0%40.0%60.0%80.0%100.0%171921232526ROE(%)配当性向(%)
持続的成長率の評価(2026年 1月期 連結)
ROE
14.61%
×
内部留保率
43.3%
=
SGR
6.32%
📊 成長持続性の評価: 実際の成長率がSGRをやや上回っており、持続性に注意が必要

SGR水準の評価

株式会社丹青社のSGR(持続的成長率)の推移を辿ると、大きな転換点が確認できます。新型コロナウイルス流行前の2017年1月期から2020年1月期にかけては、11%〜14%台の高いROEと30%(推定)の配当性向を背景に、8%〜10%台という高いSGRを維持していました。しかし、パンデミックの影響で2023年1月期にはROEが0.51%まで急落し、配当性向を100%としたことでSGRは0%となりました。
特筆すべきは、2024年1月期以降の回復局面です。ROEは2024年1月期の9.01%から2026年1月期予想の14.61%へと、かつての高水準までV字回復する見込みです。一方で、配当性向が従来の30%台から50%台(2026年1月期予想は56.7%)へと引き上げられたことにより、SGRは6.32%(2026年1月期予想)に留まっています。現在のSGR水準の低下は、収益性の低下ではなく、株主還元方針の強化による内部留保率の低下が主因であると言えます。

成長の持続可能性

SGRと実際の売上成長率を比較すると、足元の成長スピードが内部資金で賄える範囲を上回っている現状が浮き彫りになります。2024年1月期の実際成長率25.70%に対しSGRは4.36%、続く2025年1月期も成長率13.30%に対しSGRは5.01%となっており、SGRを大きく上回る急激な回復・成長を遂げています。
一般的に「実際成長率 > SGR」の状態は、内部留保だけでは成長資金が不足し、外部借入や増資などの外部資金調達が必要となるか、あるいは自己資本比率を低下させる可能性を示唆します。2026年1月期には実際成長率(8.70%)とSGR(6.32%)の乖離が縮小する見通しですが、依然として成長率がSGRを上回っており、資本構成の変化やキャッシュフローの動向を注視する必要がある状態が続いています。

投資家へのポイント

本分析を踏まえ、投資家が注目すべきポイントは以下の3点に集約されます。

以上の通り、同社は高い収益性を背景に積極的な還元を行っていますが、成長スピードと内部資金蓄積のバランスについては、今後の事業計画と照らし合わせて精査する必要があります。

⚠️ 注意: 配当データが取得できない年度は内部留保率70%(配当性向30%)を仮定しています。 実際の配当政策と異なる場合があります。

インタレストカバレッジレシオ推移

インタレストカバレッジレシオ推移

ICR = 営業利益 ÷ 支払利息。営業利益で利息の何倍を賄えるかを示す、借入金利負担の安全性指標です。

直近ICR
∞(利息負担なし)
>10: 極めて安全 / 3-10: 安全 / 1-3: 要注意 / <1: 危険
安全性評価
極めて安全
年度 営業利益(百万円) 推定支払利息(百万円) ICR(倍) 有利子負債(百万円) 有利子負債比率(%) 推定借入金利(%)
17年 1月期 3,800 - 1,256 3.0 -
18年 1月期 4,500 - 500 1.1 -
19年 1月期 4,400 - 307 0.7 -
20年 1月期 5,670 - 146 0.3 -
21年 1月期 3,700 - - 0.0 -
22年 1月期 2,000 - 356 0.8 -
23年 1月期 200 - 191 0.5 -
24年 1月期 3,800 - - 0.0 -
25年 1月期 5,000 - 668 1.2 -
26年 1月期 7,500 - 415 0.7 -

利払い安全性の評価

株式会社丹青社のインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)は、対象期間を通じて「∞(無限大)」という極めて異例かつ強固な水準を維持しています。これは、同社の営業外費用における利息負担が実質的にゼロ、あるいは営業外収益が費用を上回る状態であることを示唆しています。 営業利益の推移を見ると、2023年1月期には200百万円まで一時的に落ち込みましたが、翌2024年1月期には3,800百万円へと急回復し、2026年1月期には7,500百万円と大幅な増益が予想されています。利益のボラティリティ(変動幅)は見られるものの、利払い負担がほぼ存在しないため、いかなる業績局面においても利払いの遅延やデフォルトに陥るリスクは極めて低い、「極めて安全」な財務状態であると評価できます。

有利子負債の状況

有利子負債の管理状況は、特筆すべき健全性を誇っています。2017年1月期時点では1,256百万円(有利子負債比率3.0%)あった負債を段階的に圧縮し、2021年1月期および2024年1月期には有利子負債ゼロ(実質無借金経営)を達成しています。 最新の予測値においても、2025年1月期は668百万円(比率1.2%)、2026年1月期は415百万円(比率0.7%)と、有利子負債比率は常に1%前後で推移しています。これは、同社が事業活動に必要な資金を、有利子負債に頼らず内部留保や営業キャッシュフローで十分に賄えていることを示しており、金利上昇局面においても業績が圧迫される懸念はほとんどありません。

投資家へのポイント

財務安全性の観点からは、丹青社は非の打ち所がない健全性を有しています。投資判断に際しては、以下の3点が重要な考察軸となります。 第一に「耐性」です。有利子負債が極小であるため、景気後退による減益局面でも倒産リスクが極めて低く、長期保有に適した守りの堅さがあります。 第二に「資本効率」です。これほどまでに強固な財務基盤は安全性の証である一方、ROE(自己資本利益率)の向上という観点からは、余剰資金をどのように成長投資や株主還元へ配分するかが今後の焦点となります。 第三に「業績の回復力」です。2023年1月期の低迷から2026年1月期の予測値(営業利益7,500百万円)に向けたV字回復の蓋然性を、ディスプレイ業界の市場環境と照らし合わせて注視することが、投資妙味を探る鍵となるでしょう。

⚠️ 注意: 支払利息は「営業利益−経常利益」から推定しています。 営業外収益が大きい企業では過小評価になる可能性があります。正確な支払利息は有価証券報告書の注記をご確認ください。

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